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先日twitterで「初めての昆虫を食べる時の恐怖感は一般の方と同程度です。美味しければ小躍りし、美味しくなければ挫けそうになることもあります。」
と呟きましたが。
実はその原因は先週から飼育しているこの子で。

ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius
wikipedhiaより。
「派手な体色は毒虫を思わせるが、突起で刺すこともなければ毒も持たない。」
…いや…アカン色とトゲでしょう。
まったく食欲をそそりませんが
それでも美味しかったシンジュサンの例もありますので、
ここは尻込みせずに食べたい所。
そうこうしているうちにサナギになり始めたので、
今日中に頂きます。
茹でてポン酢で。
見た目に反し結構イケる。ほうれん草の香りがし、微かな苦味がある。外皮の歯切れがよく、食べやすい。うまみとコクが感じられる。若干トゲが気になるので揚げるか串焼きにするとより食べやすいと思われる。
続いてサナギ

背中の突起がなぜかパールに輝くという謎の食欲そそらない仕様。
くじけません。
強く青臭い香り。そして苦味。ほうれん草の苦味に近い。内部は液状で脂質の味は感じられない。見た目通り余りおすすめできない。
ツマグロヒョウモンについては、見た目の最悪な幼虫は美味しく、
サナギは苦味が強まり美味しくないことが分かった。
つまり、「見た目と味に直接の相関はない」ことから、
これからも見た目に惑わされず新たな味覚を求め、
昆虫の味を見ていこうと決意を新たにしました。
ゆくゆくは見た目ではなく、味で勝負できる美味しい昆虫を
養殖し、ご家庭に普及できれば、とおもいます。

クヌギ林でも目立つ
美しいウグイス色の袋。
ウスタビガの繭です。
Rhodinia fugax

ヤママユガ科ということで、味に期待も高まります。

サクサンのバランスににたずんぐり体形。繭にくらべサナギの大きさが充実しているのも嬉しいところです。
茹でてポン酢で。
濃厚なクリーム状の柔らかさ。クセが殆ど無く香ばしい木の香り。良く熟れたアボカドを思わせる食味とコク。腹部が大きく小ぶりの繭でも十分に楽しめる。
他のサナギ同様外皮が固めなので取り除くか、破裂しないよう弱火でじっくり揚げていただきたい。

おいしそうってなんだろう?

右から串揚げ
モンクロシャチホコ幼虫
シンジュサン前蛹
トノサマバッタ成虫
セミ幼虫
唐揚げ
ショウリョウバッタ
トノサマバッタ終齢幼虫

1

ツチイナゴ
Patanga japonica

イナゴの一種で、比較的大型。成虫越冬することが知られており、
春先に出てくるトノサマバッタ様の大きなバッタは大抵この種。
(トノサマバッタは卵越冬)
亜熱帯に生息する近縁種タイワンツチイナゴは更に大型で、
タイ食材店で揚げ冷凍したものが売られています、
昆虫料理会でも人気の昆虫です。
さて。
今回はツチイナゴを幼虫で捕獲し、
脱皮後7日間の♂を使用しました。
同じ条件でトノサマバッタ♂を用意し、食べ比べることで
成長段階での味の変化を抑え、近縁種同士を正確に比較できます。

比較画像。
茹でてポン酢で味見
トノサマバッタに似た味だが枯れ草のような香りがつよく、すこし筋張っている。脂質のコクが感じられない。けっこう美味しいがトノサマバッタに及ばない。
期待していたのですが、トノサマバッタを超える味ではありませんでした。
日本のバッタでは私見ですが、トノサマバッタが今のところ一番美味しいです。
次点でヒゲマダライナゴ。あたりです。
これから秋になり、バッタの美味しい季節になります。
美味しいバッタをご存知のかた、是非お知らせください。

スズメガが続いておりますが、
今回はブドウスズメ。Acosmeryx castanea
その名の通りブドウの葉につく蟲です。

他のスズメガにくらべ、外皮がツブツブしているのが特徴です。
食感に影響するのでしょうか
前回のエビガラスズメの経験から、
終齢の大きな幼虫は外皮が硬いことが分かったので、
今回は小さめのものをチョイス
ブドウの葉の香りもよく、さわやかな淡色野菜の香り。肉質もクリーミー。まったく臭みがない。表皮のざらつきは食感に影響をあたえないのでスズメガの中でもかなり上位。
ということでブドウスズメ、ブドウをご家庭で育てている方は
こちらも美味しく楽しめるということです。ワインに合いますでしょうか。
ブドウの香りは残念ながらしませんでした。

このブログでも度々取り上げるエビガラスズメ Agrius convolvuli成虫・サナギ
ですが、今回はサツマイモで飼育したエビガラスズメがちょうど良い段階に入ったので。食べてみました。美味しいことが分かっているのでさらにその先を目指します。
コエビガラスズメSphinx constricta野生個体幼虫

これは野外個体。サツマイモに似たキミドリ、ムラサキ、シロのパターンが美しいです。
これを高密度で飼育すると密度効果で黒くなります

左が10g、右が5gで3日ほど生まれ時期がずれています。
つまり3日ほどで体重が倍に。鱗翅目の幼虫の体重増加は眼を見張るものがあります。
今回は10gの一番大きなものを選びました。
内容物の割合がおおすぎるため、腸内のものをとりのぞいてからいただく。終齢のためか外皮にかたさと弾力があり、噛み切りにくい。匂いも葉の香りがつよく、脂質のコクが薄い。エビガラスズメの各段階では今ひとつの味。というか他の段階が美味しすぎる。
エビガラスズメ前蛹

立派に10g以上に育った終齢幼虫は、時期が来ると腸内の内容物をすべて出し、
一気に縮みます。蛹になる準備をするのです、
このサナギの殻をまとう前に、脱皮せずぎゅっと縮み
サナギになるための薄暗い土へ入る段階が前蛹です。
完全変態昆虫の前蛹は腸内のものが全く無いので食べやすく、
ハチ類を始め大変評価が高いので期待がふくらみます。
ちょっとだけ外皮が固いが、舌に残らずサクサクイケるので十分に美味い。葉物野菜の香りと豆腐の味、脂質のコクと強いうまみが調和し、見事な食材となっている。食草のためか、かすかにサツマイモの香りもありたのしめる。
エビガラスズメ、私見ですが、他の昆虫同様前蛹が美味しいです。
幼虫は大きすぎたので4齢あたりがいいかもしれません。また比較します。

タランチュラが美味しいことは以前ご紹介しましたが、
国産のクモ、ナガコガネグモ、ジグモが美味しいこともわかりました。
今回は大型のクモ、オニグモ。Araneus ventricosus

貫禄充分の大きさ。見るからにカニのようです。
いつものように茹でて実食
脚部;固くてたべられない。
胸部;予想した繊維質ではなく、柔らかいホロホロと崩れる甘い筋肉でできていた。トンボの胸肉に類似。
腹部;苦味があり、あまり美味しくない。動物質のうまみが感じられるが、オススメしない。
肉食昆虫でも、苦い部類(カマキリ、スズメバチ幼虫)と、
苦くない部類(コガネグモ、トンボ)がある。
消化や内容物、分泌物に違いがあるのだろうか。
肉食と消化の関係もおもしろそうです。

サクラの香りがして美味しく、昆虫試食会でも大変好評なサクラケムシことモンクロシャチホコ幼虫
先日ワンダリング(幼虫が食草を食べ終え、サナギになる場所を探してうろつく行動)をしているサクラケムシを発見、しばらく置いておいた所、蛹になっていました。

真っ黒でつややかなサナギ。うっすら成虫の顔が透けています。
実は以前にこれを頂いたことがあり、サクラの香りはのこるものの
若干の土臭さが気になっていました。今回は土に入れずにサナギにしたので、
その心配も無用です。
香ばしさとかすかなほろ苦さ、クリーム感がありおいしい。サクラのクマリンの香りも健在。土臭さもなく美味しくいただける。外皮が少し固いので前蛹のほうが使い勝手が良いかと。
続いて、
サクラケムシの体液を吸っていた
ヨコヅナサシガメ幼虫。Agriosphodrus dohrni

カメムシ目は結構食べましたが、サシガメは初です。
サクラの香りのするサクラケムシを食べていたこともあり期待大。
…? 何の味も香りもしない…
小さいせいか、かすかに甘いアミノ酸系の体液がでて、
サクサクと外皮が食べられて、これだけです
他の小型のカメムシと同様、香りがなければただのカメムシはなんだか味気ない食感でした。
美味しいサクラケムシの変態、および捕食者の味見の結果、変態による味わいの変化が香りを損なわずに起こっていることから、
捕食者へ香りが移る可能性よりも、生育段階ごとの調理法を模索していくのが良いでしょう。

夏も終わりに差し掛かり、
アブラゼミ、ミンミンゼミの声も聞こえなくなってきました。
最後に鳴くのはそう。ツクツクボウシです Meimuna opalifera

桜の木にいるところを捕獲。
いつものように茹でていただきました。
小型のセミだがニイニイゼミに比べ固く、口に繊維質が残ってしまう。香ばしさとうまみがあるので他のセミ成虫と同様揚げることでおいしくいただけるはず。
夏の終わりにツクツクボウシを揚げて食べ、今年のセミの味を反芻するもよし、
今年も手が出なかったヒトは、来年の決意を新たにしてみてはいかがでしょうか。
セミ2012年 ごちそうさまでした。