カブトムシ。とても大好きな昆虫です。昆虫として。
まず姿がかっこいい。そして夏休みにたくさん手に入る。
少し飛び方が下手で、スタコラと逃げ出すこともないずっしりとした重みがある。
多くの子供が一度は心を奪われる昆虫ではないでしょうか。
しかし食材としての厳しさはまた格別で、
多くの昆虫食愛好家が、その美味しさに、いえ、その美味しくなさに挑戦してきました。そうなのです。美味しくなさがあるのです。
昆虫を食べたことがなくて、
カブトムシに挑戦するのもためらわれる、という方は、
お近くのホームセンターでよく売っている腐葉土を口に含んでみてください。
それです。
なんとも言えないカビ臭さ、
渋み、土臭さ、そういったものが
カブトムシには染みついているのです。
丸々と太って、蒸したてのおまんじゅうのように美味しそうなカブトムシの幼虫ですが、中を開いてみると、丸々と腐葉土が入っています。土を詰め込んだゴム手袋みたいな構造をしてます。(写真探したんですが見つからず。)
真っ白な美しい肉の部分。それを取り出して食べたら美味しいはずだと、
そう思ったのですが、腐葉土の味と匂いの白い肉でした。無念。
ついでサナギ、成虫と食べ比べてみたものの、やはりいまひとつ美味しくなかったのです。
半透明の飴色がとっても美味しそうだけれどクソマズ…いや、美味しい食べ方がまだ見つかっていないカブトムシ蛹 Pupae of Trypoxylus dichotoma septentrionalis。黒バック撮影練習。逆光にて撮影。 pic.twitter.com/8Fn1J726qi
— 蟲喰ロトワ 昆虫農家 蟲ソムリエ 6月からラオス (@Mushi_Kurotowa) 2015年4月22日
この独特の香りを生かすべく、
@y_tambe 先生との土臭さの談義を経て
始まりはこちらでした。→土臭さと昆虫、コーヒーなどの匂い談義 - Togetter https://t.co/TZpi64cyxt @togetter_jpさんから
— 蟲喰ロトワ 昆虫農家 蟲ソムリエ 6月からラオス (@Mushi_Kurotowa) 2018年9月28日
コーヒーを作ってみたこともありました。
再掲→【虫注意!】カブトムシの成虫をフリーズドライ後コーヒーにする研究者現るっ!気になるお味は? - Togetter https://t.co/SY0Rr4ah33 @togetter_jpさんから
— 蟲喰ロトワ 昆虫農家 蟲ソムリエ 6月からラオス (@Mushi_Kurotowa) 2018年9月28日
コーヒーよりも脂質が多く含まれていることから、結果できたものはココアに近いものでした。
そうだ。生カカオもそのままでは食べられないではないか。
つまりカブトムシは「おいしい食べ方がまだわかっていない」人間側の調理技術が未熟な食材、と言えるのでしょう。
思い出すのは2013年頃でしょうか。
「ラオスではカブトムシが食べられている」との情報を、国際協力団体勤務の方から聞くことができました。
当時は2017年にラオスに行くことなど想像もしておりませんでしたから、
いろいろと無責任に妄想を膨らませたものです。
ラオスでの食べられ方はヂェオと呼ばれる料理で、炭火に突っ込んだ何らかのタンパクと
唐辛子、玉ねぎ、トマト、各種ハーブ、塩、味の素を入れてすり鉢でたたいて出来上がる辛味噌です。
昆虫などの動物性の材料を入れておくと、コクと旨味がアップしておいしいです。
当時は食べたことのないその「ヂェオ」を想像しつつ、とても辛いとのことで
強いハーブや辛い唐辛子には強烈な渋みや臭みがむしろ合うのではないか、という想像までしたものです。
虫フェスより。ラオス・東北タイにおける「森林保全」は燃料や材だけでなく、カメムシやカブトムシ等の食糧と食文化も考える必要がある。ここでは木を蹴るとバラバラと十数匹のカブトムシが落ちてくるほど豊かな森林生態系がある。子供が収穫し、母親がジェオと呼ばれる副菜に調理する。
— 蟲喰ロトワ 昆虫農家 蟲ソムリエ 6月からラオス (@Mushi_Kurotowa) 2012年11月24日
食用昆虫科学研究会終了。焦がした米粉、唐辛子、ナンプラー、カブトムシでつくるラオスの料理「ジェオ」を味見した。作ってみよう。そして研究室帰着。今日はバッタが孵化していないのでエサ交換だけの作業になりそう。
— 蟲喰ロトワ 昆虫農家 蟲ソムリエ 6月からラオス (@Mushi_Kurotowa) 2012年10月6日
さて、時は巡り2018年9月、
活動先の村で、お昼をご馳走になりました。その時出てきたのが前日ライトトラップで取れた
昆虫盛り合わせ炒め!
ね、美味しそうですね。
その中に燦然と輝くカブトムシ!これは食べねば。
日本のカブトムシの記憶を呼び起こし、お昼をくださったラオス人に失礼がないように
心して食べます。
…おいしい。
なんということでしょう。あれだけ味の難しかったカブトムシが、素直なおいしいコウチュウになったのです。
ほっこりとしたサツマイモぐらいの土臭さ、
「ラオス人はカブトムシを食う」の真相は
「あの不味いカブトムシを美味しく感じる」でもなく
「あの不味いカブトムシを美味しく料理する」でもなく
「彼らはそもそもおいしいヒメカブトを食う」ということでした。
うむ。やはりおいしい。
ヒメカブトXylotrupes gideon
メスよりややタンパクで香ばしさが強い。
胸部にはしっかりと肉。腹部にはコクがありずっと楽しめる。
うーん美味しい。日本のカブトムシを思わせる香りもわずかにあるが、
バランスがいいので全く気にならない。 pic.twitter.com/AGlk2rI1Iq— 蟲喰ロトワ 昆虫農家 蟲ソムリエ 6月からラオス (@Mushi_Kurotowa) 2018年9月22日
ヒメカブトXylotrupes gideon?のメス。
日本のカブトムシと外見上よく似ているが、味が全く違う。
うまーい!少しの消毒薬のような臭いはあるもの土臭さはなく
甘味とコクのバランスが優れていて美味しくいただける。
香ばしく炒めるとより良いが、茹でてもしっかり美味しい。うーん美味しい。 pic.twitter.com/qQ8iCeN7cM— 蟲喰ロトワ 昆虫農家 蟲ソムリエ 6月からラオス (@Mushi_Kurotowa) 2018年9月22日