コンテンツへスキップ

おせつりょうり vol.8 トビイロ雑煮

前回は
モパニワームの乾物を使い
傷みやすい昆虫の「保存」について考えました。
昆虫は死ぬと短期間で傷んでしまうので
食材としてきちんとした保存方法の確立が必要です。
塩漬け(タガメ)
水煮缶詰(アリの子)
佃煮(イナゴ)
乾燥(モパニワーム)
いずれも他の食材と同様に用いられてきた保存方法です。
更に
昆虫には未開拓の保存方法があります。
それは「休眠」です。
といってもヒトは休眠しないので
ピンとくるのは休眠の一種、「冬眠」でしょうか。
クマやヤマネは冬になると体温を下げ、代謝を抑制し
エネルギーを節約する「休眠状態」になります。
哺乳類の場合、寒さがきっかけとなりますが
他の生物はそうとも限りません。
トノサマバッタのメスは、
日の長さ・日長に応じて
休眠卵と非休眠卵を産み分けます。
本州のトノサマバッタは年2回発生します。
春先に孵化した幼虫は、6月後半に非休眠卵を産み
その後すぐに第二世代が孵化します。
一方で、
秋にさしかかり、日長が短くなってくると
それを察知して、冬眠用の「休眠卵」を作ります。
この休眠卵、室温に放置しても全く孵化しません。
ゆっくり温度を下げ、およそ一ヶ月4℃の低温にさらすと
休眠状態が解除されます。
その後室温に戻すときっかり10日後に孵化するのです。
また、4℃のまま保存すると、
半年から一年は80%以上の確率で孵化します。
卵だけでなく、
幼虫やサナギ、成体も休眠状態になるのが昆虫のスゴイところです。
以前紹介したエビガラスズメ
日長をきっかけにサナギで休眠するので、
15℃の部屋で半年以上保存できます。
幸いなことにサナギのエビガラスズメは大変おいしく、
「食べごろ」が保存できる点で、他の生物より
昆虫の休眠の食品保存への利用価値は高いと思われます。
鱗翅目は前蛹がおいしいので、
「前蛹で休眠」する都合の良い鱗翅目がいればいいな
と思っていた所、
以前に紹介した激ウマのトビイロスズメがなんと、
前蛹越冬するとのこと。
越冬させてみました。

写真上、家庭用冷蔵庫で 10月中旬から3ヶ月保存したもの。
冷凍焼けして茶色くなってしまったトビイロスズメです。
写真下、同じ期間を湿度を管理して常温保存した前蛹
だいぶシナシナですが、「生きています」
触るとピクピク動きます。
これを雑煮に仕上げました。

味見
冷凍トビイロスズメ
冷凍によって劣化しているかとおもったが、多少脂質のニオイがするが味は相変わらずよい。
上手に作った卯の花と同じぐらいの旨味とコク
休眠トビイロスズメ
外皮がかためになっているが相変わらずうまい!大豆の香りと濃厚な旨味。
歯切れがよく口に残らない外皮も美味しくいただける。
冷凍保存の電力エネルギーを考えるとこの美味しさは見事。
食品保存の新たな地平、「休眠」
昆虫を使って切り拓いてみたいと思います。
冷凍冷蔵技術が未発達な地域における
食品廃棄、及び
遠隔地への食料調達労働の頻度を
減らせるのでは、と考えています。
市場への食品の買い出しを行う
児童や女性の労働時間を減らし、教育へと向けることができれば
昆虫食がそれこそ「世界を救う」事になるかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。