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「マンガの神様」と言われる手塚治虫。
特にオサムシが好きで本名「治」をペンネーム「治虫」としたという話は
あまりに有名ですが、
彼は作品に度々養殖昆虫食を登場させています。

むしくい.net さんにて紹介されていたのは
ジャングル大帝レオによるバッタ牧場。コチラ

これはマンガ版、アニメ版ともに天変地異や脱走でバッタ牧場はうまく行かず、
ジャングル大帝の中では昆虫牧場の是非が明らかにされませんでした。

しかし、
こっそりと昆虫による食料生産が
成立していた描写があったのです。

それは超有名作「火の鳥 太陽編」

宗教戦争により火の鳥を崇拝する「光」と彼らの迫害により地下スラム街に追いやられる人々。
地下の人々は「シャドー」という反乱組織を作り、
「光」に対しスパイ活動を行い、頃合いを見計らって宣戦を布告する。

この地下世界
主人公スグル少年が
「横浜や東京の地下街と下水道をごっちゃにしたもの」
「寒く薄暗くジメジメして空気が悪い」
と表現しているとおり、かなり不自由なようです。

食べ物も限られていて、
地下の共済マーケットには

「無菌ネズミ」16頭ぐらいで8ダカット
「ゴキブリ10匹100円(うちのデュビアで換算すると約16g?)」
「ウジツクダニ(10gあたり?) 50円」
「ザザムシ 10G 200円」

が売られていました。(他は詳細が確認できず)

1ダカット=3.5g金貨なので
1gあたりの価格に換算すると
137005円! じゅうさんまん! 高いっ!

1頭1万円弱ですね。超高級品です。

大きさとしては200gぐらいあるでしょう。大きさはラットぐらいです。
参考;ラットの体重曲線

この資料を元にすると、
6週から10週程度で200gぐらいになりそうです。この間の摂餌量は15〜25g/24hですので
平均20gとして8週で1120g。
これを昆虫食で賄うと考えてみましょう。

うちのデュビアが一匹0.6g(乾重)でしたので
1866匹食べたことになります。ゴキブリだけで育てると飼料代だけで18660円です。
するとゴキブリよりずっと安いウジ(佃煮加工前)で養殖していた可能性が高いと思われます。

また、
ラットと昆虫の圧倒的な差額を考えると
昆虫より安い飼料源が
シャドーにはなさそうだ、ということも伺えます。

当然太陽の光が届かないのですから、
米麦などの穀物を初め果物やイモなど、
比較的裕福なスグル少年ですら買えないほど高価だったと思われます。

このスグル少年の職業は若干17歳にして殺し屋・スパイですので
今回地上に出ると、食べ慣れたこれらの食材とはしばらくお別れです。
任務に失敗したらもう食べられないかもしれません。

無菌ラット16匹は
さぞ奮発したことでしょう。

さて、
このラットの飼料でもありスグル少年の食料でもある
昆虫はどのように養殖されたのでしょうか。

使われていた昆虫の種類を考えると
ゴキブリやウジは分解者ですので、
生ゴミやウンコの再利用と考えられます。
しかし、
地下世界で排出されるウンコだけでは
それに含まれるエネルギー以上の生産は物理的に不可能なので、
次第に枯渇してしまいます。

そのため
有機物をシャドーの外から補充する必要があります。

人の出入りが殆どムリで、光も届かないのに
何がシャドーに供給されているのでしょうか。

有機物の供給源は
おそらく「光」からくる下水でしょう。
シャドーの世界は配管が多く、『水漏れにともなう消毒(殺菌?)』が頻繁にあることから
これらの配管の多くは不衛生な下水と思われます。

つまり
「光」は下水をシャドーに垂れ流すことで、
シャドーの食料資源を供給しているのです。
また下水には排熱や、水の位置エネルギーも含まれています。
シャドー内に地下鉄や図書館・テレビが完備されていることから、
光からくる下水はシャドーの重要な熱・電気エネルギー源であったことが推察されます。

シャドーへの迫害が起こったのは「光」が成立した7年前ですので、
以前からスラム街と化していた不自由な地下世界を
そのまま追放スペースとしたのでしょう。

さて、このマーケットの商品で明らかに異質なものがあります。
「ザザムシ」です。

ザザムシとは
長野県伊那地方・天竜川にて冬場に捕獲される
食用のトビケラ・カワゲラの幼虫を指すことばですが
彼らは冷たく澄んだ低有機物の川に住むため、
下水由来の水から養殖できるとは到底思えません。

なぜでしょうか。なぜザザムシ養殖に適した水がどこからきたのでしょうか。

ここで仮説です。
「光」はシャドーへの兵糧攻めを行いはじめた

シャドーは組織的にスパイ活動を行なっており、
「光」にとっては脅威です。
また、出入り口は封鎖されており、互いに人員を送り込むこともできません。

そのためシャドーへ供給していた下水から
熱と有機物を除去することで
シャドーの熱源と食料源を奪おうとしたと思われます。

つまり、
ザザムシが住めるほど冷たく・有機物の少ない水が徐々に増えてきた
のでしょう。

低濃度の有機物を高濃度に集めることは困難です。
ゴキブリやネズミに与えるには多くの水を濃縮し、暖めなくてはいけません。
ザザムシでラットを育てるには
市場価格から類推して
更に1.6倍、一匹3万円の飼料代がかかってしまいます。

そのため
ザザムシの養殖はシャドーの食糧危機の前兆といえるのです。

シャドーがこのあとすぐに蜂起に踏み切ったのも、
ゴキブリ→ザザムシという食糧のやむを得ないシフトが原因と思われます。

ザザムシというマイナー食品が、
重要な戦争のきっかけとなった
、世にも珍しい作品といえるでしょう。

結論

手塚治虫作品でザザムシを養殖し始めるとヤバい。

以上
「火の鳥」の一コマから考えるザザムシ養殖でした。

以前 キバラヘリカメムシが美味しいと報告しましたが。
クヌギカメムシは一般的なカメムシ臭がします。

クヌギカメムシにはサジクヌギカメムシやヘラクヌギカメムシがいるようですが
生殖器の形を比較する必要があるため今回は見送ります。
というか味が違うと思えないので。。。
基本的に幼虫は成虫に比べ柔らかく、カメムシ類の場合はニオイがやさしく食べやすいのが特徴です。
クヌギカメムシ幼虫は見ためはキツイですが、多分美味しいでしょう。
味見
茹でてしまえばカメムシ臭はさほど気にならない。キバラヘリカメムシ幼虫のような旨味のある柔らかい体で調理法によってはもっとおいしく頂けそう。
半翅目は種によって全く味わいが違うので、
勉強しがいがあります。次はオオクモヘリカメムシを狙いたいですね。
キバラヘリカメムシと同様に青りんごの香りがするそうです。

1

「始まってもいないのに何を」とおもわれるかもしれませんが。

2013年 5月13日 FAOが報告書を公開し、
一斉にニュースで取り上げられました。
201ページに亘る報告書なのでこれからしっかり読まなくてはいけません

題名を読む限り、
「Edible insects:Future prospects for food and feed security」

未来の食と飼料の安全保障に有望だ、との論調です。

実は2010年にも報告書が出ており
「Edible forest insects Human bites back」

クリックしてi1380e00.pdfにアクセス


森林資源としての伝統昆虫食を見なおせ、という内容でした。

このことから、
2013年の報告書は2010年よりも
もう一歩「未来」に踏み込んだ内容になっていると思われます。

これに並行して
昆虫食がブームになりそうな兆し

があります。
食に関して意識の高い
欧米のセレブを「Foody」というそうですが
大豆食・魚食(寿司食)ブームも彼らによって引き起こされました。

アメリカでは複数の食用昆虫の会社が企業しており、
この流れによって 他の健康食と同様に
昆虫食がブームとなる可能性が浮上してきました。

ですが
ヒトという巨大な胃袋が食性をかえる

ということは
自然界にとって大きなリスクとなります。

もし
採集でしかとれないタケムシやモパニワームが人気になったら。
もし
養殖が追いつかないほどの需要がコオロギやタガメで起こったら

ビジネスチャンスを求めた投資が起こるでしょう。
更にそのブームが一気に収束したら。

継続的な生業として成立しない
荒れ果てた食用昆虫市場が残されることになるでしょう。

昆虫は種の多様性が高いことから、
種内・種間の相互作用が複雑に絡み合っています・

ここにヒトという巨大な消費者が
「嗜好や流行」で
介入すれば影響は計り知れません。

ということで、

「昆虫食をブームで終わらせないために」

何ができるか考えてみましょう。

1,採集昆虫食は伝統的生産者に採集権を限定し、価格と流通量を決める

昆虫食のメリットは「誰でも・どこでも取れること」です。
つまり誰でも生産者になれる可能性があります。
逆に言うと誰もが参入することで、資源量と流通量を把握しきれない危険性があります。
漁業権のような組合の設立と生産者を限定する仕組みが必要と思われます

2,各昆虫資源について顧問研究者を任命する

昆虫の研究は昆虫種と同じで多様性が高く、
一人の研究者が全ての昆虫を網羅することは到底出来ません。
昆虫種に応じた経済に左右されない基礎的な研究者を顧問としたいものです。

3,ミーハーなヒトは養殖昆虫を食べる
採集昆虫はとてもデリケートです。アマチュア昆虫研究者間でも
希少な昆虫のスポットは互いにナイショにしていたりするそうです。
口コミが伝わると業者にバレ、根こそぎ採集される危険があるためと効いたことがあります。

一方で、昆虫は多産・高死亡率の生存戦略をとる生物なので、
捕食者から隔離するだけでどんどん増えます。
更に、短いものでは一世代が二ヶ月ほどなので、
養殖昆虫はニーズに応じた生産調整がしやすい家畜と
いえるでしょう。
ブームに乗っかっていると自覚した方は養殖昆虫を食べると良いでしょう。

4,養殖昆虫を生産する際の農業生態系にも目を向ける

既存の家畜は単純に食肉を生産するためのものではありません。
マズいけどよく育つ飼料作物や農業残渣である麦わら・稲わら、生ゴミを処理し、
食肉生産と同時に堆肥化してくれる重要な農業生態系の一部です。

一部の研究者が主張するように
『ウシをコオロギに変更したするとより効率的なタンパク質の生産と二酸化炭素の削減ができる』
かもしれませんが、コオロギのフンや病気の管理、生産調整等
様々な農業生態の変化が予想出来ます。
その影響をきちんとコントロールできないと
「ウシのほうがまだよかった」となりかねません。

食べる昆虫がどのような経緯で生まれ、どのように環境負荷を抑える目的で生産されているのか、
きちんと考えてからでないと、安易な昆虫食ブームは
既存の家畜産業を破壊しかねません。

とまぁ

杞憂であれば嬉しい(同時にブームが来ないと悲しい)のですが。。。。。

ここから妄想が入ってきます。

「もしバッタを養殖するムラがあったとしたら」

養殖昆虫は近年ようやく出現した昆虫食の形で、既存の食用昆虫のほとんどは
採集食か、機能利用(はちみつや絹)の副産物として食べられてきました。

そこで 未来の
養殖昆虫食のカタチとして、
資源の有効活用を目指した
自給自足型のバッタ養殖のムラを想定します。

トノサマバッタはイネ科の草本を、一日に体重の1.5倍食べます。

そして
トノサマバッタ類は時に大発生することが知られています。
時にはその総数は500億匹・11万トンとも推定されています。

日本の牛肉の生産量が10万トンですので、
ヒトの手がかかっていない単一種の陸上バイオマスとしては
途方も無い量といえるでしょう。

各家庭に、誰かがタダで国産牛肉が配ったとしたら
牛肉生産者は食いっぱぐれてしまいます。

バッタ養殖ではこのような危険があるのです。
養殖昆虫業が生き残るには「自然界という競合相手」と
渡り合っていくことが必要でしょう。

養殖にあって
採集(狩猟)にないものとは
「副産物の利用」が考えられます。

具体的にはウンコです。
バッタは一日に体重の1.5倍という膨大な量をたべます。
想像してみて下さい。 60kgの成人男性ならば90kgです。
当然フンも大量に出ます。

つまり、
ウンコの利用が
バッタ養殖業の継続のカギといえるでしょう。

ウンコの利用・ウンコの利用・・・・と考えて
ここ一年
色々な妄想特産品を開発しました。

お茶 お茶プリン

紙や染めモノ 

…工芸?
…祭り?
…収穫祭?

妄想は続きます。
「バッタ養殖のムラには、バッタのフンを利用した工芸が起り、その工芸で着飾った住人たちによる収穫祭が開かれるだろう」

との大胆な仮説(妄想)から
こんなのが生まれました

解説

このお面はバッタのフンを50%含む紙粘土でできています。
バッタのフンは繊維質が多く、紙粘土との相性がよく、風合いのよいお面ができます。

また、触角はカイコの繭をバッタのフンで染めたものです。
フンにはバッタが利用しなかった色素や老廃物があり、煮出すことで落ち着いた茶色となって
定着するのです。

装着してみましょう。 思いの外デカイ。

祭り感。。。。。?

なんということでしょう。
お祭り感が感じられません。

一人でセルフタイマーで行なっているせいでしょうか

祭りというより 奇人変人の類であります。

むしろ B級SFの世界。 ウルトラQでしょうか。
セミ人間なんていうのもありましたね。。。
「ガラモンの逆襲」に出演したそうですが。。。。

ということで作ってみました。
「バッタモンの逆襲」

 

5

先週海に行く用事がありまして。
大洗の海岸でついでにフナムシLigia exotica
を採って来ました。
もちろん味見をするためです。
スカベンジャーであるフナムシは、
ゴキブリとよく似た生態・姿形をしているので
「海ゴキブリ」とも呼ばれ、一般にあまり好かれていません。
同様に味も似ているのでしょうか。

今回は大きさの近いデュビアの幼虫を比較対象としました。

長い触角、似た大きさの脚、下を向いたアタマ、平たいからだなど、
全くよく似た構造をしています。

ネットでは「臭くてたべられない」とのことですが、
折角ですのでチャレンジしてみます。
ホントウはフン抜きをして、一週間後ぐらいに食べたかったのですが
飼育が悪いようですぐに死んでいくので、生きた個体がいるうちに
実施しました。
味見
デュビア フン抜きをしていないせいで臭く、内部がジャリジャリしている。
やはり茹でには向かない昆虫。
フナムシ
圧倒的な磯臭さ。内臓を除去しようとするが腹部は全て消化物で埋まっている。
脚もシャリシャリして食感が良くない。
多足の節足動物でもゲジは美味しかっただけに
大変残念な結果です。
ただ言えることは
「フナムシは磯臭いゴキブリに似た味」であることです。
「海ゴキブリ」とのアダ名は味も的確に予言していたのでしょう。

「形が残っていなければ食える」

昆虫料理未経験の方からよく言われるのですが
そういう時は
もし
「エビしんじょ」でしかエビが食べられ無くなったらつまらなくないですか?
と聞き返しています。
形をなくすれば昆虫食は普及する、というプロジェクト「Ento」というのも
ありましたが、
文化的なもの=食べ方や調理法を含めて昆虫食を再考していくならば
先ず形をなくす、というのはやや乱暴なアプローチかと思います。
ということで、比較画像
片方がよりおいしそうに感じられるならば、あなたがそれをたべる文化に属している、ということですね。

クロコガネ Holotrichia kiotonensis
夜の畑にうろうろしていました。けっこう多く捕獲できるので
食べごたえのある量がとれます。

いつもはコガネムシは揚げが定番なのですが、
今回はあえて茹でていただきます。
若干の土臭さとこうばしさ、内部はほぼ空洞。
クチクラはカタイ。口にのこってしまう。
コガネムシは揚げに限りますね。

ゲジThereuonema tuberculata
形をみて食わず嫌いだったのですが。
顔がカッコイイとの情報により捕獲してみたくなりました。
氷に入れてもすぐ動き出すので、うまく全身写真がとれませんでしたが
お顔はこんな感じ。

実はイケメンです。
脚がすだれのように整然と並んでいてカッコイイですね。
筋肉質で弾力があり、繊細な脚も食べやすく気にならない。
タンパクだが昆虫の筋肉特有の甘み・香ばしさはなく、ささみのようなシンプルな味。
美味しかったので、
次はオオゲジでしょうか。
脚がポロポロとれるので撮影もうまくやれるよう頑張りたいところです。

春になり続々と虫たちが育っています。
ギシギシの葉にいた見慣れないこの幼虫。

「イモムシハンドブック」にも載っていなかったのですが、しらべたところアヤモクメキリガXylena Ochsenheimerの幼虫のよう。
いつものように茹でてポン酢で。
豆に似たやさしい甘み。かなりうまい。外皮もソコソコの噛みごたえと弾力がありバランスが良い。とてもみずみずしい。久々のヒットです。色もよく比較的大型なのも嬉しいですね。

以前 秋に「ゼッタイに食べてはいけない」昆虫としてマメハンミョウを紹介しましたが

春になってツチハンミョウ(ヒメツチハンミョウ?)を頂きました。

ガンダム0080の ケンプファーのような
ブルーメタリックのカッコイイ虫です。


ですが絶対に食べないで
ください。

触れるのも危険なようです。

節から出てくる黄色い汁にはマメハンミョウと同じ猛毒、カンタリジンを含むので

大変危険です。

でも

カッコイイですね。

ツチハンミョウのメスは春に数千個の卵を産み
ハナバチの巣に寄生して大きくなるとのこと。ううむ。すごい。

再度お知らせしますが
カンタリジンは加熱では消えないので絶対に食べないで下さい。
食べてはいけない毒虫をしって、必ず加熱して
昆虫料理を楽しみたいものです。

トノサマバッタ Locusta migratoria
は私が今最も注目している養殖食用昆虫です。
以前加齢に伴う味の変化を報告しましたが、今回は系統による差を比較してみました。
某巨大系統。日本最大のトノサマバッタ系統です。(写真はどちらもメス)

向かって右は飼いやすい沖縄系統。
体重にして3倍強、写真の個体は5.4gもあります(最大で8g以上になることもあり)
これはもはや立派なエビですね。


箸と比較してもこの大きさ。

翅のサクサクとした歯ざわり、胸のカリッと堅揚げの外皮の内部にほっこりと甘い筋肉の味。腹部の脂肪体は濃厚なうま味とコク。全体としてトウモロコシ系の香りと加熱したキチンの香ばしさ・うま味が心地良い。やはりでかいと部位別に味わえるので楽しい。
昆虫の家畜化はその系統の作成も
ビジネス上の大きな一手となります。コレが簡単に増やせたらなぁ。。。。
と思う次第です。