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土用の丑の日があと1ヶ月ですが
私はしばらく禁鰻をしています。
江戸時代のウナギが余る時期に作られた商業目的のゲン担ぎだそうなので、
ゲン担ぎで対抗できればと、
#土用のむしの日 キャンペーンもしつつ、持続可能性のない鰻食の根絶にむけて頑張る所存です。
これから夏バテが気になるシーズン。活発になる昆虫の栄養を
積極的に摂取することで、乗り切ってまいりましょう。
さて
ウナギの資源が危機的になる中、
近畿大学が「ウナギ味のナマズ」を開発したことで
話題になりました。

「ウナギ味」ということであくまでウナギの下位互換として売る、という商法は
ナマズのそもそもの美味しさを知る人にとってはなんともアレですが。うまく大手航空会社を互換したいLCCとの相性がよかったのでしょう。値段がかえって高い、というのも上手にクリアしているようにみえます。
我々は本来、「天然の」ウナギを食べていたのですが
今、多くの人は「養殖の」ウナギを食べています。
しかし、それは蓄養された「天然の」ウナギの稚魚であって
ウナギ資源に巨大な漁獲圧をかけています。
いまでも日本のウナギ流通は改善する様子がないので、
私は政治的な意思表明として、ウナギ食を禁止しています。
もちろんですが、最適な漁獲方法で、資源管理が徹底できているものを食べない理由は
ありません。私が食べないことで、廃棄になるコンビニウナギが減ることも、増えることもないでしょう。
あくまで政治的なものです。
私が何度も繰り返し言いたいのは
「食品の生物種で食べる・食べないを決める時代から脱却しよう」
ということです。
なので
「昆虫という種だから食べない」という判断も
「昆虫という種だから食べる」という判断も、この先は時代遅れになることを期待します。
私もゆくゆくは蟲ソムリエを廃業し
「食システム・ソムリエ」というような
https://goo.gl/3AAWT4 個々人にとっての環境利用の最適解を実装する
システムエンジニアリングを提供する形になっていければと思います。
そして、
食をシステムとしてとらえた時、
そのシステムから昆虫を除くことは、多くの場合ナンセンスです。
ということで、
ウナギ食を、ナマズで代用するだけでなく、更に昆虫を含める提案によって
システム改善していきましょう。
ともあれ、
ナマズがバッタを食べるかどうかが大事です。
ちなみに、
ピラニアは数年飼育して、一度しか食べませんでした。

好みもあるようなのですが、(脊椎動物の血の味が好きっぽいです)
カジリタイプのアタックアゴをもつピラニアにとって、水面に浮きっぱなしのものは食べにくく、
外から人が見ていることも気にするほどの臆病さなので、浮くタイプのものは向いていないようなのです。
沈降性ペレットにしてやると食うと思います。
さて、続いてナマズ
こちらもいつも底に潜っていて、なかなか上の方に上がっては来ないのですが
ナマズ釣用にカエルやバッタのルアーもあるようですし、
若干受け口なので、水面への注意もありそうです。
とある方面からマナマズをいただいて飼育し、慣れてきたごろにバッタを与えました。

慣れると、水槽をコツコツと叩く合図を条件付けることに成功しまして、
音にひかれて上のほうにやってきて勢い良く水と一緒に飲み込んでくれます。

キチンはそのままフンに出てくるので、水換えは結構大変です、ゴミの少なさも、配合飼料化への大事なプロセスだと思います。
一度の食事に10頭ぐらいは食べるのです素晴らしい食欲です。
さて、さばきましょう。
体重は329g


さて、
この「ナマズ養殖」は、昆虫利用のシステムとしてどう評価されるべきでしょうか。
また、どのような条件の地域に導入されるべきでしょうか。
バッタの導入は、既に開墾され、イネ科の草本が生えている平地が適していると思われます、
その中で、あえてバッタを食べずにナマズ養殖をするということは
渓流という豊富な水があり、内水面養殖が可能で日当たりの悪い土地が少々
交通の便が悪く、自給飼料によってコスト削減ができる地域であること。
そしてナマズを食べる文化圏があること、バッタを食べさせたナマズの味がよいこと
などが実装の条件となるでしょう。
バッタも手間を掛けずに半養殖で鳥よけネットぐらいが張ってある耕作放棄地で、粗放的に飼うのがいいでしょう。
アミか芝刈り機かなんかでにナマズ養殖池に向かってバッタを追い立てて、そのまま水面にポチャリと落ちるバッタを食わせればいいと思います。
もちろん、
飼料栄養効率でいうと植物食性のティラピアのほうがいいのですが、
販路も含めたシステムとして考えた場合、味の良い肉食魚というのは一つの選択肢としてあっても良いと思います、
そして、その評価は、単なる効率やポテンシャルの話を越えて
稼働中、もしくは具体的な稼働計画をもとに、アセスメントをすべきだ、
と思うようになっています。
つまり仮説から実装へ です。
当然ですが、単に昆虫を養殖したからといって食糧問題は解決しません。
コオロギはニワトリとタンパク質転換効率がおなじぐらい、という論文が出ているので
コオロギを養殖して食糧問題解決、という話はニワトリを無視して進められません。
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0118785
コオロギは温室効果ガスの少なさが指摘されているのと
骨や羽などの廃棄物が出ないことで、温暖化や廃棄物問題に対して
どこかの地域における一つの最適解になる場合もあるとは思います。
もちろん、
今のプランテーションのように、土地を乱開発して、
巨大な昆虫養殖工場を作るとなると、昆虫養殖はむしろ地球環境にインパクトを与える産業として
監視と制限の対象になるでしょう。
魔法の杖は存在しないですし、昆虫食に過度な期待を集めてしまうのも
落胆のバブルを引き起こしそうでなんだか乗り気になれません。
何度も言うように
「システムで評価する」のです。そして、
それを社会に評価してもらうためには、実装する必要があると思います。
システムを実装するには、様々な制約条件があります。
土地、気候、文化、社会、法律、エネルギー源などなど。
それらの条件を最も満足する食糧生産のシステムを評価し、パッチ状に分散配置し
計算機によって予測し最適化することが、将来の「世界を救う」食料生産になるでしょう。
ともあれ、
昆虫が実装されたシステムが今のところほとんど無いので、
実装に備えて言語化して、理論化しておかなければなりません。
昆虫が
明らかに今までの家畜と違う点は
変温動物であること。これは「吸熱加湿デバイス」であることです。
もう一つは「一口大であること」
更にキノコや発酵微生物との大きな違いは
「移動して目で見えるサイズのフンを排出すること」
あたりでしょうか。
ここから、
昆虫利用のシステムと、そこに侵入してくるであろう脅威
そしてその最適な対処法まで、考えていけるでしょう。
今のところ、昆虫養殖の最大の脅威は、おそらく昆虫だと考えています。
実装の形の第一歩としては、
「バイオマスと廃熱の脱集約利用」という感じになるでしょうか。
いろいろと資金の限界を感じていますので、
近いうち何らかの動きをとる予定です。
またまとまりましたらご報告します。

食用昆虫科学研究会と、昆虫料理研究会が主催するイベントでは
昆虫食を提供する前に、参加者に説明して同意していただくことがあります。
アレルギーのリスクです。
いくら食品の衛生管理に気を使っても、アレルギーはどうにも100%防ぎようがありません。
食物アレルギーの発症は予測が難しく
いままで大丈夫だった昆虫でも起こりえますし
もちろん甲殻類アレルギーと交差することもあるでしょう
これから昆虫食を再導入するにあたって、
低確率ですが必ず昆虫アレルギーの反応を示す方も出てくると思われます。
今のところ、我々は食物アレルギーを対象とした保険に加入していないので、
何が起こっても補償できないことをあらかじめ、同意頂いています。
また、
アレルギーを起こした時に一番苦しむのは食べた本人ですので
事前にそのリスクがあることをご理解いただく、というのも
昆虫食の普及にむけて大事なことです。
私が把握する限りで、強い食物アレルギー症状を起こした方は
1000人に一人ぐらいです。他のアレルギーに比べて多いか少ないかはまだわかりません。
以前に弁護士の方に相談させてもらったのですが、
昆虫は食品として一般的ではないので、
常識に照らし合わせると、食べるヒトが予めリスクを知っている、とは残念ながら判断されないようでです。
昆虫を提供する側が、食用リスクをきちんと説明した上で、時には提供を断るような態度でないと、
食品の善管注意義務違反として、賠償請求を受ける可能性があるそうです。
最近の論文を紹介しておきます
エビ・カニと近縁なので、エビ・カニアレルギーを持つ方は、交差反応をすることがあります。
参考文献
コオロギから新規のアレルゲンと、テナガエビと交差するものが見つかったとのこと。
Identification of novel allergen in edible insect, Gryllus bimaculatus and its cross-reactivity with Macrobrachium spp. allergens

このような研究はあまり量を必要としないので、食用昆虫の市場が小さいうちにやっておきたいものですね。
また、Twitterで
参考になりそうな論文をおしえていただいたので、読んでみました。
コチニールを対象にした論文です。
コチニール色素によるアレルギー
山川有子
横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科
日本ラテックスアレルギー研究会会誌 17(1): 49 -53 2013

コチニール色素はサボテンにつくエンジムシ(コチニールカイガラムシ)をすりつぶして
水またはアルコールで抽出したものです。

古くから使われてきた色素で、ある意味人体実験がしばらくされているので
大きな問題が起こらないことが確かめられている、伝統的天然色素です。
ここで「伝統的」「天然」が必ずしも安全であること、とはなりません。
コチニール色素では、は生物体から抽出したものであるので、不純物としてのタンパク質が
問題になっているようです。
もちろん、色素本体であるカルミン酸へのアレルギーのある方もいます。
さて、この症例研究で注目されているのが、
「コチニール食物アレルギーについて成人女性の発症が多い」ということです。
男性が1、女性が19名
女性は23から35歳のいずれも成人だったとのこと。
海外のコチニール色素製造業の喘息性アレルギーの発症は、男性のほうが多いので、
この偏りは「成人女性」に何らかの意味がありそう、と推測できます。
数を統計検定をしても有意といえば有意なんでしょうが
少ない報告数を元に、性比が偏っていることを単に統計検定するのはなんか変な気がするんですが、そこらへん症例研究ではどう述べるのがいいんでしょうか。
また、コチニールの喫食経験が初めてでアレルギー反応をした方もいるので
事前に別のアレルゲンへの暴露があった可能性を推測しています。
この論文が気にしているのは
「経皮刺激誘発型の食物アレルギー」
いわゆる茶のしずくで有名になったもので、小麦の加水分解物を肌に接触させていることで
食物アレルギーが発症したものがこの事件でしたが、同様の発症の仕組みがコチニールで起こったのではないか、というもの。こういう発症の因果関係を推定するのは、症例数の少なさや、個々人の症状の多様性、
アレルゲンが環境中にありふれたものであることから、なかなか難しいものです。
低濃度の経皮刺激が食物アレルギーを誘発し、消化管への高濃度暴露によって脱感作を誘発する、という仮説はLackさんによって2008年に提唱されたものだそうです。
DUAL-ALLERGEN-EXPOSURE HYPOTHESIS と言います。
いくつかの状況証拠はあるそうなのですが、
環境中の低濃度アレルゲンをなくすこと、というのは
実験的に困難です、高濃度の経口摂取による減感作療法というのはすでに実用化されています。
この
コチニール色素に含まれる主要アレルゲンである38kdの機能不明タンパクは
ミツバチで報告されている分泌型ホスホリパーゼとの高い相同性がみとめられました

つまり、
コチニール色素にアレルギーを持つ人が、ミツバチをはじめとする昆虫にも、アレルギーを持つ可能性もあるでしょう。


さて、
そろそろ私の言いたいことがわかってきたでしょうか。
コチニール色素をはじめとする経皮刺激型の昆虫製品や
昆虫が豊富な日本において、低濃度の昆虫との皮膚接触は決して避けては通れません。
そんな中、
「高濃度の昆虫摂食を避け続ける」というここ50年ほどの新しい生活は、
アレルギーのリスクを向上させてしまうのではないでしょうか。
つまり
「環境中にあるものを摂食する習慣」
というのは、人の免疫を健全に保つ上で重要なのではないか、ということ。
昆虫と接触しながら、摂食しないという現在のいびつな昆虫消費のあり方は、様々な健康リスクを誘発するのではないか、ということです。
さて、
昆虫アレルギーの治療として、昆虫スナックが処方されたら、
どのくらいの人が昆虫をたべるものでしょうか。

 


ちなみに
スギ花粉は1g 6500円だそうです。 このぐらいの価格で昆虫も買ってくれたらいいなぁ。
http://www.wako-chem.co.jp/siyaku/product/life/Pollen/index.htm


脱皮したての白いゴキブリ。彩りにも美しく、かつ食感が良いためとても美味しいです。

驚愕の昆虫食フェス!「ゴキージョ」が大人気【あやしい取材に逝ってきました】


以前の虫フェスでは、「ゴキージョ」が振る舞われました。
養殖昆虫食が採集昆虫食に対するアドバンテージとして「成長段階を揃えられること」
があります。多くの昆虫は脱皮直後は体が弱く、多くの捕食者に狙われてしまいます。
そのため脱皮してすぐに酸化反応によって黒くなり、硬化してしまうのです。
これをどうにか遅らせられないか、と考えていたところ、
ブルークラブというカニの文献をみつけました。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0044848600006037
Calcium concentration in seawater and exoskeletal calcification in the blue crab, Callinectes sapidus
甲殻類は昆虫と違ってカルシウムが甲殻の硬化に必要であることが知られています。
適度な濃度にカルシウム濃度を下げ、かつ同時に海水も希釈することで
死亡率をあげないように数時間はやわらかいまま維持できるとのことです。
当然、長期間やわらかいままですと移動や捕食に影響しますし、
カルシウムが不足しているわけですから他の生理的な影響もあるのでしょう。
「ずっとソフトシェルのままのカニ」というのは存在できないのです。
では、カルシウムを用いない、昆虫の場合、どうでしょうか。
ここで、黒化と硬化の最先端、クロカタゾウムシに登場してもらいましょう。

カタゾウムシはほんとうに「硬い」ことだけで生きています。
翅を背中に接着してしまい、スキマのない曲面を構成することで
ものすごい強度になっています。動きが遅く、擬態もしていないので
目立つはずですが、コレを噛み砕ける昆虫食の動物はなかなかいないのでしょう。
茹でて味見してみます。
硬い!けどザクッバシッと弾ける食感は、パッションフルーツの種のようで面白い。カタすぎて弾力がなく、口に残りにくい。内部はナッツの香りと甘みもある。71点
意外と人の奥歯は優秀でした 笑
カタゾウムシの共生細菌の研究から、こんなことが示唆されています。
クロカタゾウムシのクチクラの硬化と着色に共生細菌Nardonellaが果たす役割
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/201302215006545271
学会で聞いたものの、文献はまだ公開されていないようなので
内容はぼやかしますが、共生細菌をなんやかすると
「シロヤワゾウムシ」になるとのことです。
つまり、共生細菌をいじることで、もしくは共生細菌を使わない生物では
何らかの栄養を制限することで「白くて柔らかい昆虫」
を作ることができるのでしょう。
もちろん、これをカニと同じように制限してしまうと
体調を悪くするでしょうから
成虫脱皮の後、体が硬化する前に、栄養制限を発動するような
高度な遺伝子操作をすることで
「食用シロヤワゾウムシ」ができるかもしれません。
クロカタゾウムシは比較的丈夫で飼いやすいとのことで、今養殖できないか試行錯誤しています。
また養殖に成功しましたらお知らせします。

続いて、料理開発に参りましょう。

フン茶は桜の香りが強く残っていて、少しの渋みもあり、素晴らしいお茶です。
桜風味の餡はこちらを使いました。
https://www.marumiya.co.jp/cms/web/viewitem/4183/1
期間限定で、今手に入らないのは残念。
蛹は外皮が硬めで、内部が柔らかいので、
今回は分離させてみました。
外皮は揚げてきな粉にまぶし、内部はトレハロース混ぜあわせて加熱し撹拌して餡にします。
とても美味しい。
ただ揚げただけでも揚げたては美味しいのですが
次第に外皮がしっとりし、内部は冷えてスポンジ状にスカスカになっていきます。
今回使ったマグカップは、透明感のある美味しそうな幼虫を描くことで
私の中で評価の非常に高い(世間的にも評価が高いですよ)西塚emさんの作品を使わせていただきました。
別バージョンで、大阪自然史博物館友の会にて制作した
http://omnh-shop.ocnk.net/product/1457  虫へん湯のみを使ったものも作りました。


ここで困ったのが
「季節感」です。オオシモフリスズメの旬は6月初めから中旬
サクラの葉も同じように青々しています。そろそろサクランボもとれます。
ですが、サクラの季節はなんといっても早春、雰囲気をどうすべきか
いまひとつはっきりしない仕上がりになってしまいました。無念。
この後、多めに作った揚げ外皮のきな粉まぶしを2日ほど常温においておいたところ
いつまでもサックサクで、嫌な香りもしないことに気づきました。
そして、冷蔵しておいたトレハロース餡も劣化していません。
「外はサクサク、中はしっとり」
という新鮮揚げたての蛹は大変おいしいものですが
揚げ置きや揚げ直しをしたり、古くなるとどんどん風味が悪くなります。
今、皮と内部を分離してそれぞれ調理することにより、
それぞれの風味や味を長期間楽しむことができるようになりました。
これは「脱構築」です。構造を一旦解体することで、
食材本来の美味しさを長時間楽しむことができるのです。
次にできることは「再構成」でしょう。
外はサクサク、中はしっとり、
そしてそれぞれを合わせても外のサクサクが失われない。
もうおわかりですね。
モナカです。

モナカの餡の特徴は、
「糖度を高く、甘みを少なく」だそうです。
糖度を高めることで餡のしっとり感が皮を湿らせることはなく
甘ったるくならないよう調整するとのこと。
トレハロースはショ糖の半分の甘さですっきりしているので、
モナカの餡にぴったりです。
そしてできたのがコレ

さて
ここまで考えて
将来の食のあり方について考えてみました。


オオシモフリスズメに将来性があるのは、全国津々浦々に
ソメイヨシノがあるからです。
また、ソメイヨシノは花見用でクローンですので、果実を付ける必要もありません。
秋には落ち葉がゴミになってしまいます。
それらの葉を有効活用し、このような甘味として味わえたら、バイオマスの有効利用ですし、大変に「粋」だと思うのです。
多くの人が自給的農耕をしなくなったことで、ほとんどの食品は現金で購入するものになりました。
そんな中、「現代人は情報を食べている」と言われます。
ですが、
そうすると、家庭菜園で育てたマズイ野菜を食べたがる気持ちがいまひとつ説明できません。
情報の信頼度という面から見たとしても、プロが作った野菜のほうがおいしく、安いことは明白です。(自分で作ったほうが安心安全、というウリ文句もなんだか違う気がしています)
また、
情報を食べるようになったことで、脆弱性も生まれました。
誇大広告であったり、食品偽装などの詐欺的行為によって
本来の価値のないものに高い値段をつけて購入してしまうのです。
そこで、未来の食料生産の健全化のために次の提案をします。
「システムを食べる選択」です。
情報は常に更新しないと、ウソが混じります。
また、ウソを暴けないシステムを構築しておくと、そのウソは長年にわたってまかり通ります。
そのため、
情報を更新し、ウソが混入すると明らかになる、排除できるシステムを食べる(お金を出して購入する)のです。
我々人間の体もシステムです。ウソが混入すると、最悪の場合食中毒で死に至ります。
訴訟しても健康は帰ってきません。
そのようなシステム管理は国際規格やHACCEPなどで認証が行われてきました。
将来的には昆虫生産も認証をとりたいものですが、今のところそこまでの市場がないのが現状です。
システムを食べる、という概念が普及すると、
昆虫には大きな利点があります。
「脱集中化」です。Decentralization とも言われます。
今の多くの食料生産は集中化によって価格を下げています。
郊外の広大な農地から自動で穀物収穫貯蔵するシステムであったり
畜産農場も悪臭や水質汚濁の懸念から都市部から大きく離れています。
ところが、昆虫は悪臭や廃液を殆ど出さず、
植物に比べて土地依存度が低い、しかも特別な処理をすることなく
キッチンでおいしく調理できる、という意味でも
消費地に近接した養殖に、昆虫食導入のメリットがあると考えられます。
そこで見られるのは、「食べる寸前まで元気で生きている家畜」です。
そこに与えるエサも見ることができます。
近くに生えているソメイヨシノであったり
家庭から出る野菜くずを使った雑食昆虫養殖であったり、
消費地に近接した養殖は、そのシステム全体を見渡すことができます。
そのため、ウソが混入しにくく、また緊急時にインフラが止まった時の頑強性も高いのです。
1ヶ月の食糧の10% つまり3日分備蓄があれば、災害時に大きなメリットになると言われています。食品残渣は購入食品の約40%と言われていますので、それらの10%を昆虫で再利用されれば4%の備蓄
更に、身近にある非食用のバイオマスを転換し、6%の食品生産をすることができれば
食品の10%を楽しく、災害に頑強な食料生産が都市部でできるようになるでしょう。
家庭菜園がここまで「赤字」なのに支持されるのも、
「システムが明朗でウソが入りにくく、見渡せる」ことがその大きな理由と考えられます。
システムの多くを生物に丸投げすることで、失敗した場合に枯れてくれる安全装置も魅力です。
つまり、もう私たちも、
情報ではなく、システムを食べる順応をすでに始めているのです。


それではもっと具体的に考えてみましょう。
わが家には野菜くずを利用してゴキブリを利用するシステムがあり
そこから出たオスゴキブリを主に間引いてアリを飼育しています。
近所からいただいたソメイヨシノの葉を使ってオオシモフリスズメは育てました。
ベランダではバッタ用の草も準備しています
できるだけ高密度、省スペースで飼育したいのと
取り扱いを簡単にしたいので、一つのモジュールは5kg以内、大きさは
タワー型PCぐらいにしておきましょう。
密度を高めるので、ガス交換と、湿度の管理を自動でできるとなお良いです。
機械的システムを作ると基本的に廃熱が出るので、昆虫の最適温度は
常温より少し高め、日本で言うと亜熱帯に適した昆虫を使うのがよいでしょう。
脱走した時も冬場の寒さで死ぬことが望ましいです。
グルメからすると、単一の種では飽きるので10種ぐらいを、2週間に一度の簡単な世話で飼え
半年に一度の大型メンテナンスをすることで維持できたらいいですね。
という感じのシステムを形にして見せるべく、

ちょっと動いています。

ワインのラベルのような紙に書かれた情報ではなく、食料生産の現場をそのまま見せることで
「美味しいシステムを食べる食事」が演出できれば、と思っています。
またご報告します。

今まで目をつけていたものの、味見に出会えなかった虫がいました。
オオシモフリスズメ Langia zenzeroides
シモフリスズメが美味しいことは以前に味見して知ってはいたのですが

それから更に大きく、
しかもサクラを食べるというのです。

しかしなかなか採集が難しい、
というか採集スポットが限られています。
そして、このネット全盛の世の中にあって
希少種の採集スポットの多くは「口伝」です。
流石に全国的な絶滅危惧種ではないのですが、
レッドデータブックではあまり状況はよろしくないとのこと。
富山県:絶滅危惧Ⅱ類
石川県:準絶滅危惧
滋賀県:情報不足
大阪府:準絶滅危惧
兵庫県:準絶滅危惧
高知県情報不足
佐賀県:絶滅危惧I類
少し話はそれますが
環境省の方針でも、希少種の詳細な生息地情報はかなりナイーブに扱われます。
希少種を保全するためには必要不可欠な情報ですが、「希少」というだけでプレミアム感を
感じてしまう人も多く、採集禁止などの具体的な規制を事前に公表してしまうと、
駆け込み乱獲も起こるそうです。
また、そのようなプレミアム感を商売にして希少種を高値で売り抜ける業者も
いるそうで、情報を保護の用途に限って公開することは難しく、
悩ましいものです。
科学の世界で再現性は重要とされますが
再現性もなにも生息地が破壊されてしまえば元の木阿弥。
生息環境は学術論文よりも重いのです。
それに習いまして、今回のオオシモフリスズメの採集場所もネット上には載せないこととします。
この場所は近年街灯として多く設置されていた水銀灯がLED化されたそうで、昔から水銀灯に集まって来ていたオオシモフリスズメが激減したそうです。
そのぶん産卵には成功しているでしょうし、食樹はありふれたソメイヨシノですので
この大きな美しい蛾が、あなたの街にやってくる日も近いかもしれません。
今後に期待しましょう。
さて
成虫から

以前に食べたクロメンガタスズメの成虫のように、密度の高い、しっかりとした剛毛です。
食べづらく、のどにひっかかるのでオススメはしません。
そこから卵を産ませて

孵化したものをサクラの葉で飼育し

フンを乾燥させて軽く煎り、お茶にしつつ
幼虫、前蛹から蛹までを集中的に味見します。
育ててみたところ、あまり難しさは感じませんし
カレハガのように、高密度で食欲が低下する(譲り合ってなかなか葉を食べ尽くさない)という現象も起きませんでした。
ふれあうと威嚇することもありますが、共食いや傷つけ合いもなさそうです。
惜しいところは年1化なので、春にしか発生しないところ。
もしかしたら冬眠状態を人工的に作ることで休眠を打破し、サクラのあるうちに何度も養殖できるかもしれません。
温度調節できるインキュベーターがほしいところです。
途中、脱皮の失敗によって口器がゆがんでしまった個体について、味見をしました。

…おいしい。。。
モンクロシャチホコのような濃い桜の香りはないのですが、全く苦味もクセもなく
外皮の食感、のどごしもすばらしい見事な味です。
トビイロスズメに比べるとややタンパクよりも脂質に寄ったコクの強さはあるのですが
いい味しています。
これを十分に育つまでしっかり育てて

前蛹と蛹を得ました

蛹は

前蛹はアワビのようなコリッコリの食感。
むしろアワビを食べるよりも昆虫を食べてきた歴史が長いのですから
「アワビを美味しいと思う我々の味覚嗜好の本来のターゲットは前蛹」
といえるかもしれません。

続いて次の記事では、オオシモフリスズメをつかった料理開発と、
「情報を食べる人類からシステムを食べる人類へ」という
未来の話まで考察していきます。