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コバネイナゴ Oxya yezoensis

ハネの長さが腹部を超えないからコバネイナゴ。
超えるものはハネナガイナゴ
といわれていますが、
長翅型のコバネイナゴというのもあるそうで、
近縁の翅が長いイナゴ、ハネナガイナゴとの区別、
同定まではいたっていません。
おそらくコバネイナゴでしょう。
もう昆虫食では説明不要のイナゴ。
現在では郷土料理として長野、東北地方で多く食べられ、
かつては全国的におやつとして親しまれてきました。
イナゴの流通業者は山形、新潟に多く、
生きたまま茹でられたイナゴは赤く色づき、
冷凍され、各地の佃煮屋や各家庭に販売されます。
そこで独自の佃煮味をつけられ、消費されるのです。
傷みやすいイナゴのために
調理法は佃煮が主流ですが、
冷凍技術が進歩した現在は
佃煮以外にも揚げ、焼き、燻製、などなど。
現代人の味覚に合わせた調理法が
いくらでもあります。
さて
いつものように茹でてポン酢
甘い味と香ばしい香り。腹部のプチッとした歯ごたえが大変美味しい。しかし、体重が軽いため外皮の占める割合が大きい。枯葉のような風味の外皮が下に残ってしまい、ショウリョウバッタ<コバネイナゴ<トノサマバッタ といった味。
コバネイナゴは
ハネが短いので跳躍しかできないのも
収穫に便利なところでしょう。日本の国民食ともいえる昆虫ですね。
個人的にはトノサマバッタの方が美味しいと思うのですが、
彼らは跳躍、飛翔するので捕獲が大変です。

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肉食性の魚類、爬虫類の生き餌としてお馴染み
「ジャイアントミールワーム」
爬虫類が美味しそうに食べているのを見ると、その味が気になります。
和名 ツヤケシオオゴミムシダマシ Zophobas atratus Fabricius?
いくつかシノニムがあるようなのですが同定していません。

一匹数十円で手軽に買えるので、昆虫料理の入門としても大変メジャーな昆虫です。
焼き、揚げ料理としてよく使われるのですが、
あえて今回は茹で調理で頂きました。
ピーナッツクリームのような脂質の多い味。身の量が多く、香ばしさもあり食べやすいが、非加熱大豆のような若干の青臭さが残る。ローストや揚げの方が相性がいい。特別特徴的な味もないので、入門としてはいいが、おいしさの点ではさほど魅力的ではない。
表皮がつるつるしているので、味の絡みが悪いのが難点。
内部に注入するなど、調理法にも改善の余地あり。
ミールワームは生き餌として、油脂が多く、
タンパク質が少ないのであげすぎるとカロリー過多になるようです。
一方でバッタやコオロギはかなりタンパク質が多いので、
昆虫も脂質とタンパクの量比によって大別すると、
適した調理法にも傾向が見られるかもしれません。
以下なんとなく分類。
キチン、筋繊維系=セミ、バッタ=燻製
可溶性タンパク系=鱗翅目サナギ、膜翅目サナギ=茹で、わさび醤油
油脂・タンパク混合クリーム系=鱗翅目幼虫、膜翅目幼虫=フライ、唐揚げ
油脂系=鞘翅目幼虫=素揚げ、天ぷら
高強度キチン系=鞘翅目、膜翅目サナギ=素揚げ、フリーズドライ
その他用途=カメムシ(香り)、タイワンタガメ(香り)卵(食感)等
↑こんな感じの一覧表を完成させたいですね。
定番のジャイミル。年中新鮮なものが手に入りますので
試してみてはいかがでしょうか。
水分が少なく油が多いので揚げても爆発することもなく、
手軽なスナック感覚で楽しめる優等生です。

甲虫はけっこう美味しいものが多く、
クワガタやカミキリムシの幼虫は
木の香りがしてクリーミーです。
ですが、
カブトムシ幼虫は不味いことで有名です。
以前に幼虫を茹でて食べたのですが、
あのプリプリした体の内部には
ぎっしり食べた腐葉土が詰まっています。
腸内の腐葉土を取り除き、わずかな白い身
を取り出して食べた所、
腐葉土臭があまりにつよく、
とてもそれ以上食べられませんでした。
この腐葉土臭ですが、
土中の放線菌が死滅する時に多く放出する成分、
ジオスミン(trans-1,10-dimethyl-trans-9- decalol)=雨降った地面の匂い
や、ラン藻が放出する成分
2-メチルイソボルネオール(2- Methylisoborneol)=カビ臭
だと言われています。
これらの物質は毒性が報告されておりませんが、
ヒトのにおい感受性が非常に高く、
数ng/Lで臭気を感じるといわれています。
カブトムシは土中の雑菌の中で生活するため、
生木の中で生活するカミキリムシに比べ、感染症のリスクが高く、
ディフェンシンなどの抗菌物質で身を守っています。
そのため、
抗菌物質に死滅させられた細菌の
「断末魔の匂い」が身に染み付いていると考えられます。
さて、その「匂い」は
成虫になった後、どうなったのでしょうか。
カブトムシ成虫 T. dichotomus

街灯に飛んできたものを
2週間以上昆虫ゼリーで飼育しています。
かっこいい。
ジオスミンは酸性条件で分解するそうなので、
ポン酢で頂きます。
胸部;カエルの筋肉のような水っぽい白身。
タンパクな味。土臭さがまだ残っており、あまり美味しいとはいえない
腹部;クチクラの香ばしさが加わり若干食べやすい。
土臭さ、かび臭さも少ない印象。脂質の旨みとコクがありうまみも感じられる
カブトムシを食べる地域では、
腹部をパクっといただくそうですが、
比較的腹部の方が香ばしさで土臭さがカバーされ、食べやすかったです。
納得の食べ方。
とはいえ、
カブトムシは成虫もあまり美味しいとはいえない味でした。
匂いが気になるだけで、苦味は全く無いので、
他の昆虫同様、揚げてしまえば
美味しくいただけるでしょう。
夏の終わりのカブトムシ成虫。
食べるよりも標本がオススメです。

「クモはチョコレートの味」
ネットでは有名なガセネタです。
その由来は自衛隊のサバイバルハンドブックに
適当に記載されていた記述のようですが、
一番確かな情報は食べて見ること。
「蟲」というくくりからは離れますが代表的な「虫」
として、味わってみようと思います。
クモは節足動物の中では
昆虫よりヤドカリやカニの方に
近い共通祖先を持ちます
翅をもたず、呼吸器系は気管系ではなく
肺書といわれるエラ構造を体内にもちます。
そのため、持ってみると昆虫よりもずっしり重たく感じます。
今回は
ナガコガネグモ  Argiope bruennichi


ジグモ  Atypus karschi

ジグモの卵

を試食しました。
ナガコガネグモ
バッタに近い草の香りがある。主にバッタを食べているせいかもしれない。腹部、胸部ともに弾力のある外皮で肉質の噛みごたえ。カニに近い食感。甘味がつよく美味しい。
ジグモ
かなりみずみずしい。まさに蟹の味。美味い!卵を抱えており、ほぐれた卵がスクラブ状に口の中に広がる。大顎が鋭いので、除去してから食べた。土中に巣を作って生活しているので、土臭さを心配したが全く臭みもない。
ジグモ卵
蜘蛛の糸の卵鞘がつよく、プチプチ感が楽しめなかった。噛んだ卵鞘は羽化直後のセミのようにティッシュを噛んだような微妙な食感。表面処理をしていない節足動物のタンパク質ってこんなかんじなのだろうか。
タランチュラも以前イベントで食べたのですが、
まさに蟹の味。馴染みのある味なので、
初心者でもかなり食べやすいと思います。
世界ではカンボジアでよく食べられています。
山盛りのタランチュラを炭火に入れ、表面の毛を焼ききって
むしゃむしゃ食べる様子がとても羨ましいですが。
ここまで普及したのは
食料問題解決のため国が奨励してタランチュラを養殖した、
なんて話もちらっと聞きましたが、
真偽が定かで無いので引き続き調査していきたいと思います。。

私もこちらの某研究室に来て
はや半年。バッタの扱いにも慣れてきました。
今使っているトノサマバッタの生活史ですが、
まず卵から15mgで孵化し、一ヶ月ほどの間に4回から5回脱皮し成虫に。
このときメスはおよそ1.5g。100倍になっています。
そこから2週間から一ヶ月かけて性成熟し、卵を抱えたメスでは
大きいもので3.5gまで重量を増します。
今回のヒロイン
トノサマバッタ Locusta migratoria
4月16日生まれのこの子。

御年なんと4ヶ月半。同時期に生まれたバッタたちの最年長のババアです。
卵も3個から4個産んで、お疲れのようです。
と比較いたしますのは
今日羽化したばっかりの8月2日うまれのこの子。

ちょっとほっそりしています。
今回のテーマは
「年をとるとバッタの味はどう変わるか」
まずは実食
若いギャル(8月2日生まれ)
草の香りがあり、クチクラが柔らかく、腹部には甘味と脂肪のコク。ウインナーのようなかみごたえ、どれをとってもバッタ界No.1といえるでしょう。
イナゴなんかは目じゃないおいしさです。
ババア(4月16日生まれ)
固い。筋肉の塊。味はほろ苦さが加わり、まさにオトナのお味。ショウリョウバッタに近い味になった。油がすっかり抜け、ササミのようなパサパサしたものが口のに残る。クチクラもめっぽう固く、噛むのに苦労するほど。
判定
若いほうが美味い!
これは極端に年寄りなので、
卵を抱えた女ざかりであればまた違ったおいしさがあると思います。
(実験で使うので卵は貴重で、今は食べれません)
バッタは年をとるとキチンが発達し、硬くなります。
また、産卵で多くのエネルギーを失います。
鶏肉も若鶏は柔らかくおいしいですが、
年をとった鶏は結合組織が発達し、固くなってしまいます。
結論。
バッタも鶏も。若いのが美味い。
トノサマバッタは年二回成虫になります。
今の時期はもう二回目の成虫の時期。
運動能力が非常に高いので、
朝方の気温の低い時を狙って
長めの虫捕り網で捕獲しましょう。

バッタのエサである草を刈っていたら
2頭見つかったので持って帰りました。
キリギリス科は、バッタと違い
すごい勢いで噛んできます。
トノサマバッタは特に立派なアゴを
もってはいるのですが、
「噛み付き攻撃」という発想はないようです。
噛み砕く、という咀嚼行動と
噛み付く、という攻撃行動は
全く違う経路で生まれたのかもしれません。
ということで咬む直翅目、ということで

ヤブキリ Tettigonia orientalis

大きく、腹部の食べごたえが良い感じだが、動物性の臭み、クセがある。
体が大きいぶん舌に外皮が残る。揚げれば美味しく食べられるのは実証済み。
クビキリギス Euconocephalus thunbergi

腹部が抜群に美味い。トウモロコシのようなデンプン質の食感と甘味があり、美味しい。カトリヤンマの味に似ている。外皮もやわらかく食べやすい。

先週末は、神戸に用事があり、
そのまま愛媛の実家に寄って来ました。
実家は水田の真ん中に位置し、
その庭は大変粗放的(笑)で。
タダで貰ったニシキギが伸び放題で
キバラヘリカメムシが大繁殖しておりました。
キバラヘリカメムシ

前回はカメムシ研究者から頂いたものを使い、
ウォッカに漬け込んで、その青リンゴ系の香りを楽しみました。
今回は繁殖期ということもあり、
成虫、幼虫、卵が手に入りましたので
その味を見てまいりましょう。
卵。

見た目はプチプチしてとても美味しそうです。
彼らの香りがもし忌避物質であるならば、
大事なこの卵にも香りがついていると思ったのですが、
無臭でした。
見た目とは異なり、ジャリジャリとガラス質の食感で
あまり心地良い食感とはいえません。
味もほとんど感じられませんでした。
幼虫

香ばしい香りがあって成虫よりも味は美味しく感じられました。
。今回は絶食をさせていないので、食草由来と思われるほのかな苦味が感じられます。
香りはだいぶ薄いので、かれらの甘い香りは
性行動に関連するフェロモンと思われます。


今回はフン抜きをしていないので、
腹部に緑の塊が透けて見えました。
ほろ苦さと青臭い感じが加わり、前回よりも複雑な味です。
今回も強烈な香りは健在でした。


メスよりも腸の内容物が少ないせいでしょうか、
苦味が少ない感じです。
青リンゴ系の香りが性フェロモンであるならば、雌雄差があると考えたのですが、
私の嗅覚ではその差は感じられませんでした。
オスメス、どちらも強い香りが感じられました。
ウォッカの香りが減ってきたので、追加しましょう。

クロアナバチ

先日帰った実家の土地は
もともと畑だったところを盛土をして、
水はけの良い土地に改良したので、
アリジゴクなど、乾燥土壌の好きな昆虫が集まってきます。
その中でも1平方メートルに
10匹ほどの高密度で繁殖している
存在感。クロアナバチ。
体長35mm と、キイロアシナガバチに匹敵するボリュームです。
体格がよいからか、それ以前に来ていた
アシナガバチが完全に駆逐されてしまいました。
多少いじっても威嚇するだけで、
アシナガバチのように喧嘩っ早いハチではなく、
地道に一生懸命子供たちの穴を掘っています。
彼らの巣は土の中。
麻酔したバッタやキリギリスを穴の中に入れ、
そこに幼虫を産み付け、子育てをします。
大きなアゴは土を運ぶため、
針は麻酔をするため、の温和?なハチです。

でも怖い顔!

いつものように茹でていただきました。
外皮を噛むと甘味、香ばしさ、うまみの強烈な液体が口の中に広がります。
味はかなり良好。
ですが、
外皮が固い!
カリバチの成虫に共通して言えることです。
顔は怖いですが、揚げて食べると美味しいでしょう。
留守中に箸を穴に突っ込んだり。
ニセの穴を掘って惑わせたり
穴掘り中に獲物を横取りして麻酔キリギリスを楽しんだり
穴に水を入れたり
いろいろ幼少の頃親しんだ(?)ハチですので、
大量に食べるのは忍びないです。
実家ですくすく育って欲しいものです。

外に行ったら、もう稲穂が頭を垂れておりました。
風もすっきりしてきて秋の気配。
まだまだ暑いので昆虫も元気であります。


イナゴ、美味しそうですね。
あなたも美味しそうですね。
クモは昆虫と近縁ですが、気管系を持たないため体重が重く、
空を飛べません。
それでも
走る速度を上げたり(アシダカグモ)
待ちぶせのネットを作ったり(コガネグモ)
落とし穴を作ったり(ジグモ)
巧みに昆虫を捉えます。
昆虫食のクモの牙は固く、
外皮を突き破り毒液を注入、捕食します。
クモの牙は昆虫の外皮と同じキチン質ですので
なぜ似たような材質で突き破れるのか、ナゾでした。
そこで今年の春のこの論文
Biomaterials with bite: A new understanding of the spider’s fang
クモの牙は成分比率のことなる三層構造で、
先端は亜鉛で強化されているとのこと。
クモが昆虫食に掛ける情熱が伝わってきます。
電顕研究者のマテリアルへの情熱も伝わります。
ちなみにクモを食べる時は
熱で毒が不活化しますので
安心してお食べください。
Man Eating Bugs:

鱗翅目の卵は小さく、食べるとプチプチと食感が心地良いのでたのしめます
エビガラスズメの卵が手に入ったので食べてみることにしました。
サツマイモを主に食べるエビガラスズメは
大型のスズメガですが、その卵は大変に小さく、綺麗なグリーンをしています。
湿度の高い条件で夏の夜、サツマイモの葉の裏や、茎に産卵します

左が生。右が茹で。
味は…食感が楽しいですが、特別なんともない味ですね。
サツマイモの香りも余り感じられません。
エビガラスズメはサツマイモの葉っぱで育てるのがオススメです。
成虫、幼虫の味見はこちら