脱皮したての白いゴキブリ。彩りにも美しく、かつ食感が良いためとても美味しいです。
以前の虫フェスでは、「ゴキージョ」が振る舞われました。
養殖昆虫食が採集昆虫食に対するアドバンテージとして「成長段階を揃えられること」
があります。多くの昆虫は脱皮直後は体が弱く、多くの捕食者に狙われてしまいます。
そのため脱皮してすぐに酸化反応によって黒くなり、硬化してしまうのです。
これをどうにか遅らせられないか、と考えていたところ、
ブルークラブというカニの文献をみつけました。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0044848600006037
Calcium concentration in seawater and exoskeletal calcification in the blue crab, Callinectes sapidus
甲殻類は昆虫と違ってカルシウムが甲殻の硬化に必要であることが知られています。
適度な濃度にカルシウム濃度を下げ、かつ同時に海水も希釈することで
死亡率をあげないように数時間はやわらかいまま維持できるとのことです。
当然、長期間やわらかいままですと移動や捕食に影響しますし、
カルシウムが不足しているわけですから他の生理的な影響もあるのでしょう。
「ずっとソフトシェルのままのカニ」というのは存在できないのです。
では、カルシウムを用いない、昆虫の場合、どうでしょうか。
ここで、黒化と硬化の最先端、クロカタゾウムシに登場してもらいましょう。
カタゾウムシはほんとうに「硬い」ことだけで生きています。
翅を背中に接着してしまい、スキマのない曲面を構成することで
ものすごい強度になっています。動きが遅く、擬態もしていないので
目立つはずですが、コレを噛み砕ける昆虫食の動物はなかなかいないのでしょう。
茹でて味見してみます。
硬い!けどザクッバシッと弾ける食感は、パッションフルーツの種のようで面白い。カタすぎて弾力がなく、口に残りにくい。内部はナッツの香りと甘みもある。71点
意外と人の奥歯は優秀でした 笑
カタゾウムシの共生細菌の研究から、こんなことが示唆されています。
クロカタゾウムシのクチクラの硬化と着色に共生細菌Nardonellaが果たす役割
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/201302215006545271
学会で聞いたものの、文献はまだ公開されていないようなので
内容はぼやかしますが、共生細菌をなんやかすると
「シロヤワゾウムシ」になるとのことです。
つまり、共生細菌をいじることで、もしくは共生細菌を使わない生物では
何らかの栄養を制限することで「白くて柔らかい昆虫」
を作ることができるのでしょう。
もちろん、これをカニと同じように制限してしまうと
体調を悪くするでしょうから
成虫脱皮の後、体が硬化する前に、栄養制限を発動するような
高度な遺伝子操作をすることで
「食用シロヤワゾウムシ」ができるかもしれません。
クロカタゾウムシは比較的丈夫で飼いやすいとのことで、今養殖できないか試行錯誤しています。
また養殖に成功しましたらお知らせします。