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以前に見て、
たいそうお気に入りの映画。インターステラー

クリストファー・ノーラン監督の映画は
バットマンシリーズやインセプションを見ましたが
わかりにくいものをわかりにくさを含めて誰にでもなんとなく分かったように見せて話をすすめる」という
非常に詐欺師に近い恐るべき能力を持っているように見えます。
ほんとうにこんな才能が平和利用されてよかった


題名にも書きましたように、
インターステラーは星の間を移動する映画ですので昆虫食は出てきません
ですが、
星を移動する動機は食糧事情の逼迫です。
劇中に出てきた作物と登場人物の発言から推測すると、
昆虫食にとって恐るべき事実が明らかになっているのです。
ハードSFってのはいいですね。
科学ベースのいろんな想像をそこに重ねられるので、
妄想が捗ります。
以下盛大にネタバレをします。
インターステラーは特に、ネタバレと大変に相性の悪い映画ですので
これから見ようという方は決して読まないでください。
まずしっかり見る。

そして劇中の将来の食糧事情と昆虫食について語りましょう。


まず指摘するのは
「インターステラーでは昆虫生態系と昆虫食文化が崩壊している
という事実です。
2015年に改定された「食用昆虫リスト」は、2000種を超え、
今でも20億人が何らかの昆虫食品を食べています。
食べるだけでなく、菜食、果物食にとっても重要な送粉者で、
日本においては農産物産出額の8.3% 4700億円もあり、
うち3000億円が野生の送粉者によるものとされています。
http://www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/press/160204/
農業殺虫剤の市場が1000億円ですから
雇用を産んでいないだけで既に一大産業といえるでしょう。
劇中では
人類は60億人をピークに減り続けている、と話されていました。
このままの増加率でいくと100億人になる、と言われていますから、
劇中の世界では人口増加が食料の逼迫の主な原因ではなく
先に農耕地の開発が行き詰まり、荒廃が始まり、
耕作可能地域が減少した結果と考えられます。
また、
残された耕作可能地域をより効率的に主食の生産に活用できるよう
効率のよい作物を選抜し、特に近縁のものだけを栽培し続けてきた結果
コムギ、オクラ、そして最後はトウモロコシの順に疫病が蔓延し、
「人類は窒息する」とのことです。
しかし変です。
現在でも、多くの酸素は森林が生んでいますので、田畑に単一の作物に対する疫病が
蔓延したからといってすぐに窒息することはないでしょう。
つまり、
この時点で森林は既に開発済みで、
使える田畑と使えない田畑(砂漠)の
二種類の陸地しか残っていなかったと考えられます。
これで砂の多さにも納得です。
しかも先の
コムギ、オクラ、トウモロコシは、いずれも風媒花です。
そこから、送粉昆虫の生態系もすでに崩壊していると思われます。
これは困った。


食糧事情が逼迫しても、もはや食べるべき昆虫は存在しないのです。
土壌細菌との共生が必要なダイズが食品にないことから、
土壌細菌群もかなり疲弊していることが類推されます。
昆虫食を忌避するヒトは
「飢えたら食う」とは言いますが
実際に飢えた状態にある生態系はこのように崩壊した後で
今更昆虫を食べはじめることすらできないのです。
さて、
ここから
「人類が昆虫生態系を破壊する前に昆虫を利用しはじめた未来」
というパラレルワールドを考えてみるのも一つの楽しみ方ですが
インターステラーのモットーに従えば
「過去は変えられない」のです。未来を考えましょう。


劇中、主人公クーパーは、重力を操作する理論の完成のため
自殺ともいえる英雄的行為によりブラックホール内で得たデータを、
重力を操作して娘マーフに伝えることに成功し、未来を変えました。
人類は重力を操作して土星にむけて移住ステーションを飛ばす「プランA」を実施、
地球を離れることができました。
そして
娘マーフはその5次元理論構築にあたって
父に何が起こったか、全てを理解しているようで
それまで通信機が壊れて、マン博士の妨害もあり、
何の予備情報もなかったのに、
父クーパーが
「なにものか」に土星付近で、124歳の時に
開放されるであろうことを数分の精度で予測できていました。
そして
同僚の博士ブラウンが別の星の開拓に成功していることを突き止めています。
あまりに全能なマーフ
ステーションの名前がクーパーステーションになるのも納得です。
マーフの全能性によりかかって、その人類移住計画の全貌について
読み解いてみましょう。


次に言えることは
ステーション内で
分解性昆虫の食利用は少なくとも採用されている」ということです。
重力操作については全くの物理ベースのSFなので、
アントマン同様触れることができません。
しかし、
重力操作はあくまで手段であって、目的は食糧事情の改善です。
ステーション内では、どのように食糧事情が解決されたのでしょうか。
まず目につくのはトウモロコシです。
父クーパーが帰ってきた時、ステーション内では野球グラウンドが整備され
芝生があり、土壌がありトウモロコシが植わっていました。
作物への疫病が地球に居られない原因で、その解決はできなかったのですから
ステーション内に疫病を持ち込むことはできません。
すべての物品について検査し、滅菌してから持ち込んだものと思われます。
すべての物品について
そうです。
あのステーションにあるものは、すべて意味があるのです。
次に、昆虫がステーション内にいるかどうか、
確認してみましょう。
ここ

ラザロ計画の記念碑があったすぐ横
ここに昆虫が飛んでいます。
もう一箇所 トウモロコシ畑にも。

しかし、
野球場の芝生や住居の樹木、農地がちらっと映りましたが
訪花昆虫を必要とする作物は見当たりませんでした。

先に言いましたように、
このステーション内に意味のないものはないのですから
何らかの目的で訪花昆虫ではなく、分解系の昆虫が利用されていると考えられます。
ステーション内の食事については一言も触れられていないのですが
効率の悪く、窒息の助長になる大型哺乳類家畜はとうの昔に居ないでしょう。
地球でも既に滅亡していたものと思われます。
トウモロコシベースのデンプンと、
そしてヒト由来の有機物、つまり人糞を昆虫で再利用した
タンパク質が、主な食事でしょう。
そして農場に飛んでいる昆虫は、疫病対策のため、バックアップの
遺伝資源として放飼されているものが映り込んだ、と考えられます。
トウモロコシの残渣やフスマ、人糞を原料に
ハエやミズアブなどの分解性昆虫を作用させ
高タンパクの食料を、低エネルギー、低水消費で分散処理していたのでしょう。


そこから、
なぜマーフが最後、父をステーションから追い出したか、
という本当の理由も見えてきます。
マーフは父が農場を好きでないことを知っていました。
124歳にもなって、90年ぶりに世界を救って帰ってきた父に、
今更昆虫を食え、とはとても言えなかったのでしょう。
マーフは父に「ブラントの元へ行け」と促します。
寸分たがわず用意されていた実家があるにもかかわらず
所在なさ気に「ここはきれいすぎる」とビールを飲んでいた父。
そのアンニュイな表情は、
ハエやアブなどの不潔に見える昆虫食が、たとえ衛生的に管理されていたとしても
口に合わなかったのではないか、と類推させます。
ブラント博士も
おそらく昆虫を食べない食習慣のままエドマンの星に行っているので
この宇宙において唯一の食生活の合う人類でしょう。
ステーションから
備蓄食料も持ち出さず、
整備中の探査機のようなもの単機で飛び出します。
これはどうみても、
ステーション内の食が合わなかったとしか思えません。
マーフの最大の誤算は、
父のために昆虫でない食料を用意できなかったこと
そして、父が、
意外にも昆虫食が口に合わなかったことだったのでしょう。
しかし
全能マーフは父に昆虫食について一言も言わずして、
父の願望を言い当て、ロマンたっぷりにブラウン博士の元に行くよう促します。
さて、
移住先のエドマンの星では、ブラウンと父クーパーはどのような農業を繰り出すのか。
そしてステーション内の昆虫食文化をもつであろうプランAの住民と、
受精卵で運ばれ昆虫を食べないであろうプランBの住民とブラントとクーパー
この先、
うまく融和できるでしょうか。
食の軋轢による新たな人類の分裂がおこらないか、とても心配になりました。
インターステラー2「食の葛藤」カミングスーン
じゃないですか。そうですか。

すりつぶせば食える
昆虫料理の写真を見せた時に多くいただく反応です。
もちろん今まで、すりつぶした昆虫料理も作ってみました。
バッタのハンバーグ

バッタのパンケーキ

エリサンのアイス

が、どうにもしっくりきませんでした。
すりつぶすことの利点が、いまひとつ見えてこなかったのです。
まず形が失われてしまいます。
そもそも
昆虫は美しい色彩をもち、洗練された形もあり、見映えがいいと思います。

そして
食感もサクサクとして、一口大で食べやすく、噛み砕くことで湧き上がる風味もたまりません。
それらの特長を失ってまで得られるものが見当たらず、
昆虫料理を楽しむにあたっては、すりつぶすことへの抵抗感がありました。
なぜ過去形かというと、昆虫を粉末にした時の味わいの可能性を
ようやく見つけることができたからです。


粉末にすること、つまり粉体化は、素材を均一化し
素材の体積あたりの表面積を著しく向上させます。
粉体化した素材は、分子状、とまではいいすぎですが、
分子そのものに対して均一な、化学的編集を可能にするのです。
参考文献はこれ
現代フランス料理科学辞典

フランスで興った「分子ガストロノミー」について
物理化学的に解説した事典です。
料理のすべてがサイエンスで説明され、
今まで慣例的に行われてこなかった新たな料理法が示され
その効果が科学的に説明されています。素晴らしい本です。


フランス料理は日本料理とよく対比されます。
日本料理は素材そのものの味わいを注意深く吟味し、
その流通や品質管理すら料理人の仕事になっています。
素材の名前は客の口に入る最後まで消えること無く、
素材と素材のマッチング、そしてそれに応じた調味料をあわせていきます。素材主義的に感じます。
そのため、食品偽装にも敏感です。
羊頭狗肉は、たとえその狗肉がヒツジよりおいしく仕上がっていたとしても、
素材主義的にはアウトなのです。
一方で
フランス料理はそれらの素材としてのストーリーを排除し「オープンプラットフォーム化」していくように見えます。どこでとれたか、何と何が合わさっているかはあまり重要ではなくて、最終的に今までにない、好ましい味わいを達成した時に、その味わいに必要不可欠な素材を評価していきます。
日本料理に対して成果主義的です。
どちらのアプローチにも一長一短がありますし、
どちらの国の料理法にも素材主義的な部分と成果主義的な部分が混在しているので、一概にはいえませんが
昆虫を粉体化することはすなわち、素材感をなくし、成果主義に寄せることですから
より昆虫の「料理」としてのハードルが上がることがわかりました。
つまり料理の視点から見ると、
「昆虫を加えなくてはならない美味しさを発見しないかぎり、昆虫を料理に加える価値はない」のです。
昆虫食の粉体化は成果主義への挑戦といえるでしょう。


これはちょっと怖い挑戦でもあります。
今まで昆虫食の1つの大きなウリは「代替可能であること」だったのですから。
栄養的にも、栽培養殖的にも、既存の家畜を「代替」する存在なので
昆虫独自の味わいが積極的に評価されることはありませんでした。
普及が実現すれば、
昆虫食はその代替可能性の高さによって、様々な料理の素材を代替できるでしょう。
ところが、現在マイノリティで高価な食材である昆虫の、これからの普及にあたっては、
「代替不可能性」つまり代えがたい付加価値をプッシュしなければならないのです。
このことから、
昆虫食の普及には、時に相反する2つのフェーズを見越したデザインが必要だということがわかります。


1つはこれから普及していくデザイン。
他にはない特長があり、代替不可能で、美しく、あたらしい。
未来を感じ、一時的には持続可能性を高める目的で、痛みを伴うかもしれません。
そしてもう一つは普及した後のデザイン。
ありふれていて、意識せず、空気のように、日常に溶け込んでいく。
そして環境に負荷をかけず、人々が自ら選んで楽しむ昆虫料理です。
相反するように見えますが、この2つのデザインコンセプトを同時に達成した
「未来の昆虫料理」
こそが、これから開発し、提供すべきものになると思っています。
なぜならどちらか一方を達成したたけでは、
2つのフェーズのスムーズな移行を妨げてしまうからです。
つまり、
昆虫食はこれから、非日常食(フェーズ1)を経由して、日常食(フェーズ2)になるのです。
この2フェーズをゆるやかにつなぐデザインが、
昆虫食再導入のシナリオ作りの根幹となっていくと考えています。


さて、昆虫食の粉体化は、
日常食に混和されて含まれていく、という意味でフェーズ2的でもあります。
粉体化したままフェーズ1を突破するには、
昆虫の姿形という強い特徴を失ったまま、その代えがたい美味しさを引き出さなくてはならないのです。
また、昆虫に本来含まれる食感や姿の美しさを失っていますので、
粉体化したものがより劣った味になってはそれこそ粉末転倒です。(ダジャレです)
充分に既存の素材と比較して「おいしくなる」ことこそが、粉体化昆虫料理のミッションといえるでしょう。
キーワードは「異素材との組み合わせと化学反応」です。
使った素材はこちら
TAKEOさんが輸入販売しているタイ産養殖トノサマバッタです。
http://takeo.tokyo/?mode=cate&cbid=2031803&csid=0
どこまでの粗放的な養殖か、集中的な養殖かわかりませんが、
すでにタイでは私が目指す、バッタ養殖への道が開けているのです。
うらやましい。
まだ取材をしていないので、どのような養殖場かわかりませんが、
日本で買えるものでは一番安いバッタ素材といえるでしょう。
ただ、若干の素材に不満点がありまして、
粉末の粒度が荒く、口当たりが若干悪いことです。
これは回転式の粉砕機によって行われるためと思われます。
効率のためにはしかたのないことでしょう。
また、
恐らくフン抜きと茹での工程を行っていないためだと思われますが、
加熱すると苦味が強く出てきます。
理想としては、脱皮直後の2日以内の成虫を
一回茹でてから、フリーズドライして石臼式のミルで微粉化すると、
最も美味しい粉末となるでしょう。
ただ、一旦粉末化したものはそこからエグみや苦味の原因だけを取り除くことが
もはやほぼ不可能になってしまうことが難点です。
なぜなら苦味物質は「ヒトがそう感じる」から苦味であるだけの
ごくありふれた物質であることが多く、
例えば必要不可欠な成分であるアミノ酸が結合したジペプチドの一部の組み合わせは
強い苦味があることが報告されています。
以前に生のパイナップル(タンパク質分解酵素を含む)をグラノーラと牛乳と一緒にし
電子レンジで加熱したことがあったのですが、
強い苦味が出てしまい、固形化して全く食べられませんでした。
味のコントロールには、そのマッチングだけでなく過程、
プロセスも大事であることがわかります。
この程度で負けるわけにはいきません。
機械的な食感の悪さには微粉裝置の導入。つまり乳鉢です。

石臼式の茶葉粉砕機、

これも買ったのですが、
石臼式で微粉化できる反面、
バッタに含まれる繊維質(恐らく腱か筋肉)が詰まってしまい
頻繁に掃除が必要で、どうにも効率化できませんでした。


話はそれますが
カブトムシの蛹を乾燥させたものをコレに入れると大変なことになります。
脂が多いのでくっつき、すぐに詰まってしまい全く機能しません。
カブトムシの素材開発については、また別でまとめます。
カブトムシは不味いのか、それとも我々が美味しい料理法の開発に成功していないだけなのか
新しいアプローチを試みています。


話を戻します。
さて、
昆虫料理開発と実証にあたって、
第二回 Palermo昆虫料理試食会を実施しました。
 
3つの料理を参加者と一緒に作ります。

参加者の方にも交替してもらいながら
15分ほどすりつぶしてもらい、
最初の簡単料理
「バッタのフレフレチップス」です。
  
堅揚げポテト 塩味に、トレハロースと混ぜあわせたバッタ粉末を小さじ1入れて
振ると、簡単に出来上がり。
次は
「バッタのチーズドレッシングの温野菜」

温野菜はPalermoさんに用意していただきました。
バッタの苦味とチーズの苦味が合うんですね。
当初はバッタの苦味をマスクする目的で混ぜあわせました
コレを作るときにチーズと砂糖、酢を加えて
レンチンしたのですが、ふと気づきました。
バッタでもチーズでもない、別の好ましい芳香が出ている。と
先の参考文献「現代フランス料理科学事典」で
調べたところ「メイラード反応」とのこと。
アミノ酸と糖が加熱により反応し、香ばしい茶色い物質メラノイジンを産するとのこと。
苦味もあるのですが、非常に好ましい、まとまった味に仕上がりました。
なるほど。
これは「粉末化」のはっきりとした恩恵ですね。異素材を混ぜあわせて反応させれば
素材に対して均一に化学的な編集を加えられると。
最後に作るバッタチョコも
試作段階でホワイトチョコにバッタ粉末を入れただけでは苦味が残ってしまい
風味もあまりないので、調理にメイラード反応を含むよう、変更しました。

まずバッタの粉末大さじ1をよく微粉化し、トレハロース大さじ2 砂糖大さじ1を加え
溶かし水小さじ1を足して電子レンジでよく沸騰するまで加熱します。
ここで、加熱しすぎると糖単体の褐変現象であるカラメル反応が起き、
固体化してしまうので注意しましょう。
試食会では予め用意したメイラードバッタを使おうとしたのですが
再加熱に失敗してカラメル化してしまい、使い物になりませんでした。ご注意ください。
好ましい香りがしてきたら温かいうちに湯煎で溶かしておいたホワイトチョコと混ぜあわせます。
ホワイトチョコも温めすぎると分離します。
よく混ぜると、白あんのような独特の粒感のある、ブラウンチョコができました。
しっとりとしてカントリーマアムの中身のような食感です。

とっても美味しい!
ほうじ茶チョコにとても近い味わい。でもバッタの風味とほろ苦さが先に来て、
後からチョコの風味で締めくくられて大変後味も良好です。
さて、
試食会ではここまでだったのですが、
試作して残しておいたものをフレーク状にして

今度はパンケーキにチョコチップとして練りこんでみました。
 
するとフライパンの表面で溶けてカラメル反応をおこし
パンケーキの内部ではとろっと、そしてフライパンに接した部分ではカリッとした仕上がりに。
外はカリッと、中はとろっと。何かわかりますね。
そうです。昆虫の食感です。
つまり以上のプロセスにおいて、
昆虫の食感を異素材と組み合わせ
再構成したといえます。
クチクラのような疎水性で弾力のある破片
(概して口に残った時に水分と味がないので違和感を覚えます)
がなくなっており、より風味が増し、苦味が気にならなくなり、
いいことづくめです。
では、この先、昆虫料理の「見た目」を楽しみたいときは
どのような形が考えられるでしょうか。
同様に再構成すればいいのです。

バッタのつもりですが、うまくいかなかった・・・・
パンケーキ職人がネット上にはいますので、よりよいバッタパンケーキは
今後生まれてくるでしょう。
また、
味わいという点で粉末化は大きく貢献しますが、
今後の料理開発の戦略として、
昆虫の姿形を保ったまま、メイラード反応を含むバッタチョコを作るためには
含浸や圧力調理といった
すりつぶさなくても味の加工が行える
非侵襲性のトリッキーな科学的調理方法の躍進も期待されます。
ということで
「すりつぶさないと食べられない味わいをもつ昆虫料理」が今後の突破口になると思われます。
「昆虫の粉末化はその物理的特製、化学的特性を活かし、より新しい昆虫の味わいを高める目的で使うことで普及を促進する」と予言しておきましょう。
姿形を失った状態で、高価な昆虫を売るには限界がある、
姿形を保った状態で、高価な昆虫を売るにも限界がある
と私は思うようになりました。
美味しさこそ食品における「代えがたい美的センス」でしょうから
これを抜きに昆虫食の普及が達成されることはないでしょう。
更に、
昆虫素材の粉体化と分子編集を行った後に
「昆虫の姿を再構成」したものが今後、好まれるかもしれません。
というのも、今回の試食会アンケートでは、
姿形が失われていて残念、との感想もあったからです。
人々が見てわかる昆虫の姿を再構成したものは、
誤食やイタズラ目的の混入を防げるという意味でも
有用です。
昆虫料理芸術、という
食べたくなる昆虫を表現する分野が、美食学の一分野として勃興するかもしれません。
そして、挑戦的に宣言しておきますが
分子ガストロノミーがいまひとつハジケないのも、
既存の食材を使った変化球や物理化学的な後追いでしかないものが多く
「ネタ切れ」になってしまったのかもしれない、と考えています。
そこで
分子ガストロノミーは積極的に生物学へ参入すべきでしょう。
更に、
生態学的な知見に基づく、「環境の状態に即した持続可能な食システム」を提供するのです。
昆虫を含む地球上の新食材を探索し、環境影響から評価し、
味についてフードマッチングを行い
新しい料理の可能性、
伝統的な料理を別の食材で再構成する可能性を提供していくとよいでしょう。
どうしても気候変動に左右される不安定な食料生産を、
安定化させようと、厳密な閉鎖系を作ることは、かえって多くのエネルギーを消費し、
エネルギー依存度の高い食料生産になります。エネルギーを介してすべての生産活動と
競合関係になることになるわけですから、その不安定化へ危惧はかえって食の不安を招きます。
また、
生態系の予想外の変化、例えば外来種の侵入と繁殖は、
時に安定化のために新しい捕食圧を必要とします。
人類こそが情報のみによって食性を変えられる唯一の巨大捕食者ですので、
情報によって食を変えるチャレンジが必要でしょう。
既に「価格」という情報によって、食生活を変更し
今まで食べたことのない食材を口にすることはもはや珍しくないですから、
価格以外の価値判断で食習慣を変えることも、きっとできるでしょう。
しかし、
食習慣を変えるストレスもまた、痛みを伴います。
そこで、分子調理の社会的な出番です。
一つの未来として
「消費者の食習慣にストレスを掛けること無く」
環境にふさわしい食材を組み合わせ、編集して
食の選択肢を「みえないように」増やしていくことで
いつもの食事を
いつものように楽しんでいるだけで適切なカロリーと満足度の高い食事経験と栄養がとれる。
そして中身は知らなくて良い
という、
「食の魔法化」が近い将来達成されるかもしれません。
そこには、
「昆虫料理」と「普通の料理」の境界自体が、見えなくなっているはずです。
一つの極端な理想形として、いかがでしょうか。