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何を言っているのだ、と感じるでしょう。
昆虫と普通の食材は区別がつくじゃないかと。
元ネタは
伝説的なSF作家、アーサー・C・クラークが言った
「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。」
Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic.
です。


常々言われることがあります。
「昆虫料理は見た目が悪いから食べたくない」と。
多くは食べたことのない方の言い分です。
先に「バッタハンバーグ」で実践しましたが、
「見た目が昆虫とわからない昆虫料理は普通の料理と区別がつかない」
ことがわかりました。
では
「昆虫が見た目にわからない昆虫料理」
とはどう定義できるのでしょうか。整理してみましょう。


気づいてしまいました。
「昆虫が入っている」かつ「昆虫が入っているとわからない食品」と
「昆虫が入っていない」かつ「昆虫が入っているかわからない食品」
いわゆる通常食品は、見た目に区別がつかないのです。
アメリカのFDAは農作物に混入する昆虫の上限値を設けています。
たとえば、ピーナッツバター100グラム当たり昆虫の断片50個まで。 カレー粉では25グラム当たり100個まで。缶詰トマトでは缶当たり果実を加害するミバエの卵5個とウジ1頭、ウジだけなら2頭まで、とのことです。
我々の食べる食品にアメリカの農産物は不可欠ですし、
それらは不分別で口に入っていますから
当然、多くの方は昆虫の断片を食べた経験があります。
そしてそれを認めることは大きな恐怖を伴うようです。
「昆虫を食べたくないヒトにとって、通常食品に昆虫が含まれていないと
証明することは悪魔の証明」といえるでしょう。これは怖い。
この事実を自覚させられることになるので、
見た目にかかわらず、昆虫料理に過敏に嫌悪感を表す人が多いのも納得です。
そして食品混入事件のような「見た目にわかる汚染」が目につくと
大騒ぎしてしまうことにもつながっていそうです。
更に、昆虫を食べたくないヒトにとって残念なことに、
既存の食品の多くは、組成も食感も見た目も昆虫によく似ています。

画像処理技術がお相撲さんとポルノが区別しにくい、という話も聞きました。
現在の画像処理技術では食品と昆虫食も区別できません。


これは公開されている画像処理技術を使って画像が
食品のものかどうか判断する自動処理システムです。


不意に(特に深夜)食欲をそそる画像をSNSに投稿することを
「飯テロ」と呼びますが、その飯テロを防いてモザイクをかける目的で
運用されているものですが、私は昆虫料理の出来栄えをチェックする目的で利用
させていただいています。


また、「昆虫の姿をすりつぶしてみえなくする」というアプローチは
昆虫の大事な美味しさの要素である「食感」を失わせてしまいます。
食感の楽しい昆虫を使う場合はできるだけ避けたいものです。
そこで
逆のアプローチを思いつきました。
「他の食材の姿を昆虫に似せる」のです。
「昆虫擬態料理」
と名づけてみましょう。
昆虫は自然環境や危険生物に擬態して捕食を逃れてきましたが
人類の加工技術によって、
昆虫の周囲の環境を改変し、「昆虫の姿を見えにくくする」ことができました。

おお昆虫が見えにくい。
材料は
パプリカ
アボカド
かいわれ
マカロニ
カキノキダケ(マカロニの頭部に)
カシューナッツ(揚げて茶色く)
塩コショウ
お好みのドレッシング
です。
マカロニの弾力、カシューナッツの香ばしさとナッツ感の中に
フェモラータオオモモブトハムシの柔らかい食感と、噛んだ時に広がる
卵黄のようなコクのあるスープが大変においしく、見た目にも
「昆虫の姿の見えにくい」料理に仕上がりました。
もう一度いいます。

高度な昆虫料理にみなさま、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
この
フェモラータオオモモブトハムシが食べられる
そして昆虫醸造調味料が味わえる試食会 1月23日 @神戸 

予約受け付け中です。お待ちしております。

前の記事で、昆虫発酵調味料、イナゴソースについてご紹介しましたが
それにあわせて、
どうしても食べてみたい、みなさんに食べて欲しい昆虫がありました。
「フェモラータオオモモブトハムシ」
噛んでしまいそうな名前です。フェモハムシ、とか略称がほしいですね。
原産は東南アジアの熱帯に生息する普通種だそうですが
生きた植物を食べるため、植物防疫法により輸入はできません。
ところが、
なぜか三重県松阪市の河川敷に広がってしまったのです。
理由ははっきりしていませんが、美しくて大きいことから
昆虫愛好家がこっそり飼っていて逃がしてしまったのではないか、との憶測もあるようです。
日本の冬もどうにか越しているとのことで、昆虫のポテンシャルの高さを
見せつけられます。
ちょっと遠いのですが、
そしてお伊勢参りのシーズンですがお伊勢も赤福にも目もくれず。
多く取れたら来年の発酵調味料の原料に使えるかもしれない、と考え
イナゴソースのいなか伝承社と関西虫フェスの主催者である「昆虫エネルギー研究所」にも
声をお掛けし、偶然忘年会に松阪市にお勤めの、大学の兄弟子にあたる方に
お会いできたことから、実施にこぎつけました。
フェモラータオオモモブトハムシを採る会。
採るのに夢中であまり写真がありませんが、ご了承ください。
彼らの幼虫は河川敷に繁茂しているクズに侵入します。
成虫はクズの葉を食べているそうなので、クズさえあれば生活史が回ります。
けっこう大きい昆虫なので、そのままクズの細いつるではスペースが確保できません。
なので、
虫こぶ(ゴール)を形成して、木質で覆われた強固な「シェルター」を作るのです。

このぐらいの太さが越冬にちょうど良いようです。
完全に枯れている虫こぶには住んでおらず、少し生きた木質が残っていて
湿度が供給されているものがよいようです。

より太くて立派な虫こぶもあるのですが、今の時期は脱出後でした。
大抵の虫こぶは手でもばらせるのですが、固いものは剪定バサミや
これが活躍しました。

いなか伝承社さんには申し訳なかったのですが
醤油の原料に使うにはちょっと少なく
捕獲数は135g、およそ200頭でした。

今回のキモは
「将来特定外来種になりそうな拡大中の昆虫を正しく扱うこと」です。

持ち帰って飼いたい衝動にもかられたのですが、外来種のコントロールに
昆虫食を役立てたい、と言っておきながら、
外来種の拡散に手を貸したのでは
本末転倒です。夏の成虫はまた再訪して、捕獲しようと思います。
今回は全ての虫を現地でゆでて、持ち帰ることにしました。

このコンロが活躍しました。夜の河川敷でもしっかり茹でてくれました。

やっぱ野外の虫捕りは興奮しますね。狩猟本能が帰ってくる気がします。
とても気分が良いです。


気になる味ですが、
抜群に美味しいです。カミキリムシに匹敵します。
ほのかに豆の香ばしさ、外皮もさくさくと食べやすく、中からは
上質なクリームが卵黄のような強いコクとともに広がります。
時期も繭を作った前蛹の状態で止まっており、若齢幼虫はみつかりませんでした。
おそらく休眠状態にある気がします。
(なぜ熱帯産の本種が冬眠できるのか、よくわからないので原産地での生態をご存知のかた、教えてください。)


さて、見ていると
マカロニに見えてきますね。

ここで、昆虫料理の新たなアプローチが見えてきましたので、実践しました。
キーワードは
「高度に発達した料理は昆虫と区別がつかない」
Any sufficiently advanced gastronomy is indistinguishable from insects.
次の記事に続きます