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味見;昆虫食の入り口としてのカイコ・クワコ

カイコBombyx mori
人類が完全家畜化した唯一の昆虫で、
成虫は飛べないため、ヒトの手をかけないと生きられません。
そのため、
初めて食べた昆虫がカイコ、という方も多いようです。
絹の原料、生糸を生産するために飼育されており、
その糸を取った廃棄物、サナギは上質な脂質、タンパク質を含むため、
養鯉飼料として、内陸部で利用されきました。
なお、養鯉意外の食用魚の飼料としては、
「身に匂いがつく」として利用されなかった経緯があります。
つまり。「くさい。美味しくない」のです。
カイコのサナギを食べた、という話や、カイコのサナギに含まれる油を絞って、
炒め油として使っていた、という話は聞くのですが、
「美味しかった。また食べたい」
あるいは「カイコを越えるおいしさのものはない」
という感想はほとんど聞きません。
カイコの美味しくない理由は2つあります。
一つは鮮度です。
カイコはサナギになる時に繭を作り、この繭は一本の糸でできています。
その後カイコは繭を切り開き外に出て、羽化します。
そうなると糸が切られてしまうので、価値が大きく下がります。
その前に繭を作ったカイコを繭ごと大鍋で茹で、糸を切らないよう
生糸を製糸し、最後に乾燥したサナギが廃棄されます。
茹でて乾燥したものなので、このサナギは
デガラシ状態で、酸化した脂質の香りもあり、
非常に食べづらいです。
これを鮮度の良い状態で、
まだ生きているカイコの繭を切り
(この時点で生糸の価値は失われてしまいますが、)
食べると、かなり食べやすく、味わい深いものがあります。
ですが、今まで様々な昆虫を食べましたが、
基本的にカイコは美味しい昆虫とはいえません。
もう一つの要因は食草、クワの匂いです。
クワの土臭い、強い匂いが、食用には向かないと思われます。
最近食べたのはカイコの原種。クワコBombyxmandarina

このような黄色の綺麗な繭をつくります。

サナギの形はカイコとほぼ同じ。
味はクリーミーで悪くないのですが、やはり食草である
クワの香りが気になりました。
カイコを美味しく食べるためには
鮮度を保つのはもちろんのことですが、
クワの香りをマスクする必要があります。
以前、カイコを飼っているところから、
繁殖用に使った成虫を大量に分けていただきました。
通常は佃煮などにするとクワの香りが減り、食べやすいのですが、
他の方法はないかと、試行錯誤してみました。
脂質の臭みを消すため、米のとぎ汁で一旦茹で、
水を入れ替え、ショウガと紅茶で煮、
砂糖と蜂蜜で味付けた「カイコの紅茶生姜煮」を作りました。
なんとか許容範囲内まで、匂いを抑えることができたのですが、
佃煮の完成度には劣ります。
醤油は偉大なもので、カイコ特有の臭みをマスキングし、
美味しい香りへと転換させることができていました。
伝統料理恐るべしです。
また、手軽に手に入る昆虫食材として
韓国ではポンテギとしてキムチ味の煮物缶詰が
売られていますが、
こちらも個人的には好みではありません。
カイコが好きな方もおりますし、
独特の風味もありますが、
昆虫を食べたことのない人が初めて食べるものとしては、
ハードルが高いと思います。
ぜひ、バッタやイナゴ、セミ、トンボ、ハチなど、
今まで食べたことのあるエビやカニ、ナッツ等で形容できる
とっつきやすい昆虫食から試して欲しいと思います。
また、カイコガ科で、クワを食草としない別種もあるそうです。
カイコ研究者からそのうち分けて頂けるとのことですので、
「クワを食べないカイコのおいしさ」についても
報告できたら、とおもいます。

1 thought on “味見;昆虫食の入り口としてのカイコ・クワコ

  1. 野中 明

    最後に乾燥したサナギが廃棄されます。
    茹でて乾燥したものなので、このサナギは
    デガラシ状態で、酸化した脂質の香りもあり、非常に食べづらいです・・・・・・・・茹でたてを鍋で炒って食べましたが、これはいけます。

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