ご報告です。まずはこちらをご覧ください。
ラオスでのプロジェクトがひと段落して、行き先が決まらずウロウロしていたのですが
以前から技術顧問としてライトに参加していたTAKEO株式会社から、声がかかりまして、「CSOチーフ・サステナビリティ・オフィサー」という役職で、昆虫食企業がサステナビリティを武器にしていくための戦略を立案すべく、しっかり参加することになりました。
蟲ソムリエとして、やるべきことはこれまで通りです。むしろ加速していきます。
2023年、いろいろなことがありました。
印象的なのがコオロギ炎上事件でしょう。不適切な昆虫食品の提供が行われたわけでもなく、不本意な形でコオロギを食べさせられた被害者がいるわけでもない、にもかかわらず、というか、だからこそ、なのかもしれません。ネットで誤読が広がり、我こそはと名乗りをあげる「不安の声」がこれまでも、そしてこれからも昆虫を食べないであろう人たちから立ち上がり、それを煽ることで、ネットで稼ぐ人やbotたちが大きな祭りを引き起こしました。そしてその中で、弱々しいながら発信を続けた人たちと、貝のように黙り込んだ人たちがいました。それぞれの判断の合理性について、解析していきます。
昆虫食業界はコオロギへの2020年ごろからの期待感がさらっと消え失せ、次の大胆な一手をなかなか打てない状況が続いています。また、とある界隈で「反コオロギ」が格好の商材として使われ、自説を補強するために都合のいいサンドバックのように叩かれ続け、これまでひっそりと昆虫を食べてきた人たちの肩身の狭い状況がつづいています。
一方で、私は2023年までのプロジェクトで、すでに社会受容が完了している国、ラオスにいました。では社会受容さえあれば、昆虫食ビジネスは軌道に乗るのでしょうか?そんなことはありませんでした。少なくとも昆虫食文化の中心である、ラオスの農村部の人たちが、農家として技術を習得し、昆虫養殖ができる、というところまでは確認しました。
次のステップとして、ビジネスとして流通を確保し、生産管理をするとなるともう一段階、高度な人材を雇う必要がありました。その人たちが、ラオスの農村部にどんな形で、何を期待して生活しているのか、どうすればこちらのビジネスに参画してくれそうか、というところまで、実態を把握してきました。それはこれまでのNGOやODAの活動で手が出されてこなかった人たちであり、新たな展開ができそうです。
次のステップは、ラオスの近隣国との連携を強化し、日本との商流をつなげるための関係性づくりです。それは日本の昆虫食業界を持続可能にするだけでなく、食文化としての未来のビジョンを、地続きで体感するための架け橋になるでしょう。
また、この「炎上」は、本当に昆虫食だけのものでしょうか?様々な政治的対立の「商材」として、これまでもいろんな象徴的な食材が消費されてきました。富裕層が「肉」を食べ、その副産物や廃棄物を貧乏人が食べさせられる、というフードシステムは、持続可能でしょうか?
ある食材を食べると健康になる、というエビデンスが得られたとして、その食材が貧困国で生産され、生産者の口には入らず、富裕国の健康な人たちに輸入される時、このフードシステムは、人々の幸福の総量を増やしていますか?
そしてこれらのような企業倫理の軽視は、その企業に対してどのような事業リスクをもたらすのでしょうか?専業の中小企業はどうでしょう?そしてコモディティ食品を生産している、大企業は?
まだまだ誰も見ていない、不透明でセンシティブな部分にあえて分け入り、火中の栗を拾いにきました。
年末年始の映画、ゴジラ-1.0にあるような「誰かが貧乏クジを引かなきゃなんない」のかもしれませんが、
蟲ソムリエという実務者として、そして当事者として、ガッツリ取り組んでいこうと思います。日本の皆さんをこれまで以上に巻き込んで、問題提起し、挑発していきますので、好奇心と共に見守ってくださるとありがたいです。