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モンクロシャチホコ幼虫 Phalera flavescens

ケムシですね、毛虫です。
黒い体。裏側は毒々しい赤、毛がモサモサ。毒はありません
とても食欲をそそらない残念な見た目です。それが
日本人が大好きなサクラに大量発生し、丸坊主にする様は地獄絵図
ですが、この味を知ってしまったら、
もう鈴なりのさくらんぼをみるかのように
彼らへの認識が変わってしまうでしょう
サクラの葉を食べることでその香り成分、クマリンを取り込み、
彼らは桜餅のような香りがします。

サクラの香り、肉質の旨み、外皮の弾力、どれをとっても最高です。
特に虫特有の脂質のにおいがしないので、初心者にオススメです。
毛もやわらかく、味の絡みにくい外皮の代わりに毛にポン酢が絡み、
美味しく頂けます。
季節物なのでこの時期に大量にとっておき、冷凍して一年間利用します。
近場で見つけた方は是非お試しください。

シンジュサンが繭になってしまった後、
シンジュの木を観察していると
葉を食べているシャクガの幼虫を見つけました。

飼っていると前蛹になったので
消化管内容物がない状態で食べ比べて見ることに。
テーマは「虫の味は氏か育ちか」
同じ食草を食べた幼虫の味は似ているのか、違うのか
比較してみます。
シンジュサン前蛹
柔らかいトゲトゲも繭におさめるため綺麗に折りたたんで
ぎゅっとした感じになっております。

終齢幼虫より外皮の弾力が増しシャキシャキする。内部は極めて甘い。小松菜系の香りも健在。
シャクガの一種 前蛹
前後に長かった体が縮みコンパクトに。

外皮がやや固いがシンジュサンとよく似た香りとうまみ。美味しい。
サクサクとした歯切れの良さは前蛹に共通する食感で心地良い。
「育ち」が味に与える影響の大きさを感じる。
シンジュの香りは朴葉にちかい印象。肉質のうまみを感じさせる香りで
食欲がそそられる。
今回は鱗翅目同士なので、「氏」の近さもあり、更に食草が同じということで、
食感、味、香りともによく似た印象。大変美味しかった。
目が違っていても共通するものがあるのだろうか。
比較してみたい。。

アオイトトンボ Lestes sponsa

小型のトンボで、美しい青色をしています。
目もつぶらでかわいい。
茹でていただきました。
肉食のはずなのに、笹のような青いさわやかな香り。不思議
アミノ酸系のうまみがあり、ちいさいながら楽しめる。
やはりトンボ類は茹でて食べ比べるのがオススメ。
揚げてしまうと特有の香ばしい香りがわからなくなってしまう。

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冷凍ですが、昨年もののコガタスズメバチをいただきました。
巣には当然ですが、いくつかの成長段階があり、それぞれ
おいしさが異なります。
今回は冷凍なので、あまり画像がよろしくありませんが
いずれ差し替えたいと思います。
コガタスズメバチ Vespa analis Fabriciusi
幼虫

体の正中線に黒い未消化物が見えます。
コガタスズメ、キイロスズメバチですと
このまま頂けますが、オオスズメバチだとあまりにこの消化管内容物が大きいので、幼虫をいただく場合はこの部分を取り除いて頂きます。
今回は小さいのでそのままいただきました。
肉食のためか消化管内容物のため若干生臭く、
かにみそのうまみ。甘味のあるクリーム状の脂質。
続いて前蛹

これはサナギになる前に一度脱皮し、消化管の内容物を排出します。
うっすら頭の後ろにサナギの顔になる部分が透けて見えます。
生だと柔らかいのですが、茹でると凝固してプリプリになります。
一番人気のある段階です。
サナギ1

形はもうスズメバチですが、目がうっすらと色づいたあたり、私の大好物です。
外皮が薄く形成され、噛みごたえと構造ができはじめたタンパク質の舌触りが絶品。味も脂質がすくなくなりあっさりと食べられる。香りもおとなしくいろいろな料理に楽しめる。
サナギ2
もう成虫と同じぐらいです。

外皮が硬くなり始め茹ででは舌に残ってしまう。色素が合成され、
そのためか頭部中心にほろ苦さが加わり大人の味。体液の香ばしさも増す。
スズメバチは大型で食べごたえのある昆虫ですが、
日本では養殖されていないため、
殺虫剤を使わない駆除業者の方から分けていただくことが多くあります。
私も自分で取れるようになりたいものです。

今日トノサマバッタを探しに圃場に出ていたら
こんな虫が。

ツルマメというマメ科の植物をモシャモシャ食っておりました。
近づいても動じない、図々しさ、赤ら顔。
そして大阪のヤクザのような悪趣味なストライプ
確信しました。「こいつには毒がある」
恥ずかしながらこの幼虫しか画像で知らなかったため。
研究室で画像検索して同定しました。
マメハンミョウ Epicauta gorhami
昆虫食を始めた時から、噂はかねがね伺っておりましが
出会ったのは初めてです。
掴むとてんとう虫のように節足のすきまから黄色い汁がでてきます

この汁や体液には猛毒のカンタリジンが含まれています。

以下引用「昆虫食文化大全」三橋淳 著
多くのツチハンミョウ類は乾燥重量の0.6%から5.0%のカンタリジンを含んでいる。水泡は触れてから2〜12時間以内、粘膜では十数分で発生する。飲食すると、急速に吸収され、激烈な症状を引き起こす。
まず吐き気がし、血液を含む嘔吐、強烈な腹痛、血液や粘液を含む下痢、血尿、女性は子宮内出血、流産も起きる。死に至ることもある。
致死量は大人で0.01〜0.08gである。
引用終わり
乾燥体重を0.3gほどとすると、一匹で最悪死ねるということです。
恐ろしいですね。
その他にもツチハンミョウ類、ジョウカイボン類、カミキリモドキ類にもカンタリジンが含まれるとのこと。
カミキリムシは美味しいのでカミキリモドキには注意が必要ですね。
昆虫は毒のある種類は日本では比較的少ないですが、
マメハンミョウにはくれぐれも気を付けたいものです。
さて、このマメハンミョウ。
不思議な生態をもっています。
幼虫時代は土中に埋まっているバッタ類の卵塊を食べる肉食ですが、
成虫は写真のようにマメ科の植物を大量に食べるのです。
我々バッタを扱うものとしては天敵といえる害虫ですが、
農業的にはバッタの方が害虫なので、
マメハンミョウは幼虫だけ益虫、成虫は害虫となんとも変な感じになっています。
手についた体液は洗えば大丈夫とのことです。
このように
味見できない昆虫もいますので、観察も兼ねて、
同定してからの昆虫食をオススメします。

コバネイナゴ Oxya yezoensis

ハネの長さが腹部を超えないからコバネイナゴ。
超えるものはハネナガイナゴ
といわれていますが、
長翅型のコバネイナゴというのもあるそうで、
近縁の翅が長いイナゴ、ハネナガイナゴとの区別、
同定まではいたっていません。
おそらくコバネイナゴでしょう。
もう昆虫食では説明不要のイナゴ。
現在では郷土料理として長野、東北地方で多く食べられ、
かつては全国的におやつとして親しまれてきました。
イナゴの流通業者は山形、新潟に多く、
生きたまま茹でられたイナゴは赤く色づき、
冷凍され、各地の佃煮屋や各家庭に販売されます。
そこで独自の佃煮味をつけられ、消費されるのです。
傷みやすいイナゴのために
調理法は佃煮が主流ですが、
冷凍技術が進歩した現在は
佃煮以外にも揚げ、焼き、燻製、などなど。
現代人の味覚に合わせた調理法が
いくらでもあります。
さて
いつものように茹でてポン酢
甘い味と香ばしい香り。腹部のプチッとした歯ごたえが大変美味しい。しかし、体重が軽いため外皮の占める割合が大きい。枯葉のような風味の外皮が下に残ってしまい、ショウリョウバッタ<コバネイナゴ<トノサマバッタ といった味。
コバネイナゴは
ハネが短いので跳躍しかできないのも
収穫に便利なところでしょう。日本の国民食ともいえる昆虫ですね。
個人的にはトノサマバッタの方が美味しいと思うのですが、
彼らは跳躍、飛翔するので捕獲が大変です。

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肉食性の魚類、爬虫類の生き餌としてお馴染み
「ジャイアントミールワーム」
爬虫類が美味しそうに食べているのを見ると、その味が気になります。
和名 ツヤケシオオゴミムシダマシ Zophobas atratus Fabricius?
いくつかシノニムがあるようなのですが同定していません。

一匹数十円で手軽に買えるので、昆虫料理の入門としても大変メジャーな昆虫です。
焼き、揚げ料理としてよく使われるのですが、
あえて今回は茹で調理で頂きました。
ピーナッツクリームのような脂質の多い味。身の量が多く、香ばしさもあり食べやすいが、非加熱大豆のような若干の青臭さが残る。ローストや揚げの方が相性がいい。特別特徴的な味もないので、入門としてはいいが、おいしさの点ではさほど魅力的ではない。
表皮がつるつるしているので、味の絡みが悪いのが難点。
内部に注入するなど、調理法にも改善の余地あり。
ミールワームは生き餌として、油脂が多く、
タンパク質が少ないのであげすぎるとカロリー過多になるようです。
一方でバッタやコオロギはかなりタンパク質が多いので、
昆虫も脂質とタンパクの量比によって大別すると、
適した調理法にも傾向が見られるかもしれません。
以下なんとなく分類。
キチン、筋繊維系=セミ、バッタ=燻製
可溶性タンパク系=鱗翅目サナギ、膜翅目サナギ=茹で、わさび醤油
油脂・タンパク混合クリーム系=鱗翅目幼虫、膜翅目幼虫=フライ、唐揚げ
油脂系=鞘翅目幼虫=素揚げ、天ぷら
高強度キチン系=鞘翅目、膜翅目サナギ=素揚げ、フリーズドライ
その他用途=カメムシ(香り)、タイワンタガメ(香り)卵(食感)等
↑こんな感じの一覧表を完成させたいですね。
定番のジャイミル。年中新鮮なものが手に入りますので
試してみてはいかがでしょうか。
水分が少なく油が多いので揚げても爆発することもなく、
手軽なスナック感覚で楽しめる優等生です。

甲虫はけっこう美味しいものが多く、
クワガタやカミキリムシの幼虫は
木の香りがしてクリーミーです。
ですが、
カブトムシ幼虫は不味いことで有名です。
以前に幼虫を茹でて食べたのですが、
あのプリプリした体の内部には
ぎっしり食べた腐葉土が詰まっています。
腸内の腐葉土を取り除き、わずかな白い身
を取り出して食べた所、
腐葉土臭があまりにつよく、
とてもそれ以上食べられませんでした。
この腐葉土臭ですが、
土中の放線菌が死滅する時に多く放出する成分、
ジオスミン(trans-1,10-dimethyl-trans-9- decalol)=雨降った地面の匂い
や、ラン藻が放出する成分
2-メチルイソボルネオール(2- Methylisoborneol)=カビ臭
だと言われています。
これらの物質は毒性が報告されておりませんが、
ヒトのにおい感受性が非常に高く、
数ng/Lで臭気を感じるといわれています。
カブトムシは土中の雑菌の中で生活するため、
生木の中で生活するカミキリムシに比べ、感染症のリスクが高く、
ディフェンシンなどの抗菌物質で身を守っています。
そのため、
抗菌物質に死滅させられた細菌の
「断末魔の匂い」が身に染み付いていると考えられます。
さて、その「匂い」は
成虫になった後、どうなったのでしょうか。
カブトムシ成虫 T. dichotomus

街灯に飛んできたものを
2週間以上昆虫ゼリーで飼育しています。
かっこいい。
ジオスミンは酸性条件で分解するそうなので、
ポン酢で頂きます。
胸部;カエルの筋肉のような水っぽい白身。
タンパクな味。土臭さがまだ残っており、あまり美味しいとはいえない
腹部;クチクラの香ばしさが加わり若干食べやすい。
土臭さ、かび臭さも少ない印象。脂質の旨みとコクがありうまみも感じられる
カブトムシを食べる地域では、
腹部をパクっといただくそうですが、
比較的腹部の方が香ばしさで土臭さがカバーされ、食べやすかったです。
納得の食べ方。
とはいえ、
カブトムシは成虫もあまり美味しいとはいえない味でした。
匂いが気になるだけで、苦味は全く無いので、
他の昆虫同様、揚げてしまえば
美味しくいただけるでしょう。
夏の終わりのカブトムシ成虫。
食べるよりも標本がオススメです。