学部生時代の臨海実習で系統学とスケッチをやった時
助手の先生に言われた。
「系統分類は食べてみりゃわかる」
フジツボやカメノテは甲殻類なのでエビ・カニの味。
ホヤは原索動物なので他の生物で形容しがたい味。
なるほど確かに。
ヒトの舌には
重要な物質(塩分、水素イオン、苦味・甘味物質)が
適切な濃度範囲で存在しているか。という定量的な機能と
現在口に入っているものが
今までに食べたものと同じ、似ている、違うか、という定性的な機能がある。
そしてヒトは
舌による味覚受容と嗅受容、
記憶、その他情報とを照らしあわせ「食べるor食べない」を決定する。
「同じか違うか」という機能はかなり優秀で、
半日前においしく食べられていたご飯が
「すこし傷んだ」ということまで検出する。
前フリが長くなりました。
今回のテーマは
よく似ているけど系統的に遠い昆虫同士
「擬態昆虫」を食べ比べる。
第一回は
「ハチに擬態した昆虫を食べ比べる」
選手入場
「キボシアシナガバチ」
完全にメンチ切られてます。氷温麻酔をしていたのですが
途中完全に起きて飛んでパニックになりました
「ヒメアトスカシバ」
ガの一種ですがかなりハチ顔に作りこまれています。
毛の感じだとアシナガバチというよりはハナバチ系でしょうか。
「トラフカミキリ」
一番凶悪な模様と顔ですが無毒です。
カミキリ類は美味しいことが知られているのでいい勝負かもしれません。
いずれも成虫なので、本来ですと揚げ調理が向いているのですが
今回は個体数がそれぞれ一匹と希少であること、を考慮して
あえて茹で調理での味見となります。
「キボシアシナガバチ」
茹でてから針を抜き取って試食しました
内部はかすかに甘く柑橘系の香り。
外皮がとても固い。幼虫、サナギは美味ですが
成虫は茹でだけでは硬さに難があるので、揚げ調理をオススメします
「ヒメアトスカシバ」
メスだったようで卵がプチプチした。毛が多く食感は良くなかったです。
体サイズも小さいためあまりうまみは感じられず、こちらも揚げ、もしくは
直火で毛を焼ききってしまうほうが向いているようでした。
「トラフカミキリ」
アシナガバチより外皮が更に固いが食べた瞬間に脂肪のコクと甘みが広がる。
やはりカミキリムシはすごい。
総評
成虫同士の比較だとやはりカミキリに軍配が上がりました。
味が分類に従うというのは昆虫も同じ傾向があるようで、
今までに食べたそれぞれの近縁の種と通じる味がありました。
そして
ブドウスカシバの幼虫は「ブドウムシ」と言われ生き餌として有名で、
蜂蜜で育てられるので是非やってみたい所ですね。。
リベンジマッチ
「親の敵は俺(幼虫)がとる!
アシナガバチ・トラフカミキリ・ブドウスカシバ幼虫食べ比べ」
とか開催してみたい。
日: 2012年8月5日
セミ会
本日は恒例 昆虫料理研究会主催
「東京セミ会2012(第37回例会)」に行ってきました。
その内容はそれぞれのブログにおいおいUPされるとして
今年は個体数も調査しました
成虫 99匹
幼虫 約280匹(845g)
セミ会と昆虫料理研究会は明朝8月5日朝日新聞朝刊
(東京版)でご覧になれる予定です。
さて本日の主役
アブラゼミ(油蟬、鳴蜩、学名 Graptopsaltria nigrofuscata)は、カメムシ目(半翅目)・ヨコバイ亜目(同翅亜目)・セミ科に分類されるセミの一種。褐色の不透明な翅をもつ大型のセミである。(wikipedhiaより。)
アブラゼミ幼虫
セミ会では美味しいと評判だが、腹部の樹液の香りが強く
初心者は好みが分かれるため調理に注意。初めての場合は腹部に穴を開け高温でカリッと揚げると食べやすい。香りを楽しむ場合は低温でじっくり。
茹でで食べると若干外皮が気になる。腹部のクリーミーなナッツの香りと
胸部のみっちりした筋肉がそれぞれ楽しめる。
羽化直後
未硬化の外皮が濡れティッシュのようで味気ない。腹部;ほうれん草系の土草の香。頭部;脂肪のコク;胸部;圧倒的ササミ感。胸部筋肉は食べる価値ありだが幼虫が断然美味い。揚げはカスカスになり不向き
成虫
茹でて食べるにはカタすぎる。
しっかり揚げてクチクラの強度を下げ、
空洞である鼓室にソースやチョコ等を注入すると良い。
注入には百円ショップに売っている
先の丸い注射器(乳液などの化粧品を詰め替えるためらしい。)
を使用するとよい。