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みなさま、今年はロンドンオリンピックの年でした。
しかし、日本は豊かなものです。
4年に一度と言わず、毎年、昆虫好きのための競技会が
群馬県で開催されているのをご存知でしょうか。
「イナゴンピック」

もうお分かりですね。イナゴを競う会です。
去る10月13日、群馬県中之条町 寺社原地区
において
イナゴンピック2012が開催されました。
前半「イナゴ採り大会」
後半「イナゴジャンプ大会」
という二部構成
昼飯、おにぎり 豚汁 つけもの 食べ放題!
という素敵なお祭りです。
私の住む所から電車で3時間半。
中之条町
ド田舎の一つといっても差し支えないでしょう。
(関係者の皆様すみません)

会場の様子。
日本の水田のイナゴは戦後、
DDTなどの殺虫剤の散布により激減しましたが、
ここ中之条では農薬の使用を抑えたため、
稲刈り後にはイナゴが優占的に跳ねまわっています。

イナゴ以外にはツユムシが数匹見つかっただけで、
河川敷の草地のような
トノサマ、ショウリョウ、オンブ、ツチイナゴ
とのような多種のバッタは見られませんでした。
水田はイナゴに特に適した土地といえるのでしょう
午前11時半、中之条町長さんによる聖火の点火
でスタート。
競技は20分×2の40分。
この期間にどれだけ取れるかを競います。
さて、
このイナゴンピック。
私は昨年入賞を逃しております。
今年の春からバッタの研究を始めた者として、
今回は入賞を逃すわけにはまいりません
なので
予行演習をしておきました。
そこから分かったこと
1,イナゴはカモガヤが好き(食草でもかなり好みがうるさい)
2,目が合うと葉の裏に隠れる
3,足場がしっかりしているとジャンプ。
4,ぶら下がっている時に近づくとポロっと落ちる(ジャンプしない)
5,交尾中が狙い目
6,薄手の手袋で躊躇なくつかむ!
ということで、
いつも草の収穫につかっているビニール手袋と、アームカバーを
持って行く事にしました。
前半の結果

上々です。
ちなみに、袋は不正できない大会公式品を使います。
口に塩ビ管がつけてあり、イナゴが逆流しないようになっています。
さてさて、
後半もおわり。
結果発表です。
大人の部2位入賞(94匹)

ほっとしました。
学者馬鹿と言われずに済みそうです。
ちなみに
大人の部優勝は101匹
子供の部優勝は98匹
3位は福島のおばあちゃん(ゲスト:83歳!)92匹
ギリです。
このように、イナゴンピックは無差別級
であります。
オリンピックのような度量の狭い体重制はありません。
年齢制限もありません。イナゴの気持ちがわかるものが強いのです。
ちなみに、この福島のおばあちゃん
昨年は149匹を25分でかっさらうという脅威の記録の持ち主。
今回のリベンジの原動力となった方です。
日常からイナゴをとり、食べ生活しているのですが、
今回の大会は当初、「イナゴを持って帰れない」という噂を聞き、
完全にヤル気を失っておりました。
ですが、大会後に持ち帰り可とのことが判明し、
猛烈にヤル気を出し、もりもり捕獲しておりました。
また、持ち帰らない参加者からも貰って嬉しそうでした。
来年、やる気満々の
おばあちゃんとの再リベンジマッチを行いたいものです。
賞品 陶器のメダルと賞状、玄米5kg

参加賞のリンゴ二個もありました。
自炊学生としてはありがたい限りです。
また、その後後半戦として「イナゴジャンプ大会」
もありましたが、
まだ良く飛ぶイナゴの基準がわからず、入賞に至らずでした。
ぜひ次回リベンジを。
ということで、
私の新たな肩書きが増えました。
「イナゴンピック2012準優勝」

履歴書に書けるでしょうか。
空欄が多いので職歴に書いていいですか
そうですかだめですか。

先週発売のモーニング収録
「バガボンド」第308話 蝗
宮本武蔵が滞在している小さな集落
武蔵と行動を共にする男子、伊織に対し、
伊織の父の友人は幼少時のイナゴの襲来をこう語る。
「たかが虫ケラが 数が集まるとなんであんな風に狂っちまうんだろうな」
「ガキの頃見たーーーアレは顔つきまで違ってた
「こう どす黒いスジが隈取みてえに浮き出て目は吊り上がり
体の方も赤黒くでかくなってやがったな」
「悪そうなツラしてた。虫のくせによ。」
回想ーーーーーー群飛するイナゴ
「いてっ」
親指に噛み付くイナゴ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このイナゴ・バッタの名称は実は日本語の誤訳と言われています。
バッタ Grasshpper は全般的に草地をピョンピョンはねるもの。バッタ全部
バッタ Locust   は群集になると
体や行動の変化が起こる「相変異」を起こす種の総称を
いいます。
Locustの代表的な種として
サバクトビバッタ、トノサマバッタがいます。
一度相変異を起こすと大発生と移動を繰り返し、深刻な被害をもたらします。
旧約聖書の7つの災厄で登場する「イナゴ」も、Locustを指す言葉です。
一方で、
日本はイネから発生する昆虫を総称して「稲子=イナゴ」と
呼んできました。なので、イナゴの大発生は現在の我々が見ている
イナゴ(主にコバネイナゴ)と、トノサマバッタの大発生を両方を
指していると考えられます。
そのため、
「イナゴ」と言っているおっさんは決して間違っていないのです。
おっさんの証言、
1,群れで飛んで移動すること
2,赤黒く色が変化すること
3,田畑の作物を食い尽くすこと
から、
ほとんど飛ぶことのないコバネイナゴではなく、
トノサマバッタと考えられるのです。
さて、バガボンドの絵を見てみましょう。
表紙
残念ながら相変異を起こさない種、コバネイナゴです。
遠景
ハネが長く、長期間飛んで移動し、群れる性質、
シルエットから、トノサマバッタと思われます。
アップ
指を齧るシーン
残念ながらコバネイナゴです。
なんだかんだと文句を言っても仕方ないので
「パッチ」を作ってみました。
井上雄彦先生のように
クソ上手いマンガが書けるはずもないので
実写で再現します。
※パッチ
一部分を更新してバグ修正や機能変更を行なうためのデータのこと。
本来はプログラム用語のようですが、。。
11P 表紙
コバネイナゴが日本刀の柄に乗っているシーン
これを群生相化したトノサマバッタに差し替えます。

続いて
22p イナゴに幼少の伊織父友人が噛まれるシーン

群飛のシーンはトノサマバッタに見えるので、
(おそらくLocustの大発生の写真をモチーフにされたのだと思います)
そのまま御覧ください。
これでこの話における
「イナゴ=トノサマバッタ」のリアリティが
感じられるのでは、と思います。
環境の変化に応答して、「人(バッタ)が変わったようになる」
相変異を示す生物として
物語上重要な役割を果たせたのではないでしょうか。
余談ですが
大発生したLocustが「噛み付く」かは定かではありませんが、
基本的にバッタ類は噛み付く攻撃をしません。
サトウキビの固い葉などもサクサクと食べられるほど
強靭なアゴを持ちますが、
どんなに触ってもヒトに噛み付いた現場は見たことがありません。
「食べる行動」と、攻撃としての
「噛み付き行動」は別物のような気がしています。
逆の例だとクワガタは樹液食で、
食べるためには噛み付く必要はなく、
もっぱら攻撃のためだけにかみつきます。
さて、
話をバッターイナゴ問題に戻します。
Locustとイナゴの誤訳問題がなければ、
あの表紙が井上雄彦氏直筆の
トノサマバッタになったかもしれないのです。
見たい。

ぜひ見たいです。
単行本出版までに
書きなおして欲しい、と
メールをするか
大変迷っています。
この写真を作ったのも
コレを見て書きなおしてくれたら。。
などというよからぬ妄想が
暴走した結果でもあります。
またメールを出す勇気が
出ましたらご報告差し上げます。

10月13日、20日に
「東京バッタ会」および「つくばバッタ会」
が開催されました。
秋も深まる中
「スポーツの秋」「食欲の秋」「学問(昆虫学)の秋」

贅沢にも全ての秋を堪能できる、
しかもお金がかからない
不景気にぴったりの名イベントなのであります。
以前書いたセミ会のガイドラインと同様、
明日にでもできるバッタ会のガイドライン
として、ご紹介したいと思います。
1,バッタ会の会場
バッタはどこにでもいるわけではありません
主に「イネ科の草」が大好きです。
田んぼの畦道、河川敷、芝の広場などに生息しています。
イネ科の草について知りたい場合はイネ科ハンドブック
がありますので参考にしましょう。
また、食べたいバッタによって若干生息地が異なります。
湿気が多く、水田のあぜ道ではイナゴが。
乾燥したコンクリートの目立つ河川敷にはトノサマバッタが多くいます。
2,捕まえたいバッタの種類

以前書きました「バッタコンプリート」から集計した
独断と偏見の最新「バッタランキング」によると
茹でても美味しいA級バッタ
トノサマバッタ
ヒゲマダライナゴ
クルマバッタ
クルマバッタモドキ

揚げると安心普通のB級バッタ
コバネイナゴ
ツチイナゴ
ショウリョウバッタモドキ
茹では厳しいしっかり揚げて食べたいC級バッタ
ショウリョウバッタ
オンブバッタ
となりました。(独断と偏見です)
まずは美味しいA級トノサマバッタ類がいる
河川敷での実施をオススメします。
秋になると卵成熟のために暖かいコンクリートの上でひなたぼっこをするトノサマバッタが見られます。

体が重く、卵を抱えているので動きが遅く捕まえやすいだけでなく、
じっくり揚げるとジューシーで、トウモロコシのような香ばしさがあります。
最高の秋の味覚といえるでしょう。
次に
B級バッタの居場所として稲刈り後の田んぼが挙げられます。
河川敷よりも比較的安全ですので、お子様連れであれば
とりやすいイナゴから始めてみてはいかがでしょうか。
先日私が参加した「イナゴンピック」でも
大人の部一位=101匹
子供の部一位=98匹
でしたので
イナゴの運動能力であれば大人と子供の差は無いように思われます。
(イナゴンピックの詳細についてはまた別の記事に。)
3,バッタ会の道具
さて、
バッタがいることが分かったら虫捕り網
できるだけ2m程度の伸びるタイプがよいでしょう。
トノサマバッタは危険を察知すると数十メートルから数百メートル飛びます。
その察知範囲は(経験上ですが)およそ2mですので、
そっと近づける長めの網をオススメします。
また、日本に生息するコバネイナゴは
大部分がハネの短いタイプですので、
基本的に移動手段はジャンプです。
手でつかむように取るのが手っ取り早く、
大量に捕獲できます。
手づかみの場合は、イネ科の草本はススキのように手を傷める場合がありますので、薄手のビニール手袋などがあれば、躊躇なくつかみに行けると思います。
また、
つかまえたバッタたちは
蒸れると死んでしまいます。
洗濯ネットを用意し、その中にバッタを放り込みましょう。

外からもバッタの様子が見えるので、調理の時も役に立ちます。
4,手軽なアウトドア調理
捕まえたバッタは早く食べたいもの。
手軽に、A級からC級までのバッタをいずれも美味しく食べるには、
揚げ調理がオススメです。
アウトドアコンロと小さめの揚げ鍋、油処理用の牛乳パックを持参し
平らな所で唐揚げや素揚げにします。

唐揚げ粉をチャック付きビニール袋にいれ、
捕まえたバッタを放り込み、揚げます。
素揚げの場合はそのまま入れてもよいでしょう。
ハーブソルトのような味付きのシーズニングをふりかけると
美味しくいただけます。
5、最後に
バッタ類は日本人が長らく食べてきた食用昆虫です。
毒もなく、数も多く、噛むこともないので、
誰もが食べやすいのですが、アレルギー体質の方はくれぐれもご注意ください。
申し訳ありませんが、食物アレルギーへの対応は責任をとることができませんので、ご自身の判断でお願いいたします。
また、他の昆虫同様、バッタの寄生虫や細菌については
ほどんど調べられていませんので、かならずしっかり加熱して食べましょう。
秋も深まり、バッタ類はよく食べ、よくひなたぼっこをし、
卵を次世代に残すもの、越冬の体力をつけるもの、
それぞれがおおきく太ります。
ぜひこの秋の味覚をご堪能ください。

以前に、スキャナで写真を撮ってみたところ、
結構面白いものができましたので、
第二弾。
今回はブドウスズメの幼虫。
立派な終齢幼虫を見つけました。
このあと前蛹になったら、味見をします。
これより小さい幼虫はとても美味しかったので、
終齢、前蛹も期待大であります。
ブドウを育てると、果実とブドウスズメがついてくる。
一石二鳥のすばらしい秋の味覚。
スキャナ写真第二弾「ぶどうのめぐみ」

トノサマバッタは広食性の昆虫で、
主にイネ科の雑草を幅広く食べます。
イネ科の草の名前を知りたい場合、
オススメなのが
文一総合出版様の「イネ科ハンドブック」
イネ科雑草の見分け方や、
詳細なスキャナ写真と、野外での植生がわかる外観写真がありとても分かりやすい。
道端のイネっぽい雑草はたいてい載っています。
このハンドブックにも使われている「スキャナ写真」
イネ科の草本は一般的に細く、細かい構造をしているので、
写真を撮っても背景に邪魔されてみにくいのが難点です。
そこでスキャナでとりこむことで
押し花のように写すことが出来るのです。素晴らしい。
ということでやってみました。
複合機で撮ったものとスキャナ専用機との比較
(1200dpi)

やはり専用機は違います。焦点深度も深く、ブレや画像のカケがありません。
スキャナ写真 面白いなぁ。
芸術的な写真もあるとのこと。
ということで、
こんなのを作ってみました。
天高く、虫 肥ゆる 秋

私が所属している昆虫料理研究会では
10月13日 東京バッタ会
10月20日 つくばバッタ会
10月28日 高円寺フェス 虫屋台
11月23日 東京虫食いフェスティバルvol.5
阿佐ヶ谷 昆虫食のよるべ(月一回)
などなど、虫肥ゆる秋を満喫するべく、イベントが盛りだくさんです。
また、こちらも私が所属する
食用昆虫科学研究会では
11月10日、11日
サイエンスアゴラ
への出展が決定しております。
夜は涼しく、虫の音もよく聞こえるようになってまいりました。
虫肥ゆる秋を堪能してみてはいかがでしょうか。

おいしそうってなんだろう?

右から串揚げ
モンクロシャチホコ幼虫
シンジュサン前蛹
トノサマバッタ成虫
セミ幼虫
唐揚げ
ショウリョウバッタ
トノサマバッタ終齢幼虫

外に行ったら、もう稲穂が頭を垂れておりました。
風もすっきりしてきて秋の気配。
まだまだ暑いので昆虫も元気であります。


イナゴ、美味しそうですね。
あなたも美味しそうですね。
クモは昆虫と近縁ですが、気管系を持たないため体重が重く、
空を飛べません。
それでも
走る速度を上げたり(アシダカグモ)
待ちぶせのネットを作ったり(コガネグモ)
落とし穴を作ったり(ジグモ)
巧みに昆虫を捉えます。
昆虫食のクモの牙は固く、
外皮を突き破り毒液を注入、捕食します。
クモの牙は昆虫の外皮と同じキチン質ですので
なぜ似たような材質で突き破れるのか、ナゾでした。
そこで今年の春のこの論文
Biomaterials with bite: A new understanding of the spider’s fang
クモの牙は成分比率のことなる三層構造で、
先端は亜鉛で強化されているとのこと。
クモが昆虫食に掛ける情熱が伝わってきます。
電顕研究者のマテリアルへの情熱も伝わります。
ちなみにクモを食べる時は
熱で毒が不活化しますので
安心してお食べください。
Man Eating Bugs:

本日は恒例 昆虫料理研究会主催
「東京セミ会2012(第37回例会)」に行ってきました。
その内容はそれぞれのブログにおいおいUPされるとして
今年は個体数も調査しました
成虫 99匹
幼虫 約280匹(845g)
セミ会と昆虫料理研究会は明朝8月5日朝日新聞朝刊
(東京版)でご覧になれる予定です。
さて本日の主役
アブラゼミ(油蟬、鳴蜩、学名 Graptopsaltria nigrofuscata)は、カメムシ目(半翅目)・ヨコバイ亜目(同翅亜目)・セミ科に分類されるセミの一種。褐色の不透明な翅をもつ大型のセミである。(wikipedhiaより。)
アブラゼミ幼虫

セミ会では美味しいと評判だが、腹部の樹液の香りが強く
初心者は好みが分かれるため調理に注意。初めての場合は腹部に穴を開け高温でカリッと揚げると食べやすい。香りを楽しむ場合は低温でじっくり。
茹でで食べると若干外皮が気になる。腹部のクリーミーなナッツの香りと
胸部のみっちりした筋肉がそれぞれ楽しめる。
羽化直後

未硬化の外皮が濡れティッシュのようで味気ない。腹部;ほうれん草系の土草の香。頭部;脂肪のコク;胸部;圧倒的ササミ感。胸部筋肉は食べる価値ありだが幼虫が断然美味い。揚げはカスカスになり不向き
成虫
茹でて食べるにはカタすぎる。
しっかり揚げてクチクラの強度を下げ、
空洞である鼓室にソースやチョコ等を注入すると良い。
注入には百円ショップに売っている
先の丸い注射器(乳液などの化粧品を詰め替えるためらしい。)
を使用するとよい。