この作品、開催中の「おいしい昆虫生活®︎展」にゲスト展示してもらっているのですが、その紹介がまだでした。
まだ私がラオスにいた11月頃、オンラインで監修として参加したプロジェクトがありました。「昆虫食おままごとセット」
これは、、なんとすごいコンセプトだろうか。私自身が思いつけなかったことをいたく嫉妬したものですが、発案者はアートディレクターの北恭子さん。私は監修、考証としてチームに後から参加することに。
木工職人の方や、香料メーカーの方もすでにチーム内におり、万全の体制です。これはいい形にせねば。
私からは香料で再現できる「香る昆虫食」の部分と、3つ作成予定の昆虫料理のバリエーションのバランスを見つつ、揚げ物、燻製からのスープ、スイーツと、調理歴のわかるメニューを提案しました。採ってきてから調理するまでの衛生的な器具の使い分け、加熱した時のバッタの色の変化、ラオスでよく見る「スネはトゲがあるので除去するけど、フトモモはおいしいので残す」という脚の除去のルールなど、昆虫をまだ食べたことがない子供が、おいしく安全に昆虫を調理するためのエッセンスが詰まっています。
元ネタとなった料理はこれら。
これから未来の話として、昆虫食が普及にするにつれ、昆虫を食べたいと素朴に思う子供達に対して、本物の昆虫を使って適切に案内できない、「昆虫を食べない」保護者の方が多い時代がしばらく続くでしょう。その時に昆虫を含まない、おままごとセットとしてスモールステップを踏めることで、子供にも、その保護者にも優しい知育玩具になりそうです。
そこで、ラオスにいる私は、はたと気づいてしまったのです。「この作品が発するメッセージには普遍性がある」
つまり、ラオスの子供達に、特に農村部の子供達に、この「おままごとセットの中に昆虫食も含まれている」ことのメッセージが届いていないのではないか、という問題意識です。なので首都ビエンチャン、そして近所のコンビニと、おままごとセットがないか、調査してみたところ、確かにあるのです。あるのですが、当然ながら昆虫は含まれていない。そして売っているのも都市部で、昆虫をよく採って食べている、農村部の子供達の手の届く値段でもないのです。
今回、作品は一点ものですが、この先、むしろプラスチックの安っぽい大量生産品として、ラオスの田舎にも届くような、「昆虫を食べたいいと思うことはおかしいことではない」という普遍的なメッセージを次世代に届けられるような、そんな未来まで、提案したいものです。
そしてこの作品が、もう会場に届いています。香りも嗅ぐことができます。ぜひご覧ください。
とはいえ、とはいえ子供達は自由ですので、「知育玩具」に込められた大人たちの重いメッセージに対して、軽やかに飛び越して遊んでいくのです。伝わったか、伝わらなかったか。それはそれとして、遊んでもらえたらうれしい。
昆虫食仲間のムシモアゼルギリコさん家の虫を食わない娘さんも、遊んだそうです。楽しそうだ。そして自由だ。