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冬になると
昆虫はぐっと減ってしまいますが
皆死んでしまったわけではありません。
どんな昆虫も何らかの方法で越冬しています。
成虫越冬するツチイナゴやクビキリギス
卵越冬するカマキリなどなど
そして
朽木の中で
幼虫越冬しているのが今回のターゲット達です。
白っぽく朽ちたクヌギを手で割ると、
中から越冬中の幼虫が出てきます。
ユミアシゴミムシダマシ Promethis valgipes

ゴミムシダマシといえば
メジャーな食用昆虫「ジャイアントミールワーム」もこの一種です。
成虫ではキマワリもゴミムシダマシ科でした。
名前が似ていますが、
「ゴミムシ」とは異なる科なので注意が必要です。
このユミアシゴミムシダマシは
クワガタと一緒にいるのをよく発見されるそうです。
「同じ食性の違う種」の比較が楽しめそうですね。
いつものように塩ゆでしてポン酢で頂きます。
味見
芳しい木の香り。鼻に抜ける香りの強さもよい。
やや土臭さがあるものの、茹ででこの程度なので全く問題なし。
内部は水っぽく、すぐに殻だけになってしまい少々味気ないが臭みがなく良い味。
もしかしたら越冬虫は「ニオイ」による哺乳類の探索を避けるために
昆虫らしい臭みを隠しているのかも。要検討。
続いてコクワガタ Dorcus rectus

パエリアの製作時に成虫を二度揚げして食べたのですが
外皮が硬くて苦労しました。
今回は柔らかい幼虫。揚げると風味がよく美味しいのですが
茹でたらどうでしょうか。
味見
内部はほとんど液状。やや土臭いが旨味がある。シラカバ樹液のような味。
キノコ系の収斂味もあるのでカミキリに比べるとあまり美味しくない。
外皮は柔らかく口に残らない。頭部のカリッとした食感がアクセントに。
朽木の幼虫では
予想に反しコクワガタよりもユミアシゴミムシダマシの方が美味しい結果となりました。
冬の昆虫もなかなか奥が深いですね。

1

冬の雑木林を歩いていると
数枚の枯葉が
糸で紡がれぶら下がっていました。
なにか鱗翅目の繭だろうと思い
そっと中を見てみると。
レッド数の子!

調べた所、ジョロウグモの卵塊だそうです。

卵塊の周りはこんな感じ。
ジョロウグモ
以前に味見しましたが、枝豆のような風味のある味の良い虫で
秋の産卵直前がとても美味しいと紹介しました。
この卵ですので味に期待が持てます。
おせつ料理でも挑戦したバッタ数の子ですが、
予想に反して味がいまひとつだったので
冬にとれる貴重な食材として注目です。
味見:塩ゆですると赤から濃いオレンジに。ブラッドオレンジのような配色。
濃厚なチーズの香りをまとった数の子の食感+たらこの濃い味。
これは冬の珍味ですね。とても美味しいです。醤油とみりんに漬け込んでご飯に載せたい味。
貴重な冬の味覚ですが、
イクラの色と数の子の食感を持つ素晴らしい食材です。
以前に味見した「白キャビア」ともいえるジグモの卵も大変美味しかったので
「蜘蛛の卵にハズレなし!」と(今のところ)いえそうですね。
クモは基本的に肉食なので、
食料生産の観点から見るとややコストの大きい食料源です。
しかも卵塊を丸ごと食べてしまうと多くの個体数を殺してしまうことになります。
なので
この情報によって食べたくなった方は、
できればお腹いっぱい食べるのではなく、
嗜好品。味見程度におさえていただければと思います。
いやーしかし美味かった! 久々の大ヒットでした。

1

今回はタガメ。Lethocerus deyrollei

日本でも「田亀」として田んぼのパートナーとして
長らく親しまれてきた昆虫ですが
殺虫剤に対する感受性が高く、
完全な肉食性でもあることから
無農薬で生物が豊富な生態系がないと生きていけません。
今回幼虫を7月末に頂いて飼育してみたのですが
食べること食べること。
小赤という金魚すくいのチビ金魚を、一日に数匹たべます。
しかも、食べきることはせず、チューっと中途半端に吸ってポイ。
捕食者として飼育している
ピラニア(タガメの食後の死体でもペロリ)
タランチュラ(バッタの翅までを残さずペロリ)
ナマズ(丸ごとバクリ)
とは
大違いの贅沢な食べ方です。
幼虫で頂いたタガメ達はすくすくと成長し、立派な抜け殻を残してくれました。
スキャナで撮影。
複眼までくっきり

左がオス、右がメスで
メスのほうが一回り大きいです

脱皮直後の様子。
なぜか♂は緑色

♀はピンク。

ニンテンドーのコレにそっくりですが。因果関係は無いと思われます。

そして成虫になり、
冬が近づき摂食量がめっきり減り
冬眠させるか迷ったのですが
味見することに。
飼育期間と小赤の消費量を考えるとかなりの贅沢品です。
♂が12月3日に脱走したので味見は♀のみになります。無念。


味見
ニホンタガメ ♀
茹でただけでは香りはわからないが、
内部を開けてみるとタイワンタガメに似てた香りが。明らかに薄い。ウリ科の果物、スイカの皮や藻類に近い。
腹部は空っぽだが胸部にプルンプルンの弾力のある美味しい筋肉が詰まっている。


さて、
続いてはタイで人気の
タイワンタガメ Lethocerus indicus
「洋梨の香りがする」ことで有名です。
左がニホンタガメ、右がタイワンタガメ

日本のタガメよりも二回りほど大きく
目が大きいシュッとした直線的な印象。
塩漬けで450円という大変リーズナブルなお値段。
東新宿のタイ食材店で塩漬け冷蔵で売られています。
そのままでは塩辛いので一晩水につけて塩抜きしてから使います。
(急ぐ場合は30分ほど茹でてもOKです。)
味見
強い洋梨の香り。
塩漬けのためか弾力は日本のものに比べ弱く、筋張っておりシーチキンのよう。
茹でるとゆで汁に油滴が落ちるほど油が多く、そこに香り成分が溶けている模様。
手で向きながら肉を食うと、手がタガメの香りに。カニ食うときに似てますね。
さて
タイワンタガメはこの香りのおかげで、1頭あたりコオロギ一皿分のお値段。
(コオロギ揚げが一皿20バーツでタガメ一匹20バーツぐらい)
バンコク北部では養殖も始まっており
人気が伺えます。
ここで注意したいのが
「全ての昆虫がエコなわけではない」ことです。
昆虫食の推進理由として温室効果ガスをあまり出さないことが挙げられますが
タガメの場合は養殖にあたって、一度オタマジャクシを養殖し、それをエサとする
ために多くの手間がかかっていて、それが価格にも反映されています。
おそらく、温室効果ガスも相当量出ていますし、雑な食べっぷり(食べ残し)も考慮すると
とても「効率的な食料生産」とは思えません(データはとっていないのですが)
なので、
養殖タガメの利用はあくまで採集タガメの乱獲防止を目的にしたものに止め
エコな食を推進したいヒトは食植生の昆虫を優先して食べるように
したほうがよいでしょう。
この
タイ人を虜にする香り
身近なもので言うとこの飲料

がそっくりです。
塩漬けのタガメをイメージした少しの塩分が
タイワンタガメの雰囲気を醸し出してくれます。
タガメはなかなか買えませんが
この飲料は
まだスーパーに安くあったりするので、ぜひお試しください
奇しくもタガメ一匹と同じぐらいの値段ですね。
タガメの特徴的な香り成分、実は既に同定されており
http://www.pherobase.com/database/species/species-Lethocerus-indicus.php
こんなフェロモン物質だそうです。
1964年に オス・メス共に検出されたフェロモン
(E)-2-Hexenyl butyrate
http://www.pherobase.com/database/compound/compounds-detail-E2-hexenyl%20butyrate.php

1957年にメスに検出されたフェロモン物質
http://www.pherobase.com/database/compound/compounds-detail-E2-6Ac.php
(E)-2-Hexenyl acetate

けっこう単純な有機物ですね。
これを化学的に合成すればいいんじゃない?」
と思われた方。その通りです。
ビジネスの才能があります。
むしくい仲間、ムシモアゼルギリコさんが買ってくれました。
ARTIFICIAL MEANGDANA(Lethocerus indicus) FLAVOR !
合成タガメ香料!

MEANGDANA=メンダーとはタイ語でタガメのことです。
中を開けるとこんな感じ。危ないクスリではありません。

成分

PROPYLENE GLYCOL 90%
CIS-3-4-HEXEN-L-YL ACETATE 5%
2-HENEN-L-OL 3%
2-HENEN-L-YL-ACETATE 1%
フィッシュソース(魚醤)チリペースト、
スイートチリソース1〜3オンス(1oz=28g)に数滴
入れるだけであなたの食事がタガメの香りに!
嗅いでみましたが強烈なタガメ風味です。
そっくりです。
ただ、成分表示を見るに
天然物と同じ物質ではなさそうです
一般的な香料原料を調合し、
似せているのでしょうか。
そこで
物質名と構造を調べてみたのですが
「henen」という表記に悩まされました。
何か物質の別名だとは思うのですが
確証には至らず。
ということで助っ人を呼びました。
化学者のためのポータルサイト
「ケムステ」に所属する優秀な(仙台に居た時の)後輩
Green氏に協力を依頼しました。
結果
素晴らしい過不足のないレポート。
許可を得て転載いたします。
要約しようとおもったのですが、この律儀な返信メールに
Green氏の人柄を感じていただければと思います。


***調べもの成果***
査読論文ではなく単なるエッセイのようですが文献[1]にhenenが登場します。
図52を参照しながら、1級アルコールをアルデヒドに変換する反応で、
「trans-2-henen-1-olをtrans-2-hexanalに変換する」とあります。
この文章から、「trans-2-henen-1-ol」は「trans-2-hexen-1-ol」と同義であると、推測されます。
また、スペインの特許文献[2]にもhenenが登場します。
こちらもtrans-2-henen-1-olはtrans-2-hexen-1-olと同義であると考えると文章の整合性がつきます。
引用されているアメリカ化学会誌のイライアス・コーリーの論文は、ヒドロキシ基をシリル保護する方法について述べたものでした。
この文章から、スペイン語、もしくはスペイン訛りの英語では、hexenをhenenと呼ぶのではないかと推測されます。
以上より、2-henen-1-yl acetateは2-hexen-1yl acetateと同義であると推定されます。
化学式にすると、CH3-CH2-CH2-CH=CH-CH2-O-CO-CH3です。
シスかトランスか、どちらの酢酸ヘキセニルなのかは、ウェブサイト[3]にある情報だけでは、分かりません。
論文[4]によれば、リンゴにはトランス体が含まれており、シス体は検出されなかったようです。
また、ウェブページ[5]によれば、長谷川香料株式会社はモモ香料にトランス体を使っているようです。
確定はできませんが、トランス体が一般的であるように考えられます。
化学式は添付のとおりです。ついでに分子モデルもつけておきました。
[1] The synthesis of indoles and quinolines using Cu/TEMPO catalyzed aerobic alcohol oxidation.
optimisationexperiments and rate studies by Koskinen on the conversion of trans-2-henen-1-ol to trans-2-hexanal showed that the best mole ratio of Cu:2,2-bipy:base is 1:1:2.
[2] http://www.oepm.es/pdf/ES/0000/000/02/20/77/ES-2207721_T3.pdf
スペイン語
La olefina se preparó a partir de trans-2-henen-1-ol y cloruro de terc-butildimetilsililo según el procedimiento de Corey y colaboradores. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 6190-6191.
英語(グーグル翻訳)
The olefin was prepared from trans-2-henen-1-ol and tert-butyldimethylsilyl chloride according to the procedure of Corey et al. J. Am Chem Soc 1972, 94, 6190-6191.
[3] http://food.oregonstate.edu/glossary/henen2.html
[4] Molecular cloning and expression of a gene encoding alcohol acyltransferase (MdAAT2) from apple (cv. Golden Delicious)
http://dx.doi.org/j.phytochem.2006.01.027
[5] http://www.t-hasegawa.co.jp/cgi-bin/fru.pl5
***以上***


Green氏は切れ者の後輩で、サイエンス原理主義に近い
論理性を持ちながら社会へのアウトプットにも力を入れている
イケてるサイエンティストであります。
現在は関東にて博士課程中。今後が楽しみです。
本名が轟く日も近いと思われますが、ここでは一応匿名、ということで
数年後を待ちましょう。


ううむ。スペイン語系の方言とな。
以上のことから、
構造式まで類推できました。
PROPYLENE GLYCOL 90%(一般的な香料の基材)
CIS-3-4-HEXEN-L-YL ACETATE 5%→ cis-3-hexenyl acetate

2-HENEN-L-OL 3%→trans-2-hexen-1ol

2-HENEN-L-YL-ACETATE 1%→trans-2-hexen-1yl acetate

やはり天然のフェロモンとは異なる構造であることがわかりました。
ただ分子量や構造は似通っており、混ぜることでよく似た香りを再現できるのだと思われます。
採集タガメと
養殖タガメ、
そして合成タガメフレーバーと
市場の高いニーズを背景に高度な技術を適用し
食用利用の最先端を走っているタガメ。
食用昆虫の未来像として
参考にしたいですね。
久しぶりに構造式に触れ合って疲れました

2

皆様
ご無沙汰しております。久々の更新です。
今回は「シロアリ」です。
昆虫の中でも比較的原始的な構造を残しており
ゴキブリとも近縁なので、図鑑によっては
ゴキブリ(網翅)目シロアリ科としているところもあります。
アリと同様に真社会性をもつ昆虫ですが
主に肉食のアリとは異なりおとなしく木材のセルロースをちびちびたべます。
ただ、家屋にとっては困りもので、
木造家屋の土台が湿気やすいことも手伝って、
シロアリにボロボロにされてしまう、という
悲劇も起きています。
シロアリは「家屋害虫」ですが、
ゴキブリのような強烈な嫌悪感はあまりもたれていないように見受けられます。
やはり生息環境に侵入している姿が見える、というのが大きな嫌悪感の原因なのでしょうか。
さて
今回は

食用昆虫科学研究の東南アジアの雄、吉田さんの
内定先の同僚の方から、アフリカ産の食用シロアリを頂いたので味見しました。
調味されているようで、
状態も同定できるレベルではないのですが
2cmほどの大型ですので食べごたえがありそうです。
来年ぐらいに日本在来の大型種、
オオシロアリを食べたいな、という思いも込めて
番外編として、味見をしておきましょう。
シロアリとアリの大きな違いは「完全変態」と「不完全変態」です。
アリの幼虫はウジ状で、文字通り「手も足も出ない」形態なので働き手は成虫です。
ところがシロアリは
不完全変態なので、生まれてすぐに動くことができます。
「研究者が教える動物飼育 第二巻 昆虫とクモの仲間」

によると
シロアリの家族=コロニー内で最も多いのが
分化していない「擬職蟻」
で、
その後脱皮により3種類に分化し
1,前兵隊→兵隊アリ
2,翅芽中→有翅虫
3,幼形生殖虫
となります。
今回は 写真右、頭の大きい兵隊アリと、
翅のある有翅虫が弁別できたので味見してみます。
調理は軽い塩味とスモークの香りです
兵隊アリ
頭部がカリッとしておりスナック感の強い食感。わずかに植物系のさわやかな香りがあるものの
それが調理によるものかシロアリ本来のものか判別できず。クチクラはバッタぐらいで
口に残らないベストな硬さ。
有翅虫
兵隊アリに比べよりサクッとしており、食べやすい。
ごくごくわずかに集合フェロモンのような香りがあり。
味はフン抜きしたアルゼンチンモリゴキブリの幼虫に似ている。近縁種なのもうなずける。
これは期待できそうです。
もちろん文化的にもシロアリを食べる地域は多く
家屋へのダメージも薬剤でコントロールできる時代になりました。
キノコ栽培のように、湿度のある森林で、
シロアリ栽培ができるようになればいいですね。
来年こそはオオシロアリ飼育に挑戦してみたいです。
最後に
メリークリスマス

リア充爆発しろとか言っているあなた。
「恋人が居なければ虫を食えばいいじゃない」
(マリー・アントワネット?)
昆虫食を始めて5年
配偶者、同居人が昆虫食にとって大きなハードルとなっている
悲劇
を、私は数多く見てきました。
クリスマスというミーハーイベントにも負けないあなた。
チャンスです。
今マイノリティだけれども
将来性のある
昆虫食に今のうちにチャレンジしてみませんか?
そしてもうひとつ。
「昆虫を食べる女性はおきれいな方が多いですよ」
女子受けする昆虫食について勉強したいかたは
こちら。昆虫食仲間の美人若女将ことムシモアゼルギリコ著
「むしくいノート」

女性の年齢をアレコレ言うのは無粋ですが
ギリコさん、初めて会ったとき「えらい貫禄のある女子大生やな」
と思うほどの若々しさ。もちろん既婚。
以前紹介した「昆虫食写真集」に登場する
美人女性たちも、もちろん昆虫食を嗜まれる淑女であります。
いかがでしょうか。お待ちしています。

1

前回イチジクカサンの幼虫と蛹を味見しましたが
残りが成虫になって産卵したのでこれらも味見しました。
卵 (小さい黄色いつぶ)
プチプチとした食感はカイコの卵にそっくり。ただ小さすぎて味がわかりにくく、カイコほど独特の味がないので、あまり料理にはむかなそう。卵に限ってはカイコの勝ちかと。

成虫♀
毛がしっかりしており、茹でただけではとれない。煎る必要がありそう。
カイコよりバランスとしては毛深い印象。食感が悪いので幼虫・蛹をオススメ。腹部に卵が詰まっており、カイコより小粒で、とびっこに似たプチプチとした食感。臭みは全くなく木質で香ばしい。トビイロスズメの成虫に近い味。

イチジクカサンは
卵を除き
多くの成長段階でカイコを圧倒しました。
次は
これに桑を食べさせるとどうなるか
変異体カイコ(広食性カイコ)に桑以外を食べさせて育てるとどうなるか
いろいろ考えられます。
養蚕を源流とする「蚕学」の蓄積は、
ぜひ利用したい日本の財産といえそうです。
蚕の次に養殖すべき昆虫を見つけられたら嬉しいですね。

4

「カイコは美味しくない」
残念ながら
多くのカイコ研究者にも共通する認識です
独特の味はオトナ向けの風味としては良いのですが
サイエンスアゴラでも子供にはあまりウケない味のようでした。
今まで240種食べてきましたがトップ5に入る悪い味でした。
ただ、これが
「カイコガ科独特の味」なのか、
「クワを食べたことによる悪い味」なのか、判断がつきかねます。
そこで、
「カイコガ科でありながらクワを食べないもの」がいないか、
カイコ研究者にお伺いしていました。
そんな中頂いたのが
イチジクカサン Trilocha varians という耳慣れないカイコ。

台湾ではイチジクやガジュマルの大害虫だそうで、南方の種。
今回は石垣島の系統を分けていただきました。
これにより
カイコの味の悪さは、氏(遺伝)か育ち(食草)かがわかります。

こちらは蛹
味見
幼虫
プツプツと消化管内容物の食感があるが、嫌な味は全くなく、イモ系の穏やかな風味。おいしい

ヤママユガ科と共通する栗に似たまろやかな香り。味もよくエグミは全くない。
朗報です。
クワが原因ということがほぼ確定しましたので、
次は、
美味しいカイコの生産を目指しましょう。
普通は、カイコはクワの成分を含んでいないと
どんなにお腹が空いても食べず、餓死してしまいます。
幸いなことに
カイコは多くの自然突然変異体があり、
その遺伝子も特定されているので
「広食性カイコ」という系統が見つかっています。
これにより、
カイコの栄養に適した、そして美味しい葉を食べさせると
美味しいカイコができるはずです。
なお
養蚕が盛んだった頃のカイコは、
錦鯉などのエサとして使われましたが
「肉がカイコ臭くなる」とのことで、
食用魚には使われてこなかった経緯があります。
そのため、この「美味しいカイコ」の生産は
飼料としても将来性があるのではないでしょうか。
ということで
現在問い合わせ中。続報があり次第またお知らせします。

3

今回は前編(2008~2011)を受けての後編です。
2012年から、私はトノサマバッタの研究に入り、
彼らはただ飼育しているだけになっていました。
研究室での滞在時間も長くなり
彼らに果物の皮や野菜くずをやっているうちに
「そうだ。データをとってみよう」
と思いました。
何事も机上の空論ではなく、
かならずデータを取ってみることが重要です。
わりとバッタの飼育に時間が取られるため、
複雑で手間のかかかる実験はできませんが、
与えるエサをそのまま品名・重量を記録し
その収支を測定できれば、と思いました。
その前に、飼育装置の改良が必要です。
1,食べられる床材を使わない
今までは紙製の卵パックを使っていたのですが
おなかがすくとすぐに齧ってしまうので、プラダン、と呼ばれる
プラスチック製のダンボールを使いました。
これは1畳で数百円の安さのため、荷物搬入時の養生(傷つきを防ぐプロテクター)
によく使われています。
ホームセンターに売っている好きな素材の一つです。
2,湿度対策
湿度が上がり過ぎないよう、
水はタッパに入れ、フタに切れ込みを入れ
そこにロープを垂らしてロープを常に湿らせることでムダな蒸発を防ぎました
そして乾燥しすぎる原因となったUSBファンは
ケージ自体を大きくすることでその影響を局所的にし
彼らの移動を基本的に自由にし、階層構造は廃止しました。
3,フンの分別収集
フンの収集は今までどおり、子供が通れず、大人のフンが通れる大きさの穴を開け
下にトレイを敷くことで
乾燥したフンが続々と貯まる構造になり、フンの測定も容易になりました。
4,スダレ
状態が悪くなったり、しばらく生ごみがでないと
空腹になった成虫が幼虫を食べてしまうことがあります。
そこでスダレを丸めて設置することで、
幼虫だけがそのスキマを自由に出入りできるようにし、空腹時の共食いを防ぎました。
これがその
「G.pマッシーン三号」です。

今回は虫フェスということで、
題名を考えました。
私が
そろそろアラサーであること、

そして部屋に置くべき虫は何か、考えた結果

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが
これは今年ネットを賑わせたpanasonicのダサい広告
「アラサーエアコン」をパロディにしたものです。
それでは
このアラサー部屋昆の実力をお目にかけましょう
1,二週間おまかせ!

彼らは二週間ぐらい放置していても余裕で生き延びます。
忙しく、出張も多いアラサー世代に最適な昆虫ですね。
2,生ごみを分解消臭!
50gの柿の皮をおよそ一時間で完全に分解消臭します。
美味しそうに食べてくれますね

3,おいしい!

彼らの獣系のムレ臭には、母方故郷、飛騨高山の伝統料理、
「朴葉味噌」が合うと思い、物産展で買ってきました。
彼らを横開きにし、胸側の肉をこそげ落として背側の肉と合わせ、
マーガリンとチーズをトッピングしてから
250℃オーブンで軽く焼いた後、朴葉味噌とその他の野菜と一緒にホイル焼きにしました。

想像通り、朴葉の香りと相まって、とても肉っぽい香りが食欲をそそる
美味しい料理に仕上がりました。
4,スマホ連携
アラサーエアコンでは、取ってつけたようなスマホ連携がその魅力の一つでした。
なので、この装置にもスマホを連携させてみましょうか。

Gの一種ということで、
彼らを見ると恐怖を覚え、「殺したい 殺さなければならない」
という強迫観念にさいなまれる方もいるかと思います。
そんな方の恐怖を和らげるアプリがあるのです。
アンドロイドでは
「Roach killer」

iOSでは
「iRoach」等のG駆除ゲームです。

大抵日本のGよりもG.pの方が高得点に設定されています。
普通は二度タップすることで退治できるとのことです。
やってみましょう。


余談ですが、アプリを調べているうちに、こんなものを見つけました。

「Yummy Bugs」とは「うめえ虫!」ということです。
ゲテモノ系ゲームとはいえ、我々より先にアプリにされたのは
くやしいですね。ほんとうに美味しい昆虫を、安全で美味しく食べる方法を
ポケモンずかんのように教えてくれるアプリを作ってみたいものです。


それでは、この「マッシーン3号」の性能を
実測していきましょう。
開始時点で500gありました。
こんなかんじで与えていきます。
6月4日バナナ皮60
6月5日ナス70
6月5日キウイ10
6月6日フスマ50
6月6日バナナ34
6月6日ごはん38
6月6日ネギ22
6月6日きゅうり42
6月6日手羽元38
6月8日キウイ19
6月8日手羽元14
6月12日キウイ19
6月13日ナス112
6月15日ホットケーキ19
6月15日チンゲンサイ64
6月16日スイカ85
このような感じで 4ヶ月間、測定しました。
その結果がこちら。

4kgの生ごみを食べた500gのG.pは、840gになり、306gのフンと242gの食べ残しを排出しました。

この一点しか取っていないのですが
データを取ることで見えてくるものがありました。
他の生ごみ処理機にはない特徴 それは
「増える」ことです
4ヶ月で840g、1.6倍に増えたのです。
ここで調理をぐっと我慢すると、
自然と処理能力がアップさせることができます。
データを取るということは、
未来を類推する、ということです。
この先どうなるか、やってみましょう。
それでは、
アラフォー家昆
平均的な一世帯あたりの生ごみ
処理できるだけの数を考えてみましょう
このままの増加速度だと、あと28ヶ月我慢すると、彼らの処理能力は
平均的な一世帯あたりの生ごみ排出量に達します。

ちょっと多い感じですかね。
しかし
下水道が無い地域の合同浄化槽の大きさ考えると
無理ではない規模であることが分かるかと思います。
さて、
指数関数的に増えることを考えると
地球規模ではどうなるか、気になるところです。
「アラ2030 テラ昆!」

つまり、
世界の人々が
鶏卵をG.p代替するだけで、生ごみの出ない世の中になる、
かもしれないのです。
わりとイケると思っているのは私だけでしょうか。
どうでしょうか。
そんなことを
発表するために
今回はクロトワの正装で行いました。

ゲストの岡本リサさんは
デコゴキアーティストとして
「Gが嫌いなところが好き」という
不条理系アートを攻めている方。

「虫好きの女性」というだけでも大変なのに
そこから更に攻めています。
そして
虫ドルのカブトムシゆかりさん

カブトムシを一時300頭飼育していたという強者で
「大人のお友達のための虫のお姉さん」実演などもしてくれて
私のあこがれ(食欲的な意味で)であるヨロイモグラゴキブリを
飼育しているとのことで、愛で方から飼い方、種類など
まさに
Gトークで盛り上がりました。
場所も
Gが大量に生息していると思われる
新宿歌舞伎町
のロフトプラスワン。
日本の真ん中でGへの愛を叫ぶ
ステキな会となりました。
虫食い仲間
ムシモアゼルギリコさんが書いた
女子向けにも嬉しいポップな書籍
「むしくいノート」

私も協力しています。

そして
リンクファクトリー様より
「昆虫料理食品サンプルガチャガチャ!」

一個500円ですが、日本人(二人が三日間徹夜)が手作業で複製し、
彩色しこれらの制作を行ったことを考えると
尋常でない安さであることが分かるかと思います。
今回、私は
学術的(標本数とか有意差検定をしていないので学術未満ですが)」
に彼らの魅力を表現しましたが、
飼う、デコる、食べる、殖やす、絵を描く、フィギュアを作る
などなど、
愛で方、そしてその表現方法は多様だ、
ということが今回再認識されました。
知名度No.1のG達を含めた
昆虫の面白さが日本を、世界を席巻するような
最新カルチャーを発信していきたいと思います。

ご参加頂いた皆様 ご来場ありがとうございました!
そして関係者の皆様。お疲れ様でした。

2

昨日23日は
「東京虫食いフェスティバル:番外編」

虫ドル、カブトムシゆかりちゃんや
デコゴキアーティスト・岡本リサさんなど
今までの虫フェスにはありえない女子っぽさを
楽しんできました。
写真をいただけたら、まとめと今回の15分ネタ
「アラサー部屋昆」をここでも記事にしようと思います。

(絵は、イラストレーター栗生ゑゐこさんに書いて頂きました。)
さて、
虫フェス前日に見つけました。
セイタカアワダチソウについていた ハムシ
ヨモギハムシ Chrysolina aurichalcea
オス

こっちはメス

交尾中のところを捕まえてきました。
セイタカアワダチソウは今年の河川敷を覆い
大変なことになっています。
それらを食べてくれるのだったら・・駆逐してくれたらいいなぁ
ともあれ味見です。
ヨモギハムシ・オス
キク科の強い味はなく、ほのかに春菊の香りがあるのみ。プチッしゃりっとした食感がほどよく外皮は固くない。
メス
強いヨモギの香りがあり、苦味もある。ここまで大きく違うとは驚き。腹部が卵でふくれているため脂質のコクが強く、オスより特徴が強い。外皮は割と柔らかいので、もっとおいしい葉を食べさせるともっとよくなるかと。ヨモギを食べさせてみたい。
ここまで雌雄で味が違うのも珍しいですね。
モチや団子に入れればヨモギハムシモチ ヨモギハムシダンゴになりそうです。
蓬葉むし団子。
蓬葉むし餅
とても風情のある名前ですね。これは売れそうです。

1

気づいたら外は冬。
バッタもめっきり減ってしまいました。
今回は養殖昆虫。
カブラハバチ Athalia rosae です。

ハチといえば社会性のミツバチやスズメバチを想像しますが、
ハバチはその名の通り葉を食べるハチの一種。単独で暮らします。
そして刺す針を持ちません。
日本産のハバチは720種記載され、
未記載種を含めると1000種を超えると言われる大きなグループです。
バッタ目が370種ですから、
植食性の昆虫の中でも開拓しがいのある、
そして分類が難しいグループです。
今回は
養殖された研究用のものを分けていただきました。

ハバチは様々な食草に対応し、それら植物の防御物質に巧みに対応しています。
カブラハバチは多くの生物にとって毒であるアブラナ科の
毒を巧みに利用しています。
この利用法はなかなかトリッキーです。
直接的な毒成分は、イソチオシアネート

という化合物で、
これは植物にとっても毒なので、
通常は糖と結合した数種の前駆体(総称してグルコシノレート)が液胞に隔離されています。
これが細胞ごと昆虫などに破壊されると、細胞内にある酵素ミロシナーゼが
反応し、イソチオシアネートを生成するのです。
イソチオシアネートは
ヒトが食べても問題なく、むしろカラシとして好む味なので、
ヒトは多くのアブラナ科の植物を野菜として品種改良しました。
大根おろしをすりおろしてからちょっと置くと辛くなるのは、
この酵素反応に寄るものです。
そのため、殺虫剤が開発される前は、
アブラナ科の作物は自前の毒成分で
葉の食害を防いでいたのです。
この
カブラハバチはアブラナ科に適応した天敵で
その適応方法はなんと、血液(体液)中に
グルコシノレートを輸送してしまうのです。
すりつぶした植物に含まれるミロシナーゼが、
毒素イソチオシアネートを生成する前に、
消化管から体液中に移動させてしまうことで、
毒の生成を抑え、植物の栄養成分を悠々と消化することができるのです。
今回読んだ論文はコチラ
別の昆虫、コナガの仲間は
ヒトと同じように分解しているそうなので、
昆虫によって植物毒の回避方法は様々です。
このカブラハバチにとっては
毒の基質を積極的に取り込むことによって
捕食者への毒として機能させることが出来るので
一石二鳥で素晴らしいですね。
蛇足ですが、
このカブラハバチのカラシ油輸送を止める遺伝子操作をすると
彼らは何の影響もなく元気に生きているそうです。
なので、毒に耐える、しかもそれを利用する、
という二段構えといえそうです。
ということで、
アブラナ科の植物毒を好んで食べるヒトと
それを体液に溜め込む
カブラハバチとの出会いは必然といえるでしょう。
味としては
体液に濃縮されたカラシ成分が期待されます。
味見
期待したほどのカラシ味はなく、茹でた大根菜を白和えにしたような、柔らかくタンパクな味。
プチッとした食感と柔らかさが好ましいので、ちりめんじゃこなどと和えて食べると美味しそう。
おっと
勘違いをしていました。
辛味成分、イソチオシアネートは生成していないので
グルコシノレートの味が味わえるはずです。
なので、
「ゆでた大根菜」は酵素を熱で失活させる調理なので
まさにグルコシノレートを舌で検出したといえるでしょう。
セイヨウカラシナというもっと辛味成分の強い食草も食べるので、
薬味として使うのならば辛味を追加したい所です。
また、体液と酵素を反応させる、という意味で
すりつぶして消化管と体液を触れさせ、
しばらくおいておくと辛味が増えるのかもしれません。
そして
このグルコシノレート
癌のリスクを下げる、アレルギーのリスクを下げる効果があるようです。
健康食品のマカ(アブラナ科)も
グルコシノレートの効果を期待したもの。

食べてみましたが。
まさにカブラハバチの味
濃縮されたグルコシノレートが
含まれている気がします。
ということで、
酵素反応していない、
「生きた(意味深)グルコシノレート」
を食べるには、カブラハバチが一番、といえるでしょう。
そう考えると
サクラを食べる幼虫を今までにいくつか食べましたが
サクラケムシ
に比べ
モモスズメカレハガの方が
香りが少なく感じました。
サクラに含まれる桜の香り成分、
クマリンも毒ですので
前者は積極的に体液に輸送して利用し
後者は影響のないよう分解していたと考えることができます。
毒植物×単食性昆虫の組み合わせは、
ヒトの植物利用を更に発展させるものといえるでしょう。
今回の記事は
農業生物資源研究所
主任研究員  畠山 正統 博士の
ご協力を頂きました。
御礼申し上げます。
また、カブラハバチは
さらにステキな性決定様式や
単為発生の条件とか・三倍体とか
遺伝学的にヒャッホイな性質があるので、
また続報ができ次第紹介させて頂きます。
やはり基礎的な研究の進んでいる昆虫は
「話が早い」というか。
深みがありますね。
すべての昆虫基礎研究者に
協力をいただけるよう、精進したいと思います。

3

秋ももう終わりに近づいてきました。
朝晩の冷え込みはもう氷点下に迫る勢い。
そんな中、セイタカアワダチソウを盛んに飛び回る元気な虫が。

ナミハナアブ Eristalomyia tenax Linnaeus
ぱっと見ミツバチによく似ています。擬態のようです。
冬なのにとても活発で、見ているとこちらも元気が出てきます。

幼虫は腐植食性で下水溝などに生息
成虫は花粉を食べるとのこと
成虫の食い物がファンシーなぶん、幼虫の食い物が気になります。
下水…ううむ。 悩ましい。
食べるかどうか迷いました。
が、近頃新しい昆虫を食べていないので、開拓したいとの思いや
成虫は花粉食だしクリーンだろうとの勝手な判断から
味見してみることに。
くれぐれも加熱は十分にいたしましょう。
以前に食べたシオヤアブのように
大型の双翅目はけっこうクセのない美味しいものが多そうです。
先入観なく食べてみることが大事かと思います。
味見
目がカリッとしており、全体的に柔らかい印象。味も全くクセがない。胸部の毛にポン酢の絡みもよいので薄味がおすすめ。毛の悪い食感はほとんど感じられない。
味は良かったのですが。。。
衛生的にどうなのか不安が残ります。
やはり腐植食性の昆虫はコントロールされたエサで育てて食べるようにしたいものです。