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さて、
越冬女王蜂は瓶詰め佃煮ハチノコに切り替えました。
たいていの昆虫は冬に個体数が激減するので
越冬モノは注意して選びましょう。
冷凍庫をあさっていると
こんなものが

マイマイガです。
あまりに食欲がわかないので
今年の6月1日に捕獲し、写真撮影した後、
冷凍して放置していました。
モサモサした、のどごしの悪そうな毛
背中にはなぜかブルーの突起と赤の突起。
顔は目が2つニャッキ!のようでカワイイのですが。

茹でて味見しましょう。
味見:味は…味は悪くない。
硬い毛はむしろ食感のアクセント。
柔らかい毛はものすごくのどごしが悪い
さんまの腹側の肋骨を飲み込んだ時の感じに近い。
ケムシの毛はガの燐毛と同様に
食感とのどごしを悪くする機能がありそう。
「ガ」のモフモフと「ケムシ」のモサモサ、に共通の食感の悪さがあることは新しい発見かも。
トンボやカゲロウ、ゴキブリに比べ、
哺乳類や鳥類といった俊敏な捕食者の登場に前後のデザインだけに、
いろいろ捕食圧による独特の進化の結果なのかもしれません。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20120605001
哺乳類を殺すような毒は昆虫にとっても毒であることが多く、
その生産や防御機構まで含めると、かなり高コストなので
繁殖力が旺盛な昆虫は
「食べられなくはないけど食べづらい、美味しくない」
という状態がデザインと捕食圧の妥協点として取られたのかもしれませんね。
さて
なんでこんな見るからにまずそうなのを
食べようかと思ったかというと
このマイマイガを食べて、
こんなニュースに対抗したかったのです。
北海道で夏に大発生
http://www.hokkaido-np.co.jp/cont/video/?c=animal&v=576766646002
マイマイガは、
初齢幼虫に微弱な毒があるとのことですが、
基本的に「ただ増えるだけ」の害虫です。
繁殖力と食欲が旺盛で、
さほど強力な天敵もいないことから、
(おそらく寄生蜂が天敵となりそうです)
大発生するととんでもないことになります。
特にアメリカに侵入した例では被害が深刻で、
森林が丸裸になるほどのに深刻な被害が出ました。
ヨーロッパ由来のマイマイガを養蚕実験のため保持していた
研究者が、たった数頭逃してしまった結果、との説が有力です。
アメリカ農務省はその対策に乗り出し、研究の結果
たった一種のガについてこんな分厚い本が出ることに。

マイマイガの話をふとボスに振った所
「昔アメリカに居た時やってたよ」
と見せてくれました。
1981年出版。
「Gypsy Moth :Research Toward Integrated Pest Management」
豪華なハードカバーで 757ページ。
カラー写真もふんだんで、めっちゃオカネかかってます。
逆に言うと、それほど深刻な被害だったのでしょう。
最近ではこんな本も。

日本でも
農薬を使い過ぎない「Integrated Pest Management=総合的病害虫管理」
という概念が浸透してきましたが、農薬を使わない、エコで自然にやさしい、
というイメージがあります。
しかし
このマイマイガは
「殺虫剤が効きにくく、どれだけ撒いてもカネが足らん」
という圧倒的な猛威の結果、「総合的になんとかせんとどうにもならん」
という絶望的な状況の中で使われた言葉というのが分かります。
マイマイガの天敵となる
菌類や寄生蜂、寄生蝿などの利用に向けた詳細な調査が行われていました。
彼ら天敵のほうが効果的な状況では、殺虫剤によって
かえって被害が増大する「リサージェンス」という状態になります。
殺虫剤さえ撒けば良い、という害虫対策は、
国土の広いアメリカでは通用しなかったのです。
本では
林業被害として
「黒く死んだオーク(ナラノキ)が多く見られた」
「被害を受けた地域の木の根の乾燥重量が低くなった」
「根に含まれる糖分が減少した」
とのこと。
木は被害を受けてから、その結果が出るまでが長いので、具体的に
「◯本の木が枯らされ、〇〇ドルの被害が出た」
と言えないのが林業被害の難しいところです。
成長点を食い荒らす害虫は、食痕を調べることで原因とすることができるのですが
葉のみを食い荒らす(元気な木はその後すぐ回復する)場合の、被害額の推定は難しそうです。
その分、圧倒的な大発生になるまで放置されてしまう、という側面があるのでしょう。
林業は農業以上に昆虫との付き合い方が難しそうです。
残念ながら、この中でも
「食べて利用しよう」「飼料に利用しよう」という話はなかったようです。
やはり具体的な林業被害がでていることから
「駆除」を念頭に。そしてその利用方法が見つかったとしても
今後安定的な養殖が許可される予定もないでしょうから
妥当な判断でしょう。
では次に
「どの段階での駆除が効果的か」
を考えてみましょう。
長々と書きましたが、答えはコレです。
卵塊。

マイマイガは
日本では大発生といえど、
一定数以下に抑えられています。
菌類や寄生蜂・寄生蝿がいるためだとすると、
ここにむやみに殺虫剤をまくと
「リサージェンス」を起こしかねません。
そのため、マイマイガのみを、簡便に、多くの個体数を駆除するとなると
ブラックバスの対策でも効果を上げた「卵塊駆除」が答えとなりそうです。
これがもし「美味しければ」
マイマイガにお困りの地域で駆除することにより、翌年のマイマイガの数をコントロールできると考えられます。
見てみましょう。
メス成虫の鱗毛で覆われています。

しっかりと卵一つ一つが毛に覆われており、暖かそうです。
母の愛を感じます。
めくると裏側は、美味しそうな卵がたっぷり。
この毛=母の愛は強力すぎるために苦労します。
ぬるま湯に入れ、荒い網でこする、
という「筋子の要領」で取っていきます。
卵自体の強度は高いので、筋子ほど力加減を気にする必要はありません。
ごしごしやりましょう。
水に流れても気にせず、細かい網でキャッチ、そして最後は水を切って乾燥させると
残った燐毛が飛んでいきます。
これで「とんぶり」のような卵が出来ました。

これを軽く塩で茹で、
ハチノコ大和煮、
チョロギ風に酢漬けにしておいたエリサンサナギと一緒に
食感のアクセントとして使いましょう。
2月に食べる正しい昆虫ちらし寿司
目的はクロスズメバチの保護と、マイマイガの駆除です。

実食
マイマイガ卵
プッチプチで美味い!
香りはカイコガの卵の方がよい。初心者向けの普通のお味。
初令幼虫は微弱な毒があるとの報告があるが、卵に関しては今のところ影響なし。
クロスズメバチ
イモのような舌触りと肉質のコク、
味がとても穏やかでスズメバチ類では一番馴染みやすいかも。酢飯ともよく合う。
節分ですので、恵方巻きにでも、と思ったのですが、ネタが小さいのでちらし寿司にしてみました。
森を食い荒らし、
人家に出没することで「むしぎらいを増やす」
マイマイガは、オニになってからでは遅いのです。
オニは今のうちに…
気にならない程度に減らしておきましょう。
ごちそうさまでした。