2018年に食べていたのですが、Twitterで報告したっきりブログに書いていませんでした。キョジンツユムシ Pseudophyllus titan です。
Pseudophyllus titan キョジンツユムシという強そうだか弱そうだかよくわからない和名で呼ばれている巨大ツユムシ。事務所の横の植木にいたのにあまりにでかくて虫と分からなかった。 pic.twitter.com/qU8KbNIW1b
— 蟲喰ロトワ 蟲ソムリエ 昆虫農家 @ラオス 次回一時帰国11月予定 (@Mushi_Kurotowa) August 27, 2018
ちょうど一年ほど前ですね。ヨツモンヒラタツユムシ と同じように、昆虫採集目的でない日常生活でこのぐらいの驚きの昆虫に出会うと脳が気持ちのいいパニックになります。すごくメリハリがいい。以前にサソリを見つけて舞い上がって自転車をパクられたときもこんな感じなので身の回りには気をつけようと思います。
さて、養殖昆虫というと「大きな昆虫を食べたい」と思う人が多いようなのです。大きい方が効率的とか食べごたえとか。確かに大きなエビカニは高級品ですし、タカアシガニは大味、とかいう話もあるのである程度の味とのトレードオフはありそうです。
以前に5.4gの巨大トノサマバッタ系統の味見をしましたが、養殖がとても難しい系統でした。つまり大きいとしても養殖がしやすいとは限らないのです。また、昆虫は成虫になるともう2度と脱皮しないので、そこら辺のコントロールがむずかしいかと。しかし、徳島大学がそこら辺をハックする論文を出しました。
/変態阻害による過剰脱皮の巨大幼虫のたべごたえ、夢がある。
— 蟲喰ロトワ 蟲ソムリエ 昆虫農家 @ラオス 次回一時帰国11月予定 (@Mushi_Kurotowa) August 29, 2019
→【プレスリリース】昆虫が変態する普遍的な仕組みの解明-不完全変態するフタホシコオロギの幼虫でサナギに相当する時期を特定- | 日本の研究.com https://t.co/4vnkaK3eTY
この論文の巨大幼虫、夢がありますね。
しかしその夢、キョジンツユムシを見るとあまりうまくいかなそうです。
Pseudophyllus titan キョジンツユムシ
— 蟲喰ロトワ 蟲ソムリエ 昆虫農家 @ラオス 次回一時帰国11月予定 (@Mushi_Kurotowa) September 2, 2018
食べ応えがすごい。ボリュームは手羽元ぐらい。少しのムレ臭と苦味があるが香ばしく穏やかな味。胸部はノンオイルシーチキンのようなパサつくタンパク味。頭部は香ばしく甘みが強い。腹部は脂肪が多く、卵がたくさん。プチっとした食感もあるが卵の味は中の下。 pic.twitter.com/WqSQdEWf4d
なんだか、巨大な昆虫はパサつくのです。味気ないというかなんというか。密度が足りない感じ。まだ数頭しか味見していないのでなんとも言えないですが、こんな論文を思い出します。
甲虫サイズは気管への投資割合で決まる(巨大化すると気管の割合をふやさなくてはいけない)ので酸素濃度がサイズを決めた説を支持する論文はあったなと。→Increase in tracheal investment with beetle size supports hypothesis of oxygen limitation on insect gigantism https://t.co/UaKtrQ4kP0
— 蟲喰ロトワ 蟲ソムリエ 昆虫農家 @ラオス 次回一時帰国11月予定 (@Mushi_Kurotowa) May 17, 2018
ツユムシも同様かどうかは言えないですが、巨大なほど解放血管系にたよっている昆虫の循環系の効率の低さが負担になっていきます。大きくなるほど呼吸系、循環系の占める割合が大きくなると予想されます。つまりスカスカ、パサつくという感じでしょうか。また過去の酸素濃度が高い石炭紀の昆虫は巨大だったことも知られていますので、人工的に酸素濃度が高い、たとえば水素ステーション(水分解のシステムが採用されればですが)の副産物の酸素を与えて巨大昆虫を、ということまで妄想が膨らみます。
さらにいうと、大きさはともかく高酸素濃度により気管系の空間をさほど必要としない、「身の詰まった昆虫」なんかも作れるのではないかと思います。夢が膨らみますね。プリップリの身詰まりのいい昆虫。食べたいです。