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1-4昆虫を人に食べさせること

ここまでは昆虫を自分で食べることについて説明をしてきました。
私は生食をすることはしませんが、昆虫を生で食べたい、というヒトもいます。
感染症のリスクがありますが、そこまで強くは止めません。
ただ、他人に生食を勧めることや、間違った知識を教えて
危険な食べ方を誘導してしまう、
生食をしたほうが昆虫食に対して覚悟がある、といった煽る行為は
断固として批判します。
それは食品は特に他人に強い影響を与えるものだからです。
最も心配することが、食中毒と食物アレルギーです。
食べた人の体を大きく危険に晒しますし、
最悪死の危険すらあります。そのため食品を食べる自由はあっても
食品を他人に食べさせる行為には、責任と義務がともないます。
それを民法では「善良な管理者の注意義務」といいます。
業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと。 注意義務を怠り、履行遅滞不完全履行履行不能などに至る場合は民法上過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となる。<デジタル大辞泉より引用>
昆虫を提供する場合、有償無償にかかわらず、「昆虫を食べる行為」を任されている、と解釈します。すると、自ら食中毒になりたい人はいませんし、昆虫に対する安全衛生の知識は常識といえるほど普及していませんから、適切な知識を提供し、食中毒を起こさずに安全に食べるまでを期待されていると考えられます。
なので、「ハードルが上がる」とか「ノリが悪くなる」と言った理由で
説明せずに、あるいは昆虫が入っていることを知らせずに罰ゲームのように食べさせるのは
その後、食中毒や食物アレルギーが起こったときに、民法上の賠償責任を問われても仕方ありません。
そもそも、昆虫食は罰ゲームなどではなく、文化的な美味しい食品なので
ゲテモノとみなした食べ方は昆虫食文化に対して尊敬がないと思いますので個人的には嫌いです。
知らせておきたい食中毒の知識
食中毒への対処法は採集昆虫食、養殖昆虫食でガイドしました。
昆虫を他人に食べさせるときは、調理済みの昆虫を提供することもあります。
その場合は加熱調理だけでなく、調理後にも適切な管理をする必要があります。
具体的には加熱後移動する場合は、低温で貯蔵し、速やかに食べることです。
後で加熱すればいいと考えてはいけません。
一度繁殖した細菌や菌類が毒素を産生し、その後加熱したとしても
その毒性が残る場合があるからです。ヒスタミン中毒などがその例です。
私が見る限りですが、昆虫は死ぬとみるみるニオイや見た目がかわっていき
生のエビと同じぐらいの速さで変質しているように見えます。
時間経過や温度によって、どの程度危険なのか、細菌の数などを検査したいところですがいまのところデータがありません。予防に努めましょう。
それでも食物アレルギーはゼロにならない
今まで説明した昆虫の衛生管理は、昆虫そのものは安全であるという前提でした。
しかし、昆虫が本来持つタンパク質などの成分に対して、食物アレルギーをもつひとが
一定割合でいます。食物アレルギーの発症はアレルギー物質への経験によって
個人個人で異なるので、一概にどうすれば発症する、どうすれば発症しない、とはいえません。
大学祭において、昆虫食経験のある学生がカイコの入ったクッキーを食べ、重い食物アレルギーを起こした事例もありました。
当時本人の体調が悪かったことも関係していたかもしれませんが、
昆虫の食物アレルギーの発症については、食べる本人にきちんと説明をし、判断を任せることしかできません。
研究会の活動では現在は、アンケートを兼ねた同意書を作成し、食べるすべての人に説明と納得をしてから昆虫食を楽しんでもらうようにしています。今後はパッチテストなどの簡易検査を追加で導入できれば良いと考えています。
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