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AI HASEGAWAさんのセミナーに参加してきました。

TwitterとFacebookで何度かやり取りをしていただいた岩崎秀雄先生から 日本滞在中に招待をいただきました。

ひっそりと行われている(?)オープンセミナーとのことで、 アートは門外漢ですが時間がとれそうだったので、ぜひお会いしたいと突撃してきました。
久しぶりの再会をすることになったAI HASEGAWAさん、会場で挨拶をすると、「きっとおもしろいのでちょっとなにか喋ってもらえますか」 との無茶振り。

こ、、、これは。。。なんの準備もしてないですが、受けて立とうじゃありませんか。ラップバトルみたいになってきましたね。


セミナーの内容はすごくディープで、「発想し、つくる」という活動のサイクルの速さがものすごいと感じました。このようなタイムラグの短さはコンセプトデザイナーを思わせます。 特に生殖にまつわる作品が多く、作品を知った当時「僕にも子宮という臓器があれば出産についてこんなにも深く考えられたのだろうか」と嫉妬も覚えました。

私はアートの批評を勉強したわけではないので、アートという文脈での評価をすることはできないのですが、彼女に対して 私が尊敬する姿勢として「徹底したリサーチ」と「デメリットの開示」にあります。

これは科学者の倫理としても通じる姿勢なので、もしかしたらアート業界ではあまり見ない (リサーチが甘かったり、ウソ、おおげさまぎらわしい作品ですらアートとして評価されてしまった、GFPバニーという作品もあります。) のかもしれません。ひとまず業界を超えるパワーと技術と手法を持つ方だと考えています。

2013年の「私はイルカを生みたい」ではまだ見ぬ出産に関する自己決定権に関する遠い未来の技術を想定したものでした。 おそらくこの発想はズートピアにつながるものだ、と私は勝手に解釈しています。現行法によると、出産によって生まれた存在は「人権」をもつのです。 2015年の(Im)possible babyでは同性間カップルの子供を想定し、いくつかのフィクションを入れながら 未来の家族を描き出しました。ここで当事者である同性カップルの片方はポジティブな感想を、もう一方はネガティブな感想を述べていたのが印象的でした。

今回「未来と芸術展」で紹介されていたのは生殖医療の一種でありながら「最新テクノロジーをあえて抜く」という方法で考えられた 2011年の作品、Shared baby 。複数親のいるベビー。まず受精卵からES細胞を作成、そこから精子を作成し、他の卵子と受精させると3人親の子供が生まれます。ミトコンドリア病などの遺伝病の治療目的として「消極的な3人親」は見当されはじめましたが、産む権利としての積極的な出産のための議論はほとんどされてこなかったようです。そのときに「デメリット」について専門家に取材した動画が、まず流れていたのです。

この展示で想定された技術はもう技術的には利用可能で、法的な議論が届いていない状態です。 祖父母から突然孫が生まれるような、わりと「枯れた」テクノロジーのみで生まれることができるかもしれない ベビー。枯れているからこそリアルさが強く、反実仮想を「実装」するために契約書を交わし、 専門家に「まずデメリットについて」取材しながら意見を深めていきます。
セミナー会場から出てくる感想は「子供がいじめられるかもしれない(だからすべきでない)」とか、「出産される子供と同意がとれないから搾取的である」と言った意見も出ました。

私が聞いているうちに感じたのはすでに実装されている「養子」という制度の先進さと異質さです。 「DNAが共有されているからこそ責任をもてる」という複数親遺伝子の「意義」を語る参加者に対し、任意で、両者(と立ち会い人としての行政)の合意で親子関係を結ぶという「養子」の契約主義は、DNAと遺伝学によって図らずも強化されてしまった血統主義と真っ向から相反します。

そして「すべての赤子は親と契約してうまれてきたのではない」という慣例的な人権無視(そこからの反動として半出生主義に行きますか) に対しても違和感が増えていきます。 わたしは誰のDNAに寄るものか、ではなく本人の意志により親が決まる。そんな世界に憧れもありますし、全てが自己責任になる怖さもあります。 あとでTwitterで教えていただいたのですが、小さな農業共同体においては子育ては集団で行い労力を節約することで、「誰の子供」であるかは薄くなる ことがあるそうです。

セミナーの後の参加者の発言が非常に印象的でした。 「とても普通では開示できないような内心が漏れ出てきている」ような空気を感じたのです。 これがアートの「能力」といえるかもしれません。 倫理的なもの、非倫理的なもの、そして分類不明の不可思議な感情まで、漏らし出さずにはいられない。我慢ができない。たまたま、その場の状態によって ひどく非倫理的な結論を導き出してしまうかもしれない。それでも根本は「人は表現せずには生きられない」という社会的「表現欲」の概念です。

そして私は、オファーに応えて、最後に蛇足として昆虫食の話をします。論というよりは感想です。 POP ROACHの作品を森美術館で「観た」とき、以前からこの作品をしっておきながら非常に怒りが湧いてきたこと、 愛読書である火の鳥の太陽編でゴキブリが食べられている生原稿を観て、「怒り」が湧いてきたこと。アートの業界が高等教育を受けたハイソなお金持ちを対象とする「市場」に評価されることによって、アートが社会に向けて発信する意見が、顧客にならない貧乏なマイノリティを抑圧したり排除しているのではないか。 そして私の怒りそのものが、ラオス人を隠れ蓑にした私の独善的な怒りかもしれない、という気づき。 そしてそれを「言わずには我慢できなかった」のです。

そこからさらに拡大するとアートとして 虫をモチーフにした表現をしている作家さんにやってくる心無い言葉にもひとつの説明が付きます。 「キモ」「なんでわざわざ虫?」「これなら我慢できる」 などなど。

虫をモチーフにしない作品に対しては、とても言わない失礼な発言でしょう。これらは 「そのアートによって我慢できずに漏れ出してしまった内心」なのではないでしょうか。 つまり虫アートはまっとうに「アートとして」機能したのです。 すでに虫がアートじみた機能をもっているゆえに、アーティストが虫をモチーフとして使うことの「オリジナリティ」を発揮するのがむしろ難しいのではないでしょうか。

逆に言うと、内心と表現を「一致させても良い」ネコとかイヌなんかは、大衆娯楽としてのパワーがありますが、ネコが嫌いだったり、イヌに噛まれてトラウマだったりする人にとっては、なかなか内心を出すことが難しい状況を作り出してしまいます。 また「好き」とはいっても食材として好きな場合、イヌを食う話をイヌ好きとできる場所などないでしょう。

ところが、幸いなことに、 昆虫を食う話を、「昆虫好き」の人たちとできる現状があります。これはすごいことです。「昆虫好き」を公言すると「食うの?」とニヤニヤ聞かれることもあるそうで、私の責任ではないですが、昆虫食趣味が表に出ることによる迷惑も、もちろんかかっています。

しかし違っているからこそ、共感できないからこそ興味関心が互いに多様化し、無限の多様性をもつ昆虫という 、一人の人間の一生では到底カバーできない世界を、過去から未来まで、みんなで補完して少しずつ 説明できるようにしていこう、というのが「昆虫学」の営みです。

昆虫表現物は昆虫学をベースにしないととても困難ですし、 広がりや深みを得るためにも昆虫学との接点は必要に感じます。
しかし、大きな偏見により、その虫表現物の生産と開示を妨げるものがあります。「わざわざ」という言葉です。

昆虫食への批判としてもよく言われるのが「わざわざ見せる」というものです。 「私(社会)が嫌がることを知っているのに」と言ったニュアンスがあります。 あなたの感情はマイノリティ、私の感情はマジョリティという優越感もありますし 「マジョリティである私」がないと生まれない「わざわざ」という感情であるにも関わらず、 「虫好きから嫌がらせを受けている」といったマイノリティ的な立ち位置を利用しようともしてしまいます。

昆虫、そんなにわざわざ生きているものでしょうか。地上の覇者として、一般的にあまねく存在するものと私は認識しています。 彼らも私たちも、空はそれほど高く飛べないですし、自力で海に深く潜ることもできません。地上の狭くて薄い範囲に生息する、隣人として 「共感できないながらも存在することを認識する」というバランスをもっていきたいものです。

さて、またAIさんの作品について 「子宮という臓器をもつからいいアイデアにつながったのではないかという嫉妬」についても 失礼ながらぶつけさせていただきました。

お返事としては「確かに長い付き合いなので長い時間を生殖、出産といった思索につかうきっかけになったかもしれない。けれど『いいアイデア』に必ずしもつながるとは思えない」 とのことでした。ありがとうございます。

「長い付き合いだからといって「いいアイデア」になるとは限らない。」自戒していきたいと思うのと同時に やはり「いいアイデア」という時間空間を超える価値観についても、ずっと考えないといけないものだと思いました。
みなさんも、 「いいアイデア」ありますか? 誰に聞いてもらいますか?どこにぶつけますか? どうやって表現しますか?

そんな場を作りたい、としばし準備をしていきます。少々お待ち下さい。

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