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私が所属している「昆虫料理研究会」では、
毎年4月に昆虫料理写真展を開催しています。
昨年、今年と
私も企画・ディレクター(モデル)として参加しました。
こんなチラシもエイプリル・フールにあわせて作ってみました。

一昨年2011年は昆虫料理そのものの写真。
昨年2012年は昆虫料理を食べるヒトの写真 「昆虫菓子を食べる女子会」
そして
今年は昆虫料理が普及した未来社会の写真 「虫食い散歩2033 ~未来の街角から~」

年々マクロ化していっています。
さて、
この写真展の企画意図なのですが
「飢餓にならない限り昆虫なんて喰わない」
という声が多く聞いたことがきっかけです。
未来に人口爆発が起こり、
既存の食糧は底をつき
じゃぁ虫でも食うか
そんなディストピアで昆虫を生のままバリバリと食う。なんて。
そんな未来は嫌だ。
そもそも
既存の食料=生物が底をついた時、
昆虫も生きてはいられませんし。
また、
単純に昆虫を食えば飢えがしのげるというのも
昆虫食への過大評価といえるでしょう。
今まで
利用してこなかった昆虫を
食料資源への利用することは考えるべき課題だと思うのですが
昆虫さえ食えば食糧問題解決・みんなハッピー
というわけにはいかない
ようです。
さて このへんは本業とかかわってくるので
話を戻します。
「ディストピアな世界で昆虫ボリボリという未来」

そんな糞尿地獄みたいな未来はイヤなんです。
もっと
多様でステキな楽しい昆虫食が普及した未来
見られないか
そのような提案を
昆虫料理写真展というアート企画

表現できないかと考えました。
養殖された昆虫が食卓に気軽に並び
休憩や団欒に楽しむ
そんなパラレルワールドを表現するにはどうすべきか
「そうだ パロディにしよう」
今の
「食」が定着したのも歴史の結果偶然起こったこと。
ならば同様に
昆虫が今のファストフードに採用されたパラレルワールド
あっても不思議ではありません。
そのような世界を小道具で表現するため
「ロゴのパロディ」を考えました。
白羽の矢を立てたのは研究所の先輩の横山拓彦さん
学位を取得後、イラストレーターになった異色の経歴の持ち主です。
横山さんも昆虫好きで昆虫食を嗜むお仲間ですので
きっとステキなデザインを作ってくれると思い依頼しました
期待以上の出来栄え

こうして作られたロゴを使い
パロディ元のチェーン店でロケ撮影をする
という極めてロックな方法で
しかも
プロのポートレートカメラマン
お願いすることにより
今回の写真展が実現したのです。
もちろんモデルさんは昆虫料理を嗜む方。
自信があります。
見に来て下さい。

昆虫食は研究として、
未来の食として多く紹介されることが多いのですが
まだまだ克服すべき課題も多くあります。
しかし、
私は昆虫食が普及する明るい未来がくると信じています。
そんな根拠なき妄想といえる研究の理想像
論理的に詰められていない段階で
コンセプトアートとして発信
してもいいのではないか。
そんな
ささやかな個人的願いが込められています。
そんな昆虫料理写真展も
今日明日明後日まで。
28日には虫屋台もでます。
是非お越しください。

パッと見 巨峰のタネのようですが。

れっきとした昆虫です。
おそらくヒラタアブ系のサナギではないかと。
草に付いていました。
実食
びっくりするぐらい無味。サクッとした外皮と液状の内部。わずかに草の香り。
双翅目の幼虫は抵抗がない代わりに特徴がないことが多い。
大量生産と栄養としての消費には向いている気がする。
うーむ。期待した美味しさは感じられなかった。残念。

アメンボは飴のような香りがするので
「飴ん棒」が転じた名前である。
これほど心躍る文句はあるでしょうか。
半翅目の良い香りのなかでもこれは期待大です。
今回はヒメアメンボを捕まえました。
ヒメアメンボ Gerris lacustris latiabdominis

わずかにキバラヘリカメムシににた甘めの香り。
茹でたためか「飴のよう」と形容される甘い匂いは殆ど感じられなかった
食感はホソヘリカメムシと同様の外皮シャキシャキ・中スッカスカタイプ。強い味はない。
半翅目独特の食感はありましたが、期待した甘い匂いは感じられませんでした。
やはり生食にチャレンジしなくてはいけないのでしょうか。
まだナミアメンボなどの他の種が残っているので、
めげずに半翅目の探索を今年も行いたいと思います。

久しぶりの更新です。
春になると一斉に虫達が起きてきて
それにともない本業の実験もカツカツになってきて
味見をサボってしまいました。
今日は現在開拓中の半翅目より。
ウズラカメムシ Aelia fieberi
うずらの卵に模様が似ていて、触角が赤、顔が三角で大変あいらしいカメムシです。
触っても臭いを発すること無く、ちょこちょことあるき、丸っこい形も相まってかわいいカメムシといえるでしょう。

さて、とうぜんですが、
本ブログで重要なのは味です。
いつものように茹でて頂きます。
触ってもまったく臭いを発しなかったので油断していたが、
噛むと内部に強いカメムシ臭。苦味も感じられ、おすすめできない。
カメムシのメントールのようなスッと感はなんなのだろう。ちょっと気になる。
典型的なカメムシ臭のなかに若干の柑橘系の香りがある。やはり半翅目は難しい。
おすすめできません。触って愛でるほうがよさそうなカメムシです。

2

クビキリギス越冬成虫♂Euconocephalus thunbergi
クビキリギスやツチイナゴは直翅目の中でも成虫越冬をするタイプで
トノサマバッタ用にとってきた草にこっそり潜んでいます。
消化管内容物がないので、絶食させること無く直ぐに茹でて食べることができます。
体が軽いので箸でおさえながら茹で上げます。
今回は同じぐらいの大きさの茶色タイプとミドリタイプが見つかったので
食べ比べてみました。

茶色
消化管内容物が無いためか体は軽いもののエグみが全くなくとても美味しい。腹部だけ考えるとカミキリムシに迫る勢いの穏やかな味。翅や足はやはり硬い。
ミドリ
茶色より更に香りが良い。これは茶色の色素になにか悪い味があるのかもしれない。いずれも美味しい。
個体差を考えると茶色、ミドリともに30匹ぐらい欲しいところですが
もしかしたらミドリ型のほうが美味しい傾向があるかもしれません。
これから4月後半からは卵越冬のバッタ類が出てきます
植物も昆虫も春が来たら直ぐに対応してきますね。
タラタラしているのはヒトだけのようです。

久しぶりの更新です。
某学会に参加し、関係者各位にこのブログがバレていることがわかりました。
引き続き気を引き締めて、怒られることを恐れずに頑張っていこうと思います。
さて
以前幼虫越冬していたチャバネセセリですが
啓蟄もとうにすぎ、成虫へ向けて蛹になっていました。

味見
鱗翅目のサナギが幼虫よりも美味しいことはよくあることですが
収斂味がよりつよくなっていて渋みがあり。外皮も幼虫よりも硬くなっており、
あまりおすすめの味でなくなってしまいました。
幼虫よりサナギのほうがあまり美味しくない珍しいタイプ。
色も形もステキで、うぐいすあんの和菓子のような透明感のある造形ですが
味まで三拍子そろう、というのはなかなか難しいようです。

毛づくろい、身繕いをする生物って愛らしいと思います。
バッタでもそれは同様ですね。

研究室に届いたバッタを拝借して、
写真と動画を撮影しました。
目と触角を丁寧に丁寧に、メンテナンスする様子はとても可愛いです。
たまに静止画かとおもうぐらいじっとしている時はカノジョ(メスです)は
なにを考えているのでしょうか。
マニュアルフォーカスで撮影したのですが、後半はピントがズレてしまいました。
一眼レフの動画って楽しいのでしょうかね。マクロレンズでやってみたいです。

冬はバッタのエサであるイヌムギを求めて河川敷に採集に行く日々です。
そこでオオカマキリの卵を見つけ、味見をしようと
引き出しに入れておきました。
卵塊のフワフワの部分をむしり、卵を食べた、との話を以前に聞いていたからです。
当然孵化させるつもりは毛頭ありませんでした。
まだ春まで時間があるのでそう簡単には出てこないだろうと高をくくっておりました。

デスクトップ占拠。
華奢な肌色の孵化幼虫が周りを伺いながら我が物顔で散開する感じは
こいつらによく似ていました。本当にモチーフじゃないかと思うぐらいそっくり。

研究室の平均気温はインキュベーターの影響で25度前後で年中一定しております。
春はまだ先なのに起こしてしまいました。
蟷螂には申し訳ないことをしました。
食べて供養いたしましょう。

一緒にトノサマバッタの孵化幼虫も頂きます。
カマ茹で湯豆腐として食べましょう。
カマキリ
しなやかで、しゃきっとした歯ざわりがとても心地良い。
ほそもずくのような食感。ポン酢もよく絡んで豆腐に食感のアクセントを与えている。
トノサマバッタ
カマキリより一匹ずつに重量感があり、ぷちっとした食感とシャリッとした歯ざわり。なにもたべていないせいか草の香りはほとんどしない。味の絡みはカマキリのほうが良い。
同じ孵化幼虫でもまったく食感や味が違いますね。
次回は孵化する前の卵を食べ比べてみたいです。

K大学の教授から分けていただいたオレンジヘッドローチ。 Eublaberus prosticus?

羽化直後で柔らかかったので、これを味見することに。
彼らはGの中でかなり大型。デュビアとマダガスカルの中間ぐらい。
厚みもあって垂直な壁も登れない。しかも食欲も旺盛で
とても飼いやすい。
ただ
飼っていると臭いのが難点
蒸れた靴下に腐ったミカンを入れて野ざらしにしたような酸味のあるニオイとムレた不快臭。
正直味見するのを延期してきましたが。
これだけ美味しそうな成虫がとれたのだから食べてみましょう。
大型の昆虫は部位別で食べられるのが強みですね。
翅;クニュっとした食感とシコシコした歯ざわりが美味しい。旨味もあり昆虫の羽ではかなり美味しいレベル。
頭部;芋系の香りと粒感のあるタンパクな味。全くエグみがない。
胸部;かなり美味しい。やはりサツマイモ系の香り。
見た目で気になる脚部のトゲも食感は柔らかく、問題なく飲み込むことが出来た。
腹部;やはり強いゴキブリ臭。集合フェロモンの強い匂い。味は問題ないはずなのだが濃いニオイがダメ。調理前に腸を切除するか、揚げて揮発させる必要があり。
非常に残念。
腹部さえおいしければ100点なのに。
カミキリムシはコーン系の最上位種。ゴキブリは芋系の最有力候補 だったのに。
腹部の付属腺あたりから通常の食品では考えられない
濃い有機系香料のニオイ。
なるほど。 以下考察。
ヒトの嗅覚は数個の分子でも感じるほど敏感にできていて
しかも他のニオイ情報と混線しにくい仕組みになっている。
(2004年ノーベル医学生理学賞)
ので、
ある食べ物を口に入れると
複数種のニオイがそれぞれ異なるニオイとして知覚される。
そして
それぞれが一定以下の濃度だと「風味」として処理され味覚が優先される。
ところがある単一のニオイ刺激を強く感じると
味覚と分離することは困難になり「非食用」となる。
以前食べたシュールストレミング(ニシンの発酵缶詰)も味は良いのだが
下水の中で食べている感じで、ニオイはどうしても無視できなかった。
味とニオイを分離するには
ニオイが一定以下の濃度であることが必要なのかもしれない。
ということで、
うちのオレンジヘッドは「揚げ調理」もしくは生ごみ処理として飼育することになりました。
食欲旺盛でなんでも食べるので、おすすめのゴキブリではありますが
味まで都合よく「美味しい」とはいかないようです。

4

昆虫料理の開発をしているとよく言われます。
「すりつぶせば食える」
見た目が気に入らないために昆虫食ができない。すりつぶせばいいのに。
はたしてそうでしょうか。
「エビはグロいがえびしんじょなら食える」
という方を見たことがありません。
そもそも、昆虫の食感の魅力として外皮のパリパリ感があります。
腹部のプチッ感も魅力の一つです。そんな食感を犠牲にしてまで
見た目に拘る必要があるのでしょうか。それは豊かな昆虫食生活といえるでしょうか。
ともあれ、
グダグダ言っていないでやってみる ことが何よりも大事です。
幸い実験に使用したバッタを茹でて冷凍保存したものが豊富にありますので、
この機会に食べてみるのもいいとおもいまして。
正直に申しますと実験の度にバッタを冷凍保存しておりまして
冷凍したバッタが実験のジャマ
という本末転倒な事態に陥っておりまして、その解消といったことが
今回の主な理由だったりします。
さて
今回はバッタのハンバーグを作ります。
それはこのニュースのためです。
蚊100%のハンバーグ
湖で大発生したフサカを捕まえ、練って焼き、
じゃこ天のようなハンバーグを作るのです。
羨ましい。ぜひアフリカに行ったら食べるんだ、と心に決めておりました。
ところがどこからか声がしたのです
「蚊がなければバッタを食べればいいじゃない」
まずバッタを160度のオーブンで60分加熱します。
本来の香りを逃さないため、ビビって低温に設定しましたが、
180度ぐらいで香ばしく仕上げても良かったかもしれません。

次にフードプロセッサーで細かくします。

もうハンバーグのタネにしかみえませんね。
1/4量の豚挽肉、卵、牛乳、「挽肉だけでできるハンバーグの素」
を入れます。
そして焼きます。

全くハンバーグにしかみえません。
このハンバーグを美味しくいただくためには。。。。
アフリカ式というよりも日本の洋食がよさそうです。
以前食べた「つばめ風ハンブルグステーキ
が美味しかったのでできるだけ忠実に作ってみます。
そういえばツバメも昆虫食です。
むしろこちらのほうが本家ツバメ流ハンブルグステーキ
といえるかもしれません。
すみません言い過ぎました。すみません。
深夜のテンションはヒトを愚かにします。
さて
こんな感じに焼きあがりました。

包み焼にしました。ワクワク感が大事です。
ワクワク

うん。美味しそう。
見た目にも全く問題ありません。
挽肉に比べ、弾力がないので若干物足りないですが、
臭いも全く臭くなく かなりの量すんなり食べることができます。
ただ、
昆虫料理の紹介に使えないレベルであります。
写真を使って私は何を伝えたいのか
こんなものでは「つくレポ」と変わりません。
写真で昆虫料理を伝えたいという強い思いが
一部の方には不評な「形の分かる昆虫料理」になるということを

ご理解いただければと思います。
もう一つ分かったことがあります。
「ハンバーグは肉の味を反映した料理ではない」
バッタで作ってもまったくハンバーグの味がします。
我々がハンバーグ=肉だと思っている味。それは
玉ねぎとパン粉とスパイスの味だと思ってよいでしょう。