コンテンツへスキップ

以前の味見をまとめておきましょう。 オオツバメガ Lyssa zampaが昨年12月2日の玄関に舞い降りました。大きい。

この玄関は借家の蛍光灯をブラックライトに交換しておいたもので、毎晩玄関になにかしらの昆虫がやってくる、素敵なエントランスになっています。

以前にはツバメガの仲間の死体を見つけたことも。いつか食べたいと思っていた大型のチョウ。ようこそ味見へ。

そして茹でて味見。

しっかりとした旨味があり、歯ごたえもみっしり。コクも強い。チョウのようなプロポーションだが、毛の多さ やはり蛾の系統に近い感じもする。毛が多さはあげたりするとより食べやすくなるだろう。

幼虫もたべてみたいものです。

11月16日、17日に、毎年恒例のサイエンスアゴラ2019に出展してきました。今年からはISAPHとの共同事業体としてラオス事業を進めていきますので、今後の発展を願って、日本での研究会の活動とのコラボを強めていきます。ひとまずこの動画を御覧ください。雰囲気が伝わるかと思います。

ラオスで15年以上活動する保健のNGOである、ISAPHの事業の一つに、「本邦研修」というものがあります。これはラオスの協力者である保健人材を日本に招待し、保健医療の研修をうけてもらうものです。今回はそこに追加の助成金を応募して旅費を捻出し、東京のサイエンスアゴラまでご足労を願いました。なぜ呼んだかというと

「食の未来を日本人だけで相談することのナンセンス」を明らかにしたかったからです。どうしても日本人同士で昆虫食について話すと様々ある問題点や課題をすっとばして「心理的なハードル」に集中しがちです。

日本はこれから人口が減少し、アフリカとアジアの人口が増加します。

そしていますぐ、温室効果ガスをゼロにしたとしても、今後数十年間は温暖化が進むと予想されています。つまり。

「昆虫を食べる地域(熱帯や亜熱帯)の気候帯が広がる」

「昆虫を食べる地域(熱帯や亜熱帯)の人口が増える」

ということなのです。奇しくも伝統食材として、昆虫食が残っている日本が、「なんだか昆虫食へのイメージが良くない」ということで、将来性にフタをしたり、他の食材に比べて開発が遅れていることを理由に、採用を後回しにする、といった「遅れの再生産」を起こすことは、世界全体の損失となってしまうでしょう。

つまり、「昆虫食の伸びしろを確認すること」を目的とした研究は、偏見を手放して「公平に」やるべきなのです。本当は公的研究機関がやるべきところですが。

批判はさておき、今回は、わたしたちができうる限りの「昆虫食の未来を議論するに適したメンバー」を揃えた形になります。この5角形はサイエンスアゴラの理念を示すものですが、「アゴラ」という開かれた議論の場において、

研究会は科学者と事業者としての側面、

試食提供を支援いただいた昆虫食普及ネットワーク、株式会社TAKEOは事業者、市民として。

このとき通りかかって試食をしたり、聞いてくれた方々は市民、メディアとして、

そして今回ゲストであるラオス行政の公務員と、そこで一緒に働くNGOとしてのISAPH事務局長の佐藤さんも参加いただきました。

印象的な発言をピックアップしておきます。

「一番おいしい昆虫はなんですか」(こういうのをよく聞くのですが)

に対してラオス人医師は「昆虫にはそれぞれおいしさと食べ方があるからそんなのわからないよ」との答え。「一番美味しい脊椎動物は?」と聞かれて答えにくいようなものでしょう。豚の角煮と親子丼、ビーフステーキ、どれがおいしいですか? 難しいですね。期待通りです。

また、試食提供で私がTAKEOと開発している「バッタ生キャラメル」を食べてもらったところ「バッタ本来の味が死んでいる」という美味しんぼみたいなコメントをもらいました。とてもおもしろい。

今回のシンポジウムは「前に進む実感」というよりは、立ち止まって、あるいはむしろ少し後ずさって視野が広がる、そんな感覚をもらうことができました。

シンポジウムに参加してくれた人の多くは関係者でしたが、あらためて今の活動の意義や進捗を語らう場を設ける事ができてよかったかと思います。みなさまありがとうございました。そしてこの動画を撮影・編集してくださった、なおまるさんに感謝申し上げます。

さて、9月に味見していたものを掘り出します。

目的は9月の梅雨の終わりに売られているちいさな糞虫。こちら。

これ学名わからないんですが、どなたかご存じないでしょうか。

そのなかにチリメンモンスターと呼ぶべき、まざりものがあったのです。

とにかく美しい。前胸部のくぼみとまっすぐ上に張り出したツノ。三日月型のアタマの角が立体的に交差し、写真を何枚もとってもその全体像を映し出すことができません。くやしい。色も落ち着いたグリーンでありながらメタリックでもあり高級感があり、全体にしめるツノの大きさが大きく、まるっこい体型と破綻しないカーブを描いている。美麗種というのはなかなか恣意的な呼び名ですが、これは多くの虫好きが同意してくれる美麗種と言っていいのではないでしょうか。

そしてそれが食えるらしいとのこと。なんと。

それではいただきましょう。

茹でて味見。香ばしさがあるもののやや土臭い。カマンベールチーズのような少しのカビ臭さと旨みがあり、これはこれで美味しい。ツノやトゲは刺さるほどの強度はなかった。

おいしい。というか本家よりもチリメンモンスターのほうが美味しいとは。

そしてなんと、これが台湾で昨年出版された昆虫食本「昆蟲上菜」にも掲載されていました。

なんと、おいしい蟲はおいしい。国境をこえてこんなことが話せたらいいなあ。グローバルに参りましょう。

11月の内容もまとまらないままもう12月も終わりですよ。なんですかこのスピードは。

11月

「サイエンスアゴラ2019に出展してきました」


「未来と芸術展」

「ミイラ展」

「オープンリサーチフォーラム」

「Ai Hasegawa さんセミナー」
ぐらいの順番でいきます。

12月

オオツバメガ Lyssa zampa 味見

タガメナイト

さんわかセミナー

あたりまで書きます。本当に書きます。宣言まで。

もうひとつ美味しい糞虫、Onthophagus mouhoti これの味見レポートを9月に書くべきだったのを忘れていたので書きます。

Onthophagus mouhoti

1

今日は昆虫をオススメしない蟲ソムリエの話です。

先週8月最終週、味の素ファンデーションの助成で行われてきた村落栄養ボランティア研修を開催しました。その中で私は「栄養教育の完了したボランティアに、次の段階として栄養を得る方法を教える役割」を果たしています。昨年はゾウムシを一期修了生におすすめし、無事彼らの期待に答えてすべての希望者が継続的に昆虫養殖ができるようになりました。

こちらが2017年スタート時の様子です。

さて、昨年と今年の2月に実施された栄養調査によって、活動地の村において、「ビタミンAと油脂を含む食材の頻度」が相対的に不足しているという結果が出て、日本国際保健医療学会で発表されました。これまで気にしていたタンパク質の豊富な貝、魚、昆虫、そしてタケノコなどの、昆虫を含む野生食材は相対的にわりとみなさん食べている、という結果でした。当初タンパク質リッチで脂質の少ないバッタの導入を計画していたので、この結果は予想外でしたが、我々の目標は栄養なので、地域の問題に沿った提案をしなくてはなりません。

なぜなら問題を抱えているのはあくまでこの村の人達で、昆虫をオススメすることが自己目的化してはダメだからです。

昆虫で栄養を、というプロジェクトや企業からいくつか相談を受けましたが、その導入先の地域がどんな栄養の問題を抱えているか、というリサーチ抜きにスタートしているグループがいくつかあります。現地に行ったあとで、その昆虫がミスマッチだったとしたら、彼らはどの程度、現地に合わせて方針を変えられるでしょうか。

昆虫の多様性を利用したり、現地の生態系を俯瞰して提案できる食材が昆虫以外であったときに、どう動けるか、そのフレキシビリティが試されるとおもいます。

これから始まるJICAのプロジェクトの目標には、昆虫が栄養に至る経路については2つ準備をしています。一つはわかりやすい、直接食べるルート、もう一つは積極的に昆虫を売って、そのお金で別の食材を買う。あるいは市場に売りに行ったアクセスを利用して、その家庭に足りない栄養豊富な食材を買って帰ることです。昆虫を売って設けたお金で清涼飲料水やスナック菓子を買っては本末転倒ですし、昆虫養殖にかまけて育児がおろそかになってもいけません。

「売るならば栄養豊富でなくてもいい」という言い方もできてしまいますが、村の栄養状況に合わせた食材の養殖を推奨する中で、たとえ満足に売れなかったとしても、売れ残りを食べて栄養に貢献できるだろう(逆に言うと売れ残りを食べて栄養状態が悪化しかねないのが炭水化物です)という消極的な栄養貢献の役割も、含めてあります。

なのであくまで「栄養の問題を意識させ、改善していくこと」を常に目標として掲げ、養殖希望者には必ず栄養教育を受けてもらうことことなどを徹底する仕組みにしていきます。もちろんISAPHが今後の栄養状態についても追跡しますので、「昆虫養殖を導入したら栄養状態が悪化した」なんてことが万が一あっても検出できる、ステキな緊張関係を保ちつつ進めていきます。

この、昆虫養殖ビジネスが保健NGOと連携する仕組みのパッケージを開発することで、「昆虫食が栄養に貢献する社会実装」を実現しようとしています。

話がそれました。ビタミンAの供給源を何にするか。そしてそれが昆虫ではないということ。

ざっと検索してみたところ、アフリカの聞いたことのないバッタがビタミンAを多めに持っているという文献を見つけましたが、植物質の食品に比べると安定的にビタミンAをもっている昆虫はみつかりませんでした。ビタミンAは有力な栄養不良の要因の一つなので、(だからといって夜盲症が頻発しているわけではないのであくまで候補の一つ)ニンジンやかぼちゃなどの栽培も検討してきました、が、ラオスの雨季と乾季の水供給の差は激しく、ニンジンは乾季にフカフカになるまで手をかけた土壌を使い、袋栽培をするとある程度育つことが確認できたものの、雨季は全く育たず、かぼちゃも雨季は受粉がうまく行かず、ウリハムシにやられて失敗してしまいました。食糧事情が不安定なときの補完的な食品としての活躍を期待したいので、これではいまひとつです。

2018年乾季には人参栽培に成功。しかし手間とコストが大きい。

そこで雨季と乾季の両方を耐えうる、つまり「多年草化・樹木化」する植物にフォーカスを移し、情報収集を進めていたところ、昨年7月にこちらにたどり着いたのです。

ガックフルーツ。聞き慣れない名前ですがビタミンA前駆体のβカロテンが豊富に含まれていて、なにしろ栽培に失敗しにくい。つる性で雨季の増水も、乾季の乾燥にも耐え、広く葉を広げ、ウリハムシにも強く、植え付けから8ヶ月で実がなり始め、安定的に成り続けるというすごい特徴があります。

食べたことのない食品だったので子供に与えていいか検索したところ、ベトナムの未就学児185人を対象にした30日投与の論文が見つかったので、ひとまず安全性については大丈夫かと判断しました。ちなみに日本の場合、「モクベツシ」という生薬としてタネが使われてきた経緯から薬事法で種子の経口摂取用途の販売には縛り(pdf)があります。ご注意を。

タネからはトリプシンインヒビター(pdf)が見つかっており、下手に食べると下痢をしてむしろ栄養にマイナスに働いてしまうので、「タネは食べない」としておきます。今回も希望者に苗木で渡しました。

肖像の関係で顔の掲載はISAPH公式だけになってます。

この植物については全く世話の必要がなく、土地さえマッチすればどんどん生育し、その土地に肥料が足りなくなれば身が小さくなるので、各家庭の菜園の状態を把握することも、この配布の目的の中にあります。

先にこの村の栄養の問題、そしてビタミンAの話をして、

調理実習。ガックフルーツの果肉をつかった魚のスープ、ガックフルーツのパルプをつかった赤いドーナッツ、そしてパルプを使った甘いジュースをつくりました。こちらは料理学校の先生から提案されたもの。ガックフルーツはあまり一般的な食品ではないので、そのレシピから「美味しい料理」として村への導入を提案していきます。

ビタミンAはガックフルーツに任せるとして、油についてはゾウムシの出番です。来月はゾウムシにフォーカスにして、オススメするレシピと栄養の講義をしようと思います。
本家のソムリエと同じように、「適切でない場合はオススメしない」というのもソムリエの大事な仕事です。蟲ソムリエが昆虫をオススメするときは対象者が問題やニーズをもつとき。そうでないときは、昆虫よりもふさわしい別の食品を提案します。

逆に言うと、問題もニーズもないのに「昆虫の押し売り」をするのはソムリエとして恥ずべき行為といえるでしょう。幸いここラオスでは昆虫食文化があり、昆虫も他の食材と同じように扱ってくれます。一方で昆虫学の専門家はほとんどいません。そのギャップを日本の昆虫学とラオスとをつないで埋めていくことで、昆虫食文化が地元のニーズに沿って発展していくことをサポートするのが蟲ソムリエのしばらくのメイン仕事になると思います。

その中で「蟲をオススメしない」という結論に至った今回の活動は、たとえ昆虫が最適でないとしても対応できる前例となったので、蟲ソムリエらしい仕事ができたと自負しています。

更にいうと、「昆虫じゃない」という結論に至れる冗長性をもたないプロジェクトは、必要のない昆虫を住民にゴリ押ししてしまうリスクがあります。

本当に現場に昆虫が必要なのか、ご都合主義で昆虫養殖を自己目的化していないか、昆虫食プロジェクトを行う人も、それに支援する人も、皆様適度な懐疑主義とともに、相互批判をしつつ健全な業界になっていくよう、進んでいきましょう。

1

先週は取材対応をしていました。無事デングがおさまったあとだったのでよかったです。
昆虫食のイベントで2012年頃に知り合い、何度か昆虫食の記事を書いてくださった記者の方が世界の昆虫食について取材企画を立ち上げ、その一貫として私達のラオスでの昆虫食の活動を取材してくださることになりました。

ラオスでの取材受け入れの手続きなどなどをこなし、いざお迎えに。(ラオスは社会主義国なので関連省庁に報道関係者の活動について書類を提出しておく必要があります)
一日目、タイ側で昆虫を売っているスーパーをチェックし、ラオス側に陸路で入国、事務所のある街でまず作業場での昆虫養殖、市場を見に行き、二日目、村まで100km、ぬかるみの道を同行し、私達の昆虫グループの活動、ゾウムシ養殖とキャッサバ栽培を見てもらいました。3日目は村落栄養ボランティア育成の活動をあわせて見てもらいました。

やはり事前の知識が深く、これまでの昆虫食の流れも理解されているので質問も鋭く、私が聞いておくべきだった内容をズバッと農家に聞いていて、改めてプロはすごいと実感しました。


最終日、空港に移動する前に街のもう一つの市場に行ったのですが、レンタカーのおじさんが「タイに行くのが記者さん一人なら子どもたちも連れてっていい?」と聞いてきてあぁラオス人らしいなと思ってOKし、そこで別れたのですが、あとから記者の方からきくと、なんとドライバーの妻、娘二人、息子のオール家族がついてきたそうです。ラオスらしい。


取材内容については記事をみていただきたいので、ここでは触れませんがGlobe 8月4日版に掲載予定とのことです。購読中の方はぜひ見てください。ウェブ版も同時に公開されるとのことで、紙版を購読していない方もお読みいただける予定です。ひとまず告知でした。
7月12日頃から8月5日ごろまで、日本に一時帰国します。その間にイベントしたりなんだり、という予定をいま急いで組んでいるところです。

おもしろい論文が出ました。こちら。デング熱で先週やられていた身としてはタイムリーな蚊の論文です。

Adaptation to agricultural pesticides may allow mosquitoes to avoid predators and colonize novel ecosystems

農薬への適応は蚊が捕食者を避け、新しい生態系を植民地化することを可能にするかもしれない。

と直訳できます。may allow という、論文に使うにはかなり弱い示唆の用語が使われているので、そこまで強力な根拠ではないのですが、可能性を示したという意味で重要な論文になります。どういった可能性かと言うと

「殺虫剤による農業の増産が感染症リスクを上げるかもしれない」というルートの発見です。コスタリカなどの暑い地域の(比較的所得は高いですがまだまだ支援を受けている地域)開発途上国では、感染症の予防と農業の効率向上による栄養や所得の改善はそれぞれのセクターで別々に支援されてきた分野です。特に蚊による感染症は、わたしもかかりましたがつらくて消耗するだけのことが多く、栄養状態や健康状態の良好で、かつ適切な医療ケアを受けられるヒトではまず死にません。そのためワクチンの開発も後回しになり、栄養状態の悪い人、医療機関へのアクセスが悪いヒトへのトドメの一撃となってしまうのです。

こういった先進国のヒトにとっては致死的でない、熱帯の感染症を「「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases)」と呼んだりします。これらの感染症は貧困とも、栄養状態とも関連するので、感染症、保健、栄養、農業といったセクターワイド(最近ではマルチステークホルダーともいいます)で分野横断的に対策する必要があることがわかってきたのです。

そんな中でのこの論文のインパクトは、殺虫剤による農業の増産といった「正義」が必ずしも住民の健康、感染症リスクと無関係ではなく、逆に悪影響をもたらしかねないことを示しています。

細かいところをみていきましょう。コスタリカのオレンジ農場の周囲の森林において、ブルメリアという着生植物に注目しています。これらは雨水をためた小さい水場を作ることがしられており、それをファイトテルマータ( phytotelmata)と呼びます。蚊は池で発生すると考えがちですが、大きな池は蚊を食べる捕食者も多く、リスクとしては人家で放置されたペットボトルの水とか竹を切ったあとの水たまりとか、小さな水たまりのほうが、蚊の発生源となりがちのようです。

今回は蚊の捕食者として、ファイトテルマータに住むイトトンボの幼虫を選びました。基本的に捕食者のほうが被食者よりもライフサイクルが長く、そのためライフサイクルが短いほど獲得の速度がはやい殺虫剤耐性においても、蚊とイトトンボに差があるのではないか、との仮説です。

実験室内では、農場近くの蚊は森の蚊にくらべて殺虫剤への耐性を獲得しており、イトトンボはいずれの場所でも殺虫剤への耐性は変化がなかった、とのことでした。そこから類推されることは、殺虫剤の散布によって蚊が耐性を獲得し、イトトンボの耐性獲得が遅れることでオレンジ農園の近くに蚊の天国が形成されている可能性があり、それが農地で働くヒト(基本的に貧困層)の蚊媒介性の感染症リスクを高めてしまっているのではないか、ということをにおわせています。

そのため、感染症に弱い貧困層のリスクを高めないためにも、殺虫剤を減らした農作物を積極的に採用し、それをアピールしてフェアトレードにつなげていくことがこれからの虫とヒトとの付き合い方なのではないでしょうか。

とはいっても、デングにかかったあとは個人的な恨みから蚊など死んでしまえ、と思いますね。なかなか恨みは深いです。

人家の水瓶などに発生する蚊を殺すため、このような羽化阻害剤をつかった蚊対策の実験も進んでいるようです。楽しみです。

2

みなさま、祝ってください。長年応募してきたリバネス研究費に、とうとう採択されました。うれしいです。私がデングにかかっているうちにリリースがありまして、これは記事化しておかねばと。

私が今後ラオスで活動するためのJICA草の根パートナー型にも採択されましたので、とりあえず私はラオスに滞在し、少しの自分の裁量の実験ができるようになった、ということです。

とはいってもまだまだ資金は足りませんので私の動ける範囲と速度でこのプロジェクトを進めています。なぜいまのうちに助成金を獲得しておきたいのか、と申しますと、「監視の目」をきちんとつけておきたいからです。ここでいう監視の目というのは「昆虫食が世界を救う様子を共に見届けてくれる、信頼できる、かつ対立的に機能する目」です。

お恥ずかしいことなんですが、こちらラオスに来るまでに「昆虫食は栄養がある」「だから昆虫食は世界の食糧問題を救う」と、ピュアに信じて、そしてアピールしてきました。

昆虫に栄養があることと、各種の食糧問題の間にある大きな谷を埋めなくてはそんなことは言えないのはもちろんなんですが、そのアピールしやすい大きな谷を今すぐに埋められるかのような誇大な広告をしなくても、実直に、目の前に顕在化する小さな谷を埋めていくことで「昆虫食が世界を救うためのパワーと実績を蓄える活動」ができそうだ、とわかってきました。それがこれらの研究助成、活動助成で実施していくことです。今回のリバネス研究費でのテーマは「最適化」となっています。ここでの最適化は最高効率を目指すものではなくて、最大限村で手に入るバイオマスでもってどこまで効率を下げずに生産できるか、という部分に注目します。そして村で手に入るバイオマスを使って、やってみせ、そしてその情報を村人とシェアすることで、村人が自分たちの力で、自分たちで自給可能なバイオマスであることを自覚し、普及していくのです。この活動の中で、昆虫そのものの効率が「後回し」であって「優先度が低い」のがわかるでしょうか。昆虫そのものの効率を測定して、それがさも将来性かのようにアピールする研究やビジネスがあります。効率を高めたいのならば品種改良をすればいいのですが、このプロジェクトにおいては効率を高めることは必須ではないです。今の効率でも、試算すると十分に村人は栄養と現金をてにいれることができるからです。この試算が本当に村においても確からしいのか、村人と共有するための実験農園もセットしましたので、来年4月には、村での持続可能なシステムの全体像がはっきりできるかと思います。

とはいえ文献を調べても、いろいろと昆虫食は他の食材に比べてあまりにビハインドで、国際協力の分野において実績といえるものはほとんどありません。しかしここには文化がある。ラオスの文化に即した昆虫食が、我々の昆虫学の専門性と、彼らの主体性によって発展し、世界のスタンダードになっていく余地が多いにあるのです。

そしてもう1つの「目」は共同事業体となっている国際保健のNGO ISAPHです。ここでの3年に渡る食事調査によって、村に必要な栄養が何か、そして昆虫を養殖して現金収入を得ることがもたらす「栄養リスク」にも気づくことができました。(近いうち学会発表されます)はたして昆虫に限らず、「新しい食材で栄養改善」というプロジェクトが目を引く中、どれほどそこのマイナス面のリスクをモニターしながら進められているプロジェクトがあるでしょうか。目先の現金収入にとらわれて栄養状態が悪化する、というのはよくあることです。そして多くの場合、ソーシャルビジネスというガワをかぶることで、スタート時にその地域に与える負のインパクトは、将来性という未来のベネフィットにカモフラージュされていることが多いにあります。

ということでJICA、リバネス研究費、そしてISAPHと、ラオスの昆虫養殖は十分な「監視の目」を手に入れることができました。その目に私の活動を晒しながら、議論を深めながら、頑強な「昆虫食が地域を救う実例」を作っていきます。

これは先に説明した通り、村で手に入るバイオマスを使って、栄養と現金収入を手にし、そしてかつ、現金収入増加による栄養リスクの上昇すらもコントロールしていく、という地域に密着した総合パッケージとなっていくでしょう。この「持続可能な参加型開発」は、生産された昆虫のブランディングにも重要です。現在、先進国において売られている昆虫食のうち、本当に持続可能性に貢献できている生産体制を経由した昆虫はほとんどない、と言っていいでしょう。

そういったまだ実現できていない未熟な昆虫の生産体制を棚に上げて、あやふやな将来性のイメージの前借りをして商売することは、遅かれ早かれ昆虫食ブームの失速を招くと予言しておきます。今必要なのはオープンなイノベーションを下支えする事業者間の活発な相互批判です。

さて、私がこれからラオスに設置する生産システムをモデルケースにすることで、「昆虫食が地球を救うモデル」になるといえるのか、食の専門家との強い議論につなげることができるかと思います。

さて、7月中旬から8月初旬に関東に一時帰国の予定があります。ラオス事業についても活動報告をするセミ会になる予定ですので、ぜひきてください。詳細はまた案内します。

第二弾です。主役はトラクター。すごい。

こちらは第一弾
そして今回公開された第二弾

今回の1月から5月までの取り組みは、雨季が迫っていることもあり、キャッサバの植え付け栽培を優先しました。

キャッサバはゾウムシ養殖の大切な基材であり、この村ではこれまでほとんど栽培されてこなかったバイオマスです。

また、雨季になると稲作のための準備が始まり、6月からは学校も休みになって全村、全家庭が7月までに田植えを完了させるべく、総力戦に入ります。それらをお邪魔することもできないので、5月までに植え付けを終えておきたかったのです。

それでも予約したトラクターの人が遥か遠くの村に出張してしまって戻れないので急遽変更したり、フェンスを作るための木材を予約したのに当日全部売れちゃったからもう在庫ない、と言われたりと、なかなかラオスの商習慣に合わせるのが難しかったのですが、優秀な若手スタッフのおかげと、農家さんのツテで色々と探してもらい、どうにか予定通り終えました。ひと段落。

こういった「順番」というのはどうしても人を見ながら決めなくては行けません。前回の動画でゾウムシ養殖を導入するときはキャッサバを街から持ち込んでいましたので、本来の「順番」からすると最初にキャッサバを育て、そしてその収穫を使ってゾウムシを育てる、という提案をしそうなものですが、今回は村人が実物を見て、昆虫が楽に育つこと、昆虫が美味しいこと、市場で高く売れることを実感した上でキャッサバの不足を考えられる「準備」が整ってから、農地の開墾を提案しました。

そういった現場レベルの判断を、昆虫の専門家がクイックにできるという意味でラオスという現場に入れてよかったと思います。

これが特定の昆虫ありき、研究ありき、順番ありきで大予算の暴力で村人に押し付けていたのでは、自発的に養殖を続けたり、養殖したものを売りにいったり、そしてキャッサバを植えるための農地を提供してくれたりはしなかったでしょう。ラオスの現場に来て、机上の空論だったものを地面にどっしり据え付けることの面白さを体感しています。おもしろいです。

2

私がバイリンガルかどうかも怪しいですが、前回の帰国時に4月に収録して出演してきました。内容は最新のラオスでの活動から虫の好き嫌いまで多様に渡る2時間半!長い!たっぷり!

日本で大学院生をやっていた時、虫の部屋は空調が効き、断熱パネルで覆われていたことから電波は不通。ダウンロードしたポッドキャストを聴きあさる日々でした。よく夜更かしをして原稿を書いたり、バッタのお面を作ったりしていたので、パートの研究補助のみなさんと一緒に朝9時に始まるバッタのエサ交換はなかなかテンションが上がらず、面白いポッドキャストを聴きながらニヤニヤしつつ草を刈り、交換したものです。

そんなヘビーリスナーだったポッドキャストの一つ、バイリンガルニュースはその時にはラオスで英語で仕事をするなど思いもせず、ニュースとしての内容がおもしろいなーと聴き流していたものでした。

実際に出演してみて、バイリンガル会話形式難しい! 聴いている時はそこまで難しいと感じなかったのですが、頭に浮かぶ単語と、文法を組み合わせると大抵「ルー語」になってしまいますね。

シドロモドロで後半ほとんど日本語ですね。英語を勉強したかったリスナーの皆様すみません。バイリンガルニュースで昆虫食を発信するなら自分以外いないだろう!というファン心で出演してしまいました。そして事前打ち合わせ無しの一発勝負!これは緊張しましたが、多くの隠し球を用意しておきそこそこ臨機応変に対応できたと思います(バッタチョコや動画など)。

お二人の「自分にないものに対する敬意や姿勢」が素晴らしかったです。理解や共感に近づこうとする態度と同時に、完全には分かり合えないことのバランスをとてもよく配慮してくださっていて、共感できない部分に積極的に疑問を用意して踏み込んでくださるのはとても心強かったです。

さて、内容について少し補足しておきます。「400種類食べた」というのは、はい。盛りました。367種が今の所記録されている正しい味見した種数です。すみません。成長段階や性別を分けると570パターンでした。

もう一点、

「感謝して昆虫を殺す・食べる必要はない」という点。Twitterで少しざわついた方がいらっしゃったようです。これはもうちょっと私としてもしっかり論理を整理する必要がありますね。「基本的に人間は自由に虫を殺して良い」が私の考えです。その時に「殺すならば感謝すべし」というのは無益どころか、傲慢ですらあると思います。生き物好き、虫好きの方には少しざわつく感じがあると思います。

もうちょっと細かく言います。

こちらの「マンガで学ぶ動物倫理」の解説の中で、「感謝すれば許されるのか」という問いかけがあります。この文脈は肉を食べる時感謝することが大切、という登場人物の発言を受けての議論ですが、「感謝されて殺されるのと、感謝されずに殺されるのと、殺される側から見て何が違うのか」という問いかけです。

私は何も違わないと思います。それよりも殺す時に苦痛を与えない。人間にも動物にも事故が起こらない体制を「感謝しようがしまいが」作ることが大事だと思います。こういった「感謝の押し付け」が無害ならばまったく個人の自由なのですが、私はむしろ有害である可能性が高いと思っています。それは虫好きと虫嫌いの「分断」です。

昆虫愛好家のうち、昆虫をなんらかの理由で殺す人の中では「虫を殺す時は感謝して殺す方が良い」というマナーが働いているようです。必要以上に殺すことがないよう、殺したものを無駄にしないよう、精神的な規範を示すことで抑止力としたいようですが、それでは「不快や遊びで虫を殺す人」はマナー違反であると見なされてしまい、それによる偏見が起こってし待っていると思うのです。

食の倫理からすると、私のような食用に昆虫を殺す人は比較的攻撃されにくい傾向が強いです。なぜなら誰しも食べるためには生物を殺す必要があり、その中で昆虫は(好きな人も嫌いな人も)それほど殺すことに抵抗感がないからでしょう。

昆虫愛好家の中でも「ゴキブリは別」という人も多いかと思います。これが「殺すなら感謝すべし」に含まれない種差別であるとしたら、これはこれでまた問題です。私が養殖した清潔なゴキブリも、「ゴキブリだから食べたくない」という種差別を受けている、といえてしまいます。それよりも「自分が殺したい虫を殺す自由権を行使している」とした方が、現段階では説明しやすいと思います。

つまり私が提案したいのは「生態系に影響しない限りにおいて、個人が虫を殺す時にどんな気持ちであるかは自由である」ということです。遊びでもいいです。学術用途でもいいです。そして嫌悪でも、食用でも、生態系に悪影響を与えない範囲で、人は虫を殺す自由権(あるいは一種の愚行権)があると考えています。学術用途については特別に、生態系の保全に必要なデータを取ることがありますから優遇されるのは当然でしょう。

その中で、今の所種によって差別することも、昆虫に人権はなく、アニマルライツも設定されていないのですから人間側の自由権(愚行権)で包括することができるでしょう。

少し話は逸れますが、昆虫と食肉と菜食を含めた議論をする時に、昆虫の「苦痛」に関しては基礎研究レベルではかなりメカニズムがわかっている割にはその倫理についてはみなさん慎重です。

昆虫の神経系に特異的に作用する薬剤は殺虫剤の候補として人体に与える影響は少なく、薄い濃度で昆虫にだけ効くのでとても広く使われています。一方で漁業においては水に流すタイプの「毒漁」は資源保護の観点から禁止されており、農地用の殺虫剤だけが妙に「特別扱い」されているようにも見えます。殺虫剤の中には昆虫の神経を過剰に興奮させて死なせるタイプのものもあり、この先昆虫の苦痛を軽減する必要や、あるいは益虫として害虫を減らす役割のあるクモなどがとばっちりで殺される時の功利主義的な「倫理」においても考える必要があり、なかなか悩ましいものです。

話を戻します。

「昆虫を殺す時は感謝すべき」という押し付けは、昆虫を嫌悪(ストレスコーピング)で殺す人の罪悪感を増強させてしまいますし、虫好きから見ると、そういった人は無知で思いやりがなく、生態系保全に興味のない人だ、という偏見を持ちがちです。その気持ちの押し付けが社会を「虫好き」と「虫嫌い」に分断する要因になっているのではないでしょうか。

ともあれ、音声メディアであるバイリンガルニュースによって「映像はキツいけど音声なら大丈夫だった」とか「食べたくなってきた」といった、昆虫や昆虫食に無関心な方が少しばかり関心を持ち始めたようですので、虫の好き嫌いにかかわらず、誰しもが受け止めやすい情報発信ができたと思います。

この路線、しばらく追求してみます。