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ご無沙汰しております。原稿書きに追われていましたが、

東京日本橋で7月25日から開催中の「害虫展」、8月末まで開催するそうです。

「害虫をテーマにした作品」ということで、審査員が豪華!

丸山宗利氏(昆虫学者)、舘野鴻氏(昆虫画家)、満田晴穂氏(自在置物作家)

ですって。なにか審査員のみなさんに見てもらいたい、とコンセプト一点張りで写真作品を応募しました。そして108点の応募作品の中から17作品に入賞! 

入賞作家という得がたい称号を得た私は、いそいそと、みなさまにご挨拶をしにオープニングレセプションに参加してきたのです。

先着500名様は、図録を手に入れることができます。作品のコンセプトや自己紹介など、読めば理解も深まる冊子です。

この図録の仕様にもあるように、「害虫という概念をもういちどひっくり返す」という意図があります。害虫はいつになったら、どういう状態なら「ただの虫」に戻れるのか。私達社会が戻すことを決めるのか。そういった根源的な問いがあるからこそ、私の「雑な」作品を選んでくださったのでしょう。

審査員の一人、絵本作家の舘野鴻 さんにも久々にお会いして、「だってコレそのまんまじゃん!」とのコメントを頂きました。感無量です。そうなんです。私の写真は「作品」というよりは「コンセプトそのもの」なのです。ここになんらかの作家の営みが加わることで、初めて作品になるのだろう、と、このコメントで理解しました。それでも選んでくださった審査員のみなさんに感謝。

やはり多種多様な、技法も問わない作品に囲まれて、審査も難しかったそうです。「一つの作品としては優れているけれど害虫展というまとまりの中にはちょっと合わないかなと選外になってしまった作品もあった」とのことでした。

そしてせっかくなので入賞された作家のみなさんとお話。マスク越しでしたが作品の方を見ながら、換気の良い会話を心がけました。

大賞は矢野希美(やのきみの)さんの「密臭」これはけしからん密ですね。

マルカメムシたちの密

定形にも不定形にも見える、玉砂利のようなカメムシたちが密になっていてそれが斜めから見るとキラキラとしたパールで仕上げてあります。これはSNSでは見られない雰囲気。とても上品で絹織物のようなきらめきがあります。そして脚が描かれていない。バジルシードみたいで美味しそうにも見えます。

クズのツルのような毛の多いところにマルカメムシが密集(臭)していると、脚の存在感は消え、なにか果実のような、ふしぎな見え方をしてきます。そんなコンセプトを聞いて翌日、河川敷に行ってみると、

虫こぶのようにも見える。

確かに脚の存在感はなく、ぷるんとした実のようにも見えます。

「このパールの使い方が上品でいいですね」と声をかけてくださったのは、萩原和奈可さん。実は以前にヴァニラ画廊で作品を拝見していた作家さんです。解説が加わると、このテラテラしたマルカメムシが、パール顔料を使うことで生き生きとしていることも説明してもらいました。なんと贅沢な鑑賞体験。

描写がリアルで「死」を強く印象づけながら、枯れたような時の流れの上品さを感じるふしぎな雰囲気。

そしてショウジョウバエの神経科学、というかつての私の大学院のときの研究とめっちゃ近い背景をもつ兄弟ユニット、上岡雄太郎/直樹さんの作品。ゴキブリのアンテナの動きを論文から再現したら、嫌悪感が呼び起こされるのか。

こういう論文由来でありながら、論文じゃない表現物、大好物です。

まぁとにかく多種多様な表現が集まったという意味で、虫好き虫嫌い問わずオススメです。ニンゲンの脳内には昆虫の情報が生態系のようなものを形成していて、そこを引き出してきたり、ハックするような作品が並んでいます。

自分の先入観と向き合ってみるという意味で、すてきな「場」になっています。図録の文章も必読ですのでできるだけ早めに、密を避けて場の雰囲気をかんじてみてください。

昆虫標本でおなじみの福井さんともお会いできました。たしかに情報がなければキンバエはかなりの美麗昆虫。

作品を見たあと、野外に「確かめに行きたくなる」そんなパワーがあります。

そこに置かれたゾウムシ養殖の写真。技工はないけれどコンセプトはある。そしてリアリティよりもリアル、というパワフルさ。実際に他の作品と並ぶことで、ちょっと空回りしているようにも感じました。見に来る人に寄り添う様子がないので「遠くラオスの出来事」に感じられてしまう。

並びました。

 そう考えると、遠くラオスの出来事を「近く」感じさせるようなデザインの取り組みが必要なのだろうなと感じます。そんな「昆虫食展」東京でもやりたいですね。

最後にご挨拶した春日さんが、Twitterでよく見る「かすがぁ」さんだと知りびっくり!

出品していたのはハエに「小虫のように」むらがる人々の油彩作品。この作風の振れ幅。すごい。

予想外の出会いというのをどうやってこれから安全に作り出していくのか、表現物を介してなにかできるのか、とか色々考えていきたいですね。

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サイエンスアゴラに試食提供でお世話になった昆虫食のTAKEOさんが、タガメサイダー発売記念にイベント「タガメナイト」をしたいということで、私は外の人だか中の人だか微妙な立ち位置のまま参加してきました。

企業ですので彼らにも秘密保持契約があって、私も「オープンにしてもいい情報以外は(秘密におく時間がつらいので)話さないでほしい」とお願いしていた手前、タガメサイダーの開発の情報を知ったのは、発売の直前のことでした。

開発着手のだいぶ前、私がタガメで飲料を作ろうと思い立ったのは2011年ごろのことです。というのもタガメの香りのもととなるフェロモンの分子構造をみていたとき、両親媒性の様子をみて「これアルコールに溶けそうだな」と思いました。

 

虫フェスでタガメウォッカをふるまったあと、タガメがゆらめくウォッカの瓶から、うっすらと田んぼのニオイがしてきたのです。これによりタガメ飲料の可能性は「漬けたタガメは2週間で取り出す」もしくは「合成タガメ香料を使う」という2方向にわかれていきました。

多様なレシピが発展したのは昆虫料理研究会のオープンな土壌のおかげですし、タガメをつかったカサーシャソーダなど、色々なコラボによっても広がっていきました。すごいぞタガメ。

そして、満を持して開発されたのがタガメサイダー。食用昆虫科学研究会からの長い付き合いの三橋さんがTAKEOに入社し、様々な専門性を駆使して香りをコントロールした逸品。かなり技術的にもすごいですし、悩まされていた田んぼのニオイも解消され、長期保存も可能に。

タガメのいい香りも、ちょっと癖のある香りも残しつつ、美味しいサイダーの範囲にきちんと収めてくる。クセの強い変化球を投げているのにストライクゾーンに収まる感じ。初心者にはただただ美味しいサイダー。食べ慣れている人にはタガメの美味しさ、香りを十分に伝えてくれるサイダーになっています。そして製法に関して特許を取得。初めて飲んだときはヤバい、と思いました。

そしてタガメサイダーをふんだんに振る舞うイベント、タガメナイトが開催。

タガメサイダーを割り材にして、いろんなソフトドリンクやカクテルをつくることができるワークショップ形式になりました。メーカーすごい。

「キミだけのタガメサイダーを見つけよう!」

紅茶系はどうだとか、牛乳とあわせるととか、いろんなアイデアをわちゃわちゃ言い合いながらのカクテル作りと試飲。ひさびさに限界までのアルコールを摂取しました。そしてグランプリのレシピをまたどこかで使おうとか、よく考えている。

サイダーそのものができたあとで、この個性的なロゴ、トガシユウスケさんの清潔感のあるタガメのイラスト・デザイン、そしてキャッチフレーズ「好奇心を刺激する!」というところの

プロダクトデザインの流れも楽しく聞けました。うらやましい!

私と共同開発しているバッタ生キャラメルはソースにも展開しています。改善中ですので製品化は少々おまちください。

ひたすらにおいしい。そしてバニラアイスにも負けていない。すごいぞバッタソース。

そしておつまみとなる焼きそばやおにぎり、ピザなど。

おなかいっぱい、飲み放題という贅沢な時間を過ごすことができました。1参加者として満足です。

タガメチームの活動の後。よく飲んだ。

さて、ここで使ってきた香りの良いタガメは和名でタイワンタガメ Lethocerus indicusと呼ばれる種です。そして日本のタガメ Lethocerus deyrollei は環境省から特定第2種国内希少野生動植物種に指定されそう、とのこと。ニホンタガメを使った昆虫食品は、事実上不可能になりそうです。

「生物の資源としての利用」と「資源としての保全」は表裏一体です。そして地元のコンセンサスが重要になります。ノルウェーに侵入したタラバガニや、東京湾のホンビノス貝など、外来種でありながら資源である場合の舵取りはとても大変なものになりますが、うまくコントロールできればパワーにもなります。

私のタイワンタガメに対する態度も同様で、もしタガメの食品がきちんと産業化し、生息地が保全され、タガメの高すぎる農薬感受性に配慮した、流域全体の農薬コントロールができれば、タガメの資源保護をするための資金源にもなるでしょうし、今後絶滅が危惧されたときにもその養殖技術は保全の助けになるはずです。

ということで、ラオスでもタイワンタガメが飼育できないか、チャレンジしているところです。タガメサイダーの特許をとった加工法は死んで輸入されたあとに加工を加える「ポストプロセシング」ですが、こちらラオスが生産地になると、殺す前に加工する(調味する、という意味では養殖そのものや蓄養などもプロセシングと位置づけられます)という「プレ・プロセシング」となる部分も技術を探っていけるはずです。

なかなか食べ残しが多く、農薬にも弱い子ですがただひたすらにかっこいいこと、市場で安く買えることなどから、研究には適した場所だと思います。ラオスで一緒にタガメ研究しませんか?

去る2019年の11月22日、SDGsの次の社会、というテーマで慶應大学SFCのオープンリサーチフォーラムに行ってきました。これはオープンキャンパスと成果報告会が一緒になったようなもの。六本木という好立地での開催です。

コオロギ研究でお世話になっているオオニシ先生の研究室の展示を見に行き、少しコメントしてきました。とてもいい作品があったことを報告しておきます。

こちら、フードロスがどのようなカテゴリーがあって、それが各地域ごとにどのような割合で排出されているか。それを左右の「フロー」として示したものです。実際になにかが「流れて」いるわけではないのですが、異なるカテゴライズの左右を見比べるときの手法として面白いと思います。

これまでの人類のタンパク源の変遷を年表であらわし、そのなかに昆虫も含めて検討しています。ヒストリーから未来を想像するときに危険なのが、「単なる歴史的経緯」としてのバイアスを正しいかのように引き継いでしまうことです。昆虫「も」考慮にいれることで、未来予測をより確実にしようとする姿勢がみられますね。

今回関心したのがこの作品。都市、農地、森林の土地の広さを一覧として示しています。

特にいいメッセージがこちら。Farm is NOT green.

面積としては地球上の陸地の0.5%しかない都市に半数の人口が集中するという偏りのある人口分布をしている人類ですが、その中で「多数派」によって意思決定をしてしまうと、農地に対してなんだか「グリーン」な期待を寄せてしまいがちです。

都会の無機的・機械的・閉鎖的イメージの裏返しとして、農地への過度なキラキラ期待をした作品が、「未来と芸術展」にも多く見られました。ビルにコケをはやして食糧生産とか。わずか0.5%しかない都市に注ぐわずかな太陽光を「効率的」につかうための巨大な建築物とか、都市が田舎から搾取する構造を無視して、そこに住む人口を自給自足で支えられる未来の光合成に思いを馳せる勘違いが多いところ。

そこでリサーチをして、否定をしてみせる。多くの人がもつ勘違いに迎合せず、都合よく利用せず、否定して正す、というデザインが必要になってきます。

SDGsというアクションそのものが、ややっこしい各専門分野をひとくくりにして「わかりやすく簡略化」したものですので、あくまで一般向けに端折られてしまった部分が多くあります。そこでその次を「提案」するならば、やはり各分野の専門的な理解は必要ではないでしょうか。

研究者に限らず、アーティストやデザイナーにおいても、すべての表現社に「リサーチ能力」が試される時代がやってきた、と思います。研究者が監修した成果物、というよりは協業によって新しいものがうみだされることに興味をもっています。

自分の専門におけるリサーチと、他分野の専門家にリサーチを依頼するクライアントとしてのリベラルアーツなども大事になってくるでしょう。そして必要なリサーチに応じてチームを組み、対応するなど、いろいろと進めていきたいと思います。

以前の味見をまとめておきましょう。 オオツバメガ Lyssa zampaが昨年12月2日の玄関に舞い降りました。大きい。

この玄関は借家の蛍光灯をブラックライトに交換しておいたもので、毎晩玄関になにかしらの昆虫がやってくる、素敵なエントランスになっています。

以前にはツバメガの仲間の死体を見つけたことも。いつか食べたいと思っていた大型のチョウ。ようこそ味見へ。

そして茹でて味見。

しっかりとした旨味があり、歯ごたえもみっしり。コクも強い。チョウのようなプロポーションだが、毛の多さ やはり蛾の系統に近い感じもする。毛が多さはあげたりするとより食べやすくなるだろう。

幼虫もたべてみたいものです。

さて、9月に味見していたものを掘り出します。

目的は9月の梅雨の終わりに売られているちいさな糞虫。こちら。

これ学名わからないんですが、どなたかご存じないでしょうか。

そのなかにチリメンモンスターと呼ぶべき、まざりものがあったのです。

とにかく美しい。前胸部のくぼみとまっすぐ上に張り出したツノ。三日月型のアタマの角が立体的に交差し、写真を何枚もとってもその全体像を映し出すことができません。くやしい。色も落ち着いたグリーンでありながらメタリックでもあり高級感があり、全体にしめるツノの大きさが大きく、まるっこい体型と破綻しないカーブを描いている。美麗種というのはなかなか恣意的な呼び名ですが、これは多くの虫好きが同意してくれる美麗種と言っていいのではないでしょうか。

そしてそれが食えるらしいとのこと。なんと。

それではいただきましょう。

茹でて味見。香ばしさがあるもののやや土臭い。カマンベールチーズのような少しのカビ臭さと旨みがあり、これはこれで美味しい。ツノやトゲは刺さるほどの強度はなかった。

おいしい。というか本家よりもチリメンモンスターのほうが美味しいとは。

そしてなんと、これが台湾で昨年出版された昆虫食本「昆蟲上菜」にも掲載されていました。

なんと、おいしい蟲はおいしい。国境をこえてこんなことが話せたらいいなあ。グローバルに参りましょう。

みなさま、週末の巨大台風の影響は落ち着いてきたでしょうか。Twitterを見ているだけで、ここラオスにも台風が来るのではないかとそわそわしてしまいました。私の次回の帰国は11月です。

研究会では毎年サイエンスアゴラに出展してきたのですが、今回はラオスで協力する保健NGOであるISAPHの「本邦研修」という保健人材育成事業とコラボする形で、研修に来ているラオス人公務員に少しばかり東京まで足を伸ばしてもらい、一緒にこれからの昆虫食について語ろうというトークイベントを開催します。11月16日午後14時半ぐらいを予定しています。サイエンスアゴラで語らいましょう。おさらいしておきますが、サイエンスアゴラのコンセプトはこちら。

サイエンスアゴラとは、あらゆる人に開かれた科学と社会をつなぐ広場の総称です。サイエンスアゴラは、異なる分野・セクター・年代・国籍を超えた関係者をつなぎ、さまざまな人たちが各地で主体的に推進する活動の広場です。この広場に集まる人たちが多様な価値観を認め合いながら、対話・協働を通じて、これからの「社会とともにある科学」と「科学とともにある社会」の実現を目指します。

https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/about/

そして2019のテーマはこちらです。

Human   in the New Age   -どんな未来を生きていく?-

あなたは、科学技術の開発がさらに進んでいるであろう未来に、どんな暮らしをしていたいですか?
望む未来に必要な技術とは?機械や新技術に委ねたくない人間性とは?
サイエンスアゴラ 2019 では、そもそも人間とは何なのか、自分は何を選びたいのか、目の前のものをどう使いたいのかを、さまざまな視点から考える機会を提供します。

https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/exhibition/

ぴったりだと思いません?

しかし、一緒に語らうにあたって日本側に大きなハンデキャップがあります。



多くの日本人は昆虫を食べる自分を
イメージできない。

以前に「食の未来を考える」トークイベントに客として参加した際、日本の文化を背景とする人だけがリサーチし、これまでの年表をまとめ、歴史学風に未来を想像するという流れでしたが、どうしても抜け漏れが発生してしまっていました。自然の昆虫を食べてきたという日本の歴史がすっぽり抜け落ち、未来のコオロギがふんわり乗っかるという、とても浮世離れした未来予測になってしまっていたのです。

それではいかんだろうと、一つ対策として考えられるのが、このときのゲストの一人であった西廣先生の分野です。西廣先生は生態学をベースに植物の救荒食としての可能性を見出し、今後(温室効果ガス低減をどれだけがんばっても)不可避である温暖化に備え、さまざまな適応策を考えておこうとする立場の研究者です。もちろんそこに温室効果ガスを出しにくく、そして既存の恒温動物よりも熱中症に強い昆虫も推したいところですが、こちらの話はまた今度すすめます。

このような生態学ベースの「未来の食提案」に昆虫が含まれるのは妥当です。生態系をみても昆虫を主な食料にする哺乳類は多様にありますし、もちろん人間も食べてきました。一部の危険な虫を除いて体力のない子供でも、高齢者でも扱えることから、栄養源としてまだまだ伸びしろがあります。

そして今回のアゴラでのチャレンジは「昆虫食文化が濃くある地域」からの提案をうけとめきることです。ラオスでは昆虫を食べる文化が普通にあり、私が提案してきた「昆虫養殖で地域貢献」というアイデアはほかの食材と同じように至って普通のものとして、ラオス側に受け入れられてきました。

というのもラオスは「飢えない最貧国」とも呼ばれ、NGOを始めとした外国からの開発援助を常に受け入れてきた国です。その中でも地元の農作物や畜産物に対して高度な技術支援をするというのは当たり前の、ごく普通のプロジェクトとして行われてきました。しかし、たしかに昆虫を使ったものは明らかに少ないのです。

その原因は「先進国に昆虫食文化を持つ国が少なかったこと」といえるでしょう。先進国は食の技術をレベルアップすることで安定に、そして安全に食生活が営める社会をめざしてきました。

そして残念ながら、その中から昆虫食はこぼれ落ちてしまい、昆虫は「殺虫剤で殺して除外するもの」という位置づけになってしまいました。そのため昆虫を食利用するという技術を、先進国すらも持っていないのです。その中で「支援」をしつつ「技術開発」をするというホットな研究活動現場を作ろうとしているのですが、この話もまた別でまとめます。

そこで今回のテーマです。

日本側参加者の課題は「昆虫を食べる自分をイメージできるようになること」です。当日は試食も用意しますが、本当に無理して食べる必要はないですし、「食べる必要があるから食べる」では食のイメージがあまりに貧困です。おいしいから、食べ物だから食べるイメージを、ロールプレイのつもりでラオス人ゲストとともに高めてください。

その上で、ラオスの抱える栄養問題を知り、その支援をしたいときに、日本から何が提案できそうなのか。また今後(というかもう来ているんですが)、ラオスの昆虫食文化をもつ若者が日本にやってきたときに、日本からどんな食材で、料理でオ・モ・テ・ナ・シができるのか。一緒に考えていきましょう。

さて、今回は日ラオの通訳の関係で、事前に質問事項を整えておきたいです。

ラオスの昆虫について、ラオスの栄養の問題について、その他いろいろ、聞いてみたいことがありましたら、お知らせください。多様な視点からの質問をお待ちしております!

以前に日本のツチハンミョウについて、毒が強すぎて食べるのに適さない虫として紹介しました。英語名Blister beetleと呼ばれるように、水疱ができるほど粘膜に刺激性があり、致死量もなかなか少ないようです。漢方では「斑猫」と呼ばれ、キオビゲンセイの一種はカンタリジンを虫体の25%も含み、水疱をあえて作って毒を吸い出すような手荒い治療目的で使われた、との記述があるそうです。

引用します。

本来の「斑猫の粉」の正体はその成虫の乾燥粉末です。中国産のそれはキオビゲンセイという種類で、 乾燥した成虫体に25%ものカンタリジンを含有しています。カンタリジンの用途は毒薬ばかりでなく、 おできのウミ出しの刺激発砲剤に多用されているほか、少量を内服(大変危険ですが)すれば催淫や利尿、 躁鬱病、性病、知覚麻痺などに効果があるとされています。

https://www.jataff.jp/konchu/hanasi/h14.htm

さて、「変な虫を見た」との通報(最近ラオスで虫ネットワークができつつあります。)で急行するとこちら。

ツチハンミョウの一種

キオビ、というよりもピンク帯ゲンセイなので、これが本当に漢方に使われてきた「斑猫」なのかはっきりしないですが、これは味見できないです。ラオス人も食べちゃダメ、触っちゃダメ昆虫と教えてくれました。薬用に使うという話は今のところ聞いていませんが、そのぐらい一般的で、そのぐらい毒であることが有名なようです。気をつけましょう。

その他にも、ツチハンミョウ科の昆虫がいたので合わせて紹介しておきます。いずれも味見ダメです。ラオス人も知っていました。

車の点検修理に行っていたんです。先週に村に行ったあと、川の近くのルートが増水が激しくてそのままでは渡れず、クソ重くて車高の高い木材運搬車に牽引してもらいました。またこの車がかっこいい。

木材運搬車。かっこいい。

電気系統、エンジン系統に負担が少ないようエンジンを切り、牽引。深さは腰の高さぐらいでしょうか。

翌週点検にいくとエアフィルターが濡れ、その他負担の大きいブレーキ系がすり減りまくっていることが判明。

ということで、ちょっと点検をするつもりが 足回りガッツリ交換になってしまい、ヒマをしていたわけです。ぶらぶらと修理工場の裏にまわったり

たぶん井戸を掘るための車。

車道を闊歩するヤギをみたり。

そして歩道の脇にある東屋の柱に、見慣れぬ昆虫を発見。これはなんだ。

なぞの4匹

まず目についたのはショウジョウバエのように黄色い頭に赤い目。しかしそこから伸びるクビは細長く、腰から下になるほど奇妙なプロポーション。特に後脚が太く、腹部も棍棒のように先が膨らみ途中が細い。ボリューム感でいうと脚と腹部が同じくらいで、どれがどれだか、下半身が分身しているようにも見える。そして彼らが横歩きをしながら、何かのコミュニケーションをとっているようだけれどよくわからない。

写真にとってみるとショウジョウバエに似た顔つきに見えたのがちゃんとハチの顔になってるのがわかりますね。

茹でて味見 小さいのでなかなか味がわからない。寄生蜂らしい固く細い部分を口に感じるが、ほのかに香ばしさを感じるかどうか、という程度。うーん小さく細い昆虫は難しい。たくさん手に入ればいいのに。

8月9日、もう一ヶ月前になりますか。とある大学のつながりで、バンコクのトークイベントに参加すると旅費をいただけるというので行ってきました。なかなか厳しい台所事情ですが、それなりに楽しみつつ、研究費や経費を確保していこうと思います。

バンコクと日本のデザイナー、建築家の方々が集まる、だいぶアウェイなかんじがしましたが、とりあえず今回のテーマ「Exixtence=実在」 について、語りました。昆虫という「実在」によって、人がどう変化し、全体のプロジェクトのデザインがどう影響されていったのか、とか言う話をしたかと思います。観覧者にはバンコクの学生さんらもいて、昆虫食に対するバンコクの若者の印象も聞いてきました。

デザインという空論であり、実現していない以上「茶番」であることを、どこまで大事にし、深く、そして自由に発想できるかというのはとても重要な営みだと思います。そしてそこに「昆虫」が参加することはこれまでまずなかった。なので一種のスパイスとか「意図的なバグ」として、私が乱数発生器のように乱入して、かき回してみようかと思いました。デザインの世界のみなさんに投げ込んだ「実在の虫」のパワーはすごく、それでいて新しい概念を自分のデザインに反映させ、咀嚼していこうという適応力もすさまじく、スパークジョイな感じでした。

タイ東北部では昆虫食が普通なので、私の昆虫の話もさほど驚かれないかな、と心配したのですが、みなさん無事驚いてくれて、学生さんも女性の一人はロットドゥアン(タケムシ)だけ食べられるけどコオロギやバッタは脚があって無理、もうひとりの女性は全部無理、男性のひとりはサソリにチャレンジしたことはあるけれど。もうひとりはレシピ次第じゃないかなという消極的な感じ。いずれもバンコクの意識の高い、そして野心も高いデザインの学生なのでバイアスはあるかと思いますが、十分に「昆虫を食べる」というアイデアが敏感な若い世代にとって斬新に映るという手応えがあったので、ここバンコクも未来的昆虫食の展開のいい拠点になるだろうなと感じました。

またいっぽうで、ベテランのバンコク在住の先生方は伝統食として普通に食べていた時代を経験していて、ひと世代のあいだにジェネレーションギャップがギュッと詰まっていていい感じです。その年配の先生がこのようなスライドを用意してくださいました。

UNJUNK THE WORLD

Un-junkというのは検索してみると脱ジャンクフード的な書籍に使われたワードのようですが、この「ジャンク=役に立たない、安っぽい、価値が低い」といったものを価値観が同じママの社会で「役に立つもの」に変えていくリサイクルの発想ではなくて、その「役に立たないものという発想そのもの」をキャンセルしていこうという発想です。社会が変わることで、そのものが変わらなくてもコンセプトが変わる。これほど省エネなことはないでしょう。つまり昆虫にも同じことが言えます。ジャンクフードの代替として、安い、コスパのいい食べ物ではなくて、文化的な、先進的な、そして人の役に立つことのできる膨大なキャパシティをもつ尊敬すべきバイオマス。

そんな「UN-JUNKE THE INSECS」をこの世代で達成してしまわないと、バンコクの若者が昆虫食をジャンクな食べ物と誤認したまま次世代をつくってしまう。赤ん坊のころに植え付けられた食の価値観を変えるのは難しいですので、この世代のうちに、変えていきましょう。みなさま、ありがとうございました!

バンコク、今回は時間が少し余裕があったので色々見てきました。ミズオオトカゲが歩いていたり、スラムと高層ビルが対比されたり、他の都市と同じように、色んな面のある街なんだろうなと。

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すごい虫に出会いました。後ろにあるのはキャッサバ畑。5月に植えたキャッサバの様子を見に来たら、そこにいた。村の人が言うには木によくいるとのこと。キャッサバの葉にいたけどそれを食うかはよくわからず、しばらく飼育して試してみました。結局よくわからなかったので茹でて味見することに。

ヨツモンヒラタツユムシ Sanaa intermedia
ヨツモンヒラタツユムシ Sanaa intermedia

まずデザインがやばい。4つのモンに分断され、ヘリにはギザギザの意匠のあるグリーンとブラウンのツートンカラーの前翅。そしてグリーンの裏側に相当する部分は黄色。そして後翅のモダンなメンズ扇子のような紺と水色のデザイン。めっちゃかっこいいけれどモリモリ過ぎて情報過多。バッと翅を広げたときのインパクトはすばらしい。

ヨツモンヒラタツユムシ 伏せた状態は結構地味に見える。
裏側はビビッドカラーがすごい。背側からみるとグリーンの部分は裏から見ると黄色で
裏地が派手なヤンキーの学生服を思わせる。

さて、ここまで警戒色を出していて食えるのか?かるく文献を調べたものの、見つからず、捕まえたときに黄色い、青臭い体液を出していたので少なくとも全くの無毒ではないだろうと警戒しつつ、情報を集めながら飼育していました。しかし何も食べない。

キャッサバやツユムシが食べそうないくつかの葉っぱを試したけれど、そもそも食事行動をなかなかせずにじっとしている。

そしてふと試してみたら食ったのがなぜかモモの皮。北部高原地帯シェンクワンで育てられているとのこと。硬めだけど日本の白桃の仲間と思われ、とてもおいしい。けれどこいつの生息域と一致しない。謎。

結局キャッサバの萎びた葉っぱを食べたのを見たのを最後に味見をすることにした。茹でると胸部から黄色の体液が出てきて、少なくともてんとう虫程度の苦味物質だろうと思われる。飲み込まず口に入れて、味を見てみる。

そしてこの翅の模様をスキャンしたい。

この翅の模様を意匠として扇子とか発注したいなとおもいまして、味見の前に翅を外し、スキャンしました。

ヨツモンヒラタツユムシの後翅

うつくしい。藍染で再現できないだろうか。

味見  全体的に青臭い。渋みの強い黄色い体液が胸部を中心に全身にひろがり、美味しいとはいえない。腹部と足の筋肉はタンパクで柔らかく、食べやすいがはっきりと毒とも言い切れない微妙な味。胸部の渋みと臭み以外、味はキョジンツユムシと大差ない印象だが、今回は大事をとって飲み込まないこととした。全体に筋肉が少なく、図体のわりにコクが少ない。食べて一日が経ちましたが体調に変化はなし。うーん。毒とは言い切れないけれど美味しくはない。彩りとしてどこかに使いたいなぁ。パフェっぽさがある。

あれ、そういえばキョジンツユムシの味見のブログを書いていない。後で書きます。