コンテンツへスキップ

昆虫の味見は「研究」か

私が以前から注目している研究者の一人、
クマムシ博士こと堀川大樹博士の有名ブログ
「むしブロ」でご紹介いただきました
注目していたと思ったら逆に見られていた、という
パパラッチが捕まったような恥ずかしさと、
褒められていることへの照れくささがあります。
光栄です。
残念ながら
まだ直接お会いしたことはないのですが
慶応大学のクマムシ研究者鈴木先生や
ユスリカの記事でお世話になった
奥田先生から「堀川博士はすごい」という噂は聞いており
ユニークな形で日本の学術界を
盛り上げるパワーを持っている方だと思います。
日本初(?)の研究者発ゆるキャラ「クマムシさん」
クマムシのエサ・クロレラ代になるクラウドファウンディング
そして有料メルマガ などなど
「お前(アカデミア)に雇われんでもおれはフリーでやってけるんや!」
という頑固で気骨ある博士が巷にあふれると面白いですね。
研究の独立性、多様性を確保するという点では、
研究者自らが、研究の一部を
一般に公開することで研究費を得る。
という前例を作ることはとても重要でしょう。
実は、私にもクマムシの思い出があります。


クマムシはとてもかわいらしく、魅力的だったので
私も高校生3年生の自由研究(やるかどうかも自由 笑)でテーマとしました。
その中で印象に残っているのは
「乾眠クマムシは100%エタノールに耐える。
乾眠クマムシに水を加えると戻る。
ではエタノールと水の混合物を乾眠クマムシに与えると?」
という課題。
通常クマムシはエタノールには耐えられないので
乾眠クマムシがエタノールと水の混合物に触れた場合、
クマムシは乾眠を解除すべきではない。といえます。
なので、クマムシが乾眠によって
エタノール耐性を進化的に獲得したのであれば、
エタノールと水の混合物にも耐性がある=水に戻らない
可能性があると考えました。
野生のまともに同定していないクマムシをつかって
5匹ずつ、
濃度を10%エタノールから90%エタノールまで
段階的に用意して実験しました。
顕微鏡写真は理科室のテレビ投影機能付き顕微鏡を借り、
そのブラウン管テレビ画像を使い捨てカメラで撮り、
さらにそのフィルムを写真屋さんで
デジタルデータ化してもらう、という
もはや何がなんだか分からない方法
画像データを作っていました。

あらい…アラすぎる…

当時こんなものも。紙粘土クマムシ。

消化管が透けているのを見誤って、
背部がブロック状に分かれていると思いこんで作ったものです。
イグアノドンの間違い復元図のようで今見ると微笑ましいですね。
実家にそのまとめがあるので
記憶だよりのため正確性には欠けますが
結果は悲しいものでした。
エタノールと水の混合物を与えられた乾眠クマムシは、
いずれの濃度においても力なく膨らみ
そして死んでいったのです。
100%エタノールを加え、
しっかり乾かしてから水に戻したものと
エタノールを加えずに水に戻したものは、
いずれも元気に動き出しましたので
クマムシは外界の状態に影響されずに
水さえあれば戻ってしまうと結論づけました。
エタノール耐性は
おそらく乾眠能力に付随して得られたものでしょう。
エタノール自体は自然界ではほとんど水との混合物で存在するため、
乾眠クマムシの100%エタノール耐性が
彼らの実生活で役に立つことはなかったのではないでしょうか。


さて
クマムシの思い出はこれぐらいにして
クマムシ博士からは「研究者」として紹介されたものの
このブログが「研究であるか」
について、
自分の見解を書き留めておきます。。
「当ブログは学術研究未満である」
です
味の評価はあくまで私の主観であり、
統計的有意差も再現性もとれていない。
紹介するデータも有意差のとれるものを扱っておらず
ただ測定した生データを披露するのみ。
なぜかというと、
「未発表の論文用データは公開すべきでない」
という研究者の慣例に従ったこと
そして
「いろんな方から間口を広く主観データをもっと集めたい。」
というブログならではの目的があったからです。
なので、味センサーや特殊な実験装置は一切使わず
(フリーズドライ装置だけは使いましたが)
家庭用品だけで調理し、自分の舌だけで味わっています。
間口を広げたおかげか、
某有名まとめサイトにも紹介を頂き、最近は
コメントも増え、とうとう昆虫食レポートまで頂けるようになりました。
「◯◯という木に××という昆虫がいて△▽して食べたら□□でしたよ!」
とか
「テメー☆☆がうまいとか言ってたけどクソマズじゃねえか!」
このようなコメントが
記事の末尾に溢れかえる日も近いでしょう。
そして、
「未満」のこの研究を
学問として成立させるためには
ある昆虫について
昆虫学をベースに飼育繁殖から始め
味や栄養を定量的に評価し
健康につながる微量元素や
独自の生態を利用した養殖につなげ、
それを使ったメニューを考案し振る舞う
そんな
ディープな「昆虫食学」で
学位をとる、そんな後輩が現れるのを期待します。
私は残念ながら
学生でいられる予算と期間が
そろそろ限界を迎えるため、ボスの指導のもと、
バッタの生理生態学を中心とした
「応用昆虫学」で学位を狙っていきます。
悔しいですが
バッタ博士やクマムシ博士のような
いい論文をきちんとまとめることが出来ておらず
今のところ、
職業研究者に至るには到底業績が足りません。
ただ、
研究者のポストを得られなくとも
昆虫食の研究は続けますし、
幸いなことに昆虫食研究には
高額の予算を必要としません。
野良研究者、兼業研究者としてでも
続けていくつもりです。
嬉しい事に、食用昆虫科学研究会には
将来有望な後輩や仲間が多くいますので
私が直接サポートすることで
昆虫食学を修了できるメンバーも
できることでしょう。
近い将来
応用昆虫学の一分野として
「昆虫食学」が出来る日を夢見ています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。