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お久しぶりです。ラオスに来て1ヶ月半が経ちました。

とうとう、出会うことができました。
断片的な情報はあったものの、出会うことができなかったこの昆虫。

ヤシオオオサゾウムシRhynchophorus ferrugineus

1998年ごろに宮崎に侵入したときに大騒ぎになり、宿主は基本的にサゴヤシ。広食性でヤシ科のカナリーヤシに被害が多くでたとのことです。
宮崎県におけるヤシオオオサゾウムシの発生について(PDF)

サゴヤシ学会という、現在トップページが更新されていないHPの中に、昆虫食のすばらしい著書のある三橋淳博士のまとめ(PDF)がありました。

当時、私の興味は味見にしかなく、ヤシオオオサゾウムシの駆除に携わった、という方まで到達することもできたのですが、見つけ次第すぐに駆除するとのことで
結局手に入れることはできませんでした。

タイに行けば食えるとの話でもありましたが、それが養殖できるという話もあれば
採集だけしか無理だから高いのだ、という話もあって、いまひとつ解像度の高い情報が得られない状況でした。

ゾウムシはサゴヤシの成長点を食べること、そして日本においてヤシの大部分は更新を想定していない鑑賞木であることから、
経済的損失が大きい、そして成長点をやられたヤシは死んでしまうことから、食べ残しの多さもあって、カミキリムシと同じように
たとえ美味しくても養殖利用の将来性は低い、と考えていました。

ところが、ところがです。
どうやら、とあるデンプン質に微量栄養素を添加したら飼える、との確かな情報を得ました。
というのも、こちらのラオス人スタッフの義理のお兄さんが、家庭用に飼っているとの情報をくれたので、
早速行ってみました。

養殖の詳細はいまのところナイショにしますが、うまくいったら公開します。

…うっま。うまいです。これはすごい味。そして唯一無二の食感と芳香。見事。これは高値だわ。すごい。

さて、これが単にビジネスにとどまらず、
なぜラオスの食生活を改善する可能性があるのか。

1,飼育がそもそもラク
今まで候補としていた葉を食べるタイプの昆虫は、どうしても生の葉を食べさせる必要があるので、手間がかかり、マメさが必要であることがネックになりそうでした。
こちらは、培地となるデンプン質+添加剤を用意したら、1週間に1回の追加の餌だけ、そして一ヶ月後の収穫までほぼメンテフリーです。
昆虫養殖ビギナーなラオス人にとって、これはなかなかいいスタートになるのではないか、と思いました。

2,アリの襲撃がほとんど起こらない
多くの昆虫養殖で、熱帯地域ではアリの襲撃が大きなリスクであることを確認しています。
複数のアリが、入れ代わり立ち代わりアタックしてくるので、脱皮時や孵化幼虫の大きなリスクになっています。
しかしこの養殖では地面に無造作に置かれただけでした。「アリは全然きにしなくていい」とのことです。
何が起こっているのか、いまのところ仮説レベルですが、おもしろいことになっています。キーワードは好気発酵です。

3,タンパク質価はそこそこで組み合わせ次第。
アミノ酸スコアは先の三橋博士の報告によるとシステイン、トリプトファンがおそらく少ないとのことで、
それらの多いバナナなどをエサとして与えたり、ヒトが食べる際に組み合わせたりすると、より栄養価を高くすることができそうです。
ラオス人の食生活も自給的米食のおかげでデンプンが十分で、それ以外の栄養が不安定という状態なので、デンプン質を主体とするエサを濃縮・転換して
タンパク質や脂質を得られる系は(葉を食べるタイプと同様に)将来性があります。

4,豊富な脂質とおそらく密度効果による蛹化抑制
脂質が多いことから、飽食の日本人にはあまり大量にはオススメできませんが
ラオスの村民では脂溶性のビタミンへの欠乏が調査により明らかになったので、これらの脂質を食べてもらうことで
より健康的な食生活へと近づくでしょう。
そして、蛹化にあたってはいくつかの条件が必要であることと、高密度で蛹化が抑制されそう、という話も聞きました。
これも飼育実験により確認しますが、密度効果によって蛹化を抑制できれば、ミールワームのように食べごろの最大体重の幼虫のまま
長期間、新鮮な昆虫を常温保存できる可能性があります。冷蔵庫が普及していない村落にとって、これもまた有望そうです。

5,どこまで吸収できるかわからないがミネラルが豊富
アフリカの一部の地域では、近縁のヤシオサゾウムシが生計向上に役立っているとの記事もありました。
亜鉛、鉄なども含まれているので、微量栄養素としての寄与も期待できるかもしれません。
重金属はアゴに蓄積して強度の向上に貢献しているとの論文もありましたので、アゴのある昆虫のほうが、ないウジタイプよりも
ミネラルが豊富、といえるかもしれません。こちらはまだまだ未確定な情報ですが、養殖が軌道にのれば、そのような部位ごとの成分解析もできると思います。

ともあれ、まだまだ養殖している人はラオスに少ない、とのことで
これからレシピの開発をして村落の反応をうかがおうとしているところです。

これまでの昆虫に加えて、ヤシオオオサゾウムシの養殖試験にも許可が出ましたので、チャレンジしてみようと思います。

一つ、未確認なため、日本のみなさんに情報を集めたいことがあります。

成虫の雌雄を外見で見極めることです。

口吻の細長いほうがメス、とのことですが、いまひとつ確証がありません。もしご存知の方いらっしゃいましたらコメントいただけませんでしょうか。

メスが左、オスが右、と教えてもらったけれど。。。
サゴヤシオオゾウムシ成虫メス?
サゴヤシオオゾウムシ成虫オス?
サゴヤシオオゾウムシ成虫
サゴヤシオオゾウムシ成虫

さて、ここでもう一度考えておきたいのは
「害虫」という概念です。

この虫の養殖を日本で行うことはまず無理です。植物防疫法にひっかかる他
大きいものでは数千万円する鑑賞木を枯死させてしまうのですから、もし逃したら損害賠償請求も膨大になるでしょう。

ではラオスにおいてはどうなのか。
一言でいいますと「蔓延しすぎて害虫とはみなされていない」のが現状です。

サゴヤシを含めヤシ科は成長点を食害されると枯死します。
この虫はヤシが傷ついたときに出る匂いに反応して卵を産むそうなので(このゾウムシ自体に成長点まで侵入できるほどの傷害を与えられるパワーはないようです)
熱帯地域特有の大きな風水害や雷、そして、ほかの昆虫によってあたりまえの傷害をうけ、ゾウムシが発生し、あたりまえに枯死していく、と考えられます。

これが「害」だという社会のコンセンサスがないために、ウンコにハエが発生して分解されていくように、「自然現象」としてとらえられています。

そうなのです。「害」とは通常起こらないことに対して名付けられる政治的な概念なのです。

例えば震度4の地震が他国では大災害になっても、日本ではTwitterが少し賑わうぐらいの効果しかありません。

更に言うと、殺虫剤が生まれる前は「害虫」という概念がありませんでした。

殺すことによる収量増加が「当たり前」になったからこそ、それを阻害する昆虫が「害」とみなされるようになったのでしょう。(家庭における「当たり前」が昆虫がいないこと、となっていくコンセンサスもそれはそれで再考する必要があると思います。)

当然ですが、土地を均一化し、単一の植物を栽培すれば、それを宿主とする昆虫を誘引し、半養殖しているのと変わりません。昆虫養殖は農業においての「当たり前」に疑問を呈し、本当にその土地から単一の植物を得るのが「当たり前」なのか、生態系レベルで見直すためのツールになる、とも考えています。

ゆくゆくは、将来的な話ですが
「地域における望ましい生態系モデル」というコンセンサスを、様々な行政区画に応じて組むことで、ある場所では害虫になり、一方である場所では特産品になる、といった、パッチ状の生態系利用ができてくると面白いな、と思います。生態学者は隣接する行政区画によって異なる政策が行われている場合、政策によって無意識的に行われている「実験」をとらえ、解析し、その効果を示していく、そんな研究者は非介入型の実験的生態学が展開できるのではないか、と妄想しています。

ひとまず出会いはこれまで。こっから具体的な養殖と、村落への提案のフェーズに入っていきます。

昆活写真
昆活写真

[caption id="attachment_1251" align="alignnone" width="4608"] キョウチクトウスズメ

キョウチクトウスズメ
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
キョウチクトウスズメ
ミバエの一種
コガネムシの一種
ジンガサハムシ
Oides andrewesi
ギンヤンマの仲間
フェモラータオオモモブトハムシ
マメハンミョウ

さて全国のハムシの味が知りたいファンのみなさん。
やってまいりました。

ハムシの味を食べ比べる選手権こと第一回ハムシ味比べ選手権 in ラオスであります。

初開催、ですね。だれがやるんですかね。

わたしだよ。

ラオス人スタッフに確認したところ、
食べないそうですので、これはラオスの昆虫食文化とは独立した
私の興味の範囲のアレということでご理解ください。

ハムシの写真はまぁとりにくい。
ひたすら動くいて静止しないし、飛ぶし、
構造色できらめくのに、フラッシュで撮影すると暗くなってしまう。

ハムシハンドブックの尾園さん、どうやってとられてるんですか。
きらめく甲虫の丸山先生、どうやってとられてるんですか。

見よう見まねでやってみましたが
いろいろと説明できる技術と、熟練の技術とがあるようです。

さて、選手入場と参りましょう。

フェモラータオオモモブトハムシ

Sagra femorata

三重に定着した外来種。クズをたべて拡大中。
ここラオスでは在来種。マメ科をかじって繁殖中。yeah
4月に食べたら苦かった。三重で食べたのより苦かった。

味見してみたら
うまくなってる!苦味が消え、香ばしさが増し、三重産のおいしさに近づいている。繭に入っているときはずっと苦かったので、動けない時期に苦味を保つのは意義があるかと。成虫になってから蓄養して美味しさを上げる、という楽しみ方がありそう。

ジンガサハムシ  Aspidomorpha indica

陣笠のように中央が突起になって、周囲にひらべったくスカートになる形状。
金色にきらめくのも特徴。透け感ときらめき、色味が絶妙で美しいハムシ。

4月に幼虫、蛹、成虫を味見したが、もう一回味見してみる。

Aspidomorpha indica
Aspidomorpha indica
Aspidomorpha indica

茹でて冷やして翌日見るとグリーンがかってた。構造色の色変わりの
メカニズムがあるらしいんだけどよくわからず。
すこし苦味があって、食草のあおくさい匂いもあってあまりおいしくはなし。彩りとして美しいので使える程度の味。

Oides andrewesi

Oides andrewesi

カンボジアで見つけたときは
丸山先生から毒草食べるので注意とのご指摘をいただきました。

栽培実験をしている大豆の葉を食べているところを現行犯で捕まえたので
少し味見。やはりゴボウ臭がある。苦味はないのでカンボジアで味見した同種とは食草で味を変えられる可能性がある。要検討

ミドリサルハムシ属のハムシ
昨年8月以前に食べたものと同じもの。前回は白バックで写真をとれていなかったので再度挑戦。

ザクッザクとした歯ごたえがよく、日本のミドリサルハムシも同様。
苦味があとから響いてくる。ゴボウ臭があり、これと毒草との関係を知りたい。

ミドリサルハムシ属のハムシ

さて、

ハムシの実用可能性について。ですが。
いかんせん鱗翅目の幼虫にくらべると食べ方が荒い。
イモムシは食べ残しなく、きれいに食べきるのですが

ハムシは食害に応じて放出される植物の防御物質と正面から向き合うこと無く
途中まで食べて放置し、また新しい部位にかじりつく、という飛び飛びの食痕をつくります。

歩留まりという意味では悪いですが、葉を切り取らず、生きた植物に発生させるのがいいかもしれません。

ハムシはほどほどにやわらかく食べやすく、彩りもゆたかですが、風味が食草に影響されるのと、意外と採集時期によって、味も変わるので、これからしっかり見ておきたいと思います。

4

キョウチクトウスズメ Daphnis nerii

美しいですね。いまラオスにいますが、
先日、夕方、玄関に来ていたんです。会いたかった。食べられないけど。

さて、キョウチクトウスズメはその名の通りキョウチクトウを食べます
キョウチクトウの毒はオレアンドリンという強心配糖体というもので、心臓にアタックします。

まぁこれの急性毒性がすごい。枝を箸の代わりにつかったら中毒、バーベキューの串の代わりに使ったら中毒。

そして神経活動に欠かせない、すべての細胞の膜電位を司る
ナトリウムカリウムポンプを阻害するとのこと。これは怖い。

というかキョウチクトウスズメはなんで耐えられるのか。メカニズムを調べた論文があれば教えてください。

さて、完全に解毒しているのか、単に耐性が高いだけなのか、どちらか一方ということはあまりなく
解毒しつつ耐性もたかい、ような生き物なのでしょう。

なので今回は味見しません。キョウチクトウスズメをキョウチクトウ以外の無毒な葉で育てたことのある方、

教えてください食べたいです。

ともあれ、まぁ美しいですね。

じっくり見惚れてしまいました。

Daphnis nerii
Daphnis nerii
Daphnis nerii
Daphnis nerii
Daphnis nerii

そして、キョウチクトウスズメを目にした翌日

街路樹としてまちなかに大量のキョウチクトウが生えているのが目に入るようになりました。

「見える」というのはなかなか難しいものです。

ラオスに来ています。
カンボジアでエリサンプロジェクトを見学したあと、プノンペンバンコク間の飛行機を
寝過ごすというアクシデントもありましたが

どうにかやっています。とても暑い。そして雨。

4月に準備したことが、報われていたり予想外だったり、

いろいろと計画の変更をせまられていますが
このスピード感がすごく熱帯らしい。そして楽しく生きるには、このスピードから「降りる」のも
一つの選択肢かもしれないな、とラオス人を見ながら思います。

せっかくの長距離移動なので、オススメでもしときますかね。

「粘膜を保護する」というものです。

熱帯といえども空調の効いているところは寒くて乾燥しますし
飛行機内も乾燥気味です。
だからといって息苦しいマスクでは就寝時につかえないですし、飛行機だと酸欠みたいになります。

オススメがこちら。

発泡ポリウレタンのマスクで、ホワイトも売ってはいるのですが、あっという間にポリウレタンの加水分解で黄ばみます。
グレーだと数ヶ月洗って使えるのと、こちら東南アジアでは黒とかグレーのマスクが普通ですので、むしろ目立ちません。

これのおかげで、ラオスでの就寝が快適になりました。内陸国のためか意外と夜は冷え込むこともあり、なかなか空調の設定が難しいんですが、これでどうにか喉を快適に保っています。

もう一つ導入したのがこちら。

Bluetooth ノイズキャンセリング・ヘッドホンです。

この特徴は2017年モデル

の26時間と比べて35時間と大幅に電池持続時間が向上したことです。

乗り継ぎや待ち時間を含めて一日がかりでの移動でも、しっかりノイズキャンセリングできます。

また、飛行機の離着陸時にはノイズキャンセリングの強度を再設定することで、強いノイズもしっかりキャンセルしてくれます。かなり耳からのストレスが減ったように感じます。

ホテルの空調のノイズが気になる場合でもおすすめです。

それではみなさま、粘膜を保護して、やや怪しげな格好で

快適な移動をお楽しみください。

虫のいる地域において悩ましいのは虫よけです。

私は特に虫を育てる立場なので、殺虫剤は忌避目的としても使いたくないです。

万能の虫除けとして知られるのがDEETで、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミドという物質。
水に溶けにくいの油状の成分なのが特徴であり、悩みでもあります。

昆虫学者の丸山先生も、おっしゃるように高濃度のDEETディートは
プラスチックを変質してしまう危険もあります。

そして
最近(2016年認可)でたのがイカリジンという有効成分のもの。

ラオス行きではDEETタイプと併用しているのですが、使ってみたレビューです。

注意事項は
蚊、ブヨ、アブ、マダニの4種類しか効かないということ。
ディートは上記の4種に加えて、ノミ、イエダニ、サシバエ、トコジラミ(ナンキンムシ)に忌避効果はあります。

メコン川流域であること、そして雨季が近いことから蚊とマラリアの対策として使いました。
ホテルの部屋の密閉が悪く、就寝時の蚊よけとしても使いました。

使ってみたところ、体感としてはめっちゃ汗をかいても8時間ぐらいは忌避効果がある模様。

だいたい一日2回、30日でこれ200mlを一本使い切るようです。(666回分と書いているのでそのとおりですね)
特徴としてはベタベタしないので風呂上がりに吹いても気持ち悪くないところ。

プラスチックに悪影響があるようですが、いまのところ15%ですので感じていません。本当はただしく比較するにはDEET15%と比較しないといけないんですが、いまのところ30%との比較です。吹いても皮膚がピリピリしないので、お子様にもいいと思います。

飛行機の預け荷物にできるミストタイプをオススメします。

機内持ち込みの場合は、更に小さいこちら。
100ml以下の液体とみなされるので、透明バッグに入れて持ち込みましょう。意外と国際空港のトランジットで蚊がいます。

スプレー缶タイプは虫除けの場合だけ許可されたりするらしいですが、めんどいのでできるだけ持っていっていないです。

虫を殺さずうまいこと忌避してコミュニケーションをとる、というツールとして

虫と出会う季節を乗り切ってみてはいかがでしょうか。

私は10本持っていきます。

ヒトスジシマカ。
吸わせて写真がとれるのも日本ならではですね。ラオスでは危険です。

6月4日は「虫の日」でした。

ラオス行き直前なのであんまり外に虫を見に行けないのですが、

こんなつぶやきが。

... "#虫の日 と #蒸しパンの日 と #虫食のグルメ" を続けて読む

コオロギ食について整理してみないか その1
コオロギ食について整理してみないか その2
そしてその3です。

2010年温室効果ガス論文、2015年Oonincx論文の紹介とともに、
コオロギ食から派生した昆虫食の最前線までを体系的にまとめておきましょう。

2010年の論文で示されたのはこちら。二酸化炭素「相当量」で重み付けした温室効果ガスを比較したものです。

2013食用昆虫科学研究会アゴラ資料より

昆虫の消化戦略において、あまり温室効果ガスを発生させる微生物の関与がすくないことが想像されます。

とはいっても、シロアリはかなりの温室効果ガスを消化管から発生させることもあるので、「昆虫は」でひとくくりにするのは駄目です。

ミールワーム、コオロギ、バッタはけっこう将来性あるぞ、といえます。

そして
2015年Oonincx論文

HPHF(ハイプロテインハイファット) ビール粕、ビール酵母、クッキー
HPLF(ハイプロテインローファット) ビール酵母、ポテトの皮、糖蜜
LPLF(ロープロテインローファット) クッキー、パン
LPLF(ロープロテインローファット) パン ポテトの皮 糖蜜

を組み合わせ、食物残渣由来のエサをつくり

それをミールワーム、コオロギ、ゴキブリに食べさせてその回収効率を比較しています。

ミールワームについてはどのエサでも
タンパク質回収効率はさほど変わらず、ロープロテインハイファットで生存率が15%まで下がります。
脱脂したあとの残渣等からの栄養回収に適しているともいえます。

ゴキブリはさすが。生存率はHPHF条件が80%と高いですが、LPHF条件でのみ、87%ものタンパク質(測定しているのは窒素)を回収することに成功しています。LPHFの主な原料は残渣のクッキーですので、人間が食うと太ってしまうようなジャンクフード、菓子類からゴキブリを使って栄養回収することで、ヒトにふさわしい栄養素だけを選択的に回収できることになりそうです。

注意しておきたいのは、ゴキブリの場合、食べ物によって体に含まれる栄養素も大きく変わるようで
高タンパクエサではでは高タンパクな体となり、低タンパクでは低タンパクな体になります。(FIG.1)
消化管内容物なのか、それとも貯蔵組織の可変なのかはわかりませんが、出荷目前には高蛋白なエサを食わせたほうがよさそうです。

そして残念なのはコオロギ。HPHFの恵まれた栄養条件以外のエサではデータがとれないほどに死んでしまいました。
人間の栄養にとって低品質のバイオマスから、高品質の栄養を取り出すシステムには、コオロギはふさわしくないように思える結果です。

以上から

Fao2013以降のコオロギ食についてまとめてみましょう。

コオロギ食については、進展がめざましく、もはやポテンシャルについては十分議論ができ、「本当に役に立つ」かどうかは次の段階の検証が始まっています。具体的に実装し、ライフサイクルアセスメントをする段階です。

コオロギでの新しいシステムモデルをつくるか、

コオロギ以外の種で目的を達成するシステムを組むか

という次の課題が見えてきましたので、コオロギの2013年のポテンシャルだけをもって、昆虫食を推進したい、となるとやや出遅れ感があります。ビジネスにする場合にしろ、他と差別化する場合にしろ、システムのモデルを提示し、ライフサイクルアセスメントを経ることで、コオロギ食というものがさらにレベルアップしていくことでしょう。そしてその中で、目的にコオロギが合わない場合、コオロギ以外の食用候補昆虫が選ばれていくことになるでしょう。

もちろん私のバッタのプロジェクトも、コオロギのこれらの論文を踏まえて、コオロギでは達成できない目的に向かってシステムを構築しています。

 

前回の記事
最新のライフサイクルアセスメントの結果をもとに、
コオロギがニワトリと同程度かそれ以上のポテンシャルをもつことを解説しました。

そして実験室での成果と産業での実際との効率にまだまだ差があるので、
今後はもっとハイレベルなコオロギ養殖のデザインが可能であることが示されました。

では、この2018論文が引用した「実験室での結果」2015Lundy論文を紹介します。

2015Lundy論文は1991年論文
「コオロギは体重増加1kgあたりの飼料が1.7kg ニワトリは同2kgなのでコオロギのほうが効率が高い」
を受けたものです。

2013年FAO報告書も、2010温室効果ガス論文も1991論文を引用したのですが、2015Lundy論文は
死亡率まで含めより詳細に検討し、タンパク質転換効率ではコオロギとニワトリが同程度だと示しました。

2015Lundy論文はコオロギをもてはやす風潮に批判的な態度という主旨ですので、厳密さという意味で信頼度が高いですし、
2018年論文は最もコオロギに批判的な2015論文を引用し、そのデータを使った上でライフサイクルアセスメントの結果を示したという意味で批判の応酬が見事に議論の質を高めています。このやり取りは大好きです。

Crickets Are Not a Free Lunch: Protein Capture from Scalable Organic Side-Streams via High-Density Populations of Acheta domesticus

それでは内容に参りましょう。

飼料栄養効率だけでなく
Feed conversion ratios (FCR)
タンパク質栄養効率
Protein conversion efficiency (PCE)
も比較しています。

このとき、普通のニワトリ飼料(PF)の他に
生ゴミ由来の飼料候補(FW)と作物残渣由来の飼料候補(CR)を試しています。
結果的にはあまり良い結果ではなかったですが、食料品店からの生ゴミ堆肥を使った飼料(FW-1)についてはニワトリ飼料PFよりやや低い程度のスコアで育ちました。他の飼料がずっと低い結果なのは、コオロギは共食いしやすく、FW-2 CR-1 CR-2のタンパク質(窒素)量が十分でなかったためと思います。

「薄い低品質の」タンパク質の濃度や質を高める能力は集団飼育コオロギは弱い、ということがわかります。

この、有機副流(organic side-streams)を処理するというアイデアは、コオロギから派生し、別の昆虫で実現しそうになっています。食物残渣で、かつタンパク質が薄くて低品質のバイオマスの質を高める昆虫を検討し、ゴキブリとミールワームがなかなかいいぞという論文がありますので、その3で紹介しましょう。

そして、コオロギのタンパク質転換効率はニワトリ飼料で最大となり35%。ニワトリが25%から33%ですので、
「タンパク質転換効率では大差ない」ということになります。

少し補足しておくべきなのが、65%はウンコもしくは分解消費されてしまうということです。
そしてコオロギの餌はニワトリと同等の、タンパク質を20%含むトウモロコシ・大豆・フィッシュミールの混合物です。

ニワトリ飼料は膨大な量が流通しており、
栄養的にはヒトの食用に適していて、残念ながら美味しくない、という特徴をもつバイオマスですので、
そのタンパク質の65%を失ってもなお機能性がある、ということをコオロギ食は今後アピールする必要があります。

そして、飼料栄養効率はFCRが1.47であることが示されました。1991の論文1.7よりも効率的ですが、
大量飼育したこと、1個体あたりの床面積が異なることが理由であろうと書いています。

少し脱線しますが、鉤爪をもち、隙間や裏天井のような場所が好きで、脱皮にぶら下がる場所が必要なコオロギには立体的な飼育環境が必要です。なので、「飼育密度」は床面積で表現するのは必ずしも正しくなく、立体的な足場の構造を含めて記述・比較して最も効率的な密度へと最適化していく必要があると思われます。

話を戻します。

そして素晴らしいディスカッション 最後の一文。

In order for insect cultivation to sustainably augment the global supply of protein, more work is needed to identify species and design processes that capture protein from scalable, low-value organic side-streams, which are not currently consumed by conventional livestock.

昆虫養殖が世界のタンパク質供給を持続可能な形で増加させるには、育てるべき種を決めることと、他の家畜では未利用の低品質の有機副流(オーガニックサイドストリーム)から様々な規模でタンパク質を回収するプロセスのデザインが必要であろう。

そうなんです。プロセスのデザインが必要ということであります。

プロセスがデザインされシステムとして実装されると、ライフサイクルアセスメントができるので、そのシステム全体が持続可能性に寄与するかどうか、判断できます。

この提言により、2015年Oonincx論文へとつながります。
2015年Oonincx論文は有機副流からタンパク質を回収するにはどれがいいか、複数の昆虫を比較しています。

Feed Conversion, Survival and Development, and Composition of Four Insect Species on Diets Composed of Food By-Products

その3ではこの論文を紹介し、コオロギ食の研究が基盤となって、
これからは「システム」と「昆虫の種」をデザインしていく、そのときに必ずしもコオロギである必要はない、という現在の
学術的な昆虫食の全体像を見渡せるようにまとめようと思います。

2

タイトル通り、いろいろとビジネス的に注目されつつある、コオロギ食について整理してみませんか。という記事です。

というのも、
昆虫食ビジネスとしてのコオロギ食スタートアップが増えつつある中で、食糧問題や効率など、キャッチーなコピーが強調されていますが、そもそも学術的な議論はどこまで進んでいるのか、きちんと把握できていないまま書かれた記事も散見されるからです。

コオロギ食を取材して記事を書く方、これからコオロギ食スタートアップを展開したい方、そして
コオロギ食関連の研究を応援しようと考えている方などなど、参考にしていただければと思います。

せっかくの利点があるのにアピールしそこねたり、盛りすぎるあまり信頼性を失ったり、というリスクを回避してもらえればと思います。今後の昆虫食の将来性を見積もるにあたって、最もデータの集まっているコオロギはその基準となるでしょう。

2013年のFAO報告書で、その温室効果ガスの少なさ

An Exploration on Greenhouse Gas and Ammonia Production by Insect Species Suitable for Animal or Human Consumption(2010年論文

と、効率の高さ

Comparison of Diets for Mass-Rearing Acheta domesticus (Orthoptera: Gryllidae) as a Novelty Food, and Comparison of Food Conversion Efficiency with Values Reported for Livestock1991年論文

に注目が集まったコオロギ食。

あれから5年、その後の論文のやりとりはとてもエキサイティングでした。
この面白さが日本語で共有できていないのもなんなので、まとめてみようと思います。

今回は最新論文からさかのぼって紹介していく方式にします。

現段階においてコオロギ食に言えることは先にまとめますと

1,コオロギはニワトリと並ぶ高効率・低環境負荷の家畜になりうる。
2,産業的には、まだその段階に達していない。

そこから議論できることは、
3,産業的なコオロギ養殖技術を高めることがコオロギ食の環境負荷をニワトリよりも低くする大きなブレイクスルーになるだろう

蛇足にはなりますが、注意点として

4,残念ながら菜食との比較ができる段階にはない。
5,「全人類がコオロギを食べれば解決」みたいな雑な議論の段階にはない。

ので「言い過ぎ注意」です。

最新論文から参りましょう。1と2についてまとめます。

Afron Hallolanさんのこの

The impact of cricket farming on rural livelihoods, nutrition and the environment in Thailand and Kenya 博士学位論文

リサーチゲートでダウンロード可能なんですが、その中に論文が5つ含まれています。
ここから読み解いていきましょう。

論文リストはこちら。

Paper I – Halloran A., Vantomme P., Hanboonsong Y., Ekesi S. 2015. Regulating entomophagy: the challenge of addressing food security, nature conservation, and the erosion of traditional food culture, Food Security, 7 (3): 739-746.
Paper II – Halloran, A., Roos, N., Eilenberg, J., Cerutti, A., Bruun, S. 2016. Life cycle assessment of edible insects for food protein: A review. Agronomy for Sustainable Development, 36: 57.
Paper III – Halloran, A., Roos, N., Hanboonsong., Bruun, S. 2017. Life cycle assessment of cricket farming in north-eastern Thailand. Journal of Cleaner Production. 156: 83-94.
Paper IV – Halloran A., Roos N., Hanboonsong Y. 2017. Cricket farming as a livelihood strategy in Thailand. Geographical Journal, 183 (1): 112–124.
Paper V – Halloran, A., Oloo, J., Ochieng Konyole, S., Ayieko, M., Roos, N. Awareness and adoption of cricket farming in Kenya. Submitted to Rural Studies.

 

この1,2はレビュー、4はタイで、5はケニアでの実際の産業的養殖の報告なので、特に重要なのはPaper3です。

Paper3のいいところは、コオロギ食に対して厳密で、かつ批判的な2015年の論文

Crickets Are Not a Free Lunch: Protein Capture from Scalable Organic Side-Streams via High-Density Populations of Acheta domesticus

を引用しているところが学問的に誠実です。2015年論文の主な主張は
「ニワトリとコオロギのタンパク質転換効率はさほど差がない」ことです。
この論文についても私の大好きな論文なので、後の記事で解説します。

どうしてもビジネスとなると、いいところを伝え、弱いところはあえて強調しない、というのが一般的なマーケティングの作法になるので、学術論文レベルで誠実な批判のやりとりがあることが素晴らしいです。

逆に言うと、ビジネスでの限られた表現に対して、学術的な議論を仕掛けるのは野暮、ということも言えそうです。だからこそ、ビジネスとは少し距離をおくことができて、昆虫食に関わるすべての人が周りを気にせずガチで議論できる場を設けたい、というのが私のこれからの野望でもあります。

 

コオロギはニワトリと同じ飼料で育てられることから、コオロギとニワトリの比較は容易です。また家畜の環境負荷を比較するときに、ある一つの(有利な)一点で比較するのではなく、
ライフサイクル全体を総合的に診断しよう、という方法がとられています
「ライフサイクルアセスメント LCA」と呼ばれます。

ニワトリとブタのライフサイクルアセスメントについてはFAOが報告書を出しています。
http://www.fao.org/docrep/018/i3460e/i3460e00.htm

この中で、「GLEAM」というモデルが提示されています。

家畜の生産、というものは
肥料を投入して飼料を育て、家畜を育て、産物を出荷し堆肥を得て、そして飼料を育てるという半閉鎖系の循環といえます。

Greenhouse gas emissions from pig and chicken supply chains
より一部改変翻訳

つまり、2013年の段階で、コオロギの利点は効率と温室効果ガスの二点のみであって、ライフサイクルアセスメントによる総合的な評価が行われていないことが他の家畜との比較において不十分であったといえます。

例えて言うなら身長と体重だけを比べて、どちらが健康か判断するようなものです。健康の大きな要素ではありますが、ヌケモレのない調査とはいえないでしょう。

さて、Paper3について読んでみましょう。

全体的な環境負荷については、ブロイラーと現在のコオロギ養殖がだいたい同じくらいかややコオロギのほうが優勢。
そして研究室でのデータをもとにした「将来のコオロギ」という項目を使うと、死亡率が低く効率が高いのでブロイラーとよりも優勢な結果となりました。

この結果より、
1,コオロギはニワトリと並ぶ高効率・低環境負荷の家畜になりうる。
2,産業的には、まだその段階に達していない。

となりますので、

3,産業的なコオロギ養殖技術を高めることがコオロギ食の環境負荷をニワトリよりも低くする大きなブレイクスルーになるだろう。

というのが、これからコオロギ養殖ビジネスを始めるにあたって強力な根拠になると思われます。

4,残念ながら菜食との比較ができる段階にはない。

ところがこの論文においては、多くの環境負荷因子において、「エサの生産」が主なファクターとなったのです。
つまりトウモロコシ、大豆の生産が大きな環境負荷をもたらしており、それを食べさせる家畜をブロイラーからコオロギへと転換したところで、全体としてはあまり大きな変化ではないかもしれません。

そして、論理的菜食主義者の主張では「飼料用作物を人が食えばいい」というものがあります。
コオロギの口に入る時点で、人の食用に適した栄養バランスと栄養素をもっていますので、この論理に対して、
家畜はどうしても勝てません。

プロセスが増えるとどうしてもエントロピーは増大しますので、家畜を経由して人が食べるよりも、直接家畜飼料が食えれば測定するまでもなくそれは省エネです。

5,「全人類がコオロギを食べれば解決」みたいな雑な議論の段階にはない。

菜食主義主張は理論的には強力ですが、
実際問題として、飼料用作物を美味しく食べられるか。食用に転作してもきちんとその土地で育つか。
経済問題として食用作物の価格暴落を起こさなないか。など、「すべての人が菜食になれば世界は救われる」
というのは「すべての人が昆虫食になれば世界は救われる」と同じくらい雑な議論です。

結局の所、文化的なものも含めて、人類は文化的な食として昆虫食「も」取り入れ、最適化していくのだと思います。

データ上のチャンピオンを探す旅の終着点は、「すべての人がチャンピオン作物を食べるディストピア」ではなく

「様々な文化的な食の選択肢を選びつつ、持続可能性を高めていく社会」になると思われます。

その2では、2015年コオロギ・ニワトリ論文と
その3では 2010年温室効果ガスの紹介をしながら

コオロギの次の一手と、
コオロギ以外の「次世代昆虫食」としてどのようなものが考えられるか

解説していこうと思います。