コンテンツへスキップ

逆にニワトリを食べてみる。前編

昆虫食をやっていると言うと
「昆虫を食べるなんて可愛そう」

言われることがあります。
特に
昆虫を身近に感じている小学生が、
とても素朴な感性でレスポンスしてくれます。
真当な質問ですし、私も食べる時そう思います。
こういう時はチャンスです
「じゃあ鶏や魚はかわいそうだと思う?」
と聞いています。
ううん〜? と
首を傾げる小学生。
いまひとつピンときていないようです。
さて。今回は
昆虫の食べ方がそろそろわかってきたところで
「逆にニワトリを食べてみる」

に挑戦したいと思います。
昨年8月に、単位取得のため実習で
血抜き済みのニワトリの精肉方法を習いましたので
「失血死させるところから」きちんとやっておきたい。
そして、
昆虫食を作る時との「主観的な情動の動き=感情」を
比較してみたいと思いました。
ちょうど知り合いの方が高齢の雌鶏を
処分するとのことで
譲ってもらえることになりました。
年明けの1月9日に譲り受け、1月13日に食べました。
食肉処理は次回に報告しますので
前編として、ニワトリにトノサマバッタと、
バッタの食べ残しであるサトウキビの芯を与え
その消化の様子を観察しましょう。
そこから
「サトウキビのモノカルチャー経済における自給的バッタ(ニワトリ)飼育」
を考えてみます。
ニワトリにバッタを与えると
活発にバッタに食いつきます。

この時、確実に頭部を一回攻撃を加え、
バッタの動きが鈍くなってから頭から食べます。
バッタが抵抗した場合は、二度三度地面に打ち付けてから丸呑みします。
このニワトリは
飼育中にバッタを与えたことはないそうなので、本能行動だとすると、
キジ科を由来とするニワトリにとってバッタは生得的な食料であったといえそうです。
次に、
バッタの食べない硬い部分、サトウキビの芯を与えました。
まず、喉の下の方、「そのう」と呼ばれる消化管の膨らみに
丸呑みされたバッタやサトウキビが溜まります。
ニワトリを初め多くの鳥類は「丸呑み」ですので
かたちが残っています。90g入っていました。

次に、「砂嚢=筋胃」と呼ばれる、いわゆる砂肝の部分で
強力な筋肉をもってしっかりすり潰されます。

ここでは、繊維状ではあるものの、
バッタの姿は消えてしまいました。
ニオイは胃酸の酸っぱい臭いと、
バッタ由来と思われるエビ系、及び植物系のニオイがします。
フンに繊維は残っていますが、下痢をすることもなく、きちんと食べて分解しています。
そしてフン。ここにはもう
バッタの姿はありません。

以上から、
サトウキビを使ってトノサマバッタを飼育すると
サトウキビの芯とバッタを与えることで、
ニワトリの二次養殖ができる可能性が見えてきました。
(もちろん不足する栄養素を調べる必要があります。)
ここから、
さとうきび畑のあるモノカルチャー経済の地域において
具体的な提案ができるかもしてません。
さとうきびはC4植物で、
作物の中で最も光合成効率が高いため
熱帯の発展途上国における商品作物として
広大な畑がつくられ、安価な砂糖が先進国に輸出されています。
それらの畑には、
本来は自給用の作物が植えられていたのですが
現地の人々は、さとうきび畑に変えることで、現金収入を得ることを選びました。
彼らは、サトウキビ栽培で得られた現金を使って国内の市場で食料を買うのです。
畑は、光合成効率の高いサトウキビに換えられたことで
土中の栄養分がグングン消費されてしまいますので、
段々土壌が痩せていきます。
そのため、
一度サトウキビに換えられた畑は、
元の自給用作物を植えてもうまく育たないのです。


砂糖は先進国で大量に消費される「手堅い」食料源として
フィリピンやタイなどの温暖な発展途上国で盛んに採用されました。
ところが、
オーストラリア産の甜菜糖や
アメリカ産のコーンを原料とする異性化糖(果糖ぶどう糖液糖)
などの台頭により1985年、砂糖の国際的な価格が暴落し
大きな打撃を受けてしまいました。
サトウキビの現金収入だけでは
食料が十分に買えなくなった住民は
自給的農作物を求めたいところですが、
先ほど述べたように、一度サトウキビ畑にすると
自給的作物の栽培には戻せません。
そのため、経済的な打撃を受けてしまうと、
「豊かな畑の中で飢餓になる」という
危機的な状況を招いてしまったのです。
逆に言うと
「売れなくても食える・保存できる作物」
というのは、
飢餓リスクを考えると非常に安全だといえるのです。
「売れなくて高コストの米」を国内で作るかどうか、
日本の経済が暴落し、海外の米が買えなくなる可能性をどの程度見積もるか、
海外の気候が変動し、米の禁輸措置をとる可能性をどの程度見積もるか。
難しい話です。


今回の観察より、
砂糖が売れない時、
サトウキビ畑でバッタを養殖し、
そのバッタを自給的に食べていれば、
もしくは
サトウキビの芯とバッタを使って、ニワトリを二次養殖し卵を食べていれば
サトウキビを自給作物として利用出来たかもしれないのです。
ここから考えられる
植食性昆虫利用の優れた点として
時間がかかる、あるいは不可逆な転作を行うこと無く、
最終生産物を短期間で(バッタが成虫になるまで30日)変えられる点が、
不安定化する農産物価格のリスクを抑える方法として有効になるかもしれません。
今回は長くなったのでここまで。
次回はニワトリでスープカレーを作ります。
その時の
「屠殺者の主観的な情動」に注目して
昆虫とニワトリとを比較しました。
もちろん廃棄率も計算しています。
なかなかいい経験ですね。
では次回までお待ちください。

2 thoughts on “逆にニワトリを食べてみる。前編

  1. ケムマキ

    多い時でどのくらいの量を召し上がるのでしょうか
    単純に魚一匹分150gだと相当沢山の虫を食べる事になると思うのですが
    また食事として考えた場合ごはん、お飲みになるのであればお酒との相性はいかがですか

    返信

ケムマキ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。