エゾゼミ Lyristes japonicus
茨城平野部では見かけないので、青森に先輩が帰省した際に採ってきていただきました。
模様がとりわけ美しいです。前胸背板のフチドリがアイヌの文様デザインを思い起こさせます。
北海道以外にも生息するセミですが、「蝦夷」の雰囲気が出ていますね。
味見 苦味が強い。香ばしさがあるがうまみがあまり感じられない。
クマゼミと近縁とのことだが、味はヒグラシのほうがより近い。「セミの苦味」と調理は
今後の対策事項になりうると思う。
セミといえば、
高村光太郎が「蝉の美と造形」という随筆を残しています。
引用
彫刻家はセミのようなものを作っているのでなくて、セミに因る造型美を彫刻しているのだからである。それ故にこそ彫刻家はセミの形態について厳格な科学的研究を遂げ、その形成の原理を十分にのみこんでいなければならないのである。
うむ
どんなアウトプットをするにも科学的研究・昆虫学は基本中の基本。
しっかり探求したいです。
そして、ただ知識や経験を貯めこむマニアになるだけではなく、
必ずアウトプットする、という最終目的をきちんと忘れないようにしたいものです。
アウトプットの手法は論文・書籍・このようなブログや芸術など
多岐にわたりますが、手法が違えば見方も変わります。
同じ昆虫を違う分野の人達が見比べ、楽しく、有意義な情報交換をしたいですね。
日: 2013年9月5日
味見:秋の鳴く虫を聞き比べない。第二弾
以前鳴く虫を4種食べ比べましたが
今回も引き続き鳴く虫を食べ比べましょう。
キリギリス Gampsocleis buergeri もしくは Gampsocleis mikado
兵庫で捕まえたので、「ニシキリギリスか!」と思ったのですが
分布では岡山以西だそうで。。。また
その分類についても個体変異が大きそうで昨年、識別点検討の報告が出されています。(pdf)
直翅目の分類は難解そうです。。。
今まで「キリギリス科は茹でても赤くならず バッタ科は赤くなる」
と思っていました。
残念。
見事に真っ赤です。
生細胞茶色の色素にタンパク質・カロテノイド系色素の複合体が含まれているのでは、
と思っているのですが。直翅目の色素にもまだまだわからないことは多そうです。
味見 肉質の濃い味。少し苦味があるが煮干しのようにうまみにつながる良い苦味。ぎっちりと身が詰まっていて美味しい。
大型のキリギリスはとても食べごたえがありました。
大型の直翅目 キリギリス科としてもう一種
クツワムシ Mecopoda nipponensis
ガッチャガッチャとびっくりするぐらい大きな音をたてて求愛しています。
味見
クツワムシ茶
美味い。エビ系の香りと穀物のコクがあり、甘みが広がる。茹でてから塩を振りしばらく放置すると
エビのいい香りがする。自家融解と関係があるかも。
クツワムシ緑
茶色よりエビ系の香りが穏やかな気がする…?再現性がとれないので要検討。
エビの香りが酸化したカロテノイド系色素由来だったりすると尚うれしい
また、今回のキリギリスやクツワムシは夜行性で
草丈の高い草むらに潜んでいます。
大きな音を立てるので近づくことは出来るのですが
ヒトに気づいてしまうと草むらの中にポロっと落ち込んでしまうので、
捕獲は結構大変です。
そんな中、昆虫は一般的に「赤い光が見えにくい」ことが知られています。
行動と光の関係を見ても、視細胞の電気的応答を見ても、視物質の反応性を見ても
他の色に比べ、赤い光への応答が小さいのです。
(コレが本当に赤い光が見えていない、という直接的な証拠ではないですが。)
ということで、今回の捕獲にはこのヘッドライトを使いました。
明るいホワイトのヘッドライトの他に、
青・赤・緑の小さいLEDが付いています。
小LEDは周囲を照らすほど明るさは強くありませんが、
1m以内に近づく際には白LEDから赤LEDに変えると、
全く見えていないようで捕獲が簡単になりました。
他の虫にも試してみたのですが、
アブラゼミは背中を指でギュッと押すまで気づかないようでした。
この先赤色LEDのもっと明るいヘッドライトが出れば、
走光性のない夜行性昆虫の採集に使えると思います。
星空観察にも使えそうですね。どこかで商品化しないでしょうか。