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「子沢山を願って」
ニシンの子に味付けをし、数の子とするそうですが
子の数だと昆虫も負けてはいません。
ニシンの性成熟は4年、産卵数は年齢とともに増加し
ざっと「年齢×万粒」ぐらいだそうです。
成熟4年、4万粒だとすると
養殖トノサマバッタは一ヶ月半で性成熟し、
その後およそ1卵塊100個の卵を5卵塊・二週間で生むと単純化すると
4年で1万2千粒。いい勝負です。


ここで生態学の基本的な教科書
「生態学キーノート」を見てみましょう

動物の生活史のおおまかな分類
「r-K選択説」によると
動物は
「個体群成長速度を重視するr選択者」と
「競争力を重視するK選択者」に
分けることが出来ます。
昆虫は典型的なr選択者で
早熟、小さな成体サイズ、繁殖への大きなエネルギー配分、短い世代時間をもつことで
適した環境になると一気に増えて、優占します。
逆に哺乳類やヒト(霊長類)は典型的なK選択者といえます。
競争力を最大化(個体の能力を強化)するために晩熟、
大きな成体サイズ、少数の大きな子供、繁殖への少ないエネルギー配分、
長い世代期間をもつことで
様々な環境に対応できる個体を長期間かけて養います。
このように比較すると、
ヒトが一定量の動物を食べる際に
K選択者を食べると、減った個体数が回復するまでに時間がかかり、その間に大きく生態系が変化してしまうことが想像できます。(例としてニホンオオカミの絶滅が挙げられます。)
逆に、
r選択者を食べて減った個体数は
その個体群の成長速度が速いので、すぐに元のサイズまで回復するでしょう。
なので、
「r選択者」が殺され、食べられることは彼らの戦略の想定の範囲内であり、
環境さえ破壊しなければすぐ回復するものだ、といえそうです。
(あくまでモデルなので、実際には生態系の変化に応じた多様な食を見出すことが必要でしょう。)
なので
「r戦略者の繁殖する生態系を守る」ためには
昆虫採集を奨励し、社会の意識を環境の保全に
向けることのほうが効果的だと思います。
「残酷だ」と少年の昆虫採集を非難し、昆虫や生物に無関心なまま
どこにでもあるような大型商業施設の開発に喜び勇んで
遊びに行き、シネコンでカワイイ動物愛護映画に涙するようでは、
先が思いやられます。
「非商業的な昆虫採集による個体数減少は大抵、昆虫の生活史の想定の範囲内です。
採って、死ぬまで飼うもよし、殺して標本にするもよし、食べるも良し。
自然の恵みとして十分に利用し、見識を深めてください。」
と子どもたちに伝えたいものですね。


話がそれました。
「子沢山」だったら昆虫も負けないので
数の子は昆虫の卵にしてしまおう」という話でした。
ニシンは19世紀には年間100万トン水揚げしていた巨大な水産資源だったものが
近年は年3000トンぐらい。枯渇が心配されます。
(http://www.fishexp.hro.or.jp/exp/central/report/hokoku/62/P41~78.pdf)
また、
漁業者は生活がかかっているため
「枯渇の心配」程度では操業を止めません。「残り何匹」という確実な計測で
初めて止めることができますし、ニシンのように回遊し、定住しない魚は
その資源量の予測が一層困難になります。
今回のブログに合わせて数の子も買って味を比較しようとしたのですが
あまりに高いので見合わせました。
「採れない」→「値段が上がる」→「高級だ」→「富裕層が買う」→「採れば儲かる!」→「減る」
という資源量が末期のウナギ稚魚のような
悪循環が発生していると思われます。
そこで、
農作物と同様の資源管理ができる養殖昆虫で、その代替としてしましょう。
トノサマバッタの卵とカマキリ卵の醤油漬け
カマキリは野外で捕獲し、
バッタを与えて育てたメスのオオカマキリの
卵を使いました。
「パフ状の卵鞘をむいて食べる」との噂を聞いたことがあるのですが
泡状の卵鞘は強度が高く、卵がプチプチと潰れてしまうので、
ある程度ほぐしたらそのまま昆布醤油に漬け込みました。
次にトノサマバッタは
泡状の物質につつまれた卵塊を地中に産みます。
卵塊の周りは土が付いているので
ほぐして取る必要があるのですが、コレが大変。
産卵直後は強固につながっており、ほぐれません
産卵後1週間程度で吸水し、卵が一回り大きくなります。
このとき、ようやっとひと粒ずつほぐすことができるようになります。
これもほぐして醤油につけました。
完成

…見栄えは…あまり気にしないでください。
「揃ってない」というのは卵の集団の見栄えを悪くするようです。
マダガスカルGの卵はおいしいので、それを筋子状態で醤油漬けにしても良かったですね。
味見
トノサマバッタ卵
けっこう草の臭みがあり、生臭みが強くあまりおいしくない。プチッとした食感の他に、芋っぽい粒感もあり。
カマキリ卵
卵鞘の部分はかたく、かみ切れない。すぐに卵が破裂してしまったが、
まったく臭みのない味。美味しいが取り出すのが困難。難しい
ニシンの数の子に代わる卵は
マダガスカルGのほかはなかなか見つかりませんね。
そういえば蚕の卵も美味しかったですね。
引き続きおいしい卵を探索することに致します。

黒豆とチョロギは
一緒に供されることの多い縁起物だそうです。

このチョロギ、
何かに似ていないでしょうか。
当ブログを御覧頂いている皆様なら
分かるかと思いますが
「鱗翅目の蛹」にそっくりですね。

(エリサンの3齢幼虫、終齢幼虫 前蛹、 蛹、繭の一連。前蛹とサナギが美味しい。)
本家チョロギは「長老木」と当て字をするそうですが、
調べた所、由来や効果があまりはっきり書いていませんでした。
鱗翅目の蛹の方が栄養的によさそうなので、
代替してしまいましょう。
エリサンサナギ、あらため 「栄養強化チョロギ!」
とでも名付けましょうか。
食紅の色を付けた寿司酢に、
エリサンの蛹を入れ煮立てた後冷やしました。
そして黒豆には、同様にタンパク質が豊富なコガネムシで
代替してしまいましょう。
以前食べた
クロコガネマメコガネを使えば語呂としてもバツグンだったのですが
今回は
データ測定済みの「ケブカアカチャコガネ」をいただきましたので
使います。

黒豆チョロギ あらため 黄金エリサン

なんということでしょう。
激似です。
味見:
黒豆コガネ 揚げていないので若干土臭さが残ってしまった。旨味は十分でクロマメの味付けとの相性も良い。
栄養強化チョロギ
ピリッとするほどの酸味。後からエリサンの木のような香りが来てとても美味しい。酢に漬け込むことで身が引き締まり、グッと噛みごたえのある印象に。
エリサンは
酸性条件で食紅に漬け込むと
色がよく入る気がします。
「茶色で色合いが悪い」と昆虫料理に関してはよく言われるので
今後美味しそうな赤や黄色を食用色素で添加することが普通になるかもしれません。
色素との相性については今後の課題です。

次は田作り。
五万米(ごまめ)とも呼ばれ、

名の由来は
イワシを肥料として使うと五万俵の米がとれたとの逸話から
だそうですが、
「豊作を願う」であれば、
「肥料食べちゃだめでしょ。」ですね。
やはり「豊作を願って食べるもの」といえばイナゴでしょう。
日本のイナゴ食文化は稲作を背景としています。
水を張った水田により周囲の環境が湿潤に保たれると
バッタ類の中でもイナゴが優占します。
(河川敷のように乾燥するとトノサマバッタやクルマバッタが増えます)
そして晩秋も元気に活動し、またジャンプはしても飛翔はしない特徴から、
稲刈り後の田んぼでは
「イナゴだけ」が沢山採集できるのです。
デンプン源として米は優秀な食品ですが、
どうしてもタンパク質の含有量も低く、アミノ酸の一種、リジンが不足しがちです。
それを補う目的でも
イナゴは優秀な補助食品です。
ということで
「田作りはバッタで作るのが筋でしょう!」
今回は山形産イナゴを使った既成品を使いました。
成田山で市販されていたものです。

ただ、
現在は稲に農薬を散布するので
イナゴはかつての無農薬栽培のように大量に発生しません。
養殖するにしても、年一回しか発生せず、成長も遅いので
不向きです。
また、大きさが小さいので、
写真の田作りのように「ワカサギぐらいの大きさ」の
甘露煮も欲しいところです。
では、どうすればいいか
今回も「トノサマバッタ」の登場です。

トノサマバッタの南方系統は
温度を操作することで
休眠・非休眠をコントロールできるので
好きな時期に育てることができます。
また、
イナゴに比べて大きさも大きく、
成長も早いので、食用にはより適しているといえるでしょう。
更に、立派な翅があるので
野外で採集するのは一苦労です。
2012年では、
河川敷で2時間網を振り回して
採集で来たのは38匹でした。
なので、
養殖のメリットは
採集の容易なコバネイナゴよりも大きいと思われます。
では参りましょう。
レシピは福島の某おばあちゃんからの受け売りです。
1,一晩フン抜きをして下茹でし、水洗いする
このとき黄色い汁がでるのでゆでこぼすことで味がまろやかになります。

トノサマバッタの体表の茶色部分に含まれるアスタキサンチンは
このとき遊離して鮮やかな赤になります。大変おいしそうです。
2,天日で干す

魚介類の一夜干しと同様に、一旦乾かすと食感がよくなり、
味もしっかりしてきます。
そして、空気に晒すと、鮮やかな赤はくすんだ茶色になってしまいます。

3,炒る
フライパンに入れ、半乾きのバッタを焦げないようにしっかり炒ります

4,煮る
カリッと仕上げるには加熱によってカラメル化する砂糖、
内部をしっとり仕上げるには果糖ぶどう糖液糖、つまりサイダーを入れます。
(これも受け売りです)
今回は昆虫の血糖であるトレハロースを多めに使い、甘さを控えめにしています
(トレハロースの甘みは砂糖の半分です)
醤油を入れて焦げないように煮詰めます。

完成!

今回は、トノサマバッタの翅を入れると食感が悪くなると思ったので
翅を取ったものを別で用意しました。
味見
翅つき のほうが美味しい! 甘露煮のようなタレが翅としっかり絡み
味のしみたサキイカのような食べごたえ。意外だった。
ということで
トノサマバッタの佃煮、もとい甘露煮
おせちにいかがでしょうか。

次は黒豆です。

続きまして
栗きんとん
金色の団子が金銀財宝を意味しており金運を願ったもの
だそうですね。
金運を呼びこむためにはきちんと節約することが大切です。
しかし、
収穫した栗の一部は虫に食われており、虫食い栗は味が悪くなるので
そのまま捨てられてしまいます。
ところが、それを屋外に放置しておくと、丸々と太った栗虫が得られるのです。
また、「栗虫」は栗に入った虫の幼虫の総称ですので
多くはクリシギゾウムシの幼虫か、クリミガの幼虫が入っています。
今回は冬でしたので、10月中旬に脱出するクリシギゾウムシは見当たらず
主にクリミガが入っていました。
クリミガ Cydia kurokoi

顆粒状の白いフンが特徴で、
侵入痕の小さい穴があり、かつ脱出痕の大きな穴がないものがあれば
「アタリ」です。
今回はトレハロースと砂糖で煮込み
市販の栗きんとんと合わせました。

味見;
栗の香りが素晴らしい。プチッとした舌触りとシコシコした噛みごたえもよい。
ほのかな渋みは栗の渋皮のようで小気味よい。
栗きんとんの甘ったるさにとてもよいアクセントになっている。
栗きんとんを家庭でつくるマメな方は
栗虫が入った栗も捨てずに
しばらく熟成させておくと、
一味違った栗きんとんが作れることでしょう。

続きまして 「紅白蒲鉾」です。
形状が初日の出に似ていて紅は魔除け、白は清浄を示している
とのことですので、
赤い色素、アスタキサンチンを含み
加熱すると赤くなるトノサマバッタの幼虫を用意しました。
赤は通常の、白はアルビノのバッタを使います。
下茹でしたトノサマバッタを
トレハロース、砂糖、みりん、少しの醤油で
しっかり加熱し、
甘めの味付けに。
蒲鉾の背側に切れ目を入れ、シソと一緒に挟み込みます。
完成

味見
シソの風味との相性もよく、トレハロースと砂糖と醤油で甘めに仕上げたバッタ終齢幼虫がカリッとしてとてもよいアクセント。売れる味。
なかなか出来は上々です。
美味しかった。

2

あけ…
忘れておりました。
昨年は祖父が大往生したので
喪中だったんです。気づくのがちょっと遅かったと思われます。

さて
お節料理は皆様食べられたでしょうか。
季節の変わり目「節句」に食べる料理として生まれ
特に正月は日頃食事の用意をする人の労をねぎらう目的で
旧年中に作り置きして日持ちがするものを食べる、という風習となっています。
時代とともに次第に目的が付加され、
それぞれの具材に「ゲン担ぎ」な意味が付けられています。


海老 腰が曲がるまで、ひげが伸びるまで長生きする
   何度も脱皮することで出世を願う
紅白蒲鉾 形状が初日の出に似ていて紅は魔除け、白は清浄を示している。
     
田作り カタクチイワシを肥料にした所、五万俵の米が収穫されたことから
    五万米(ごまめ)とも呼ばれる。五穀の豊穣を願う。
くりきんとん 金色の団子が金銀財宝を意味しており金運を願ったもの
チョロギ 「長老木」の名を当てて長寿を願う
黒豆   黒く日に焼けるほどマメに働けるよう、長寿と無病息災を願ったもの
数の子 卵の数が多いので子沢山と五穀豊穣を願ったもの


そんな中
twitter上にこんなタグが、新年たちました。
「#新おせち」
まとめるとこんなかんじですが
私のアンテナは昆虫食への期待を察知しました
(電波だという方、ごもっともかもしれません)
では、今回は
順番に #新おせち
を作っていきましょう。
節足動物を利用したおせちなので
今回は「お節(せつ)料理」
命名してみました。
まず
「海老」
もうすでにバッタに似た外形ですし
腰が曲がる
ひげが伸びる
何度も脱皮する
という、
縁起物の条件をほぼすべての昆虫は満たしています
このままバッタに代替してもいいのですが
いかんせん
「おせつ料理」にしては大きさが足りません
大きなバッタでも8cm。もう少し大きさがほしいですね。
そこで
こんな話を思い出しました。
私が
ネットストーキングをしております
昆虫界のキュレーター「メレ山メレ子」さんの
連載「ときめき昆虫学」での
でんでんむしの回。
そこでエスカルゴ養殖の社長はこういうのです。
「市販の安いエスカルゴは中身をアフリカマイマイに詰め替えたもの」
!!そうだ
「詰め替えればよいのだ!」
今回は冷凍しておいたエリサンの蛹を使用。

レシピ
卵白 4つ分 鳥のささ身 一切れ
ごま油 少々 エリサン蛹 20頭
フードプロセッサーで泡立つまでしっかり撹拌し
ビニール袋に詰め、

食べ終えた海老の殻に詰め込みます。
そしてお湯を張った蒸し器で2分。
蒸し終わったら、ダシ汁に漬け込んで完成。


ぐっと噛みしめるとじゃこ天や
おからドーナッツのような
適度な歯ごたえ。プリプリ感はあんまりない
香りはクルミのようで香ばしく、ごま油とよく合う
アミノ酸味としては海老よりも薄く、
素直にたくさん食べられそうな味。
「魚肉ソーセージ」
のように
昆虫料理は大きさの壁を越えたといえるでしょう。
理論上はタラバガニやイセエビの大きさも可能です。
これを

大陸海老おおりくえび」と名付けましょう。
次は…カニかまぼこ とかミミックするとそろそろ売れるかもしれませんね。
今回は連作です。
次回は「紅白蒲鉾」

1

去る11月9日、10日
我々食用昆虫科学研究会は
サイエンスアゴラに出展しました。
会場での投票や審査委員の判断により
「サイエンスアゴラ賞」に選ばれました。
200以上の出展者から12団体が選ばれたので
倍率としてはそこそこのものでしょう。
ひとえに
昆虫食に挑戦して下さる皆様
昆虫食を行う我々に理解を示してくださるみなさま
昆虫食を遠巻きに生暖かく見守って下さる皆様

おかげだと思っております。
ありがとうございます。
そして
昨日12月26日
授賞式に行ってまいりました。
平日に都合のつく学生3名で出陣。

あの
元宇宙飛行士の
毛利衛館長から賞状を手渡され
記念撮影。
(館長が肖像権が管理された方なので、写真の使用は申請が通り次第となります)
そして館長が16時から17時までしか
この会場に居れないというタイトスケジュール

受賞者は迅速に受賞しなくてはいけません。
さすが
サイエンス・コミュニケーションの皆様
巧みな連携プレーにより、
すべての団体の授賞式と記念撮影が35分で終わりました。
その後10分ほど歓談タイム。
各団体が1分ほど話せる、質問できる
恰好のコミュニケーションチャンスです。
ところが
各団体自己紹介するばかり
コミュニケーションをとらない。
アゴラから二ヶ月半、
サイエンス・コミュニケーションの心を失ってしまったのか!!
燃える闘魂 いや虫魂
この会場でコミュニケーションを取るべき相手は誰か。
「毛利衛館長」でしょう。
そして
1分でコミュニケーションを取るべき内容とは
「昆虫食」でしょう。
以下文字書き起こしです。
くろとわ「食用昆虫科学研究会という学生と社会人をメンバーとする団体です。
せっかくですので早速お聞きしたいのですが」
くろとわ「宇宙食で昆虫が出たらどう思われますか」
館長  「カマキリが苦手だから…」
くろとわ「カマキリは苦いので出されないと思います。ご安心ください」
館長「食べられたんですか?」
くろとわ「ハイ」
館長「そういえば高校生の科学フォーラムで昨日、カイコの昆虫食が賞を採りましたよ」
くろとわ「嬉しい事ですがカイコはちょっと味が悪いのがネックです」
館長「…なにかおすすめの昆虫はありますか?」
くろとわ「鱗翅目ですとエリサンというこれぐらいの(指で示しながら)大型のカイコが大変美味しいです。いかがでしょうか、今のところは…」
館長「…ううん ちょっと…
くろとわ「ありがとうございます。精進します!
毛利館長は身を持って
「おまえらのサイエンス・コミュニケーションは私に昆虫を食わせるには足らん!」
と激励をくださったのです。
「毛利衛館長がうなる、美味しい昆虫料理を振る舞う」
ひとつのゴールに設定された瞬間であります。
そして
総評での館長のありがたいお言葉。
「サイエンスもアートも『文化として』発信することで社会がより良くなると思うんです」
まさに我々の方針ではないですか。
文化的に豊かな、そして科学的に裏付けられた確かな昆虫食の再導入を目指して
参りたいと思います。
これからもよろしくお願いします。

1

今回はタガメ。Lethocerus deyrollei

日本でも「田亀」として田んぼのパートナーとして
長らく親しまれてきた昆虫ですが
殺虫剤に対する感受性が高く、
完全な肉食性でもあることから
無農薬で生物が豊富な生態系がないと生きていけません。
今回幼虫を7月末に頂いて飼育してみたのですが
食べること食べること。
小赤という金魚すくいのチビ金魚を、一日に数匹たべます。
しかも、食べきることはせず、チューっと中途半端に吸ってポイ。
捕食者として飼育している
ピラニア(タガメの食後の死体でもペロリ)
タランチュラ(バッタの翅までを残さずペロリ)
ナマズ(丸ごとバクリ)
とは
大違いの贅沢な食べ方です。
幼虫で頂いたタガメ達はすくすくと成長し、立派な抜け殻を残してくれました。
スキャナで撮影。
複眼までくっきり

左がオス、右がメスで
メスのほうが一回り大きいです

脱皮直後の様子。
なぜか♂は緑色

♀はピンク。

ニンテンドーのコレにそっくりですが。因果関係は無いと思われます。

そして成虫になり、
冬が近づき摂食量がめっきり減り
冬眠させるか迷ったのですが
味見することに。
飼育期間と小赤の消費量を考えるとかなりの贅沢品です。
♂が12月3日に脱走したので味見は♀のみになります。無念。


味見
ニホンタガメ ♀
茹でただけでは香りはわからないが、
内部を開けてみるとタイワンタガメに似てた香りが。明らかに薄い。ウリ科の果物、スイカの皮や藻類に近い。
腹部は空っぽだが胸部にプルンプルンの弾力のある美味しい筋肉が詰まっている。


さて、
続いてはタイで人気の
タイワンタガメ Lethocerus indicus
「洋梨の香りがする」ことで有名です。
左がニホンタガメ、右がタイワンタガメ

日本のタガメよりも二回りほど大きく
目が大きいシュッとした直線的な印象。
塩漬けで450円という大変リーズナブルなお値段。
東新宿のタイ食材店で塩漬け冷蔵で売られています。
そのままでは塩辛いので一晩水につけて塩抜きしてから使います。
(急ぐ場合は30分ほど茹でてもOKです。)
味見
強い洋梨の香り。
塩漬けのためか弾力は日本のものに比べ弱く、筋張っておりシーチキンのよう。
茹でるとゆで汁に油滴が落ちるほど油が多く、そこに香り成分が溶けている模様。
手で向きながら肉を食うと、手がタガメの香りに。カニ食うときに似てますね。
さて
タイワンタガメはこの香りのおかげで、1頭あたりコオロギ一皿分のお値段。
(コオロギ揚げが一皿20バーツでタガメ一匹20バーツぐらい)
バンコク北部では養殖も始まっており
人気が伺えます。
ここで注意したいのが
「全ての昆虫がエコなわけではない」ことです。
昆虫食の推進理由として温室効果ガスをあまり出さないことが挙げられますが
タガメの場合は養殖にあたって、一度オタマジャクシを養殖し、それをエサとする
ために多くの手間がかかっていて、それが価格にも反映されています。
おそらく、温室効果ガスも相当量出ていますし、雑な食べっぷり(食べ残し)も考慮すると
とても「効率的な食料生産」とは思えません(データはとっていないのですが)
なので、
養殖タガメの利用はあくまで採集タガメの乱獲防止を目的にしたものに止め
エコな食を推進したいヒトは食植生の昆虫を優先して食べるように
したほうがよいでしょう。
この
タイ人を虜にする香り
身近なもので言うとこの飲料

がそっくりです。
塩漬けのタガメをイメージした少しの塩分が
タイワンタガメの雰囲気を醸し出してくれます。
タガメはなかなか買えませんが
この飲料は
まだスーパーに安くあったりするので、ぜひお試しください
奇しくもタガメ一匹と同じぐらいの値段ですね。
タガメの特徴的な香り成分、実は既に同定されており
http://www.pherobase.com/database/species/species-Lethocerus-indicus.php
こんなフェロモン物質だそうです。
1964年に オス・メス共に検出されたフェロモン
(E)-2-Hexenyl butyrate
http://www.pherobase.com/database/compound/compounds-detail-E2-hexenyl%20butyrate.php

1957年にメスに検出されたフェロモン物質
http://www.pherobase.com/database/compound/compounds-detail-E2-6Ac.php
(E)-2-Hexenyl acetate

けっこう単純な有機物ですね。
これを化学的に合成すればいいんじゃない?」
と思われた方。その通りです。
ビジネスの才能があります。
むしくい仲間、ムシモアゼルギリコさんが買ってくれました。
ARTIFICIAL MEANGDANA(Lethocerus indicus) FLAVOR !
合成タガメ香料!

MEANGDANA=メンダーとはタイ語でタガメのことです。
中を開けるとこんな感じ。危ないクスリではありません。

成分

PROPYLENE GLYCOL 90%
CIS-3-4-HEXEN-L-YL ACETATE 5%
2-HENEN-L-OL 3%
2-HENEN-L-YL-ACETATE 1%
フィッシュソース(魚醤)チリペースト、
スイートチリソース1〜3オンス(1oz=28g)に数滴
入れるだけであなたの食事がタガメの香りに!
嗅いでみましたが強烈なタガメ風味です。
そっくりです。
ただ、成分表示を見るに
天然物と同じ物質ではなさそうです
一般的な香料原料を調合し、
似せているのでしょうか。
そこで
物質名と構造を調べてみたのですが
「henen」という表記に悩まされました。
何か物質の別名だとは思うのですが
確証には至らず。
ということで助っ人を呼びました。
化学者のためのポータルサイト
「ケムステ」に所属する優秀な(仙台に居た時の)後輩
Green氏に協力を依頼しました。
結果
素晴らしい過不足のないレポート。
許可を得て転載いたします。
要約しようとおもったのですが、この律儀な返信メールに
Green氏の人柄を感じていただければと思います。


***調べもの成果***
査読論文ではなく単なるエッセイのようですが文献[1]にhenenが登場します。
図52を参照しながら、1級アルコールをアルデヒドに変換する反応で、
「trans-2-henen-1-olをtrans-2-hexanalに変換する」とあります。
この文章から、「trans-2-henen-1-ol」は「trans-2-hexen-1-ol」と同義であると、推測されます。
また、スペインの特許文献[2]にもhenenが登場します。
こちらもtrans-2-henen-1-olはtrans-2-hexen-1-olと同義であると考えると文章の整合性がつきます。
引用されているアメリカ化学会誌のイライアス・コーリーの論文は、ヒドロキシ基をシリル保護する方法について述べたものでした。
この文章から、スペイン語、もしくはスペイン訛りの英語では、hexenをhenenと呼ぶのではないかと推測されます。
以上より、2-henen-1-yl acetateは2-hexen-1yl acetateと同義であると推定されます。
化学式にすると、CH3-CH2-CH2-CH=CH-CH2-O-CO-CH3です。
シスかトランスか、どちらの酢酸ヘキセニルなのかは、ウェブサイト[3]にある情報だけでは、分かりません。
論文[4]によれば、リンゴにはトランス体が含まれており、シス体は検出されなかったようです。
また、ウェブページ[5]によれば、長谷川香料株式会社はモモ香料にトランス体を使っているようです。
確定はできませんが、トランス体が一般的であるように考えられます。
化学式は添付のとおりです。ついでに分子モデルもつけておきました。
[1] The synthesis of indoles and quinolines using Cu/TEMPO catalyzed aerobic alcohol oxidation.
optimisationexperiments and rate studies by Koskinen on the conversion of trans-2-henen-1-ol to trans-2-hexanal showed that the best mole ratio of Cu:2,2-bipy:base is 1:1:2.
[2] http://www.oepm.es/pdf/ES/0000/000/02/20/77/ES-2207721_T3.pdf
スペイン語
La olefina se preparó a partir de trans-2-henen-1-ol y cloruro de terc-butildimetilsililo según el procedimiento de Corey y colaboradores. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 6190-6191.
英語(グーグル翻訳)
The olefin was prepared from trans-2-henen-1-ol and tert-butyldimethylsilyl chloride according to the procedure of Corey et al. J. Am Chem Soc 1972, 94, 6190-6191.
[3] http://food.oregonstate.edu/glossary/henen2.html
[4] Molecular cloning and expression of a gene encoding alcohol acyltransferase (MdAAT2) from apple (cv. Golden Delicious)
http://dx.doi.org/j.phytochem.2006.01.027
[5] http://www.t-hasegawa.co.jp/cgi-bin/fru.pl5
***以上***


Green氏は切れ者の後輩で、サイエンス原理主義に近い
論理性を持ちながら社会へのアウトプットにも力を入れている
イケてるサイエンティストであります。
現在は関東にて博士課程中。今後が楽しみです。
本名が轟く日も近いと思われますが、ここでは一応匿名、ということで
数年後を待ちましょう。


ううむ。スペイン語系の方言とな。
以上のことから、
構造式まで類推できました。
PROPYLENE GLYCOL 90%(一般的な香料の基材)
CIS-3-4-HEXEN-L-YL ACETATE 5%→ cis-3-hexenyl acetate

2-HENEN-L-OL 3%→trans-2-hexen-1ol

2-HENEN-L-YL-ACETATE 1%→trans-2-hexen-1yl acetate

やはり天然のフェロモンとは異なる構造であることがわかりました。
ただ分子量や構造は似通っており、混ぜることでよく似た香りを再現できるのだと思われます。
採集タガメと
養殖タガメ、
そして合成タガメフレーバーと
市場の高いニーズを背景に高度な技術を適用し
食用利用の最先端を走っているタガメ。
食用昆虫の未来像として
参考にしたいですね。
久しぶりに構造式に触れ合って疲れました

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皆様
ご無沙汰しております。久々の更新です。
今回は「シロアリ」です。
昆虫の中でも比較的原始的な構造を残しており
ゴキブリとも近縁なので、図鑑によっては
ゴキブリ(網翅)目シロアリ科としているところもあります。
アリと同様に真社会性をもつ昆虫ですが
主に肉食のアリとは異なりおとなしく木材のセルロースをちびちびたべます。
ただ、家屋にとっては困りもので、
木造家屋の土台が湿気やすいことも手伝って、
シロアリにボロボロにされてしまう、という
悲劇も起きています。
シロアリは「家屋害虫」ですが、
ゴキブリのような強烈な嫌悪感はあまりもたれていないように見受けられます。
やはり生息環境に侵入している姿が見える、というのが大きな嫌悪感の原因なのでしょうか。
さて
今回は

食用昆虫科学研究の東南アジアの雄、吉田さんの
内定先の同僚の方から、アフリカ産の食用シロアリを頂いたので味見しました。
調味されているようで、
状態も同定できるレベルではないのですが
2cmほどの大型ですので食べごたえがありそうです。
来年ぐらいに日本在来の大型種、
オオシロアリを食べたいな、という思いも込めて
番外編として、味見をしておきましょう。
シロアリとアリの大きな違いは「完全変態」と「不完全変態」です。
アリの幼虫はウジ状で、文字通り「手も足も出ない」形態なので働き手は成虫です。
ところがシロアリは
不完全変態なので、生まれてすぐに動くことができます。
「研究者が教える動物飼育 第二巻 昆虫とクモの仲間」

によると
シロアリの家族=コロニー内で最も多いのが
分化していない「擬職蟻」
で、
その後脱皮により3種類に分化し
1,前兵隊→兵隊アリ
2,翅芽中→有翅虫
3,幼形生殖虫
となります。
今回は 写真右、頭の大きい兵隊アリと、
翅のある有翅虫が弁別できたので味見してみます。
調理は軽い塩味とスモークの香りです
兵隊アリ
頭部がカリッとしておりスナック感の強い食感。わずかに植物系のさわやかな香りがあるものの
それが調理によるものかシロアリ本来のものか判別できず。クチクラはバッタぐらいで
口に残らないベストな硬さ。
有翅虫
兵隊アリに比べよりサクッとしており、食べやすい。
ごくごくわずかに集合フェロモンのような香りがあり。
味はフン抜きしたアルゼンチンモリゴキブリの幼虫に似ている。近縁種なのもうなずける。
これは期待できそうです。
もちろん文化的にもシロアリを食べる地域は多く
家屋へのダメージも薬剤でコントロールできる時代になりました。
キノコ栽培のように、湿度のある森林で、
シロアリ栽培ができるようになればいいですね。
来年こそはオオシロアリ飼育に挑戦してみたいです。
最後に
メリークリスマス

リア充爆発しろとか言っているあなた。
「恋人が居なければ虫を食えばいいじゃない」
(マリー・アントワネット?)
昆虫食を始めて5年
配偶者、同居人が昆虫食にとって大きなハードルとなっている
悲劇
を、私は数多く見てきました。
クリスマスというミーハーイベントにも負けないあなた。
チャンスです。
今マイノリティだけれども
将来性のある
昆虫食に今のうちにチャレンジしてみませんか?
そしてもうひとつ。
「昆虫を食べる女性はおきれいな方が多いですよ」
女子受けする昆虫食について勉強したいかたは
こちら。昆虫食仲間の美人若女将ことムシモアゼルギリコ著
「むしくいノート」

女性の年齢をアレコレ言うのは無粋ですが
ギリコさん、初めて会ったとき「えらい貫禄のある女子大生やな」
と思うほどの若々しさ。もちろん既婚。
以前紹介した「昆虫食写真集」に登場する
美人女性たちも、もちろん昆虫食を嗜まれる淑女であります。
いかがでしょうか。お待ちしています。

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前回イチジクカサンの幼虫と蛹を味見しましたが
残りが成虫になって産卵したのでこれらも味見しました。
卵 (小さい黄色いつぶ)
プチプチとした食感はカイコの卵にそっくり。ただ小さすぎて味がわかりにくく、カイコほど独特の味がないので、あまり料理にはむかなそう。卵に限ってはカイコの勝ちかと。

成虫♀
毛がしっかりしており、茹でただけではとれない。煎る必要がありそう。
カイコよりバランスとしては毛深い印象。食感が悪いので幼虫・蛹をオススメ。腹部に卵が詰まっており、カイコより小粒で、とびっこに似たプチプチとした食感。臭みは全くなく木質で香ばしい。トビイロスズメの成虫に近い味。

イチジクカサンは
卵を除き
多くの成長段階でカイコを圧倒しました。
次は
これに桑を食べさせるとどうなるか
変異体カイコ(広食性カイコ)に桑以外を食べさせて育てるとどうなるか
いろいろ考えられます。
養蚕を源流とする「蚕学」の蓄積は、
ぜひ利用したい日本の財産といえそうです。
蚕の次に養殖すべき昆虫を見つけられたら嬉しいですね。