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トノサマバッタ Locusta migratoria
は私が今最も注目している養殖食用昆虫です。
以前加齢に伴う味の変化を報告しましたが、今回は系統による差を比較してみました。
某巨大系統。日本最大のトノサマバッタ系統です。(写真はどちらもメス)

向かって右は飼いやすい沖縄系統。
体重にして3倍強、写真の個体は5.4gもあります(最大で8g以上になることもあり)
これはもはや立派なエビですね。


箸と比較してもこの大きさ。

翅のサクサクとした歯ざわり、胸のカリッと堅揚げの外皮の内部にほっこりと甘い筋肉の味。腹部の脂肪体は濃厚なうま味とコク。全体としてトウモロコシ系の香りと加熱したキチンの香ばしさ・うま味が心地良い。やはりでかいと部位別に味わえるので楽しい。
昆虫の家畜化はその系統の作成も
ビジネス上の大きな一手となります。コレが簡単に増やせたらなぁ。。。。
と思う次第です。

パッと見 巨峰のタネのようですが。

れっきとした昆虫です。
おそらくヒラタアブ系のサナギではないかと。
草に付いていました。
実食
びっくりするぐらい無味。サクッとした外皮と液状の内部。わずかに草の香り。
双翅目の幼虫は抵抗がない代わりに特徴がないことが多い。
大量生産と栄養としての消費には向いている気がする。
うーむ。期待した美味しさは感じられなかった。残念。

アメンボは飴のような香りがするので
「飴ん棒」が転じた名前である。
これほど心躍る文句はあるでしょうか。
半翅目の良い香りのなかでもこれは期待大です。
今回はヒメアメンボを捕まえました。
ヒメアメンボ Gerris lacustris latiabdominis

わずかにキバラヘリカメムシににた甘めの香り。
茹でたためか「飴のよう」と形容される甘い匂いは殆ど感じられなかった
食感はホソヘリカメムシと同様の外皮シャキシャキ・中スッカスカタイプ。強い味はない。
半翅目独特の食感はありましたが、期待した甘い匂いは感じられませんでした。
やはり生食にチャレンジしなくてはいけないのでしょうか。
まだナミアメンボなどの他の種が残っているので、
めげずに半翅目の探索を今年も行いたいと思います。

久しぶりの更新です。
春になると一斉に虫達が起きてきて
それにともない本業の実験もカツカツになってきて
味見をサボってしまいました。
今日は現在開拓中の半翅目より。
ウズラカメムシ Aelia fieberi
うずらの卵に模様が似ていて、触角が赤、顔が三角で大変あいらしいカメムシです。
触っても臭いを発すること無く、ちょこちょことあるき、丸っこい形も相まってかわいいカメムシといえるでしょう。

さて、とうぜんですが、
本ブログで重要なのは味です。
いつものように茹でて頂きます。
触ってもまったく臭いを発しなかったので油断していたが、
噛むと内部に強いカメムシ臭。苦味も感じられ、おすすめできない。
カメムシのメントールのようなスッと感はなんなのだろう。ちょっと気になる。
典型的なカメムシ臭のなかに若干の柑橘系の香りがある。やはり半翅目は難しい。
おすすめできません。触って愛でるほうがよさそうなカメムシです。

2

クビキリギス越冬成虫♂Euconocephalus thunbergi
クビキリギスやツチイナゴは直翅目の中でも成虫越冬をするタイプで
トノサマバッタ用にとってきた草にこっそり潜んでいます。
消化管内容物がないので、絶食させること無く直ぐに茹でて食べることができます。
体が軽いので箸でおさえながら茹で上げます。
今回は同じぐらいの大きさの茶色タイプとミドリタイプが見つかったので
食べ比べてみました。

茶色
消化管内容物が無いためか体は軽いもののエグみが全くなくとても美味しい。腹部だけ考えるとカミキリムシに迫る勢いの穏やかな味。翅や足はやはり硬い。
ミドリ
茶色より更に香りが良い。これは茶色の色素になにか悪い味があるのかもしれない。いずれも美味しい。
個体差を考えると茶色、ミドリともに30匹ぐらい欲しいところですが
もしかしたらミドリ型のほうが美味しい傾向があるかもしれません。
これから4月後半からは卵越冬のバッタ類が出てきます
植物も昆虫も春が来たら直ぐに対応してきますね。
タラタラしているのはヒトだけのようです。

久しぶりの更新です。
某学会に参加し、関係者各位にこのブログがバレていることがわかりました。
引き続き気を引き締めて、怒られることを恐れずに頑張っていこうと思います。
さて
以前幼虫越冬していたチャバネセセリですが
啓蟄もとうにすぎ、成虫へ向けて蛹になっていました。

味見
鱗翅目のサナギが幼虫よりも美味しいことはよくあることですが
収斂味がよりつよくなっていて渋みがあり。外皮も幼虫よりも硬くなっており、
あまりおすすめの味でなくなってしまいました。
幼虫よりサナギのほうがあまり美味しくない珍しいタイプ。
色も形もステキで、うぐいすあんの和菓子のような透明感のある造形ですが
味まで三拍子そろう、というのはなかなか難しいようです。

冬はバッタのエサであるイヌムギを求めて河川敷に採集に行く日々です。
そこでオオカマキリの卵を見つけ、味見をしようと
引き出しに入れておきました。
卵塊のフワフワの部分をむしり、卵を食べた、との話を以前に聞いていたからです。
当然孵化させるつもりは毛頭ありませんでした。
まだ春まで時間があるのでそう簡単には出てこないだろうと高をくくっておりました。

デスクトップ占拠。
華奢な肌色の孵化幼虫が周りを伺いながら我が物顔で散開する感じは
こいつらによく似ていました。本当にモチーフじゃないかと思うぐらいそっくり。

研究室の平均気温はインキュベーターの影響で25度前後で年中一定しております。
春はまだ先なのに起こしてしまいました。
蟷螂には申し訳ないことをしました。
食べて供養いたしましょう。

一緒にトノサマバッタの孵化幼虫も頂きます。
カマ茹で湯豆腐として食べましょう。
カマキリ
しなやかで、しゃきっとした歯ざわりがとても心地良い。
ほそもずくのような食感。ポン酢もよく絡んで豆腐に食感のアクセントを与えている。
トノサマバッタ
カマキリより一匹ずつに重量感があり、ぷちっとした食感とシャリッとした歯ざわり。なにもたべていないせいか草の香りはほとんどしない。味の絡みはカマキリのほうが良い。
同じ孵化幼虫でもまったく食感や味が違いますね。
次回は孵化する前の卵を食べ比べてみたいです。

K大学の教授から分けていただいたオレンジヘッドローチ。 Eublaberus prosticus?

羽化直後で柔らかかったので、これを味見することに。
彼らはGの中でかなり大型。デュビアとマダガスカルの中間ぐらい。
厚みもあって垂直な壁も登れない。しかも食欲も旺盛で
とても飼いやすい。
ただ
飼っていると臭いのが難点
蒸れた靴下に腐ったミカンを入れて野ざらしにしたような酸味のあるニオイとムレた不快臭。
正直味見するのを延期してきましたが。
これだけ美味しそうな成虫がとれたのだから食べてみましょう。
大型の昆虫は部位別で食べられるのが強みですね。
翅;クニュっとした食感とシコシコした歯ざわりが美味しい。旨味もあり昆虫の羽ではかなり美味しいレベル。
頭部;芋系の香りと粒感のあるタンパクな味。全くエグみがない。
胸部;かなり美味しい。やはりサツマイモ系の香り。
見た目で気になる脚部のトゲも食感は柔らかく、問題なく飲み込むことが出来た。
腹部;やはり強いゴキブリ臭。集合フェロモンの強い匂い。味は問題ないはずなのだが濃いニオイがダメ。調理前に腸を切除するか、揚げて揮発させる必要があり。
非常に残念。
腹部さえおいしければ100点なのに。
カミキリムシはコーン系の最上位種。ゴキブリは芋系の最有力候補 だったのに。
腹部の付属腺あたりから通常の食品では考えられない
濃い有機系香料のニオイ。
なるほど。 以下考察。
ヒトの嗅覚は数個の分子でも感じるほど敏感にできていて
しかも他のニオイ情報と混線しにくい仕組みになっている。
(2004年ノーベル医学生理学賞)
ので、
ある食べ物を口に入れると
複数種のニオイがそれぞれ異なるニオイとして知覚される。
そして
それぞれが一定以下の濃度だと「風味」として処理され味覚が優先される。
ところがある単一のニオイ刺激を強く感じると
味覚と分離することは困難になり「非食用」となる。
以前食べたシュールストレミング(ニシンの発酵缶詰)も味は良いのだが
下水の中で食べている感じで、ニオイはどうしても無視できなかった。
味とニオイを分離するには
ニオイが一定以下の濃度であることが必要なのかもしれない。
ということで、
うちのオレンジヘッドは「揚げ調理」もしくは生ごみ処理として飼育することになりました。
食欲旺盛でなんでも食べるので、おすすめのゴキブリではありますが
味まで都合よく「美味しい」とはいかないようです。

冬になり、あまり野外の昆虫が手に入りにくくなって参りました。
今こそ養殖モノを、と考えてはいたのですが
養殖モノはその名の通りいつでも手に入るので
なかなか手が出ません。
今のところ
デュビア
オレンジヘッドローチ
マダガスカルゴキブリ
G三人衆が元気に野菜くずを食べてくれているのですが。。。
さて、
今回は野外のチガヤで幼虫越冬していた
チャバネセセリ。  Pelopidas mathias

アタマが大きく特徴的な体型をしています。
いつものように茹でポン酢で頂きます。
プチッとした触感と頭部のカリッと感。香りは強くなくほのかにワラの香り。
他のイモムシに比べアタマが大きいので若干ぷちっと感にカリッと感が加わりお得。おもしろい。
内部は粒感のあるタンパク系の味。
イモムシ類はプチッとした触感が魅力ですが
あまりに弾力ばかりだとクチクラのカリッと感が懐かしくなるものです。
その点でいうとチャバネセセリは両方楽しめる感じがいいですね。

「カミキリムシが美味い」
というのは昆虫食を検索した方なら必ず目にすると思います。
しかし、生木に住むことから、採集に大変手間がかかり、
薪割りの風習も少なくなってしまったことから、たっぷり食べられるほど
取れなくなってしまいました。
「テッポウムシ」と言われ大変美味なのです。
さて、
今回はとある方から頂いた
シロスジカミキリの蛹  Batocera lineolata

美しいですね。
塩ゆでにして何も味付けせずに頂きました。
例えるなら焼きバターコーン。
香ばしさとクリーム感が最高です。
食べ慣れないニオイや臭みがないので
初めてでもすんなり食べられてしまいます。
この蛹、あえて「完品」をおねがいしたのですが
造形として大変美しいので写真を撮っておきたかったのです。
チャームポイントはクルッと巻かれた触角。
カミキリムシによって巻き方に個性があります。
比較してみましょう
参考 ゴマダラカミキリ  Anoplophora malasiaca

体に対して長いので巻き数が多くあります。中世ヨーロッパのような
上品な緻密さのある印象
ベニカミキリ Purpuricenus temminckii

こちらも長いのですが、渦巻状でなく、
肩を二周する 楕円の軌道をもった巻き方です。
ロープを巻きとってしまう様子が想像されます。
クワガタ採集をされる方はけっこう朽木を割って
カミキリムシを見つけるそうです。
ぜひおやつとして食べてみてほしいものです。
追記
この美味しさを何かで再現できないかと
twitterに書いた所、アイデアを頂きました。
「ライスペーパー」
弾力がなく、フィルムのような感じが蛹の表皮にそっくりだと思います。
ということで検索すると
米粉150g ,片栗粉50g、水300gをまぜ、
大さじ二杯をのばし
レンジで一分半加熱すると出来るとのこと。
米粉ある!
次に内部の餡。
インスタントのコーンスープがあったので
水で溶いて片栗粉で粘度を調整。
良さげなところでこちらもレンジで二分。
カピカピにならないうちに巻いて
香ばしさを出すために表面を焼く。
できた。

餡はもっと脂肪分の多いクリーム状態だったので
改良の余地あり。
表皮のフィルム感はかなり再現できていました。
アイデアありがとうございました。
「昆虫料理を既存の食材で再現する」
というのも新しい切り口である可能性があります。
普通の食材から想像される「共通の味のイメージ」が
新しい食材への嫌悪感を中和しうるかもしれません。
というか思い立った時に
材料が全て手元にあったことにびっくり。 笑