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「カイコは美味しくない」
残念ながら
多くのカイコ研究者にも共通する認識です
独特の味はオトナ向けの風味としては良いのですが
サイエンスアゴラでも子供にはあまりウケない味のようでした。
今まで240種食べてきましたがトップ5に入る悪い味でした。
ただ、これが
「カイコガ科独特の味」なのか、
「クワを食べたことによる悪い味」なのか、判断がつきかねます。
そこで、
「カイコガ科でありながらクワを食べないもの」がいないか、
カイコ研究者にお伺いしていました。
そんな中頂いたのが
イチジクカサン Trilocha varians という耳慣れないカイコ。

台湾ではイチジクやガジュマルの大害虫だそうで、南方の種。
今回は石垣島の系統を分けていただきました。
これにより
カイコの味の悪さは、氏(遺伝)か育ち(食草)かがわかります。

こちらは蛹
味見
幼虫
プツプツと消化管内容物の食感があるが、嫌な味は全くなく、イモ系の穏やかな風味。おいしい

ヤママユガ科と共通する栗に似たまろやかな香り。味もよくエグミは全くない。
朗報です。
クワが原因ということがほぼ確定しましたので、
次は、
美味しいカイコの生産を目指しましょう。
普通は、カイコはクワの成分を含んでいないと
どんなにお腹が空いても食べず、餓死してしまいます。
幸いなことに
カイコは多くの自然突然変異体があり、
その遺伝子も特定されているので
「広食性カイコ」という系統が見つかっています。
これにより、
カイコの栄養に適した、そして美味しい葉を食べさせると
美味しいカイコができるはずです。
なお
養蚕が盛んだった頃のカイコは、
錦鯉などのエサとして使われましたが
「肉がカイコ臭くなる」とのことで、
食用魚には使われてこなかった経緯があります。
そのため、この「美味しいカイコ」の生産は
飼料としても将来性があるのではないでしょうか。
ということで
現在問い合わせ中。続報があり次第またお知らせします。

3

今回は前編(2008~2011)を受けての後編です。
2012年から、私はトノサマバッタの研究に入り、
彼らはただ飼育しているだけになっていました。
研究室での滞在時間も長くなり
彼らに果物の皮や野菜くずをやっているうちに
「そうだ。データをとってみよう」
と思いました。
何事も机上の空論ではなく、
かならずデータを取ってみることが重要です。
わりとバッタの飼育に時間が取られるため、
複雑で手間のかかかる実験はできませんが、
与えるエサをそのまま品名・重量を記録し
その収支を測定できれば、と思いました。
その前に、飼育装置の改良が必要です。
1,食べられる床材を使わない
今までは紙製の卵パックを使っていたのですが
おなかがすくとすぐに齧ってしまうので、プラダン、と呼ばれる
プラスチック製のダンボールを使いました。
これは1畳で数百円の安さのため、荷物搬入時の養生(傷つきを防ぐプロテクター)
によく使われています。
ホームセンターに売っている好きな素材の一つです。
2,湿度対策
湿度が上がり過ぎないよう、
水はタッパに入れ、フタに切れ込みを入れ
そこにロープを垂らしてロープを常に湿らせることでムダな蒸発を防ぎました
そして乾燥しすぎる原因となったUSBファンは
ケージ自体を大きくすることでその影響を局所的にし
彼らの移動を基本的に自由にし、階層構造は廃止しました。
3,フンの分別収集
フンの収集は今までどおり、子供が通れず、大人のフンが通れる大きさの穴を開け
下にトレイを敷くことで
乾燥したフンが続々と貯まる構造になり、フンの測定も容易になりました。
4,スダレ
状態が悪くなったり、しばらく生ごみがでないと
空腹になった成虫が幼虫を食べてしまうことがあります。
そこでスダレを丸めて設置することで、
幼虫だけがそのスキマを自由に出入りできるようにし、空腹時の共食いを防ぎました。
これがその
「G.pマッシーン三号」です。

今回は虫フェスということで、
題名を考えました。
私が
そろそろアラサーであること、

そして部屋に置くべき虫は何か、考えた結果

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが
これは今年ネットを賑わせたpanasonicのダサい広告
「アラサーエアコン」をパロディにしたものです。
それでは
このアラサー部屋昆の実力をお目にかけましょう
1,二週間おまかせ!

彼らは二週間ぐらい放置していても余裕で生き延びます。
忙しく、出張も多いアラサー世代に最適な昆虫ですね。
2,生ごみを分解消臭!
50gの柿の皮をおよそ一時間で完全に分解消臭します。
美味しそうに食べてくれますね

3,おいしい!

彼らの獣系のムレ臭には、母方故郷、飛騨高山の伝統料理、
「朴葉味噌」が合うと思い、物産展で買ってきました。
彼らを横開きにし、胸側の肉をこそげ落として背側の肉と合わせ、
マーガリンとチーズをトッピングしてから
250℃オーブンで軽く焼いた後、朴葉味噌とその他の野菜と一緒にホイル焼きにしました。

想像通り、朴葉の香りと相まって、とても肉っぽい香りが食欲をそそる
美味しい料理に仕上がりました。
4,スマホ連携
アラサーエアコンでは、取ってつけたようなスマホ連携がその魅力の一つでした。
なので、この装置にもスマホを連携させてみましょうか。

Gの一種ということで、
彼らを見ると恐怖を覚え、「殺したい 殺さなければならない」
という強迫観念にさいなまれる方もいるかと思います。
そんな方の恐怖を和らげるアプリがあるのです。
アンドロイドでは
「Roach killer」

iOSでは
「iRoach」等のG駆除ゲームです。

大抵日本のGよりもG.pの方が高得点に設定されています。
普通は二度タップすることで退治できるとのことです。
やってみましょう。


余談ですが、アプリを調べているうちに、こんなものを見つけました。

「Yummy Bugs」とは「うめえ虫!」ということです。
ゲテモノ系ゲームとはいえ、我々より先にアプリにされたのは
くやしいですね。ほんとうに美味しい昆虫を、安全で美味しく食べる方法を
ポケモンずかんのように教えてくれるアプリを作ってみたいものです。


それでは、この「マッシーン3号」の性能を
実測していきましょう。
開始時点で500gありました。
こんなかんじで与えていきます。
6月4日バナナ皮60
6月5日ナス70
6月5日キウイ10
6月6日フスマ50
6月6日バナナ34
6月6日ごはん38
6月6日ネギ22
6月6日きゅうり42
6月6日手羽元38
6月8日キウイ19
6月8日手羽元14
6月12日キウイ19
6月13日ナス112
6月15日ホットケーキ19
6月15日チンゲンサイ64
6月16日スイカ85
このような感じで 4ヶ月間、測定しました。
その結果がこちら。

4kgの生ごみを食べた500gのG.pは、840gになり、306gのフンと242gの食べ残しを排出しました。

この一点しか取っていないのですが
データを取ることで見えてくるものがありました。
他の生ごみ処理機にはない特徴 それは
「増える」ことです
4ヶ月で840g、1.6倍に増えたのです。
ここで調理をぐっと我慢すると、
自然と処理能力がアップさせることができます。
データを取るということは、
未来を類推する、ということです。
この先どうなるか、やってみましょう。
それでは、
アラフォー家昆
平均的な一世帯あたりの生ごみ
処理できるだけの数を考えてみましょう
このままの増加速度だと、あと28ヶ月我慢すると、彼らの処理能力は
平均的な一世帯あたりの生ごみ排出量に達します。

ちょっと多い感じですかね。
しかし
下水道が無い地域の合同浄化槽の大きさ考えると
無理ではない規模であることが分かるかと思います。
さて、
指数関数的に増えることを考えると
地球規模ではどうなるか、気になるところです。
「アラ2030 テラ昆!」

つまり、
世界の人々が
鶏卵をG.p代替するだけで、生ごみの出ない世の中になる、
かもしれないのです。
わりとイケると思っているのは私だけでしょうか。
どうでしょうか。
そんなことを
発表するために
今回はクロトワの正装で行いました。

ゲストの岡本リサさんは
デコゴキアーティストとして
「Gが嫌いなところが好き」という
不条理系アートを攻めている方。

「虫好きの女性」というだけでも大変なのに
そこから更に攻めています。
そして
虫ドルのカブトムシゆかりさん

カブトムシを一時300頭飼育していたという強者で
「大人のお友達のための虫のお姉さん」実演などもしてくれて
私のあこがれ(食欲的な意味で)であるヨロイモグラゴキブリを
飼育しているとのことで、愛で方から飼い方、種類など
まさに
Gトークで盛り上がりました。
場所も
Gが大量に生息していると思われる
新宿歌舞伎町
のロフトプラスワン。
日本の真ん中でGへの愛を叫ぶ
ステキな会となりました。
虫食い仲間
ムシモアゼルギリコさんが書いた
女子向けにも嬉しいポップな書籍
「むしくいノート」

私も協力しています。

そして
リンクファクトリー様より
「昆虫料理食品サンプルガチャガチャ!」

一個500円ですが、日本人(二人が三日間徹夜)が手作業で複製し、
彩色しこれらの制作を行ったことを考えると
尋常でない安さであることが分かるかと思います。
今回、私は
学術的(標本数とか有意差検定をしていないので学術未満ですが)」
に彼らの魅力を表現しましたが、
飼う、デコる、食べる、殖やす、絵を描く、フィギュアを作る
などなど、
愛で方、そしてその表現方法は多様だ、
ということが今回再認識されました。
知名度No.1のG達を含めた
昆虫の面白さが日本を、世界を席巻するような
最新カルチャーを発信していきたいと思います。

ご参加頂いた皆様 ご来場ありがとうございました!
そして関係者の皆様。お疲れ様でした。

4

以前の記事
「初めての自家養殖食用昆虫」
がマダガスカルゴキブリであることを紹介しました。
彼らとは長い付き合いになります。
今回は前編、2008から2011年までをご紹介します。
前々から
記事にしようと思っていたのですが、
この度
「東京虫食いフェスティバル番外編」にて
15分ネタのテーマとしたため、先延ばしにしていました。
ここに一挙に報告したいと思います。
遡ること2008年7月
就活に・実験にと漫然とこなしていた私は
多くの一般的な学生と同様に
人生に行き詰まりを感じていました。
そんな中、飼育していた実験用の
ショウジョウバエを飼育していた思ったのです。
「こいつら食えないか」
「こんなもの食う気になれない」
「なぜ私は昆虫を食べたいと思わないのか」
「食べてみたら分かるかも」
ですが
ショウジョウバエのエサには防腐剤が含まれているので
食用には適しません
そこで食用に適した昆虫を探しました。
検索サイトにて「昆虫 料理」と検索すると
ありました。
7月31日の購入履歴

同時に江頭2:50分のDVDを購入しているあたりに
当時の迷走っぷりが伺えます。
その後すぐ、
8月1日の「セミ会」に参加し、
内山昭一さんとお会いし、セミの味を堪能しました。
就活するたびに東京に行き
アリの子(アジアスーパーストア)
タガメ(アジアスーパーストア)
サクサン(上野)

スーツを片手に買って帰ったものです。
その時とばっちりを受けていたのは
宿泊させてもらっていた高校時代の同級生TW氏。
某国立の外国語系大学に所属していた彼は、
ゼミのボス主催のサークル活動として
はだしのゲン」をウルドゥー語に翻訳し、プロの演劇指導を受け
当時核開発を進めていたインド・パキスタンへ公演に行くという
かなりキレキレの活動にハマっており、
ハマりすぎた挙句、留年を繰り返していました。
(現在は会社員としてインドネシアあたりをウロウロする好青年です。)
私が修士でしたので、
頼れる東京の友人は彼ぐらいしか居なかったのです
何を思ったのか私は
彼と彼の妹(教育実習でクラス担当になったという経緯のある)の同居する
共通キッチンで、初めての昆虫料理を開始しました。
そしてあろうことか、
この兄妹を哀れな生贄の第一号に選んだのです。
(その節は大変お世話になりました。何か宿泊のお礼と思って暴走しておりましたことをここに懺悔いたします。)
そして、
それら稚拙な初期の昆虫料理をうまい/不味いといいつつ
受け入れてくれた兄妹によって
私の昆虫料理熱はすこしばかり種火がついてしまいました。
年が明けて2月、
就活は一層混迷を極め
人生の行き詰まりを大学院へ先延ばしにすることにした私は
東京に通うこともなくなり、冬になってしまったので
新たな、仙台で手に入る養殖昆虫を求めました。
次なる犠牲者(?)は
KキャンパスにあるM研究室。
ここでは昆虫の脳機能を電気的に測定する装置をもっており
感染症に強く、賢く、そしてよく増える昆虫の代表。
ワモンゴキブリを研究パートナーの一つにしていました。
脳機能を測定するわけですから、
脳は大きいほうが良いので
多くの論文で使われているワモンゴキブリの他に
大きく体重のあるマダガスカルオオゴキブリが飼育されていました。
残念ながら彼らの脳はワモンゴキブリよりも小さいことが分かり
単なるペットとして飼われていました。
そしてその情報を、
私は事前に仕入れていたのです。
「M先生、マダゴキ・食べさせてもらえませんか?」

意外なことに、「昆虫料理を楽しむ」が
研究室に既においてあり、H先輩が食いついてくれました。
H先輩は既にセミ幼虫を捕獲し「セミチリ」を自作して
食べたことがあるそうで、昆虫食に関しても私の先輩に当たることが分かりました。
さて
食べてみます

ほっこりとしたイモ系の香りと脂質のまったりとした味わい。
バターのような獣系の香りとムレ臭。
腹部は集合フェロモンと思われる「G臭」があり、
好みが分かれる所でした
後に腹部の消化管を取り除くことになるのですが
この当時はそのまま美味しく頂くことができました。
その後、
このコロニーから分譲された
飼育個体を徐々に増やし、次の会が開かれます。
2009年9月
同級生の怪魚ハンターが 人生を決める大物を釣り
「昆虫食べてみたい」とのリクエストを頂き
彼の帰国に合わせ希望者をつのり(半ば無理やりですが)
フルコースの会を開くことに
今から見るとまだまだですが、
当時としては精一杯の昆虫料理を出しました。
当時のブログでは私のことを
“常識的な狂人”であり“紳士的な危険人物”
と評されており、
彼の観察眼は魚を見つけるためだけでないことが
伺えます。
彼の言うように、「常識的な狂人」でありたいものです。
さて
この時つくったG料理は
スープカレー。
揚げた食材をスープ状のカレーをかけて食べる、という形は
煮込んで食材の個性が失われてしまう通常のカレーよりも
揚げとの相性の良い昆虫も気軽に参加させることが出来る
最適な料理であると確信しました。

時は流れ2011年
「食用昆虫科学研究会」の初期メンバーとなった私は
サイエンスアゴラ2011の出展企画として、
Gを使った生ごみ処理機の計画を発表。
この時は試食昆虫を多く準備しすぎ、
話を殆ど聞いてもらうこともなく
ただただ昆虫料理を給仕するだけになってしまいました。


この計画をご紹介しましょう。

「名前が悪い」という特徴から、
ここからは彼らを学名「G.portentosa」と称します

彼らは野菜くずは果物の果皮を好んで食べます。
そしてフンをします。彼らの体はおいしい昆虫料理となり、
またペットの餌となり、フンを肥料として利用することで
野菜を再生産する。つまり循環型生活が行えるのです。
発酵分解式のコンポストはニオイが強く、
乾燥式の生ごみ処理機は電気代もかかり
堆肥化もできません。
この時G.pのアゴと消化管を利用して処理することで
乾燥ペレット状の堆肥(のような物体)となるのです。
では
次に飼育環境を改良していきましょう。


ペットとして、生き餌として養殖する方は
基本的に水と配合飼料を使うそうです。
野菜くずは水が多く含んでおり、
湿度を高めてしまうので
コバエやダニの発生を促し、健康を害してしまうことが多くあるとのこと。
なので、湿度対策が特に必要です。
「煙突効果」という現象があります。
上下に穴の空いた円筒形のものがあるとき、温められ膨張した空気が
軽くなり、上がることで、動力なしに新鮮な空気が下から入ることです。
それを利用した円筒形の飼育容器を考えました。
野菜くずではやはり水気が気になったので、
エアポンプを使った強制換気装置を付けました。
そして「フルイ」を下に向かって小さくすることで、
子供と大人を分け、共食いを防ごうと考えました。
この時、最下層のトレーには、フンのみが入り、
その他の子供やGは(彼らは卵胎生なので一齢幼虫>フンであれば大丈夫です)
下に来ること無く、安全に回収できます。

残念ながら換気装置が貧弱で蒸れがちで、
倒れると脱走することも多く(笑)
すぐに第二号の開発にかかりました。


次はサイエンスアゴラ・虫フェス2011でも発表するので、
外見をちょっとかっこよくしています。
構造は似ていますが、材質をポリスチレン製の100円金魚鉢から、
ポリプロピレン製の四角いタッパに変えたことで、ひび割れを防ぎ、軽量化と
強度を両立させました。最上部には強制換気装置としてUSBファンを設置し
低湿度を保つよう気をつけました。

ところが、彼らは走地性があり、下に下に行ってしまいます。
そしてファンの出力がやや強く、常に乾燥状態になってしまいました。
改良は次年に持ち越しとなってしまいました。(後編に続きます)


次に、初期の味見で気になった「腹部のG臭」について
確認していきます。
まず、食用昆虫科学研究会の兄貴的存在、
Gの殺虫剤耐性の研究で学位をとった水野さんの協力のもと
解剖します。
そして、匂いの強い部位を特定するため、それぞれの器官を食べ比べたのです。
その結果がコチラ。

消化管を茹でてそれぞれの器官を食べ比べた結果、おそらく
中腸から後腸にかけての付属腺から集合フェロモンが分泌されていそうです。
胃は酸味がありましたが、そのようなニオイはしませんでした。
また、卵はバツグンに美味しいのです。
バターのような香りとコクがあり、誰でも美味しくいただけると思います。
この結果から、
当研究会では、G.pの成虫を食べる場合、腹部の消化管を除くのが通例となっています。


次に、調理法について考えて見ましょう。
彼らは体重があるため、内部がジューシーで、クニュっとした食感ががあります。
また、外皮は弾力があり固く、口に残ってしまうことが残念です。
そのためしっかり揚げることで、クリスピーな食感にし、
美味しく食べられていました。
ただ、昆虫のヘルシーさ、高タンパク低脂質を実現するには、
揚げ意外の料理法も挑戦したいところです。
そこで辿り着いたのが
フリーズドライでした。

フリーズドライは-30度以下に凍結したものを
低圧条件におき、水分が昇華したところを「コールドトラップ」と呼ばれる
霜取り装置で捕まえることで、極端な加熱をせずに水のみを取り除く手法です。
近年ではインスタント味噌汁の具の野菜などに使われています。
これにより、サクサクとした食感を、油を使わずに実現できます。
消化管を取り除いたボディをフリーズドライすると、
外皮がカリッとして弾力が減り、食べやすくなりました。
そして内側の脂肪体がふわっとパフ状になりウエハースのような食感が実現したのです。
また、フリーズドライは加熱しないことから、その香りを多く残す特徴があります。
別にしておいた消化管をフリーズドライすると、そのG臭、集合フェロモンのニオイが強く残っていたので
フリーズドライで食べる場合にも消化管を除去したほうが良さそうです。


まとめます。
1,G.pは野菜くずなどの植物性家庭ごみを再利用する生ごみ処理機として利用可能である。
2,処理機として利用する場合、湿度の管理が重要である
3,フンは肥料として使えそうだが未検証
4,フリーズドライは消化管を抜いて作るととても美味しい。
それでは後半2012〜2013をお楽しみに。

2

昨日23日は
「東京虫食いフェスティバル:番外編」

虫ドル、カブトムシゆかりちゃんや
デコゴキアーティスト・岡本リサさんなど
今までの虫フェスにはありえない女子っぽさを
楽しんできました。
写真をいただけたら、まとめと今回の15分ネタ
「アラサー部屋昆」をここでも記事にしようと思います。

(絵は、イラストレーター栗生ゑゐこさんに書いて頂きました。)
さて、
虫フェス前日に見つけました。
セイタカアワダチソウについていた ハムシ
ヨモギハムシ Chrysolina aurichalcea
オス

こっちはメス

交尾中のところを捕まえてきました。
セイタカアワダチソウは今年の河川敷を覆い
大変なことになっています。
それらを食べてくれるのだったら・・駆逐してくれたらいいなぁ
ともあれ味見です。
ヨモギハムシ・オス
キク科の強い味はなく、ほのかに春菊の香りがあるのみ。プチッしゃりっとした食感がほどよく外皮は固くない。
メス
強いヨモギの香りがあり、苦味もある。ここまで大きく違うとは驚き。腹部が卵でふくれているため脂質のコクが強く、オスより特徴が強い。外皮は割と柔らかいので、もっとおいしい葉を食べさせるともっとよくなるかと。ヨモギを食べさせてみたい。
ここまで雌雄で味が違うのも珍しいですね。
モチや団子に入れればヨモギハムシモチ ヨモギハムシダンゴになりそうです。
蓬葉むし団子。
蓬葉むし餅
とても風情のある名前ですね。これは売れそうです。

1

気づいたら外は冬。
バッタもめっきり減ってしまいました。
今回は養殖昆虫。
カブラハバチ Athalia rosae です。

ハチといえば社会性のミツバチやスズメバチを想像しますが、
ハバチはその名の通り葉を食べるハチの一種。単独で暮らします。
そして刺す針を持ちません。
日本産のハバチは720種記載され、
未記載種を含めると1000種を超えると言われる大きなグループです。
バッタ目が370種ですから、
植食性の昆虫の中でも開拓しがいのある、
そして分類が難しいグループです。
今回は
養殖された研究用のものを分けていただきました。

ハバチは様々な食草に対応し、それら植物の防御物質に巧みに対応しています。
カブラハバチは多くの生物にとって毒であるアブラナ科の
毒を巧みに利用しています。
この利用法はなかなかトリッキーです。
直接的な毒成分は、イソチオシアネート

という化合物で、
これは植物にとっても毒なので、
通常は糖と結合した数種の前駆体(総称してグルコシノレート)が液胞に隔離されています。
これが細胞ごと昆虫などに破壊されると、細胞内にある酵素ミロシナーゼが
反応し、イソチオシアネートを生成するのです。
イソチオシアネートは
ヒトが食べても問題なく、むしろカラシとして好む味なので、
ヒトは多くのアブラナ科の植物を野菜として品種改良しました。
大根おろしをすりおろしてからちょっと置くと辛くなるのは、
この酵素反応に寄るものです。
そのため、殺虫剤が開発される前は、
アブラナ科の作物は自前の毒成分で
葉の食害を防いでいたのです。
この
カブラハバチはアブラナ科に適応した天敵で
その適応方法はなんと、血液(体液)中に
グルコシノレートを輸送してしまうのです。
すりつぶした植物に含まれるミロシナーゼが、
毒素イソチオシアネートを生成する前に、
消化管から体液中に移動させてしまうことで、
毒の生成を抑え、植物の栄養成分を悠々と消化することができるのです。
今回読んだ論文はコチラ
別の昆虫、コナガの仲間は
ヒトと同じように分解しているそうなので、
昆虫によって植物毒の回避方法は様々です。
このカブラハバチにとっては
毒の基質を積極的に取り込むことによって
捕食者への毒として機能させることが出来るので
一石二鳥で素晴らしいですね。
蛇足ですが、
このカブラハバチのカラシ油輸送を止める遺伝子操作をすると
彼らは何の影響もなく元気に生きているそうです。
なので、毒に耐える、しかもそれを利用する、
という二段構えといえそうです。
ということで、
アブラナ科の植物毒を好んで食べるヒトと
それを体液に溜め込む
カブラハバチとの出会いは必然といえるでしょう。
味としては
体液に濃縮されたカラシ成分が期待されます。
味見
期待したほどのカラシ味はなく、茹でた大根菜を白和えにしたような、柔らかくタンパクな味。
プチッとした食感と柔らかさが好ましいので、ちりめんじゃこなどと和えて食べると美味しそう。
おっと
勘違いをしていました。
辛味成分、イソチオシアネートは生成していないので
グルコシノレートの味が味わえるはずです。
なので、
「ゆでた大根菜」は酵素を熱で失活させる調理なので
まさにグルコシノレートを舌で検出したといえるでしょう。
セイヨウカラシナというもっと辛味成分の強い食草も食べるので、
薬味として使うのならば辛味を追加したい所です。
また、体液と酵素を反応させる、という意味で
すりつぶして消化管と体液を触れさせ、
しばらくおいておくと辛味が増えるのかもしれません。
そして
このグルコシノレート
癌のリスクを下げる、アレルギーのリスクを下げる効果があるようです。
健康食品のマカ(アブラナ科)も
グルコシノレートの効果を期待したもの。

食べてみましたが。
まさにカブラハバチの味
濃縮されたグルコシノレートが
含まれている気がします。
ということで、
酵素反応していない、
「生きた(意味深)グルコシノレート」
を食べるには、カブラハバチが一番、といえるでしょう。
そう考えると
サクラを食べる幼虫を今までにいくつか食べましたが
サクラケムシ
に比べ
モモスズメカレハガの方が
香りが少なく感じました。
サクラに含まれる桜の香り成分、
クマリンも毒ですので
前者は積極的に体液に輸送して利用し
後者は影響のないよう分解していたと考えることができます。
毒植物×単食性昆虫の組み合わせは、
ヒトの植物利用を更に発展させるものといえるでしょう。
今回の記事は
農業生物資源研究所
主任研究員  畠山 正統 博士の
ご協力を頂きました。
御礼申し上げます。
また、カブラハバチは
さらにステキな性決定様式や
単為発生の条件とか・三倍体とか
遺伝学的にヒャッホイな性質があるので、
また続報ができ次第紹介させて頂きます。
やはり基礎的な研究の進んでいる昆虫は
「話が早い」というか。
深みがありますね。
すべての昆虫基礎研究者に
協力をいただけるよう、精進したいと思います。

2

コメント欄にリクエストを頂きましたので
「昆虫を食べるリスクについて」
ここにまとめておきたいと思います。
元ネタとして、我々食用昆虫科学研究会のHP
4回にわたって紹介しています。
より細かいことを知りたい方は、コチラをどうぞ。


私達哺乳類は、その名の通り
生後しばらくの間、食料を母乳に頼っています。
おっぱいへの吸い付きは本能行動ですので、
誰に教えられたわけでもありません。
母乳は完全栄養食ですので、これさえあれば
乳児はすくすくと育ちます。
ところが、
ずっと母乳というわけにはいきません。
母乳の原料は母親が食べた他の生物ですので、
少なくとも性成熟までに(実際はもっと早いですが)
他の生き物を食べないと子孫が存続できないのです。
そのため、
食べ始める時期、つまり離乳期には
新しいものを好む性質=neophilia(ネオフィリア)が増大します。
どんなものも口に入れ、食べようとするのです。
この時、親から与えられた
「本能にはない新しい食の情報」がインプットされます。
そして、
ある程度育ってしまうと、
生育にはそれまでにインプットした情報からなる「食品ホワイトリスト」
だけで十分ですので新たな食品を開拓する必要はなくなります。
逆に、
生育後に新たな食品を試すことはムダなリスクとなりますので
成長に従い新しい食品を忌避する性質=neophobia(ネオフォビア)が増大します。
アメリカの研究では、新しい文化を受容できる年齢、
ネオフィリアが強い年齢は7歳ぐらいと言われているそうです。
そこから考えると
食育は小さい時に行うほど効果があるでしょうし
大学生に食育をしても、まったく食生活が改善されないことも分かります。
同様に
離乳期、いわゆるneophilia期を過ぎた
あなたが
昆虫を食べようと思わないのはリスク管理上、
まったく妥当なことなのです
逆に言うと、
昆虫を食べる人たちが「我々よりもゲテモノが得意だ」というわけでないのです。
あなたと同様に離乳期に大人から昆虫を与えられた結果、昆虫を好む文化を継承したといえるでしょう。
「野蛮で貧困なヒトが仕方なくタンパク源として食べた」というのは全くの偏見です。
最近、
様々な生物を食品とする中国から
「最も危険な食品」に卵かけご飯が選ばれる、というニュースがありました
(サルモネラ菌のリスクがあるので卵の生食をするのは日本ぐらいです。)
このことからも我々が
「必ずしも理性的な(低リスクな)食選択を行っていない」
ことが理解できるでしょうか。


話はそれますが
サルモネラ菌のリスクを減らすために
次亜塩素酸による殺菌洗浄、ワクチンの投与など、
本来サルモネラ菌保菌者であるニワトリの健康には関係ない
コストがかかっています。文化といえばそれまでなのですが
我々日本人も、殺して食べる肉食が野蛮と感じるのと同じように
食に対して貪欲で野蛮だ、という事実は知っておきたいものです。


では
あなたが「新たに」昆虫を食べる
ことへのリスクを考えてみましょう。
これは他の食品を新たに食べた時にも言えたことで、
実は幼少期のうちにこれらのリスクを克服してきたのです。
1,知識不足による事故や食中毒
昆虫には毒のあるものや危険なものがあります。
以前にまとめました。
2,管理不足による事故や食中毒
昆虫は(私見ですが)エビ・カニと同様に傷むのが早い食品です。
当ブログでは
必ず加熱殺菌をおすすめしているので
ヒト−昆虫共通感染症や共通寄生虫症は加熱殺菌ずみとして除外します
すると、
本来安全に食用になる昆虫でも管理の不徹底により
微生物の繁殖による毒素の生成や
自家融解(昆虫自身に含まれる酵素が、死後働くことで新たな物質が生成すること)
による食中毒に注意したいものです。
有名な例としてヒスタミン中毒があげられます。
ヒスタミンは低分子の物質で、
下に述べます「免疫反応」の情報伝達を行うために
健康な細胞で通常利用されています。
ところが、
微生物の繁殖や自家融解によりヒスタミンが増え、
また、
本人の健康状態によりヒスタミンへの感受性が増加した際に
ヒスタミンを含むものを食べることで
アレルギーのような食中毒状態になります。
なお、
ヒスタミンは熱に強い物質のため、加熱前の管理が重要になります。
原則として生きたものを調理し、すぐに頂くこと。
そして死んだ場合は必ず冷凍か冷蔵し、
食べるまで一貫して管理することが求められます。
3,アレルギー
個人レベルで異なる反応を起こすため
対応が厄介なのがアレルギーです。
そのため、
上記の一律な管理方法とは異なり、
個人での対応が求められます。
アレルギーのリスクはどの食品にもあります。
幼少期にアレルギーを発症せずくぐり抜けた方は
その
「食品ホワイトリスト」をそのまま使うことがリスク管理に重要です。
つまり「食べたことのある食品しか食べない」のです。
※様々な食品へまんべんなく触れることは
アレルギーの発症リスクを抑える効果があるので
一概に小品目の食べ物だけ食べていればいいわけではありません
また、
幼少期にアレルギー源となる「食品ブラックリスト」が発見できた方も
比較的幸せだといえるでしょう。
アレルギーの概念のない時代には、重篤なアレルギーによる
「謎の突然死」や「謎の虚弱体質」で悩まされた人も多かったことでしょう。
それらの人が、アレルギーを持たない人と同様の生活を営めるというのは
日本は恵まれた国といえます。
アレルギーは、
本来は外部からの病原体の侵入を防ぐ免疫応答のシステムが
過敏になることで起ります。
免疫にはその応答の仕組みと物質の違いで
沢山の種類が分けられますが
ここでは端折ってザックリと
免疫応答(ブラックリスト)

免疫寛容(ホワイトリスト)
で考えることができます。
免疫を司る重要なタンパク質「抗体」は
理論上全ての物質の立体構造に応じてオーダーメイドされ
ブラックリスト式に登録していきます。(免疫記憶)
そして、「すべての物質」のうち「自らに含まれる物質」
に対して応答する抗体は決して出荷してはいけません。
この仕組が暴走を起こしたのが「自己免疫疾患」という
という難病です。
次に
「自分のものではないけどなんでもない物質」
をスルーするスキルが必要です。これを「免疫寛容」
といいます。いわゆるホワイトリストです。
食物は一旦体に取り込み、消化して対外に排出するので
「自分のものではない物質」です。
ですが、ほとんどの物質は病原性ではないので
ブラックリストに入れてはいけません。この「免疫寛容」が
うまくいかず、免疫応答が過敏になってしまうことが、アレルギー反応なのです。


長くなりました。
あなたにとって
「ブラックリストに載っていない」ことが
昆虫を食べる上で重要な事になります。
ある調査によると
人は一生のうちに 数匹のクモやゴキブリを間接的に食べているそうですし
昆虫に触ることのない、昆虫が触ったものにふれない生活はほぼ不可能ですので、
ホワイトリストに入っている可能性は比較的高い生物種でしょう。
事実、私達は多くの方に試食していただきましたが
延べ1000人以上の試食者の中で、アレルギー応答を起こした方は2人です。
(本当にアレルゲンが昆虫なのかは調査中ですし、過去に昆虫を食べたことのある人が主に来場している可能性もありますので疫学的に確かとは言えませんが。)
食べたことのない、日常触れることのない海の甲殻類や深海魚に
アレルギーをもつ可能性が高いかもしれません。
(エビ・カニは最も多いアレルゲンの一つですね)
昆虫食は
アレルギーに個々人で気をつけて、
自己責任で、試せる方のみにオススメします。
医療機関ではアレルギーの程度を測定するテストがありますので、
昆虫食が普及した未来にはそのテストを受けることが普通になるかもしれません


さて
ここまでは
昆虫食の内在的なリスクを紹介しましたが、
間接的なリスクとして
「他人を経由するリスク」
が挙げられます
資本主義社会では
ウソを付くことによるペナルティがウソをついて得られる利益を上回る
限り、食品にウソがある可能性は少なくなります。
逆に、
ウソを付くペナルティよりも嘘をついて得られる利益が大きい場合。
例えば安値で買い叩かれ、嘘をつかないと経営が立ち行かない場合
例えば安月給で社会や雇用者に恨みを保つ場合
輸出先の国に恨みがある場合
食品にウソがまじります。
その時は、
他人を経由すればするほど、つまり加工されるほど
食品のリスクは高くなります。
異物混入や、悪意による毒物や刺激物の混入など、
リスクに限りありませんし、
実際に事故や事件も起こっています。
近頃は食品偽装問題で有名になりましたが、
ことアレルギーになると事態は複雑になります。
もし、ブラックタイガーアレルギーの方がクルマエビだと思って食べたら。
ならば
「生きたものを」「自分で養殖し」「自分で調理する」
というのは食品が他人を経由するリスクを下げる意味で有効なのです。
現在の日本に流通する食品は
日本固有のものはむしろ少ないですので
これから「日本の野生のものを摂取するリスク」
よりも
「他国の養殖されたものを摂取するリスク」が高くなる日が来るかもしれません。


さて
怖い話になりましたが。最後に「QOL=生活の質を保つこと」の話です。
アレルギーを持ちながら生活する方にとって
「皆が食べているものを食べてはいけない」というのはストレスです。
また、
「似たものを食べる」だけでもそのストレスは低減します。
とある男の子が、親御さんの許可のもと、
バッタを食べる会に参加しました。
その子はエビアレルギーで、エビを食べることができないので
バッタを食べに来たそうです「コレが海老の味だよ!」と言われた男の子は
とても満足気でした。
このように、代替食としての昆虫も
昆虫食を採用する上でのメリットになります。
以前の調査で、味覚センサーによる解析から
ウナギはハチノコに似ていることが分かりました。
ハチノコは養殖の難しい昆虫なので、
更に味の似ている、
鱗翅目の幼虫が、ウナギの代替食として望ましいと考えられます。
そこで考えた
「土用のむしの日」を思いつきました。
この度は、さらに器を「ホンモノに」
パワーアップして作成してみました。

イナゴの代替食としてのトノサマバッタの佃煮
ウナギの代替食としてのエリサンとオナガミズアオの蒲焼き
ウナギの肝吸いの代替食としてのオオスズメバチ前蛹のお吸い物
いかがでしょうか

「20年前はこんなものキモくて食えないと思っていたんだけどね」
と思い出話になるような、
科学的に裏付けがあり、文化的に豊かな食としての導入を目指したいですね。

3

秋ももう終わりに近づいてきました。
朝晩の冷え込みはもう氷点下に迫る勢い。
そんな中、セイタカアワダチソウを盛んに飛び回る元気な虫が。

ナミハナアブ Eristalomyia tenax Linnaeus
ぱっと見ミツバチによく似ています。擬態のようです。
冬なのにとても活発で、見ているとこちらも元気が出てきます。

幼虫は腐植食性で下水溝などに生息
成虫は花粉を食べるとのこと
成虫の食い物がファンシーなぶん、幼虫の食い物が気になります。
下水…ううむ。 悩ましい。
食べるかどうか迷いました。
が、近頃新しい昆虫を食べていないので、開拓したいとの思いや
成虫は花粉食だしクリーンだろうとの勝手な判断から
味見してみることに。
くれぐれも加熱は十分にいたしましょう。
以前に食べたシオヤアブのように
大型の双翅目はけっこうクセのない美味しいものが多そうです。
先入観なく食べてみることが大事かと思います。
味見
目がカリッとしており、全体的に柔らかい印象。味も全くクセがない。胸部の毛にポン酢の絡みもよいので薄味がおすすめ。毛の悪い食感はほとんど感じられない。
味は良かったのですが。。。
衛生的にどうなのか不安が残ります。
やはり腐植食性の昆虫はコントロールされたエサで育てて食べるようにしたいものです。

「ヒトが何を食べるべきか」
これは人類にとって大きな問題ですし、
昆虫食を行うにあたって私も常々考えている課題です。
狩猟採集から栽培養殖まで、様々な形態の食があり、
そのモノサシは様々です。
自然科学的な視点では
1栄養学的な視点
「食べると寿命を伸ばす食品」(栄養や必須微量元素を含む生物)
「食べないことで寿命を伸ばす食品」(水銀やヒ素、毒を含む生物)
2生態学的な視点
「食べることで生態系を保全する食品」(害虫・害獣化した生物)
「食べないことで生態系を保全する食品」(生態系において重要で回復しにくい生物)
人文科学的な視点では
3文化的な視点
「食べることで集団の維持に役に立つ食品」(儀礼に用いる食品)
「食べないことで集団の維持に役に立つ食品」(宗教的タブーな食品)
4心理的な視点
「食べることで心理的に安定する食品」(食べ慣れた食品)
「食べないことで心理的に安定する食品」(嫌悪・不衛生と感じる食品)
5経済的な視点
「食べることで経済状態を向上させる食品」(多くの農作物)
「食べないことで経済状態を向上させる食品」(観光資源・ザトウクジラ)
これらのパラメータを比較し、
自身の状態を踏まえ
取捨選択することで、健康で長生きし、楽しく文化的に豊かな人生を
目指すことが、好ましい食選択といえるでしょう。
ある視点からの食選択には
別視点から見てもリーズナブルである場合も多々ありますし
(豚は寄生虫が多いのでイスラム圏では禁止)
トレードオフ(あっちをたてればこっちがたたず。)の
状態になることもあります。
例えば
栄養学的な食選択を推進した結果、日本は食の欧米化がおこり、食事から塩分が減少し、
高血圧や血管疾患が減少しました。同時に、脂肪の摂取が増え、生活習慣病が増加しました。
経済的な食選択の結果、アメリカの貧困層に安く十分な食料が届くようになりましたが
炭水化物と脂肪が多く、肥満人口が増えました。
といったように、
完璧な食選択、というのも無く
時と場合に応じてバランスをとることが大事です。
そして
選択できる自由こそが、
すべての食選択の前提として守られるべきものです。
つまり、
残念ながらこれらの食選択には上下の関係があるのです。
私達が食べる食品は生物由来のものが不可欠ですので
食選択の自由度、すなわち生物の多様性を失うわけにはいきません。
つまり
2生態学的な視点
これだけは他の視点よりも優先するしかありません。
他の視点を優先させることで、生態系がバランスを崩し、
その食品が得られなくなっては本末転倒です。
このことから、
様々な視点を持つヒトが食選択について「べき論」を戦わせるとき、
生態学的な視点をもって他人の食選択の欠点を指摘する方法が有効です。


例:ウシは食用にもなる飼料を食べ、
低効率な食肉生産をしているので肉食をやめ菜食主義になるべき


よく聞かれる話です。確かに現在の大規模牛肉生産は環境負荷が大きく、問題になっています。
ところが、これには論理の飛躍があります。
低効率な牛肉生産は止めるべき 
であって
牛肉食を禁止すべき、とは言えないのです。
例えば
アルプスの少女ハイジの風景を思い浮かべてみましょう。
山間部の短い日照と低温により植物は牧草ぐらいしか育たず
傾斜地なので機械耕作も危険です。
ジャガイモや寒さに強い麦をわずかな平地に植え、
傾斜地に自生する植物をウシに食べさせ乳製品や皮革に。
羊に食べさせ衣料に。
牧草が不足する季節には当然食肉にも利用すべきでしょう。
ウシは「反芻」という強力な消化システムを持ち、
恒温動物という特徴をもつので
冷涼で貧相な牧草地帯でのタンパク質生産を可能なのです。
ここのような地域での菜食主義の徹底は
ウシを腐らせるだけ、その地域で生活できる人数を減らすだけで
生態系にとってはマイナスです。
なので、菜食主義が徹底できるのは平地と温度に恵まれた
一部の地域だけ、といえるのです。
このように、生態学的に考えると
地球上の様々な環境・地域において最適な食料調達方法は異なると
いえるでしょう。気候区分、更に文化によって
パッチ状に様々な効率的な農業畜産が行われる、という未来が
持続可能な食料生産の形ではないかと考えています。
そこに昆虫も参加させたいですね。
そんなことを考えさせてくれた名著
生態学から「人類のあり方」を考える

「生体適応科学」
私の同級生も(おそらく)参加した
いい本が
東北大学GCOEの太っ腹会計のおかげで
電子書籍版無料!
内容は大学生向けですが、なにしろ無料なので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。


私達が「持続可能な食料生産」を達成するためには
多様な生物を利用する必要があります。
害虫や害獣をただ殺すのではなく利用し
栽培や養殖といった効率を上げる方法を採用し
「考えうる最高の持続可能な食料生産」
を達成した時、
理性的な、世界的な人口抑制政策が
取られると思います。
それまで、
私は学術的な調査研究を通じて
すべての生物を平等に扱い、
人類の共通知識を蓄積し、
最大限に利用する
「雑食主義」
をここに宣言します。
そして
「非昆虫食主義」という残念な偏見を打ち砕き
豊かな雑食文化を気づいていこうと思います。
賛同していただける方、一緒に考えませんか?

3

久しぶりの更新です。
11月9日、10日はサイエンスアゴラに出展してきました。

9日の午前中、という微妙な時間帯ながら
30人以上のお客さんに恵まれ、講演会をしてきました。
「 国連が薦める昆虫食~昆虫を食べる時代がついにやってきた~」
という題で
FAO報告書を中心に90分で解説しました。
質問も活発で、スピンオフ研究
「蟲ソムリエへの道」「むしぎらい文化研究所」
へつながる質問もいただいたことで、研究の方向性にも自信がつきました。
なかなか手応えのある講演会となりました。

9日午後と10日はブースで
試食昆虫を出しながら一対一で話しました。
今回は
「食べない人向けアンケート」も取ることで
ブースに来た方全てから情報を得ることにしました。
300を超えるアンケートが集まりました。
ご協力ありがとうございました。
これから集計にかかります。
さて、今回の収穫ですが
「日本は昆虫食文化がある先進国である」
ことを再認識したということです。
昆虫食文化が失われて久しい欧米では、
再導入するには文化的素養がありません。
そのため、
1,「経済的な強制力」(他のどれよりも安い!)
2,「一過性の流行」(今、昆虫食がカッコイイ!)
3,「ロジカルな意識の改革」(将来を見越して昆虫食にシフト)
のいずれかが主にヒトの食生活が変わる要因になると考えられます。
1は最も避けたいことです。昆虫は他の畜産物に比べ、初期投資がいらず、
作物のように自給自足が行い易い生物ですので、
経済力のある富裕層だけが今までどおり肉を食べ、
貧困層は肉の副産物や廃棄物を昆虫で食料に転換して食べる、
という所得別の強制的な食の断絶が起こることは大変に非文化的です。
2については、
フランスで昆虫食レストランが開店したとのニュースもあったことから
「流行の兆し」はありますが、
3の、継続的な意識の改革につながるか、というと
まだまだ先は見えないのが現状です。
また、
流行してもそれらは今のところタイから輸入した食材ですので、
経済力の強い欧米がタイなどの発展途上国の市場をかき回すことは
現地の低所得な農家の家計を翻弄することになります
流行によって設備投資をした瞬間に廃れ、借金まみれになる、という
最悪のシナリオは避けたいものです。
タイの昆虫養殖は、我々やFAOが主張するような持続可能な食料生産に
繋げるためのものではなく、あくまで経済的に儲かるからやっていることです。
そのため、先進国が昆虫食を受け入れると、最も1の弊害を受けやすく、
2の一過性の流行による経済的ダメージも多く受けることでしょう。
やはり、
3「ロジカルで穏やかな意識の改革」が必要なのでしょう。
そう考えると、日本の良さが際立ちます。
今回のサイエンスアゴラのような一般向けの科学イベントが
休日の娯楽として成立するような、「教養の高い」日本が
未来の昆虫食のあり方を、
経済とは直接繋げずに、科学的に考えて、意識を変えていくことが必要でしょう。
そして
4,文化的に好ましいと感じ、賛同する
という要素もあります。
年配の方を中心に「イナゴだったら食べたよね」
とおっしゃる方が多く、ロジカルな話をする前提として
昆虫食をノスタルジックな田園風景の象徴、と
好ましい印象をお持ちの方がいることが、
3を推進する上でとても重要な要素であるといえるでしょう。
ということで
「好ましい昆虫食文化」を
科学的・文化的に成熟させていくべきだと考えています。
そして、それが出来るのは日本しか無い!のです。
ということで
アゴラのような科学的イベントの次にお勧めする
文化的イベントの宣伝です。
11月23日 「東京虫食いフェスティバル 番外編!」


栄養豊富で健康的! 未来の有望な食料として、ますます盛り上がってきた昆虫食!
そんな中、新たな昆虫食本が2冊続けて発売されることになりました。

まずは11月上旬に虫食いライター・ムシモアゼルギリコ著『むしくいノート』(カンゼン)が、

続けて12月中旬に、昆虫料理研究家・内山昭一監修の『食べられる虫ハンドブック(仮)』(自由国民社)が発売となります

そこで今回は、新刊発売記念イベントを「虫フェス★番外編」としてお届けします!

実質上5回目の開催となる今回の虫フェスでは、著者による本の見どころ紹介のほか、
蟲喰ロトワ氏による「蟲ソムリエへの道」講座や、
豪華ゲストによる虫トークを予定。

そして会場でご注文いただける「虫フード・虫ドリンク」の目玉メニューに、
伊勢うどん大使・石原壮一郎氏監修による特別メニュー
「開運!伊勢虫うどん」をご用意します(数量限定)。

昆虫食の繁栄を願い、虫フェスのために特別開発してもらいました。

もちろん恒例のタガメ酒や虫スナックもちゃんとスタンバイ!

え? お土産を買いたい? そんな方もご心配なく。

虫フェス特製“昆虫食雑貨ガチャ”の販売も予定しております。

今年話題の昆虫食を、バラエティ豊かに楽しめるイベントは、虫フェスだけ。



今回は中野の桃園会館ではなく、
ロフトプラスワン(予約はコチラ)にて行います。
当ブログ、
「蟲ソムリエへの道」にも
1コーナーいただきましたので
記事化されていない、
サイエンスアゴラでも触れていないアノ昆虫

ついて、熱く
そして科学的に語ろうと思っています。
ご期待ください!

5

去る10月19日、今年で6回目となるイベント
「イナゴンピック」に参加してきました。
私の参加は3回目。そろそろ常連と
名乗っていいかもしれません。
2012年の様子はコチラ
ここらへんと
福島ををフィールドとする
昆虫食民俗学の野良研究者・S氏と
今回初参戦、当日の朝南国より出張帰りの
強行スケジュールのメレ山メレ子さん(タフですね)と
ともに
お願いして駅前から出して頂いた車に乗り
会場へと向かいます。
会場は寺社原地区の稲刈り後の田んぼ。

今年は気温が低く、イナゴも去年より少なめ。
そのため採集時間もその場で決まります。
前半15分、後半15分の勝負に
前半の結果 54匹

まずまずです。
後半結果  74匹
ううむ。後半伸び悩みました。
そして結果は!
「イナゴンピック第二位(採集部門・二年連続)」

自慢していいものか更にわからない経歴が付きました。
履歴書に空欄が多いもので今度こそ入れようと思います。
ちなみに右側のマスコットはイナゴくん。
大会中オリジナルのイナゴ採りを鼓舞する歌を舞い踊り
子どもたちに大人気。疲れると「人間宣言」するお茶目な巨大イナゴです。

今回も優勝は草津の方、
「焦らず一箇所でずっと採り続けた」
とのこと。後半の粘り勝ち。完敗です。
前々回149匹の福島のおばあちゃんは
足が痛いとのことで欠場。いいチャンスだったのに残念です。
二位の賞品は中之条の新米5kgです。

今回は精米済みで
すぐに食べられます。美味しく頂きます。
「イナゴを採って米を頂く」
これぞ正に
イナゴ食文化の「意義」ではないでしょうか。
それを見事にレジャーイベント化した
中之条の皆さんに敬意を表します。
今後共追っていきます。


さて
前回の記事では触れなかったのですが
3年連続で3時間かけて
通っているのはワケがあります。
群馬県はかつて絹糸の主要な産地で、
富岡製糸場も有名です。
現在でも、ここ寺社原地区には、
日本でも数少ない、天蚕(ヤママユガ)
の製糸を行っている方が居られます。

つまり
文化的に
ヒトの生業と昆虫の距離が近い地域なのです。
イナゴに関しては経緯が複雑です。
1970年代の殺虫剤の影響で、
一時イナゴが消え、食習慣もほとんど無くなりました。
その後、
減農薬栽培がこの地域で採用された結果、「食べないイナゴ」
が増えていったのです。
その後更に、
食べないイナゴのお祭り
「イナゴンピック」が開催されることとなりました。
この経緯からイナゴンピックは「フォークロリズム」と解釈できます。
フォークロリズムとは民俗学の用語で、
「伝統的な民俗事象が時代とともに変遷し、過去とは異なった意味・機能を果たしている状況」
だそうです。
この場合ですと、イナゴ食習慣が
変遷し、地域の「祭」として機能していると考えられます。
その後、このイナゴンピックが
イナゴを食べることを含めた祭りになるか、
わかりませんが、引き続き参加したいと思います。
ちょっと地理的に遠いので、
関東のメンバーの都合がつきにくく
まだ第4回で「食用昆虫の試食提供」ができていませんので
もっと頑張りたいところです。
オマケ
天蚕の見学に行っていたら
あっという間に会場が片付けられていました。

軽トラの機動力恐るべしです。