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続きまして 「紅白蒲鉾」です。
形状が初日の出に似ていて紅は魔除け、白は清浄を示している
とのことですので、
赤い色素、アスタキサンチンを含み
加熱すると赤くなるトノサマバッタの幼虫を用意しました。
赤は通常の、白はアルビノのバッタを使います。
下茹でしたトノサマバッタを
トレハロース、砂糖、みりん、少しの醤油で
しっかり加熱し、
甘めの味付けに。
蒲鉾の背側に切れ目を入れ、シソと一緒に挟み込みます。
完成

味見
シソの風味との相性もよく、トレハロースと砂糖と醤油で甘めに仕上げたバッタ終齢幼虫がカリッとしてとてもよいアクセント。売れる味。
なかなか出来は上々です。
美味しかった。

2

あけ…
忘れておりました。
昨年は祖父が大往生したので
喪中だったんです。気づくのがちょっと遅かったと思われます。

さて
お節料理は皆様食べられたでしょうか。
季節の変わり目「節句」に食べる料理として生まれ
特に正月は日頃食事の用意をする人の労をねぎらう目的で
旧年中に作り置きして日持ちがするものを食べる、という風習となっています。
時代とともに次第に目的が付加され、
それぞれの具材に「ゲン担ぎ」な意味が付けられています。


海老 腰が曲がるまで、ひげが伸びるまで長生きする
   何度も脱皮することで出世を願う
紅白蒲鉾 形状が初日の出に似ていて紅は魔除け、白は清浄を示している。
     
田作り カタクチイワシを肥料にした所、五万俵の米が収穫されたことから
    五万米(ごまめ)とも呼ばれる。五穀の豊穣を願う。
くりきんとん 金色の団子が金銀財宝を意味しており金運を願ったもの
チョロギ 「長老木」の名を当てて長寿を願う
黒豆   黒く日に焼けるほどマメに働けるよう、長寿と無病息災を願ったもの
数の子 卵の数が多いので子沢山と五穀豊穣を願ったもの


そんな中
twitter上にこんなタグが、新年たちました。
「#新おせち」
まとめるとこんなかんじですが
私のアンテナは昆虫食への期待を察知しました
(電波だという方、ごもっともかもしれません)
では、今回は
順番に #新おせち
を作っていきましょう。
節足動物を利用したおせちなので
今回は「お節(せつ)料理」
命名してみました。
まず
「海老」
もうすでにバッタに似た外形ですし
腰が曲がる
ひげが伸びる
何度も脱皮する
という、
縁起物の条件をほぼすべての昆虫は満たしています
このままバッタに代替してもいいのですが
いかんせん
「おせつ料理」にしては大きさが足りません
大きなバッタでも8cm。もう少し大きさがほしいですね。
そこで
こんな話を思い出しました。
私が
ネットストーキングをしております
昆虫界のキュレーター「メレ山メレ子」さんの
連載「ときめき昆虫学」での
でんでんむしの回。
そこでエスカルゴ養殖の社長はこういうのです。
「市販の安いエスカルゴは中身をアフリカマイマイに詰め替えたもの」
!!そうだ
「詰め替えればよいのだ!」
今回は冷凍しておいたエリサンの蛹を使用。

レシピ
卵白 4つ分 鳥のささ身 一切れ
ごま油 少々 エリサン蛹 20頭
フードプロセッサーで泡立つまでしっかり撹拌し
ビニール袋に詰め、

食べ終えた海老の殻に詰め込みます。
そしてお湯を張った蒸し器で2分。
蒸し終わったら、ダシ汁に漬け込んで完成。


ぐっと噛みしめるとじゃこ天や
おからドーナッツのような
適度な歯ごたえ。プリプリ感はあんまりない
香りはクルミのようで香ばしく、ごま油とよく合う
アミノ酸味としては海老よりも薄く、
素直にたくさん食べられそうな味。
「魚肉ソーセージ」
のように
昆虫料理は大きさの壁を越えたといえるでしょう。
理論上はタラバガニやイセエビの大きさも可能です。
これを

大陸海老おおりくえび」と名付けましょう。
次は…カニかまぼこ とかミミックするとそろそろ売れるかもしれませんね。
今回は連作です。
次回は「紅白蒲鉾」

2

コメント欄にリクエストを頂きましたので
「昆虫を食べるリスクについて」
ここにまとめておきたいと思います。
元ネタとして、我々食用昆虫科学研究会のHP
4回にわたって紹介しています。
より細かいことを知りたい方は、コチラをどうぞ。


私達哺乳類は、その名の通り
生後しばらくの間、食料を母乳に頼っています。
おっぱいへの吸い付きは本能行動ですので、
誰に教えられたわけでもありません。
母乳は完全栄養食ですので、これさえあれば
乳児はすくすくと育ちます。
ところが、
ずっと母乳というわけにはいきません。
母乳の原料は母親が食べた他の生物ですので、
少なくとも性成熟までに(実際はもっと早いですが)
他の生き物を食べないと子孫が存続できないのです。
そのため、
食べ始める時期、つまり離乳期には
新しいものを好む性質=neophilia(ネオフィリア)が増大します。
どんなものも口に入れ、食べようとするのです。
この時、親から与えられた
「本能にはない新しい食の情報」がインプットされます。
そして、
ある程度育ってしまうと、
生育にはそれまでにインプットした情報からなる「食品ホワイトリスト」
だけで十分ですので新たな食品を開拓する必要はなくなります。
逆に、
生育後に新たな食品を試すことはムダなリスクとなりますので
成長に従い新しい食品を忌避する性質=neophobia(ネオフォビア)が増大します。
アメリカの研究では、新しい文化を受容できる年齢、
ネオフィリアが強い年齢は7歳ぐらいと言われているそうです。
そこから考えると
食育は小さい時に行うほど効果があるでしょうし
大学生に食育をしても、まったく食生活が改善されないことも分かります。
同様に
離乳期、いわゆるneophilia期を過ぎた
あなたが
昆虫を食べようと思わないのはリスク管理上、
まったく妥当なことなのです
逆に言うと、
昆虫を食べる人たちが「我々よりもゲテモノが得意だ」というわけでないのです。
あなたと同様に離乳期に大人から昆虫を与えられた結果、昆虫を好む文化を継承したといえるでしょう。
「野蛮で貧困なヒトが仕方なくタンパク源として食べた」というのは全くの偏見です。
最近、
様々な生物を食品とする中国から
「最も危険な食品」に卵かけご飯が選ばれる、というニュースがありました
(サルモネラ菌のリスクがあるので卵の生食をするのは日本ぐらいです。)
このことからも我々が
「必ずしも理性的な(低リスクな)食選択を行っていない」
ことが理解できるでしょうか。


話はそれますが
サルモネラ菌のリスクを減らすために
次亜塩素酸による殺菌洗浄、ワクチンの投与など、
本来サルモネラ菌保菌者であるニワトリの健康には関係ない
コストがかかっています。文化といえばそれまでなのですが
我々日本人も、殺して食べる肉食が野蛮と感じるのと同じように
食に対して貪欲で野蛮だ、という事実は知っておきたいものです。


では
あなたが「新たに」昆虫を食べる
ことへのリスクを考えてみましょう。
これは他の食品を新たに食べた時にも言えたことで、
実は幼少期のうちにこれらのリスクを克服してきたのです。
1,知識不足による事故や食中毒
昆虫には毒のあるものや危険なものがあります。
以前にまとめました。
2,管理不足による事故や食中毒
昆虫は(私見ですが)エビ・カニと同様に傷むのが早い食品です。
当ブログでは
必ず加熱殺菌をおすすめしているので
ヒト−昆虫共通感染症や共通寄生虫症は加熱殺菌ずみとして除外します
すると、
本来安全に食用になる昆虫でも管理の不徹底により
微生物の繁殖による毒素の生成や
自家融解(昆虫自身に含まれる酵素が、死後働くことで新たな物質が生成すること)
による食中毒に注意したいものです。
有名な例としてヒスタミン中毒があげられます。
ヒスタミンは低分子の物質で、
下に述べます「免疫反応」の情報伝達を行うために
健康な細胞で通常利用されています。
ところが、
微生物の繁殖や自家融解によりヒスタミンが増え、
また、
本人の健康状態によりヒスタミンへの感受性が増加した際に
ヒスタミンを含むものを食べることで
アレルギーのような食中毒状態になります。
なお、
ヒスタミンは熱に強い物質のため、加熱前の管理が重要になります。
原則として生きたものを調理し、すぐに頂くこと。
そして死んだ場合は必ず冷凍か冷蔵し、
食べるまで一貫して管理することが求められます。
3,アレルギー
個人レベルで異なる反応を起こすため
対応が厄介なのがアレルギーです。
そのため、
上記の一律な管理方法とは異なり、
個人での対応が求められます。
アレルギーのリスクはどの食品にもあります。
幼少期にアレルギーを発症せずくぐり抜けた方は
その
「食品ホワイトリスト」をそのまま使うことがリスク管理に重要です。
つまり「食べたことのある食品しか食べない」のです。
※様々な食品へまんべんなく触れることは
アレルギーの発症リスクを抑える効果があるので
一概に小品目の食べ物だけ食べていればいいわけではありません
また、
幼少期にアレルギー源となる「食品ブラックリスト」が発見できた方も
比較的幸せだといえるでしょう。
アレルギーの概念のない時代には、重篤なアレルギーによる
「謎の突然死」や「謎の虚弱体質」で悩まされた人も多かったことでしょう。
それらの人が、アレルギーを持たない人と同様の生活を営めるというのは
日本は恵まれた国といえます。
アレルギーは、
本来は外部からの病原体の侵入を防ぐ免疫応答のシステムが
過敏になることで起ります。
免疫にはその応答の仕組みと物質の違いで
沢山の種類が分けられますが
ここでは端折ってザックリと
免疫応答(ブラックリスト)

免疫寛容(ホワイトリスト)
で考えることができます。
免疫を司る重要なタンパク質「抗体」は
理論上全ての物質の立体構造に応じてオーダーメイドされ
ブラックリスト式に登録していきます。(免疫記憶)
そして、「すべての物質」のうち「自らに含まれる物質」
に対して応答する抗体は決して出荷してはいけません。
この仕組が暴走を起こしたのが「自己免疫疾患」という
という難病です。
次に
「自分のものではないけどなんでもない物質」
をスルーするスキルが必要です。これを「免疫寛容」
といいます。いわゆるホワイトリストです。
食物は一旦体に取り込み、消化して対外に排出するので
「自分のものではない物質」です。
ですが、ほとんどの物質は病原性ではないので
ブラックリストに入れてはいけません。この「免疫寛容」が
うまくいかず、免疫応答が過敏になってしまうことが、アレルギー反応なのです。


長くなりました。
あなたにとって
「ブラックリストに載っていない」ことが
昆虫を食べる上で重要な事になります。
ある調査によると
人は一生のうちに 数匹のクモやゴキブリを間接的に食べているそうですし
昆虫に触ることのない、昆虫が触ったものにふれない生活はほぼ不可能ですので、
ホワイトリストに入っている可能性は比較的高い生物種でしょう。
事実、私達は多くの方に試食していただきましたが
延べ1000人以上の試食者の中で、アレルギー応答を起こした方は2人です。
(本当にアレルゲンが昆虫なのかは調査中ですし、過去に昆虫を食べたことのある人が主に来場している可能性もありますので疫学的に確かとは言えませんが。)
食べたことのない、日常触れることのない海の甲殻類や深海魚に
アレルギーをもつ可能性が高いかもしれません。
(エビ・カニは最も多いアレルゲンの一つですね)
昆虫食は
アレルギーに個々人で気をつけて、
自己責任で、試せる方のみにオススメします。
医療機関ではアレルギーの程度を測定するテストがありますので、
昆虫食が普及した未来にはそのテストを受けることが普通になるかもしれません


さて
ここまでは
昆虫食の内在的なリスクを紹介しましたが、
間接的なリスクとして
「他人を経由するリスク」
が挙げられます
資本主義社会では
ウソを付くことによるペナルティがウソをついて得られる利益を上回る
限り、食品にウソがある可能性は少なくなります。
逆に、
ウソを付くペナルティよりも嘘をついて得られる利益が大きい場合。
例えば安値で買い叩かれ、嘘をつかないと経営が立ち行かない場合
例えば安月給で社会や雇用者に恨みを保つ場合
輸出先の国に恨みがある場合
食品にウソがまじります。
その時は、
他人を経由すればするほど、つまり加工されるほど
食品のリスクは高くなります。
異物混入や、悪意による毒物や刺激物の混入など、
リスクに限りありませんし、
実際に事故や事件も起こっています。
近頃は食品偽装問題で有名になりましたが、
ことアレルギーになると事態は複雑になります。
もし、ブラックタイガーアレルギーの方がクルマエビだと思って食べたら。
ならば
「生きたものを」「自分で養殖し」「自分で調理する」
というのは食品が他人を経由するリスクを下げる意味で有効なのです。
現在の日本に流通する食品は
日本固有のものはむしろ少ないですので
これから「日本の野生のものを摂取するリスク」
よりも
「他国の養殖されたものを摂取するリスク」が高くなる日が来るかもしれません。


さて
怖い話になりましたが。最後に「QOL=生活の質を保つこと」の話です。
アレルギーを持ちながら生活する方にとって
「皆が食べているものを食べてはいけない」というのはストレスです。
また、
「似たものを食べる」だけでもそのストレスは低減します。
とある男の子が、親御さんの許可のもと、
バッタを食べる会に参加しました。
その子はエビアレルギーで、エビを食べることができないので
バッタを食べに来たそうです「コレが海老の味だよ!」と言われた男の子は
とても満足気でした。
このように、代替食としての昆虫も
昆虫食を採用する上でのメリットになります。
以前の調査で、味覚センサーによる解析から
ウナギはハチノコに似ていることが分かりました。
ハチノコは養殖の難しい昆虫なので、
更に味の似ている、
鱗翅目の幼虫が、ウナギの代替食として望ましいと考えられます。
そこで考えた
「土用のむしの日」を思いつきました。
この度は、さらに器を「ホンモノに」
パワーアップして作成してみました。

イナゴの代替食としてのトノサマバッタの佃煮
ウナギの代替食としてのエリサンとオナガミズアオの蒲焼き
ウナギの肝吸いの代替食としてのオオスズメバチ前蛹のお吸い物
いかがでしょうか

「20年前はこんなものキモくて食えないと思っていたんだけどね」
と思い出話になるような、
科学的に裏付けがあり、文化的に豊かな食としての導入を目指したいですね。

2

秋ももうすぐ終わり。
つまり
バッタの旬ももうすぐ終わりです。

今年も関東では、数カ所でバッタ会が行われ、
追加アップデートを行いたいとおもいます。
今回も以前の記事「バッタ会のガイドライン」を踏襲し、
美味しくて食べごたえのある、トノサマバッタを主に考えたいと思います。
昼のバッタ会
今年も昆虫料理研究会主催の
バッタ会は昼間に行われました。
11時半から13時までが主に採集時間になります。
多摩川の支流の河川敷に集まり、
持ってきたお弁当のおかずとして
捉えたバッタを食べます。
バッタが最も活発な時間であり、
近づくだけでパッと飛んでしまうので、
採るのが大変です。
ただ、代わりに見つけるのは比較的簡単です
動かずに留まっているバッタを
見つけられない、初心者の方にはお勧めです。
収量がセミ会ほどはないのですが、
運動になるので満足度の高い会になっているようです。
夜のバッタ会
虫フェス vol.4にお呼びしたタイ人によると
「夜の間にライトで照らしながら採るんだ!」とのこと。
やってみましょう。
夜21時の畑。
いました。

全く動かず、草むらの背の高いイネ科の草に捕まっています。

触っても全く動きません。
昼のバッタ会に比べて捕まえやすそうですが
動かないのが逆に見つけにくいのです。

お分かりいただけただろうか。。。。



このぐらい
トノサマバッタへの「目」ができていないと、収穫は難しいでしょう、
私はというと、
自転車で移動しながら
草むらのバッタの死体を見つけるぐらいの、
「目」に訓練されていますので、
夜のバッタ会は玄人向けかも知れません。
朝のバッタ会
そんな中、カヤネズミの研究者の方がtwitterでこんなことを
「運動能力を比較すると、野外の中型以上のバッタを捕食できるのか?」
カヤネズミはイネ科の草本地帯に生息し、
ススキなどを駆使して器用に球状の巣を作る可愛らしいネズミです。
生息域がトノサマバッタと丸かぶりなので、捕食者である可能性もあるのですが、
昼間の俊敏なトノサマバッタを見ると、確かになかなか捕まりそうにありません。
カヤネズミはヤマネのように枝をつたって走り回ることもないそうです。
そこで、夜の様子を見直すと、全く動かず、
夜でも体温を保てる恒温動物のカヤネズミが食べまくれそうな雰囲気です。
枝の高いところに必ずいるのも、地面を歩く捕食者を避けるためかもしれません。
「恒温動物であるカヤネズミが変温動物であるトノサマバッタを捕食しやすいのは夜」
という可能性を伺った所、
カヤネズミの活動期は「薄明薄暮性」つまり夜明け前から早朝にかけて動くそうなのです。
確かに気温が最も下がるのは夜明け前。
朝になると低気温と日光が同時に手に入ります。
ということで
朝8時ごろ
見に行ってみました。(6時頃に行きたかったのですが寝坊しました。)

適度に動くおかげで見つけやすく、
捕まえやすく、捕獲レジャーとしても楽しめそうです。
ということで、
まとめてみましょう。
バッタ会には3パターンが考えられます。
1,昆虫料理研究会流:昼バッタ会
昆虫採集がメイン。河川敷で汗をかきながら
効率の悪い採集食を楽しむ初心者向け
味見程度でお腹いっぱいにならないぐらいが
ダイエットに効果的
2,タイ人流 夜バッタ会
夜のバッタがおとなしい時間に
ヘッドライトをつけて採集。
動かないバッタを目ざとく見つける玄人向け。
作物泥棒と間違われないよう通報に注意。
(蛾の夜間採集で通報された蛾屋の方もいるそうです。)
3,カヤネズミ流 朝バッタ会
今人気の「朝活」。
明るく、動きの適度なバッタを捕まえ、
さっと揚げてタンパク質豊富な朝ごはんに。
運動すれば朝ごはんを規則正しく食べることができます。
今話題の「エクストリーム出社」にも使えるかもしれません。
朝に強い人向き。
さて、
夜バッタ会と朝バッタ会について
動画を撮ったのですが、
昼バッタ会についても動画を撮っておこうと
カメラを持って出かけました。
「なかなか採れない活発なバッタの映像」を撮りたかったのです。
ところが
1、活発なバッタは採れないし撮れない。
2,撮れるバッタは鈍くて採れてしまう。
という残念な結果となりました。
狩猟の喜びを感じられる動画をご覧ください。

「恣意的な動画をとるって難しいですね。」

7

「見た目が悪いから昆虫は喰いたくない」
という方に
そもそも見た目の評価自体が絶対的なものではなく、
文化的なものだと気づいていただくために
「姿のエビ」をよく例に挙げます。
エビが食えて虫が食えない理由を
合理的には説明出来ない、ということに気づいて欲しいのです。
ということで
以前に小エビのかき揚げとバッタのかき揚げを比較
しました。
今回は
生物がほとんど無加工のまま
出される寿司で比較したいと思います。
具材は茹でて味が良いことで知られる
オオスズメバチ前蛹・蛹とエリサンを使いました。
色味をつけるために食紅を使いました。

昆虫の表皮が水を弾くため、
あまり染色具合はよくなかったのですが、
うっすらピンク色になりました。
次に寿司の準備です。
幸い近くのスーパーで見切り品となった寿司を
確保し、崩れないよう自転車で持ち帰り、
予めヤフオクで購入しておいた
デッドストックの寿司桶に盛りつけます。
今回はエビが甘エビと茹エビの二種を使い
節足動物の割合を多めにしておきました。(シャコとかもあればよかったのですが。)

木を隠すなら森の中
蟲を隠すなら寿司の中
意外と甘エビの隣のオオスズメバチ前蛹に
気づいていない方も
いらっしゃったのではないでしょうか。(?)
やはりそんな大差ないですね。
味も穀物系で、生魚の味の強さに飽きたころに
調度良い味でした。「寿司ネタ・スイートコーン」の偉大さを感じます。
江戸時代に始まった寿司のネタは時代とともに変遷し、
トロ・生サーモン・ホッコクアカエビ(甘エビ)エンガワ(オヒョウ)などの新ネタから
海外産の養殖エビやネギトロ(マグロすき身+マーガリン)のような加工生産の変化まで
大きく変わりました。
そして、sushiが国際的にも人気になった結果、
マグロを始めとした漁業資源の枯渇が深刻です。
そんな中でも
「海は広いな大きいな」

未だに海産資源の有限さに気づいていない
脳みそお花畑の国が大部分です。
確かに
海は人智を超えた偉大さに見えるため、
「有限」と言われてもピンと来ないこともあるでしょう・
そのためにも
自分の食糧は自分の目に見える形で養殖する、
という
食糧の有限さを噛みしめる農業・養殖業が、
これからの慢性的な食糧不足を
理性的に節約し、耐えぬく道だと思います。

7

昆虫食についての勉強や実践を
当ブログで発信することで多くの反響をいただくようになりました。
昆虫の世界は膨大ですので、様々な立場の方からのコメントが
私のモチベーションを上げ、次のチャレンジへとつなげてくれます。
思えば
本格的に食べ始めたのが2008年。
5年ほど続けてきたわけですが、
日々進歩がなくてはいけませんね。
ということで
2009年、仙台にいたときに同級生に食べてもらった一品
「秋の蟲ピザ」

小型の直翅目をトッピングした食べやすいピザです。
秋になると性成熟し、加熱すると赤く色が変わる直翅目を使うことで
紅葉する広葉樹をイメージしました。
ちなみにこちらは調理前

これを今回はブラッシュアップしようとおもいます。
さて
昆虫料理を紹介するにあたって
「形を無くして欲しい」という声が多くあります。
似たような形を持つ
海老や蟹について「すり身でないと食べられない」という方の話は
殆ど聞きませんので
おそらく
調理された虫の「形」に対する嫌悪感というのは
「死体感」ではないでしょうか。
基本的にヒトは
調理加熱して他の生物を食べるので
当然「死体」食べているわけですが、
「死体」を「食品」とみなすには、文化的な刷り込みが必要です。
このブログをご覧になる方の多くは昆虫食を文化として持たないので、
形を見せてしまうと
どうしても「死体」の印象が拭いきれません。
ですが、
直翅目の美味しさはパリパリ感でもあるので
美味しく食べるためには形は残しておきたいものです。
そこで
「形を残したまま死体感を減らす工夫」
が必要だと考えました。
ヒントは昆虫標本にありました。
きっかけはとある虫屋の方から
「展翅したほうが見た目が良いのでは??」との
アドバイスを頂いたことです。
確かに
「標本は大丈夫だけど(道端の)死体はムリ」
「生き虫は大丈夫だけど死体はムリ」
という虫嫌いの方もいらっしゃるようです。
つまり
「展翅することで整然とした印象を与え、死体という無秩序な不快感を減らすことが出来る」
という仮説が考えられます。
やってみましょう。
まず、茹でた昆虫を
アルミ箔を張った網の上に置き、立たせて足を整えます。

このまま、マーガリンとチーズを塗り
200度のオーブンで10分間加熱します。
そして
市販のチーズピザの上にキレイにトッピングし、
250度のオーブンで10分焼きあげて完成。
秋の蟲ピザ 2013

味見
香ばしく、肉質のうまみ。とても良く合う。
残念な点としてピザに接している部分が
カリカリ感がなくなり、口に残ってしまうので
もうちょっとしっかりローストしてからトッピングすればよかったかと。
そうすると強度が低下してしまうので、
「強度」と「カリカリ感」の調整が難しくなってきそうです。
こうやって頑張ってみたものの、今度は
整然と多くのパーツが並んでいると嫌悪感を感じる「集合恐怖症」
というものをお持ちの方がいらっしゃいます。

その原理や適応的な意義は解明されていないようですが、
昆虫料理への嫌悪感を拭うというアプローチは
まだまだ先がありそうです。
できれば「形を無くする」という方法は最終手段に取っておきたいところですね。

今回も美味しくない(かどうか確かめてはいけない)むしの話です。
味を見てはいけない虫として、
体内に強力な毒を持っている虫が挙げられます
今までに 体内にカンタリジンを含む
マメハンミョウ
ツチハンミョウ
を紹介しました。
今回はペデリンを含むアオバアリガタハネカクシ Paederus fuscipes Curtis
です。
体長 7 mm 特徴的なビビッドな配色なので
見たことある方もいるかと思います。


灯火採集で捕獲しました。
皮膚科医が実際に肌に擦りつけた時の炎症を
詳細に記載したあまりに体を張った専門書
「Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎」によると

以下引用
「体液に触れると半日程度で浮腫性紅斑が出現し始め、次第に後半が強くなって2〜3日後から膿疱を形成する。自覚症状としてヒリヒリとした灼熱感や疼痛を伴う。その後1~2週間で痂皮を形成し、2~4週間で色素沈着を残して治癒する。」
なかなか食べられなさそうですね。
食べてはいけない虫の情報は、食べて美味しい虫よりも
必須の情報です。ですが、残念ながら全く愛着がわかないのです。
食べる虫を撮影するために用意した照明やブース、カメラなど
こんな食えない虫のために使うのは苦痛です。
ですが、
やらないと昆虫食は決して普及しません。
やるしか無いのです。
美味しい昆虫並べてうまいうまい言ってるだけではイカンのです。
ということで今年中に
「アオカミキリモドキ」も攻めたいところですが。
見つかればいいのですが。ううむ。乗り気がしないなぁ。

3

採集昆虫は季節モノなので、
採れ過ぎたものは一旦冷凍して保存しておきたいものです。
大抵のものは一年以上保存できるのですが
「冷凍セミ」はいまひとつ味が悪いことが経験的に知られていました。

写真はクマゼミCryptotympana facialis
今回は数人でセミを食べる機会があり、
今年の一ヶ月以内のセミと、去年のセミを
アブラゼミ幼虫・クマゼミ成虫で揚げて食べ比べました。
アブラゼミ幼虫・一年前
酸味が強くなり、酢酸系の不快なにおいと腹部から胸部まで広がった明確な苦味。
おいしくない。スが入ったように食感も悪く、挙げてもふわふわしない。
アブラゼミ幼虫・今年
香ばしく、苦味もなく、木の香りがよくフワ/サクっとした食感。とてもおいしい。
クマゼミ成虫・一年前
二度揚げしてもからっとせず、ジトッとした感じ。
腹部に強い苦味があり、舌に残ってしまう。
クマゼミ成虫・今年
二度揚げによって軽く・ザクザクと食べやすい食感に。香ばしさ軽い食感が
とても好ましい。苦味は全くなく、一気に食べられる。
今回は性別を統一して食べ比べなかったので
断定はできませんが、セミの冷凍劣化はかなり速く進むようです。
ファーブルのように「セミは不味かった」と断定する前に
調理・保存は大丈夫だったか、採集するステージは大丈夫か、
注意してみましょう。
「今年のセミは今年のうちに!」
http://www.youtube.com/watch?v=cyLogCll828

8

以前から甲虫類の成虫の「硬さ」には悩まされてきました。
カミキリムシやゾウムシなどは顕著で、幼虫がやわらかく美味しい分、成虫の食べにくさ
が一層残念に感じられていました。
魚の骨せんべいが一番近い感覚でしょうか。
高温でしっかり揚げるとパリパリとたべられるのですが、
内部の柔らかい組織もスカスカになってしまい、どれもこれも
エビの唐揚げのに似た同じような味になってしまいます。
カミキリムシはその幼虫の味から
カタイ殻の内部には美味しい味があるはずです。
取り出してもよいのですが、手間を考えると、そのまま食べたいものです。
そこで
二度揚げの効果を実験。
二度揚げとは
一度低温で揚げて寝かせ、再度高温で短時間揚げることで
中はジューシー外はパリっと仕上げるワザです。
そうです。私はこんな昆虫が食べたかった。

そこで、冷凍庫に残っていたいただきものの
ゴマダラカミキリAnoplophora malasiacaを使って、比べてみました。
これは茹でただけではとても固く、とくに首の付根、前胸背板にあるトゲが
口に残り大変たべにくいものの
味の良さもあるので外皮の攻略には大きな意味があります。

向かって左から
A,150℃ 2分 24時間寝かせ 190℃ 1分 (二度揚げ)
B,150℃2分             (低温揚げ)
C,            190℃ 1分  (高温揚げ)
D, 150℃2分 24時間寝かせ      (低温寝かせ)
食べ比べてみましょう。
A,ザクザクと噛みごたえがよく、小気味よくバラバラになっていく、香りがやや飛んでいるので加熱時間をもっと短くして良いかと。甘みも残っており、一番美味しい。
B,揚げたての香りがよい。クチクラが少しもさっとし、硬さはわりと軽減されるが触角に硬さが残る。
C,香りが飛んでしまって少し焦げた味になってしまう。クチクラは思いの外残っており触角がクチに残る。
D,香ばしい。炒りダイズのようないい香りがあるがクチクラが弾力があり固く、口に残る。
ダントツで二度揚げが美味しいです。
一番のネックであったクチクラもザクザクと多孔質な感じ。
高温揚げでは香りが飛び、低温揚げでは外皮がまだ固かったので、
二度揚げの効果は抜群かと思います
ということで、
他の甲虫類もやってみましょう。
選手入場
サクラコガネ?かツヤコガネあたりのコガネムシ

コガネムシはただ揚げただけでも美味しいことが知られています。
今回はメタリックなカラフル感を演出してもらおうと二度揚げに参加。

ヤマトタマムシ Chrysochroa fulgidissima 
超有名な日本の昆虫。金属光沢が美しく、彩りとして参加。
カミキリムシと幼虫の食性が同じなので、味も期待。

コクワガタ Dorcus rectus


日本の代表的なクワガタ。オオクワガタの小型版のような名前だが
すっと伸びたアゴ、平べったい体は小ぶりながら味わい深い。
二度揚げによりアゴまでパリパリ食べられるか。

ミヤマカミキリ Massicus raddei

大型のカミキリムシ。身が詰まっているので、
ゴマダラカミキリよりもジューシーに食べられることを期待。


ノコギリクワガタ 言わずと知れた代表的クワガタ。
自慢の大アゴを二度揚げが攻略できるか。コクワガタとともに期待。

これら山の幸を調理するにあたって、どんな料理にしようか考えていた所、
やはりパエリアではないかと。
パエリアはスペインの伝統的な料理で、
魚介類を使った海のパエリアが特に有名ですが、
バレンシア地方ではウサギ肉、鶏肉、カタツムリ、インゲンマメ、パプリカなどの
山の幸パエリアもあるそうで、
山の幸と海の幸を混ぜるのは邪道、とのことです。
それでは山の幸、昆虫をつかった王道の森のパエリアを作ってみましょう。
まずベースとなるパエリアを作ります。
オナガミズアオとエリサンが蛹化していたのでダシに使いました。
スライスしたサナギがオリーブのようですね。

次に、二度揚げした昆虫をトッピングし、チーズを掛けて
軽く焼きます。
完成。
日本の森の虫のパエリア

揚げてもそのみずみずしい金属光沢を失わないタマムシ、コガネムシが
森らしい彩りを与えてくれます。
パエリアのダシとなったサナギとの相性もよく、
二度揚げ昆虫といっしょに美味しくいただきました。
二度揚げ昆虫
味の感想
コガネムシ 二度揚げするとホワっとさくっとしてしまった。柔らかすぎて歯ごたえがないので
具材として使うには二度揚げの必要はないかもしれない
タマムシ  揚げても構造色が消えないのが美しい。香りがよく、
カミキリムシよりクチクラが比較的やわらかい。木の香りがそこそこ残っており味が良い。
コクワガタ 二度揚げするとようやく食える。ザクザクとして香ばしい。
味はやはりカミキリムシの方が上か。すこし土のようなコガネムシ臭。
ミヤマカミキリ 胸部・頭部にやや硬さは残るものの腹部はうまみがあり美味しく食べられる。
大きいほど揚げた時に独特の味が残るので好ましい。
ノコギリクワガタ 固い。ツノがとても固く、二度揚げしてもまだ足りない。
しかし固いクチクラに囲まれた内部はうまみと香りが残っており、
固い部分以外は美味しく食べられる。
二度揚げにしても、体サイズや外皮の強度によって調節する必要がありそうです。
この中ではタマムシ、ミヤマカミキリが特に美味しく頂けました。
タマムシの外皮はキチン質・タンパク質しか含まないのにメタリック、
という食用としての安全性とデザイン性を兼ね備えた素晴らしい素材です。
そのうち「メタリック食材」として一世を風靡するかもしれません。
それまでに養殖技術が確率していればいいのですが…
とはいえ、王道、森のパエリア。とても昆虫向けの料理だと思います。
梅雨も開けましたし、
夏にかけて虫があつまる時期です。ぜひ(自己責任で)試してみて下さい

1

美しく大きいヤママユガ科幼虫であるオナガミズアオの二回目。
前回終齢幼虫を味見したのですが、
今回は繭を作る寸前の前蛹を味見しました。

繭を作る際には体のグリーンがなくなり、茶色っぽくなります。(写真右)
ところが、
繭を作るとグリーンに戻っているのです。

繭の糸の色はこの種の場合茶色ですので
繭用の色素が体表に出てしまい、このような変色が起こったのでしょう。
繭作成前の前蛹
ジグザグの硬い構造・絹糸腺がつよく発達しており、かみ切れない。
繭を作ってから食べたほうが良さそう。味は栗とコーンの間のような味。ハンノキの香りは残っていない。茹でるとピンク色になって美味しそう。トゲは余り気にならない。アクセントとして逆に良いかもと思い始めた。
繭作成後の前蛹
小さくなってしまうものの、絹糸腺が退化し口に残らない。色もうすいグリーンからオレンジで
キレイ。
ヤママユガ科は絹糸腺がつよく発達することが知られており、
繭糸の吐出前に茹でてしまうと線維化してしまい、口に残ってしまいます。
終齢幼虫の時にも絹糸腺は見られるのですが、繊維状のタンパク質はなく、ゆでてもプリプリのままです。
ということで
ヤママユガ科の食べごろは「前蛹(繭形成後)」
といえるでしょう。
繭も利用可能になればとても有効な資源利用につながりそうです。
さて。
オナガミズアオのトゲの食感が何かに似ていると思ったんです。
むむ。なにか食べたことがあるなと。
これでした。

そうです。ウナギの小骨です。
今回はウナギ風に蒲焼にして食べてみました。
皮面は強火で一気にカリカリに(長くじっくり焼くと硬くなります。)
背開きにしてタレで頂く。大変美味しい精のつく食材といえそうです。
これからの昆虫食の可能性の一つとして、代用食が挙げられます。
パスタで有名な日清製粉・オーマイも、
米の代用品である粒状パスタの製造を始めたことからスタートしました。
オナガミズアオもハンノキという木本のバイオマスを
ヒトの食糧に適した形に変えるので、
環境負荷の高い、例えば魚粉を使った養殖肉食魚の代用になれば
それだけで多くの漁業資源が守られることでしょう。

最も守るべき食糧資源としてウナギが注目されています。
稚魚を漁獲せねばならず、養殖に1年以上かかり
魚粉も大量に使用し、廃棄物も多く出す。
稚魚(シラスウナギ)の漁獲を見れば一目瞭然。
1960年台には200トンあったのに今年は5トン。
もはや食べている場合ではありません。
味だけでいうと、ハチノコが最も近いでしょう。
味香り戦略研究所
の協力のもと、味覚センサーでハチノコのボイルとウナギの白焼きを
比較した所、見事に一致したのです(内山昭一 著 昆虫食入門より)
ところが、ハチノコはウナギと同様に
巣や女王蜂をとってきて半養殖するしかありません。
最高級とされるクロスズメバチは近年数が減っており
ウナギの代用品として使ってしまうと同様の悲劇が起こる可能性があります。
そこで、
養殖技術が確立していて成長が速く、植食性のオナガミズアオに
代用ができないか、と思い作ってみました。
食べてみると非常に美味しく、脂質の旨味がウナギを彷彿とさせます。
ウナギ保護の第一歩として、養殖昆虫による代用メニューを考えるのはいかがでしょうか。
幸いなことに、
ウナギの消費量がピークを迎える土用の丑の日は夏です。
加温しなくてもすくすくと昆虫が育つ絶好の昆虫食シーズン。
ぜひ(コマユバチに注意して)チャレンジしてみて下さい。