コンテンツへスキップ

7月9日に村で会議が行われ、10日に首都ビエンチャンまで移動し、11日朝に帰国、午後から打ち合わせをこなし、12日にはつくばで打ち合わせ、13日土曜日、初めての週末に、ラオス感がまだまだ残るアタマとカラダで行ってきました。

渋谷という立地、デザインとしておしゃれで、意識が高そうで、そして学術的なニオイがあまりしない中、石川先生と西廣先生、というアカデミックなゲストを呼んで何が展開されていくのか、とても気になりました。

今回は私はタダの客ですので、
主催者の意図をそっちのけでわざわざ昆虫食をぶっこんで質問するような無粋なことをしなかったのですが、会場で「昆虫が入るとこう考えるな」と心の中でつぶやいたこと
(けれど会場では言わなかったこと)をつらつらと書いてみようと思います。

まずは講演。
西廣先生は植物生態学者、地球環境変動、主に温暖化をテーマに
温室効果ガスを減らしていく「緩和」と
すでに温室効果ガス排出を今年ゼロにする、というとても達成できないゴールを設定したとしても、存在するガスによる温暖化は進んでいくという予測から
「適応」という見逃されがちなもう一つの手段について説明していきます。

そしてこれからの未来は「適応時代」だと。

ふむふむ、たしかに昆虫食は温室効果ガスを出しにくい、という「緩和」で注目されたけれども、
熱帯に多く生息し、(参考:熱帯雨林のアリのバイオマスは同地域の脊椎動物の総和を超える推定)
40度の高温でも生育障害を起こさない種もあったり

かつて地球がもっと温暖だった頃は変温動物が幅を利かせていたことも関係しそうだし
ガスを出しにくく高密度で買える性質から閉鎖系の熱交換器(エアコン)を使った飼育系にも
適応している(排気ガスの多い反芻動物はガス交換の需要がおおいので断熱しても熱交換器の効率に限界がある。)とも言える。

お次は田んぼの生物多様性、を調べると5668種の生物
うち昆虫、クモ類1867種!やはり昆虫多い!
そして、害虫でも益虫でもない、ただの虫が多い。

今後気候変動による農地の変化に対して「緩和」するにしても「適応」するにしても
この1800種という1/3の生物を、たった177種の害虫予備軍のために平等に
(無差別に)殺虫剤を撒いてしまうことの巨大なロスをあらためて感じるわけです。

そして救荒食としての雑草。
東大阪大学の松井欣也先生は救荒食としての昆虫に注目して研究していますし

次の話者である石川伸一先生も東日本大震災の経験をもとに話題にしていまして

「もしも」に備える食 災害時でも、いつもの食事を」にも、「もしものときに、いつもの食が手に入ったときの安心感はすごい」
と東日本大震災の被災時の実感を込めて書いていらっしゃるので
「非常時のみの食品」というよりは「非常時にも、そうでないときでも災害備蓄を確認するイベントとしての採集食」という位置づけが生まれてくると思います。緊急時の飢餓を回避する目的で、食べ慣れないものを無理やり食べる、というのは災害食としてはふさわしくないですし、戦時中の昆虫食の体験を記録している方も、やはりトラウマ的な記憶のようだ、と話されていました。
これでは豊かな文化とはいえません。

また、ラオスにおいては「失業しても稲作を手伝って野生動植物(昆虫を含む)をとってくれば死なない」
という生態系ベーシックインカムとして機能しています。

ちなみにですが、「データ栄養学のススメ」によると
東南アジアの(おそらく天水の)稲作の効率は焼き畑に次ぐカロリー収集効率で、熱帯モンスーン気候を生かして乾季は雑草伸び放題、雨季は雨の到来にあわせて土を耕し、苗を用意し田植えをする様子はかなりの省エネです。

とはいってもこの生態系ベーシックインカム機能は不完全で、野生食材に依存して生活している世帯の子供は栄養不良が多い状態が続いています。

つづいて石川先生は新書
「食の進化史」から。

「なぜ人は食の未来に興味をもつのか」ウーン。これは気になる。
関心が強い、食の研究者だけでなく、素朴な普通の人においても「食の未来」は気になってしまう。

私は一種のSFの潮流だと思っています。少し前までは
巨大な資源を投資して地球外に出ることで、なにか救世主(逆に展開すると破滅者)がやってくるのではないか、という展開が好まれました。

しかし宇宙開発が年々縮小し、ソユーズを使い続けている現状では、なかなか未来のビジョンとして大成功した宇宙開発、というイメージは懐きにくいとおもいます。
一方で「胃袋を掴む」ではないですが、食の主体性を獲得した個人、もしくは組織は強いです。

そういう意味で社会性の原始的な形が「食」で、生命の持続可能性のためには持続可能な「食」がないといけない。
マッドマックスがおそるべき搾取的で、かつ効率的な食糧生産を
イモータン・ジョーの恐ろしさを説明する背景として設定にいれたのも
ブレードランナー2049でデッカードの隠遁生活を藻類と昆虫の養殖で示し、昆虫による物語の展開が起こったり、昆虫を養殖するファーマーとして死ぬことを選んだレプリカントがいたりと。
インターステラーは旧式に見える宇宙船で、地球の食料が壊滅することを理由としてやっとこさっとこ資源を調達して打ち上げ、新しい星を探しにいっていました。

未来の安心には食が欠かせない、とSFの世界(≒一般の人が感じる科学的な未来)が気づいてきたという納得の潮流です。

石川先生からはいったん科学を手放して、先生の知識をもとに
「歴史学的に」もぐっていこうという試みをこの本でも行っています。

「食の進化史」を読むとわかるのですが、専門分野の論文だけでなく
食に関する文芸、料理、アートまで先生の膨大な知識から
「未来を予測する」試みをしています。

そしてイベント最後、年表を用意し、過去から未来まで、食の歴史をひもとき
未来に「何が起こるのか」みんなで考えようというパフォーマンスアートが展開されます。

やはり「食べて考える」ことの五感の刺激度はすごいと実感しました。
視覚や聴覚を通じて、刺激的な文字情報、映像を見せたとしても
口の中や体内に取り入れることの「実感」にまさる情報量はないでしょう。
そこに「食べる」ことの決断性も含まれているように思います。
食べようと思わない限り食べないのが人類です。

しかし、今回は沈黙を貫きましたが昆虫に関する
直感的に想像できない項目については、
どうしても沈黙してしまうことも感じました。

日本人には相容れない、まだ早いという食文化を持つ人が日本に来た時に 日本人がどう準備できるか。そこに食の専門家がどうサポートできるか。— 蟲喰ロトワ 蟲ソムリエ しばらくラオス 一時帰国11月予定 (@Mushi_Kurotowa) July 13, 2019

西廣先生は耕作放棄地の生態学的調査を通じて
かわりゆく、温暖化が進みゆく地球でどのように対策するか
という一種の「適応」についてもその地域の現場に参加する中で研究しています。

日本では農業の成りてが減っていき、耕作放棄地も増えています。
一般に耕作放棄地は生物多様性が減少すると思われがちですが(私がそう思っていました)

かんたんな水張りと水路の管理によって生物多様性の豊かなビオトープのような土地が出現するとのことです。こういった「生態系サービスの供給源」としてのかんたん管理の耕作放棄地

もうちょっといい言い方をすると「水田リタイアビオトープ」のような感じでしょうか。
そこで「虫」の相談をしていただきました。近いうち動き出せればと思います。

生態系にこんなにも昆虫がいるのに、その料理法やメニューをもたない文化というもののアンバランスさを、知らない人は感じることもできず、

そしてそういった人には昆虫食の未来を予測することも困難です。

今回のパフォーマンスアートにもコオロギが少しだけ、未来の年表にも少しだけ昆虫の話がありましたが、「過去に昆虫が食べられていたという事実」を年表には示せていません。

つまり、
主観が入る余地が明確な「予測」だけでなく客観的な情報収集における収集者のバイアスですら、現在の食文化によるバイアスが網羅的な、中立的な未来予測を妨げかねないのです。

どうしても思うのが、
「未来や過去を想像するとき人間は現在の価値感に引きずられる」という一般的な傾向です。
そしてその緩和には、メンバーを日本人だけでにすること、あるいは先進国の人間だけにすることの不足を感じました。

もうちょっと具体的に言うと、
日本人だけで未来の予測をできると素朴に信じていることのはやっぱり危険です。

私から提案できるのは、
昆虫食文化を持つ、これから人口が増える国の人達との対話、そして場が温まってきたら、ゆくゆくはガチの議論ですね。

そんなイベントをしたいと画策しております。お待ち下さい。

昨日ラオスに戻りました。バンコクでも何日か休日をはさんでいたんですが、いろいろと用事が入ることで結局休みなしのままラオス入りです。

8月4日に紙版で掲載していただいた昆虫食記事のラオス取材部分を、ウェブ版ではたくさんの写真とともに紹介してくださっています。

実は2つ記事がありまして、紙版と同内容の記事と、写真を集めた記事があります。合わせてお読みください。

ひとまず疲れた。。。。。ラオスの急な雨とべったりと張り付くような湿気を楽しみながら、順応していきます。

一ヶ月ぶりのラオス。いつも食べていたカオヂーパテに豚肉から作られた田麩がはいっていて時代の変化を感じました。ラオスは着実に前に進んでいる。

日本に帰っています。いろいろと打ち合わせをしつつ、ラオスにもどるのは6日です。日本にいるうちに一つイベント告知です。今回はゲストではなくわたしたち食用昆虫科学研究会主催ですので、イベント慣れしていないところもあるかもしれませんが存分に話し合う事ができる場を用意しました。

府中でプチジビエ会を開催します。主なターゲットはセミです。ラオスの活動報告もしますのでしっかり食べ、話しましょう。詳細はこちら

1

先週は取材対応をしていました。無事デングがおさまったあとだったのでよかったです。
昆虫食のイベントで2012年頃に知り合い、何度か昆虫食の記事を書いてくださった記者の方が世界の昆虫食について取材企画を立ち上げ、その一貫として私達のラオスでの昆虫食の活動を取材してくださることになりました。

ラオスでの取材受け入れの手続きなどなどをこなし、いざお迎えに。(ラオスは社会主義国なので関連省庁に報道関係者の活動について書類を提出しておく必要があります)
一日目、タイ側で昆虫を売っているスーパーをチェックし、ラオス側に陸路で入国、事務所のある街でまず作業場での昆虫養殖、市場を見に行き、二日目、村まで100km、ぬかるみの道を同行し、私達の昆虫グループの活動、ゾウムシ養殖とキャッサバ栽培を見てもらいました。3日目は村落栄養ボランティア育成の活動をあわせて見てもらいました。

やはり事前の知識が深く、これまでの昆虫食の流れも理解されているので質問も鋭く、私が聞いておくべきだった内容をズバッと農家に聞いていて、改めてプロはすごいと実感しました。


最終日、空港に移動する前に街のもう一つの市場に行ったのですが、レンタカーのおじさんが「タイに行くのが記者さん一人なら子どもたちも連れてっていい?」と聞いてきてあぁラオス人らしいなと思ってOKし、そこで別れたのですが、あとから記者の方からきくと、なんとドライバーの妻、娘二人、息子のオール家族がついてきたそうです。ラオスらしい。


取材内容については記事をみていただきたいので、ここでは触れませんがGlobe 8月4日版に掲載予定とのことです。購読中の方はぜひ見てください。ウェブ版も同時に公開されるとのことで、紙版を購読していない方もお読みいただける予定です。ひとまず告知でした。
7月12日頃から8月5日ごろまで、日本に一時帰国します。その間にイベントしたりなんだり、という予定をいま急いで組んでいるところです。

以前に修士課程で伊那でヘボの研究をしていたシャーロット ペインさん、今はブルキナファソをフィールドに博士課程をしているそうです。2019年の5月にとっても良い論文を出したので紹介しておきます。

狙いはシアワームと呼ばれるシアの木を食べる幼虫。Cirina butyrospermi という学名です。アフリカ産の食用ヤママユというとモパニワームが有名ですが、シアバターノキを食べるいくつかのヤママユも食用になっていて、以前にお土産でアフリカ産のCirina forda をいただいたことがあります。

野生の植物は基本的に葉を食害されてもなお、次世代を残すために冗長性を備えていて、多少食べられても収穫に影響しない許容値をもっている、と考えられます。このCirina butyrospermi が植物を食べ、フンをするとその周囲に有機物が還元されますので、落ち葉よりも良質な肥料源として、周囲のトウモロコシ畑にプラスの影響を与えている可能性がしめされたのです。

シアバターノキを食害するおいしいイモムシが知られていて、食べられた木はほとんど葉を落としてしまう。

一見深刻な食害にみえるけれども、シアナッツの収穫をみるとその食害との関連は見えませんでした。食害のあるなしにかかわらず、どちらもしっかり実をつけます。

またシアナッツの木の下ではトウモロコシが栽培されていて、毛虫が葉を落とすことでフンが落ち、そして日照も良好になります。そのため食害を受けたシアバターノキの近くではむしろトウモロコシの成長が促進する可能性がしめされました。

とのことです。

アグロフォレストリー(林産物と農産物の複合的な生産)の一貫として、一見深刻に見えてしまう虫による食害を公平に調査研究し、「生態系から持続可能な形で最大限に搾取しつづける」という功利主義的な昆虫利用、生態系利用の形として、これまで「お話」でしかなかった植物の冗長性と、昆虫への転換、そして日照の有効利用といった複雑な現象を解明したという意味で素晴らしい論文だと思います。これはあくまで自由発生した昆虫の利用ですが、これを完全養殖、半養殖しながら人間が介在することで、農地と森林からの最大効率利用、そして複合的なあたらしいシステムの導入によってこれまでにない持続可能な農業の形が見えてくる、と思います。

2

みなさま、祝ってください。長年応募してきたリバネス研究費に、とうとう採択されました。うれしいです。私がデングにかかっているうちにリリースがありまして、これは記事化しておかねばと。

私が今後ラオスで活動するためのJICA草の根パートナー型にも採択されましたので、とりあえず私はラオスに滞在し、少しの自分の裁量の実験ができるようになった、ということです。

とはいってもまだまだ資金は足りませんので私の動ける範囲と速度でこのプロジェクトを進めています。なぜいまのうちに助成金を獲得しておきたいのか、と申しますと、「監視の目」をきちんとつけておきたいからです。ここでいう監視の目というのは「昆虫食が世界を救う様子を共に見届けてくれる、信頼できる、かつ対立的に機能する目」です。

お恥ずかしいことなんですが、こちらラオスに来るまでに「昆虫食は栄養がある」「だから昆虫食は世界の食糧問題を救う」と、ピュアに信じて、そしてアピールしてきました。

昆虫に栄養があることと、各種の食糧問題の間にある大きな谷を埋めなくてはそんなことは言えないのはもちろんなんですが、そのアピールしやすい大きな谷を今すぐに埋められるかのような誇大な広告をしなくても、実直に、目の前に顕在化する小さな谷を埋めていくことで「昆虫食が世界を救うためのパワーと実績を蓄える活動」ができそうだ、とわかってきました。それがこれらの研究助成、活動助成で実施していくことです。今回のリバネス研究費でのテーマは「最適化」となっています。ここでの最適化は最高効率を目指すものではなくて、最大限村で手に入るバイオマスでもってどこまで効率を下げずに生産できるか、という部分に注目します。そして村で手に入るバイオマスを使って、やってみせ、そしてその情報を村人とシェアすることで、村人が自分たちの力で、自分たちで自給可能なバイオマスであることを自覚し、普及していくのです。この活動の中で、昆虫そのものの効率が「後回し」であって「優先度が低い」のがわかるでしょうか。昆虫そのものの効率を測定して、それがさも将来性かのようにアピールする研究やビジネスがあります。効率を高めたいのならば品種改良をすればいいのですが、このプロジェクトにおいては効率を高めることは必須ではないです。今の効率でも、試算すると十分に村人は栄養と現金をてにいれることができるからです。この試算が本当に村においても確からしいのか、村人と共有するための実験農園もセットしましたので、来年4月には、村での持続可能なシステムの全体像がはっきりできるかと思います。

とはいえ文献を調べても、いろいろと昆虫食は他の食材に比べてあまりにビハインドで、国際協力の分野において実績といえるものはほとんどありません。しかしここには文化がある。ラオスの文化に即した昆虫食が、我々の昆虫学の専門性と、彼らの主体性によって発展し、世界のスタンダードになっていく余地が多いにあるのです。

そしてもう1つの「目」は共同事業体となっている国際保健のNGO ISAPHです。ここでの3年に渡る食事調査によって、村に必要な栄養が何か、そして昆虫を養殖して現金収入を得ることがもたらす「栄養リスク」にも気づくことができました。(近いうち学会発表されます)はたして昆虫に限らず、「新しい食材で栄養改善」というプロジェクトが目を引く中、どれほどそこのマイナス面のリスクをモニターしながら進められているプロジェクトがあるでしょうか。目先の現金収入にとらわれて栄養状態が悪化する、というのはよくあることです。そして多くの場合、ソーシャルビジネスというガワをかぶることで、スタート時にその地域に与える負のインパクトは、将来性という未来のベネフィットにカモフラージュされていることが多いにあります。

ということでJICA、リバネス研究費、そしてISAPHと、ラオスの昆虫養殖は十分な「監視の目」を手に入れることができました。その目に私の活動を晒しながら、議論を深めながら、頑強な「昆虫食が地域を救う実例」を作っていきます。

これは先に説明した通り、村で手に入るバイオマスを使って、栄養と現金収入を手にし、そしてかつ、現金収入増加による栄養リスクの上昇すらもコントロールしていく、という地域に密着した総合パッケージとなっていくでしょう。この「持続可能な参加型開発」は、生産された昆虫のブランディングにも重要です。現在、先進国において売られている昆虫食のうち、本当に持続可能性に貢献できている生産体制を経由した昆虫はほとんどない、と言っていいでしょう。

そういったまだ実現できていない未熟な昆虫の生産体制を棚に上げて、あやふやな将来性のイメージの前借りをして商売することは、遅かれ早かれ昆虫食ブームの失速を招くと予言しておきます。今必要なのはオープンなイノベーションを下支えする事業者間の活発な相互批判です。

さて、私がこれからラオスに設置する生産システムをモデルケースにすることで、「昆虫食が地球を救うモデル」になるといえるのか、食の専門家との強い議論につなげることができるかと思います。

さて、7月中旬から8月初旬に関東に一時帰国の予定があります。ラオス事業についても活動報告をするセミ会になる予定ですので、ぜひきてください。詳細はまた案内します。

第二弾です。主役はトラクター。すごい。

こちらは第一弾
そして今回公開された第二弾

今回の1月から5月までの取り組みは、雨季が迫っていることもあり、キャッサバの植え付け栽培を優先しました。

キャッサバはゾウムシ養殖の大切な基材であり、この村ではこれまでほとんど栽培されてこなかったバイオマスです。

また、雨季になると稲作のための準備が始まり、6月からは学校も休みになって全村、全家庭が7月までに田植えを完了させるべく、総力戦に入ります。それらをお邪魔することもできないので、5月までに植え付けを終えておきたかったのです。

それでも予約したトラクターの人が遥か遠くの村に出張してしまって戻れないので急遽変更したり、フェンスを作るための木材を予約したのに当日全部売れちゃったからもう在庫ない、と言われたりと、なかなかラオスの商習慣に合わせるのが難しかったのですが、優秀な若手スタッフのおかげと、農家さんのツテで色々と探してもらい、どうにか予定通り終えました。ひと段落。

こういった「順番」というのはどうしても人を見ながら決めなくては行けません。前回の動画でゾウムシ養殖を導入するときはキャッサバを街から持ち込んでいましたので、本来の「順番」からすると最初にキャッサバを育て、そしてその収穫を使ってゾウムシを育てる、という提案をしそうなものですが、今回は村人が実物を見て、昆虫が楽に育つこと、昆虫が美味しいこと、市場で高く売れることを実感した上でキャッサバの不足を考えられる「準備」が整ってから、農地の開墾を提案しました。

そういった現場レベルの判断を、昆虫の専門家がクイックにできるという意味でラオスという現場に入れてよかったと思います。

これが特定の昆虫ありき、研究ありき、順番ありきで大予算の暴力で村人に押し付けていたのでは、自発的に養殖を続けたり、養殖したものを売りにいったり、そしてキャッサバを植えるための農地を提供してくれたりはしなかったでしょう。ラオスの現場に来て、机上の空論だったものを地面にどっしり据え付けることの面白さを体感しています。おもしろいです。

私がバイリンガルかどうかも怪しいですが、前回の帰国時に4月に収録して出演してきました。内容は最新のラオスでの活動から虫の好き嫌いまで多様に渡る2時間半!長い!たっぷり!

日本で大学院生をやっていた時、虫の部屋は空調が効き、断熱パネルで覆われていたことから電波は不通。ダウンロードしたポッドキャストを聴きあさる日々でした。よく夜更かしをして原稿を書いたり、バッタのお面を作ったりしていたので、パートの研究補助のみなさんと一緒に朝9時に始まるバッタのエサ交換はなかなかテンションが上がらず、面白いポッドキャストを聴きながらニヤニヤしつつ草を刈り、交換したものです。

そんなヘビーリスナーだったポッドキャストの一つ、バイリンガルニュースはその時にはラオスで英語で仕事をするなど思いもせず、ニュースとしての内容がおもしろいなーと聴き流していたものでした。

実際に出演してみて、バイリンガル会話形式難しい! 聴いている時はそこまで難しいと感じなかったのですが、頭に浮かぶ単語と、文法を組み合わせると大抵「ルー語」になってしまいますね。

シドロモドロで後半ほとんど日本語ですね。英語を勉強したかったリスナーの皆様すみません。バイリンガルニュースで昆虫食を発信するなら自分以外いないだろう!というファン心で出演してしまいました。そして事前打ち合わせ無しの一発勝負!これは緊張しましたが、多くの隠し球を用意しておきそこそこ臨機応変に対応できたと思います(バッタチョコや動画など)。

お二人の「自分にないものに対する敬意や姿勢」が素晴らしかったです。理解や共感に近づこうとする態度と同時に、完全には分かり合えないことのバランスをとてもよく配慮してくださっていて、共感できない部分に積極的に疑問を用意して踏み込んでくださるのはとても心強かったです。

さて、内容について少し補足しておきます。「400種類食べた」というのは、はい。盛りました。367種が今の所記録されている正しい味見した種数です。すみません。成長段階や性別を分けると570パターンでした。

もう一点、

「感謝して昆虫を殺す・食べる必要はない」という点。Twitterで少しざわついた方がいらっしゃったようです。これはもうちょっと私としてもしっかり論理を整理する必要がありますね。「基本的に人間は自由に虫を殺して良い」が私の考えです。その時に「殺すならば感謝すべし」というのは無益どころか、傲慢ですらあると思います。生き物好き、虫好きの方には少しざわつく感じがあると思います。

もうちょっと細かく言います。

こちらの「マンガで学ぶ動物倫理」の解説の中で、「感謝すれば許されるのか」という問いかけがあります。この文脈は肉を食べる時感謝することが大切、という登場人物の発言を受けての議論ですが、「感謝されて殺されるのと、感謝されずに殺されるのと、殺される側から見て何が違うのか」という問いかけです。

私は何も違わないと思います。それよりも殺す時に苦痛を与えない。人間にも動物にも事故が起こらない体制を「感謝しようがしまいが」作ることが大事だと思います。こういった「感謝の押し付け」が無害ならばまったく個人の自由なのですが、私はむしろ有害である可能性が高いと思っています。それは虫好きと虫嫌いの「分断」です。

昆虫愛好家のうち、昆虫をなんらかの理由で殺す人の中では「虫を殺す時は感謝して殺す方が良い」というマナーが働いているようです。必要以上に殺すことがないよう、殺したものを無駄にしないよう、精神的な規範を示すことで抑止力としたいようですが、それでは「不快や遊びで虫を殺す人」はマナー違反であると見なされてしまい、それによる偏見が起こってし待っていると思うのです。

食の倫理からすると、私のような食用に昆虫を殺す人は比較的攻撃されにくい傾向が強いです。なぜなら誰しも食べるためには生物を殺す必要があり、その中で昆虫は(好きな人も嫌いな人も)それほど殺すことに抵抗感がないからでしょう。

昆虫愛好家の中でも「ゴキブリは別」という人も多いかと思います。これが「殺すなら感謝すべし」に含まれない種差別であるとしたら、これはこれでまた問題です。私が養殖した清潔なゴキブリも、「ゴキブリだから食べたくない」という種差別を受けている、といえてしまいます。それよりも「自分が殺したい虫を殺す自由権を行使している」とした方が、現段階では説明しやすいと思います。

つまり私が提案したいのは「生態系に影響しない限りにおいて、個人が虫を殺す時にどんな気持ちであるかは自由である」ということです。遊びでもいいです。学術用途でもいいです。そして嫌悪でも、食用でも、生態系に悪影響を与えない範囲で、人は虫を殺す自由権(あるいは一種の愚行権)があると考えています。学術用途については特別に、生態系の保全に必要なデータを取ることがありますから優遇されるのは当然でしょう。

その中で、今の所種によって差別することも、昆虫に人権はなく、アニマルライツも設定されていないのですから人間側の自由権(愚行権)で包括することができるでしょう。

少し話は逸れますが、昆虫と食肉と菜食を含めた議論をする時に、昆虫の「苦痛」に関しては基礎研究レベルではかなりメカニズムがわかっている割にはその倫理についてはみなさん慎重です。

昆虫の神経系に特異的に作用する薬剤は殺虫剤の候補として人体に与える影響は少なく、薄い濃度で昆虫にだけ効くのでとても広く使われています。一方で漁業においては水に流すタイプの「毒漁」は資源保護の観点から禁止されており、農地用の殺虫剤だけが妙に「特別扱い」されているようにも見えます。殺虫剤の中には昆虫の神経を過剰に興奮させて死なせるタイプのものもあり、この先昆虫の苦痛を軽減する必要や、あるいは益虫として害虫を減らす役割のあるクモなどがとばっちりで殺される時の功利主義的な「倫理」においても考える必要があり、なかなか悩ましいものです。

話を戻します。

「昆虫を殺す時は感謝すべき」という押し付けは、昆虫を嫌悪(ストレスコーピング)で殺す人の罪悪感を増強させてしまいますし、虫好きから見ると、そういった人は無知で思いやりがなく、生態系保全に興味のない人だ、という偏見を持ちがちです。その気持ちの押し付けが社会を「虫好き」と「虫嫌い」に分断する要因になっているのではないでしょうか。

ともあれ、音声メディアであるバイリンガルニュースによって「映像はキツいけど音声なら大丈夫だった」とか「食べたくなってきた」といった、昆虫や昆虫食に無関心な方が少しばかり関心を持ち始めたようですので、虫の好き嫌いにかかわらず、誰しもが受け止めやすい情報発信ができたと思います。

この路線、しばらく追求してみます。

2017年に開業した本格昆虫食レストラン、Insects in the backyard. 予想以上にすごいレストランだったので感想を書きます。単純に「高級料理に昆虫をのっけただけ」にならないようになっています。そしてシェフが英語をしゃべれる人だったのと、空いている時間帯だったので色々話すことができました。まずは外観から。

ちょうどシェフとお話できて、彼が英語も喋れ、タイの伝統的な食材を国際的にアップデートしなくてはいけない、ということ。そしてタイにまだまだいる農村部の貧困家庭を助ける方法として、昆虫養殖は正しい産業として成長すべきだろう、という壮大なビジョンを聞かせていただきました。

まずは初心者を逃さない。そして上級者をうならせる、という一見相反する目標を両立するためにかなり料理の試作を繰り返し、レシピをしっかり設計している様子が伺えました。すごい。しっかりお金をとり、昆虫料理が「仕方なく食べるもの」ではなくて「しっかりお金を出して買うもの」という方向性を目指した最も先進的なレストランであると言えます。オススメです。そのうちラオスで養殖した美味しいゾウムシを彼に仕入れてもらいたいなぁと。

おしゃれなHPもすごい。予約もネットから簡単にできます。バンコク郊外なんですが、バンコク中心部からタクシーで200バーツぐらいでいけました。

こちらはガチの国際保健の論文です。2015年から2017年にかけて、ラオス中部において行われた大規模研究、Lao Zinc Study の報告論文が公開されました。3400人を超える子供たちを4群に分けて、ランダム化比較試験(RCT)をしたもので、単独の調査の中ではかなり信用度の高い論文になります。これは読んでおかないといけない論文なのですが、私が保健の訓練を受けていないのでISAPHの皆さんに教えてもらいつつ読んでみました。

なぜ読んでおかなければならないか、というと

「亜鉛をサプリメンテーションすれば栄養問題が解決」

のようなロジックと同じように

「昆虫を食べれば栄養問題が解決」といった誤ったロジックに陥る危険があるからです。

はい、ここ重要です。誤ったロジック

背景:ラオスのサプリメンテーション

サプリメンテーション、というのはすでに栄養の足りている私たちが健康食品の錠剤を飲んで元気になった気がする、という「サプリ」の話ではなくて、国際保健における一つの手法です。実はラオスにおいては予防接種に合わせたビタミンAのサプリメンテーション(経口投与)と、市販の食塩に微量のヨウ素が添加されるサプリメンテーションが行われています。サプリメンテーションは最終的にはこのような国の施策へとなっていくもので、今回の研究ではこれらの次のサプリメンテーションとして亜鉛(ここで注目されているのは鉄も)重要なのではないか、と着目されることとなりました。

さて、亜鉛、というと、こんな論文が思い浮かびます。

THE SPECIFIC LOCATION OF ZINC IN
INSECT MANDIBLES

昆虫のアゴに亜鉛が局在しているという話は昔から知られており

Tooth hardness increases with zinc-content in mandibles of young adult leaf-cutter ants.

アゴに蓄積した重金属が歯の強度を高めているらしいことがハキリアリで確かめられたとのこと。そこから

Insects as sources of iron and zinc in human nutrition.

鉄と亜鉛の供給源として昆虫はどうか、という論文もまとめられました。そのため亜鉛と鉄と昆虫は無関係ではないのです。

今育てているヤシオオオサゾウムシもそこらへんを意識していまして、100gあたり10mgの亜鉛という論文もありました

さて読み込んでいきましょう。

4群にランダムに分けられた2歳未満の子供達。

1、予防的亜鉛(7mg/day)これが一番安いでしょうね。これが2と同じぐらい効いたら安くてよく効く第三のサプリメンテーションを始められる。

2、15種類のマルチ微量栄養素タブレット;WHOが使っているもの。亜鉛(10mg/day)だけでなく鉄を少量(6mg/day)含むと書いてるのはエンドライン調査で貧血への効果が少しあったため。ここで使われた多微量栄養素剤(multiple micronutrients)は引用元によると ビタミン A・E・D・B1 ・B2 ・B6 ・B12・C、ナイア シン、葉酸、鉄、亜鉛、銅、セレニウム、ヨードの15の微量栄養素を含んだ錠剤だそうです。

3、治療的亜鉛(20mg/day );子供が下痢をするたびに10日間高濃度亜鉛を投与。下痢と関連する亜鉛不足を治療する投与の別の方法。こちらが効いたら毎日ではなく下痢に対して投与を推奨、となる。

4、プラセボ;ランダム化するためにはこの比較をするのは仕方ないんですが、何も効かないものを栄養状態の悪い人に毎日飲め、というのはなかなか暴力的な気がするんですがモヤモヤしますね。

と分けられ、9ヶ月実施した後にエンドライン調査によって比較されました。

2が「ポジコン」になると期待しての設計かと思われます。
15種類を確実に適量含むタブレットを製造する技術、品質管理、そして輸送にはコストがかかります。 今回の結果により1,もしくは3,の亜鉛の投与にフォーカスが当たれば、より安く効果的にサプリメンテーションができると期待できます。
こちらはラオスで行われる研究ではかなり巨大プロジェクトなのですが、その誤算はそのポジコンになりそうだった15種類タブレットのサプリメンテーション効果が今ひとつだったことでしょう。

炎症状態になるとこれらの微量栄養素の数値が影響されてしまうらしいので、補正した数値をもとに検定すると血中亜鉛濃度(1と2)と亜鉛欠乏症の割合、2においてフェリチン濃度(鉄欠乏貧血と関連)に有意差が見られました。(storage IDってなんでしょう?)

一方でラオスで長年問題になっている低身長(Stunting)は44%から50%とばらつきがあるものの、介入による有意差はありませんでした。

この論文が引用している鉄サプリの論文があるんですが、こちらにも多少は貧血に効いたものの低身長に対する効果は見られず、食生活の改善による栄養の補完が大事だろうと結論づけています。

そうなのです。

ラオスの低身長は長年の案件で特効薬と言えるものは見つかっておらず、もっと総合的なアプローチと戦略が必要なのです。そこに対するアプローチとして、昆虫養殖の普及に伴う食生活の変化が何か貢献できないだろうか、と試行錯誤しています。

昆虫養殖によって時間に余裕ができ、お金に余裕ができ、そのお金でスナック菓子を買っては本末転倒ですので、栄養教育も並行して実施していく。その時に「食べ慣れた昆虫が自宅で手に入る」という面白さ、真新しさがどの程度彼ら(と私たち)のモチベーションに貢献していくか、という部分が大事になっていくだろうと思います。

逆にいうと、これほど人体に対するエビデンスがしっかりしているサプリメンテーションですら、地域での実装段階ではかなり多くの不確定要素があり「効かない」ことが多くあります。エビデンスがそれ以下である昆虫を引き合いに出して「昆虫を食べれば栄養問題が解決」などというのは現段階ではおこがましいのです。

昆虫食文化のある地域で、養殖昆虫がどんな役割を担っていくのか、いくべきか、という部分を掘り下げ、ラオスの他の地域でも応用可能か、検討していくことが今後の課題となるでしょう。

以前にも触れましたが、「昆虫食は未来の食糧問題を解決しない」のです。

今の栄養問題を解決できない限り。