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私がラオスに行く理由

昨年2017年より、特定非営利活動法人ISAPHから専門家短期派遣という形で「ラオスにおける昆虫食を含めた栄養改善事業」のお手伝いをしています。そして今年6月から、長期の10ヶ月での活動ができることになりました。

ISAPH公式には以下の記事が公開されていますが、
http://isaph.jp/activities/2017/180221_01.html

http://isaph.jp/activities/2017/170908_01.html

助成金をいただいたAINからも動画が公開されています。

「そもそもなぜラオスに行くことにしたのか」

について、ここで説明をしておきます。
ISAPHからお声掛けいただいた、というのもその理由なのですが、私の興味関心、および使命感もあります。

ラオスの市場。ここに養殖昆虫が並ぶ日も近いかも。

私を始め、昆虫食をオススメする多くの人が「昆虫食は世界を救うポテンシャルがある」と言い張ってきました。

現在でも20億人が2000種の昆虫を食べているというリストも公表されています。温室効果ガスと効率の点でエビデンスはそれなりに蓄積されていますので、「昆虫を食べない」というある種の社会的偏食が、今後の食糧生産の持続可能性にとってマイナスに働くであろう、との予測ゆえです。

私はこの未来予測を疑うことはないんですが、

「では現在、昆虫を食べる20億人は食べない50億人より救われているのか」という疑問がわきます。

未来のお手本となるはずの20億人が、残りの50億人よりも「救われている」ならば、

もっと具体的に言うと昆虫食が栄養豊富なので「栄養状態がいいならば」

50億人が昆虫食を開始すべき強い根拠になりますし、昆虫を食べる彼らの食習慣を参考にすることで、世界の今後のモデルとなる持続可能な食生活、食糧生産の形も見えてきます。

ところが、ラオスで13年前から保健栄養改善の支援事業をしてきた国際協力NGOである、特定非営利活動法人ISAPHの活動の中で、ラオスの人たちが、昆虫を食べる食習慣をもちながら、栄養状態が悪い、という調査結果が出ています。

具体的には乳幼児の低体重、低身長と妊婦の栄養状態の不良です。
これは一体どういうことか、実際に見て、確かめてきました。

そして先に「救う」べきは昆虫を食べない、栄養状態のいい人たちよりも、
昆虫を食べる、栄養状態の悪い人ではないのか、という使命感が、昨年からのプロジェクト参加の動機です。

思い返せば高校3年生のとき、担任の河野先生に「人の役に立たないことがしたい」と、理学部を志望すると言ったものの、時の流れとはおもしろいものです。

そして役に立たないかもしれないし、職につながらないかもしれない、ということで、ショウジョウバエ研究の傍ら、趣味で2008年に始めた昆虫食研究が、あれよあれよというまに「役に立つ目的の」活動になりつつあります。人生とはふしぎなものです。

役に立つ目的でやってきたわけではないけれど、役に立つ場所が世界のどこかにあるならば、人肌脱ぐのは当然のことと思います。

また、「昆虫食が世界を救う」論には、世界を救いそうにない、効率の低い昆虫食が除外されています。例えば肉食でかつ、養殖の難しいタガメなどです。
タガメを食うぐらいなら、そのエサとなる金魚やカエルをたべたほうが栄養的にはいいでしょう。

タイワンタガメ。香りが強く「フルーティーさが強すぎてスパイシー」というレベル。

しかし、昆虫を忌避することなく美味しく食べる文化は彼らによって蓄積されてきました。

救う・救わないの二元論による分断は昆虫食文化を貧しくしますし、世界的には昆虫食文化がマイノリティである現状があります。

そのため、マイノリティである昆虫食文化から「世界を救う」部分だけを抜粋・強調して、日常的には食べない、あるいはにわかで食べ始めた人たちだけで、ビジネス化を始めてしまうというのは、言い方は悪いですが、最近批判され始めた「文化の盗用」ともいえてしまいます。

こういう「ラオス風」昆虫料理が真似できるのもラオスの昆虫食文化あってのことです。

そして世界を救う(であろう)昆虫食に特化・先鋭化するだけではなく、食文化や楽しみとしての「世界を救わない」昆虫食も、持続可能な形になるよう支援しつつ未来の選択肢として残していこう、というゆるい連帯を見出していけたらと思います。

新鮮ツムギアリ
売られているバッタとカメムシ。養殖ではなく採集品とのこと。

ともあれ、「昆虫食がラオスを救う」具体的なイノベーションはすでに起こせる段階です。

彼らがネズミやリスを森に取りに行く時間をつかってニワトリの養殖を始めたように、

彼らがバッタを取りに行く時間をつかって養殖を始めてみようか、と思えるように、支援すればいいのですから。(とはいっても簡単ではないですが)

そして、近い未来の話として、昆虫食のイノベーションが昆虫食文化の担い手である彼らと一緒に起こせたら、これ以上「世界を救う」昆虫食のスタートアップとしてふさわしいものはないと思います。

今後の予定が無事予定が決まりまして、
6月から10ヶ月、長期のラオス滞在が決まりました。

天気や季節の変動が大きく、生物間相互作用がものすごい熱帯においては
短期間での滞在では太刀打ちできない、とこれまでの短期滞在から判断しました。

私が「蟲ソムリエの現場」に行かなくてはなりません。

ということで、今年はもうそろそろ日本にいなくなります。

お呼ばれがあるので何度か帰国はするかと思います。

引き続きご支援いただければと思います。

ラオスからも情報発信できるよう、いろいろと準備を進めています。

どんな情報を知りたいですか。

Twitterでもこちらでも構いませんので、リクエスト募集します。

「ラオスに来たときのプリペイドsimの設定方法」とか需要ありますか。

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