まずは予告編をごらんください。
iTunesで1000円で購入できます。
いいドキュメンタリーでした。大まかな主張は私も彼らに同意します。
→バグズ -昆虫食は地球を救うか- - https://t.co/deiJZrkCC3 #Filmarks #映画 #バグズ-昆虫食は地球を救うか-— 蟲喰ロトワ 昆虫農家 蟲ソムリエ 6月からラオス (@Mushi_Kurotowa) 2018年5月2日
ラオス行きのiPadにダウンロードしておいたんですが、結局見れたのは帰りの飛行機の中でした。
いやー、いいドキュメンタリー映画です。
シェフでもあり博士課程の学生でもある主人公二人。世界中をまわり、そして日本もまわり、昆虫食の入り口をフィールドワークしてきます。
最初はおっかなびっくりで、そして2013年FAOの発表を受けての制作開始だったようですが、フィールドワークを通じて次第に彼ら自身の「哲学」が生まれてきます。
彼らの最終的な主張は、そもそも「人はおいしく文化的な食事をする権利がある」ということです。ここが研究者とシェフの根本的に違うところでしょう。
栄養的な、あるいは栄養機能的な何らかのエビデンスを見つけることで、一気に広がっていくだろう、という研究者に対して、彼らシェフはフィールドワークを通じて「昆虫を食べる文化」というものに興味をひかれていきます。
そして、「FAOのレポートはデータの読み間違いによる大きな誤解だ。」とまで言い切ります。
実際問題として、世界の食料の統計を見てみると、すべてがうまいこと行き渡れば、不足する量ではないです。
貧困による栄養不足を解消できる、十分な量が生産されています。
政治的・経済的な不均衡が現在の、そして将来起こりうる食糧問題の本丸であって、そこに昆虫の増産という選択肢を手に入れたからといって、格差の増大になるか、それとも縮小に寄与するかは運用次第です。
彼らの主張には私も概ね納得します。
ですが、昆虫の養殖に関してはあまり提案がなく、昆虫独特の生理生態的戦略や、養殖にかかる他の動物とは異なる性質については深掘りできていなかったようです。彼らに寄り添う昆虫学者がもっといれば。彼らの結論は変わっていたかもしれません。
私が思いつくだけでも、ウシやブタなどの大型家畜よりもライフサイクルが短く、そして小さく、力が弱いことで
体力のある男性しかできなかった家畜養殖が昆虫ならば誰にでもできるようになる、という労働従事者を選ばないメリットや、自給的農業から出るバイオマスを昆虫をつかってやりくりすることで、外から何かを買わなくても、現金収入がなくてもより栄養状態のいい食生活が可能になる、とか。そして殺虫剤に対抗できる強い農業をつくることでむやみな殺虫剤型のプランテーションによる環境破壊を阻止できるとか。いろいろな既存の食糧問題に対して、昆虫は新しい選択肢を提案してくれます。そしてそのいくつかは、すでに実装可能です。
彼らの言うように、西洋の文化が新しく昆虫を手に入れたとき、格差の拡大と一つの一過性の「スーパーフード」を手に入れて、それが流行で消耗されることもありえます。それではあまりにつまらない結末です。
また、彼らのように学術を背景とせず、シェフを背景とする場合でも、フィールドを通じて考えることで一気に成長が進むということにも目を見張るものがあります。
なのでフィールドワークは自己実現にとって魅惑の世界なのです。
やはりここで考えたいのは、彼らのフィールドワークを提供した住民たちが何を得たか、という部分です。
このドキュメンタリーも含めて、人を対象とした研究調査はどうあっても人の自由を邪魔します。
昆虫食、ということで虫を対象としているように錯覚しそうになりますが、あくまでそこに住む人間が文化として昆虫を食べてきたことを学んでいくのがフィールドワークです。
私もラオスのフィールドに立とうとする人間として、「彼らに何を還元できるか」を常に考えながら活動をしようと改めて思いました。