美しく大きいヤママユガ科幼虫であるオナガミズアオの二回目。
前回終齢幼虫を味見したのですが、
今回は繭を作る寸前の前蛹を味見しました。
繭を作る際には体のグリーンがなくなり、茶色っぽくなります。(写真右)
ところが、
繭を作るとグリーンに戻っているのです。
繭の糸の色はこの種の場合茶色ですので
繭用の色素が体表に出てしまい、このような変色が起こったのでしょう。
繭作成前の前蛹
ジグザグの硬い構造・絹糸腺がつよく発達しており、かみ切れない。
繭を作ってから食べたほうが良さそう。味は栗とコーンの間のような味。ハンノキの香りは残っていない。茹でるとピンク色になって美味しそう。トゲは余り気にならない。アクセントとして逆に良いかもと思い始めた。
繭作成後の前蛹
小さくなってしまうものの、絹糸腺が退化し口に残らない。色もうすいグリーンからオレンジで
キレイ。
ヤママユガ科は絹糸腺がつよく発達することが知られており、
繭糸の吐出前に茹でてしまうと線維化してしまい、口に残ってしまいます。
終齢幼虫の時にも絹糸腺は見られるのですが、繊維状のタンパク質はなく、ゆでてもプリプリのままです。
ということで
ヤママユガ科の食べごろは「前蛹(繭形成後)」
といえるでしょう。
繭も利用可能になればとても有効な資源利用につながりそうです。
さて。
オナガミズアオのトゲの食感が何かに似ていると思ったんです。
むむ。なにか食べたことがあるなと。
これでした。
そうです。ウナギの小骨です。
今回はウナギ風に蒲焼にして食べてみました。
皮面は強火で一気にカリカリに(長くじっくり焼くと硬くなります。)
背開きにしてタレで頂く。大変美味しい精のつく食材といえそうです。
これからの昆虫食の可能性の一つとして、代用食が挙げられます。
パスタで有名な日清製粉・オーマイも、
米の代用品である粒状パスタの製造を始めたことからスタートしました。
オナガミズアオもハンノキという木本のバイオマスを
ヒトの食糧に適した形に変えるので、
環境負荷の高い、例えば魚粉を使った養殖肉食魚の代用になれば
それだけで多くの漁業資源が守られることでしょう。
今
最も守るべき食糧資源としてウナギが注目されています。
稚魚を漁獲せねばならず、養殖に1年以上かかり
魚粉も大量に使用し、廃棄物も多く出す。
稚魚(シラスウナギ)の漁獲を見れば一目瞭然。
1960年台には200トンあったのに今年は5トン。
もはや食べている場合ではありません。
味だけでいうと、ハチノコが最も近いでしょう。
味香り戦略研究所
の協力のもと、味覚センサーでハチノコのボイルとウナギの白焼きを
比較した所、見事に一致したのです(内山昭一 著 昆虫食入門より)
ところが、ハチノコはウナギと同様に
巣や女王蜂をとってきて半養殖するしかありません。
最高級とされるクロスズメバチは近年数が減っており
ウナギの代用品として使ってしまうと同様の悲劇が起こる可能性があります。
そこで、
養殖技術が確立していて成長が速く、植食性のオナガミズアオに
代用ができないか、と思い作ってみました。
食べてみると非常に美味しく、脂質の旨味がウナギを彷彿とさせます。
ウナギ保護の第一歩として、養殖昆虫による代用メニューを考えるのはいかがでしょうか。
幸いなことに、
ウナギの消費量がピークを迎える土用の丑の日は夏です。
加温しなくてもすくすくと昆虫が育つ絶好の昆虫食シーズン。
ぜひ(コマユバチに注意して)チャレンジしてみて下さい。