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「生食できる」とはスリルを伴う甘美な響きがあるようです。
しいたけの一種に「生食できる」と称したり
牛の生肝臓がダメなら豚を、とか
ジビエの鹿肉や猪は生食できる、なぜなら今まで大丈夫だったから、と称する中高年の狩猟者がいたりしますね。
生食できる食品を提供できる、というのは何だかすごそうだし、
それを身をもって体現している人はなんだか詳しそうに見えます。
一般的に生で食べられない、と
言われているものなら尚更です。
特に日本に生食の誘惑が強いように見えるのは、
魚介類の生食があるせいでしょう。


とんねるずが昔結成した
「野猿」というグループがありました。
鮒は生じゃ食えないはずさ
泥臭い 生臭い fish! fish! fish!
鯉は洗いで食えるくせに
甘露煮 鮒ずし だけなのね
https://www.youtube.com/watch?v=rEbVsKdwakU
「おいしいかどうか」よりも
「生で食えるかどうか」という魅力があるようです。
そして、それは付加価値として経済性をもちます。


欧米でもRAW FOODというブームが起こりました。
恐らくスシブームもその派生でしょう。
生のほうが酵素が生きたまま取り入れられるとか
消化に良いとかなんだとか、あることないこと言いながら営業をしています。
もちろん
生のほうが得やすい栄養もあります。
熱により変性しやすいビタミンなどがその一例です。
ですが
酵素の場合、胃酸で変性・消化され、アミノ酸として利用されるので
生で酵素を食べることの栄養的な利益は全くありません。
どの食品でも確かに言えることは、生で食べることは
食品の危険性(ハザード)は十分に高くなります。
例・サルモネラ菌が付着したキュウリのピクルスで死亡者3人
生で食べるべきかどうか、は
ハザードとベネフィットを天秤にかける状態。
つまり生で食べないと生命の危険のある状態に
考慮されるべきことで
日頃から
普通の食材を食べて栄養の良い状態で生きている人にとって
たとえ緊急的に食品が不足するような事態に陥ったとしても
生で食って改善される状況はまずありません。
緊急時はむしろ、医療不足のほうが致命的ですので
日本に生活しているヒトが
食品ハザードと栄養を天秤にかけ、
ハザードを選ぶことはまずないでしょう。
つまり、
日本において生食ができる、と安易にいうヒトは
疫学や食品衛生の知識がないのか、
営業を目的に意図的に無視していると考えられます。
無知ならば、あるいは営業ならば仕方ありません
とはなりません。
不良な食品は多くの人の生命を不特定に脅かしますので
社会的な影響が大きく、感染性ならば公衆衛生の敵です。
また、
それが簡単に予防できるにもかかわらず、
食品提供者の怠慢や短絡的な利益のために見逃していたりすると
食品という社会インフラの根幹に関わる問題ですので、行政が介入します。
つまり、
食品は特にハザードとして重要度が高いのです。
昆虫食がこれから安全に普及していくべき、と
考えている私としては
見逃すわけには参りません。
以前にペットの生き餌用昆虫の生食について警鐘しましたが
もちろん野外の昆虫にも、
ヒトに感染可能な寄生虫や感染症は数多く見つかっています。
私信で、論文報告は行われていませんが、
野外の昆虫を生で食べることによって、
本来野生の哺乳類に感染する寄生虫がヒトに感染したと思われる事例の情報も得ています。

なので、
この警告は
「野外の昆虫はペットの生き餌昆虫に比べて感染性微生物が少ないので生で食べられる」
ということでは全くありません。
意図的に読み替えて野外の昆虫を生食をしている、自称専門家がいるようなので
くどく繰り返します。
私は自称専門家として、警鐘に努めてまいりたいと考えています。
もちろん私刑のような野蛮な方法ではなく、言論で。
言論には自由が保証され、基本的に強制力がないので、弱いです。
もしこれをお読みの皆さんの中に、
これから昆虫を食べようとしている方がいましたら
整合性のある言動をする自称専門家を選んで、
(公的な専門家を養成できていないのは不徳のいたすところですが)
信頼できるかどうか判断されることをおすすめします。


とはいえ、
オレ、生の味知ってるぜ。
度胸と覚悟のない素人は真似するんじゃないぜ
って言うことは

ちょっとスリリングでカッコよくもありますよね

私は2013年から、
同定した昆虫を十分に茹でてから味見をして、
種間比較をしてきましたが、
茹でることにより見逃すことになった
おいしい生食用昆虫がいる可能性を考えると
気が来でなりません。
また、
日本には馬刺し、鶏卵や水産物、養殖サーモン、養殖カキなど
生で食べられる動物性食品はたくさんあります。
つまり、きちんと管理すれば生食できる動物はいるのです。
批判してばかりでは
ユーモアが不足しますし、より建設的な議論へと持っていくために
おいしい生食昆虫がいた場合、それを見つける戦術と、
おいしい生食昆虫が普及した将来について、考えてみましょう。
武器は度胸や覚悟などではなく
サイエンスとテクノロジーです。

中編に続きます。

5

それでは後編に参りましょう。
「サクサクジュワ~なグラタランチュラの調理法とは」



その前に、昨日の前編の公開後
「2年も飼育して愛着は湧かなかったのか」との質問を頂きました
そういえば書いていませんでした。追記しましょう。
このブログは学術ブログではないので、
「私の主観をきちんと入れる」ということを
大事にしています。
味の表現はまさに主観であり、
それが共感を呼ぶことで大きな力を発揮します。
また、その主観的な表現が、
「社会の普遍的な価値=客観的にも価値が見いだされるものか」
きちんと判断するためにも、
億劫にならずに公開することに意味があると思っています。
(私見や主観を述べる研究者が少ないのは、
それが曲解されて拡散し、批判を招くことかとおもいます。
ここに主観の「原著」を公開しておくことで、二次媒体による曲解を防ぐことが出来るのでは、とも思っていますが、どうでしょうか。)


お答えします。
愛着は湧きました。
彼らは
2012年3月19日に頂いたのですが
当初よりタランチュラを飼うにあたって
「家畜として扱う」という作法を使いました。
つまり「名前を付けない」ということです。
大型哺乳類の家畜の場合、
個体識別番号はつけるものの、個別に命名することはない、とのことです。
(畜産家によって個人差はあるようですが)
「タラ美」「タラ子」「チータラ」「タラオ」とか、
大変にかわいらしく美味しそうでいい名前だと思うのですが
今回はナシにしました。
コレまで三度、食べたのですが、
飼育期間が長いほど、そしてその個体の「アイデンティティ」を
理解するほど、殺すことに気が引けます。
今回の記事は、
研究所の一般公開でも共にした個体であることが
分かってしまっているので余計です。
少なくとも、いつもの採集昆虫にやっているような
「沸き立つ熱湯に入れる」
とか
「牙をもぎ取る」ようなことはできませんでした。
冷凍庫で冷凍し、
毛を剃る際も、できるだけ傷つけないよう気を使いました。
以前にもいいましたが「死化粧」のような神妙な雰囲気です。
また、料理に際して「失敗してはならない」という
強烈なプレッシャーを感じます。
焦がさないようこまめにオーブンを確認し、
使うパイ生地は事前に焼いてみて、その焼け具合を確認したり
「失敗したら廃棄」とはいえない、妙な緊張感がありました。
これはニワトリを調理した時にも感じたストレスです。
これから開放されて、「好き放題楽しく自由に」やれたほうが
気がラクだと思いますが、
その自由は娯楽的であり非生産的なので、
こういったストレスを
積極的に味わうと、見識が広がる気がします。
料理に、在りし日の姿を残す意味も感じました。
すり潰して見えなくさせることで
アイデンティティを喪失させ、
この「アイデンティティのある生物を殺した」というストレスを軽減することが
なんだか申し訳ないように感じたのです。
「おじいちゃんが共同墓地に埋葬された」ような、
墓参りに身が入らなくなるような、肩の力が抜けながらちょっとさみしい気分でした。


さて、調理に参りましょう。
「サクサクジュワ~なグラタランチュラの調理法とは」
答えは「パイ生地」にありました。
バターとパン生地を積層することで、
焼いた時、もっちりふわふわにならず、サクサクとした食感となる
奇跡のワザ、使わせていただきます。
最近は冷凍パイシートなるものがあるのですね。ありがたいです。

予め作っておいたマカロニグラタンを
ポットに入れ、パイシートになじませたタランチュラをのせ、
卵黄を塗り、チーズを振って、

200℃のオーブンで
様子を見ながらカリッとなるまで焼きます。
完成

味見
パイ生地に埋まったタランチュラは香ばしく焼き上がっており、毛も気にならずややしっとりパリっとな感じ。甲殻類系味があり、風味もよいが、エビ・カニに比べて塩分が少ないのをきちんと考慮していなかった。下味に塩水にくぐらせておくべきだった。胸部腹部の味は更に濃厚。アミノ酸の旨味と分解系の磯っぽい香りがホワイトソースとよく合う。パイ生地に載せることでパリパリ感を損なうこと無くグラタンとマッチングできた。
これは他の昆虫にも応用できる新しい調理法かと思います。
パイ生地にパリっとさせたい具を入れ、
ポットにしっとりスープを入れる。この
「昆虫ポットパイ方式」
今後共チャレンジしたいところです。


さて、
カンボジアのタランチュラの写真は、食用昆虫科学研究会の
吉田誠さんが撮ってきてくれたものです。
その中で、昆虫食の未来を暗示するような
とてもいい写真がありましたので紹介します。
この写真。
撮影 吉田誠
いいですね。
これは巣穴を掘って生活するカンボジアのタランチュラの一種。
採集者は素手で手を突っ込み、タランチュラを掴むと
さっと牙を取って共食いと事故を防ぎます。
この手元、明らかに女性です
昆虫やクモ類は最大サイズが数十センチと、
いくら大きくても女性の力を上回ることがありません。
そのため、この先の途上国の貧困解消には
体力が必要でキケンな木材切り出しのような
「オトコ仕事」ではなく
老若男女、だれでも就業可能
昆虫養殖業が
より
広がっていくべき、と考えられます。
そして、日々の仕事の中で「マニキュアを塗れる」ような
精神的に豊かな生業へと発展させていきたいところです。
そんな
「非木材林産物 Non Wood Forest Products」
の一つとして、昆虫の養殖、半養殖が重要になってくるのではないでしょうか。


ここで論文を紹介しましょう。
Markets Drive the Specialization Strategies of Forest Peoples
61の非木材林産物の調査論文を解析し、
概説したものです。
その中で3タイプに分けられています。 以下引用です。


1.農民が非木材林産物を農作物のように管理するタイプ。
農民は、商品製産樹種を農園のように栽培 するか、 森林のなかでも集約的に管理します。 農家はその樹木の栽培に専念し、家計収入の大半がその生産物によるものとなっています。 多くの場合、土地使用権と市場へのアクセスが安定していて、生活も裕福です。資源を激減 させることもありません。人々と資源利用という点ではうまく行っています。しかし、 最貧困層の人々や手つかずの森林にあてはまることはまれなのです。アジアの事例の多くは このタイプに当てはまります。
2,貧しい農民が天然林から非木材林産物を採集しているタイプ。
森林資源の管理はほとんどなされません。人々は、何とか暮らしていくために様々な 森林産物に依存していて、過剰な採集をしてしまうことがよくあります。林産物は人々の生活の頼み の綱なのですが、将来の見通しは良くありません。このタイプはアフリカに特徴的です。
3.林産物は農家の収入のわずかな部分を占めるにすぎないものの、収入源を多様化させているタイプ。
これは、農家の収入の豊かさの点でも資源管理の集約性の点でも上の1と2の中間にあたります。


そして、この論文ではこう結論しています。
「援助機関や自然保護主義者が期待したほどに、非木材林産物を販売するだけで、森林が守られ人々の生活が改善されることは、ほとんど無いので す。」
これは残念なことですが、当然です。
林産物は、「林を保ったまま」バイオマスを利用するので、
単一の作物を作る畑に比べ、目的のバイオマスにたどり着くまで、多くのコストがかかります。
日本では「巨大なバイオマスを一発で仕留める」猟師ぐらいしか
生計を建てられないことを考えると、
人件費の低い地域、つまり貧困地域でしか
森林からの採集物を使って効果的な収入にはならないのです。
逆にいうと、
裕福になっては、人件費が上がってしまい、持続できないのです
そこで、単一のバイオマスに効率よくアクセスできる
「開墾とプランテーション化」の誘惑がまた、やってきてしまいます。
そこでやはり提案したいのが、
「昆虫を使役する」という発想です
以前の記事で。
「養蟻」=化学物質を使って蟻を使役する家畜化の可能性を示しました。
蟻は森林を縦横無尽に歩き、
新鮮で栄養豊富なタンパク質を集めてきます。
ヒトは巣を用意し、化学物質で彼らの触角をダマシ、
外敵から守ることで「新たな共生関係」を築くのです。
そうすると、
きちんとした技術の確立により、人件費が高くなる=裕福になっても
非木材林産物をアリを経由して持続利用出来ると考えています。
この
「使役」というアイデアは、
先進国でも養蜂が維持できていることを考えると
技術と品種改良次第でかなりの人件費高騰まで対応できるものと考えられます。
今回のアイデアの発端は、
山形大学・菊間満先生よりアドバイスを頂きながら、勉強させていただきました。
ここにお礼申し上げます。


さて
タランチュラに話を戻しましょう。
実は、もう養殖が始まっています。
それは、少し残念ですがカンボジアではなく
チリの農家で、ペット向けに養殖されているのです。
彼らは近くに別の個体がいると、攻撃して共食いしてしまうので、
1頭1頭分けておかなくてはいけません。
ただ小さいケースで構いません。
元々待ち伏せ型の狩猟方法をとるので、
運動スペースはほとんど不要と考えられています。
体の二倍ぐらいの床面積があればよさそうです。
人でいうと「三畳風呂なし」ぐらいでしょうか。
チリでは、
ミールワームやゴキブリを養殖し、それをエサとして
タランチュラを飼育、送料込みで、25ドルでアメリカに出荷しているとのこと。
これを、
タイのコオロギ養殖とつなげれば
容易に東南アジアでも養殖が出来ると考えられます。
ただ、出荷に時間がかかるので、
大量のタランチュラを「成熟」させるための大きなスペースが必要です。
そういった意味で、やや手工業のような雰囲気、
チーズ熟成所のような規模で、食用タランチュラの養殖
始まることを期待します。
やってみたいです。
興味のある方、私をカンボジアに連れてってください。

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久々の長編になります。
今回は昆虫ではないものの「昆虫食性の食用資源」
としてこの先注目していきたい
「タランチュラ」の話をまとめましょう。

ウィキペディアによると
「タランチュラ」は俗称で、
元はヨーロッパの伝説の毒グモの名前だそうです。
噛まれると「タランティズム」という病を発症し、
タランテラという踊りを踊ると治るとか。覚えておきましょう。
タランテラ

踊りましょう。
その伝承から、
ヨーロッパ人が新大陸で見た大きなクモをタランチュラと呼ぶようになり
次第にオオツチグモ科をざっくりと示す名称になったとのこと。
低緯度地域に広く分布しており、形はよく似ていますが
地上性から半地中性、乾燥地域から高湿度まで
地域に合わせて様々な生態の分化が見られます。
食用としては、特にカンボジアでよく食べられており、
炭火で毛を焼き落とし、カニのように山盛りに売られています。

写真 吉田誠
味もカニに似ており
大変美味で、多くの昆虫食未経験の人にも親しみやすい味です。
カンボジアでは穴に潜むタランチュラを素手で掴み、捕獲しています。
2013年のFAO報告書には「少なくなっているというインタビューもある」とのことですが
現地におけるタランチュラの捕獲量、現存量については調査されていません。
この先、
人口が増えた結果、もしくは昆虫食が人気になった結果、
美味しいタランチュラが乱獲されてしまいかねません。
肉食で、数年かかる性成熟までの期間を考えると、一度乱獲されてしまうと
その回復は困難になるでしょう。
当然「養殖化」が望まれますが、どのように進めるべきでしょうか。
そのことについても考えていきましょう。


私が初めて見たタランチュラは
映画「ホーム・アローン」でした。

クリスマスのバカンスに向かう大家族。
そこで取り残されてしまった末っ子、ケビン少年は
バカンスで留守の家を狙う泥棒二人組に
独自の方法で応戦する。
その中でキーとなるタランチュラ。
ケビンの長兄、ジャイアン風の少年が
飼育しているのですが、
強そうで毒がありそうでキケンな風貌。
劇中ではケビン少年がそっと掴み、うまく利用します。
ココで思うのは
「そんなにキケンな虫を映画に使って大丈夫?」ということ。
はい。大丈夫です。
タランチュラの仲間は強い毒を持ちません。
獲物を捉えるときに消化液を出しますが、
人が噛まれても大事にはなりませんし
第一ほとんど噛みません。手乗りもOKです。
移入して問題になっている
セアカゴケグモなどの神経毒アリのクモと比べると
はるかに安全です。
逆に言うと
「映画で使われる生物は安全なものが多い」といえるでしょう。
カラス研究者の方が
「ヒッチコックの映画・鳥によって大量のカラスに対する嫌悪感を植え付けてしまった」
とつぶやいておられましたが
映画ではそのビジュアルの強さのわりに、安全なものが喜ばれます。
ですが、その安全性が好まれて映画に使われ続けてしまうと、
その虫がキケンなもの、との印象を強くしてしまうのです。
タランチュラに対する嫌悪感は
「映像制作者が植えつけたもの」と言っても
過言ではないのかもしれません。
話は少し逸れますが、
瀬戸口明久 著 「害虫の誕生」

によると
日本では1960年代
ペストやチフスを防止する、といった公衆衛生の概念を
一般に知らせるために「ハエ取りデー」というキャンペーンを行ったそうです。
これは一日にとれたハエの数を競争し、一番多かったヒトに商品を与えるというもの。
専門家からはその効果を疑問視する声もあったのですが
(蔓延地域でないのにハエを捕獲することに意味はあるか。
  発生地ではなく成虫を集めても効果は低いのでは 等)
その結果、
チフスではなく、ハエにだけ嫌悪感を持つ人が増えたのは
言うまでもありません。
また、
「幼少期、虫を背中に入れられて以来虫が嫌い」という人もいます。
この時、本人と虫は被害者で、加害者は入れたヒトです。
このことから、
「嫌悪感」の責任を負うのは加害者ではなく、近くにいる「弱者」であることが類推できます。
(人間社会においても、そのひずみによるストレスは、しばしば加害者ではなく弱者に向けられますね)
物言わぬ。
そして動物倫理を顧みられない彼らに
責任を追わせ過ぎではないでしょうか。
話を戻します。
タランチュラは、ペットとしても人気で
恐らく欧米では「嫌悪の対象を愛でる」という
ロック・マッチョ的な嗜好もあるとは思いますが
日本では単純に愛でてしまう方も多いようです。
手のひらをそっと歩くジェントルマン。
赤い密林に玉の水が跳ねる様子。美しい…

こちらを見てさっと捕食するハンターとしての才能。
いやぁ。 いいもんですね。
抜け殻もこんなに美しい。(スキャナ写真を加工)

さて、この
チリアンコモンとかローズヘアー等と言われる南米産のタランチュラ
Grammostola rosea
国内でブリードしている方から、
「食用に」ということで
生まれたてのベビーを譲っていただいたものです。
それから2年、
バッタを与えて、研究室の片隅ですくすくと育ち、
研究所の一般公開ではバッタとともにアイドルとなり、
とうとうこの日を迎えました。
感慨深いですね。
味見です。
といっても揚げて何度か食べたことがあるので、
今回は新しい料理法への挑戦でもあります。
以前の記事で、「毛を剃る」ことで毛虫の食感の悪さを克服しました。
今回も、
冷凍したあと、毛を剃ることで食感を向上しようと思います。
剃る前

剃ったあと。

表面に見える毛は二重になっていることがわかります。
赤い毛の一本一本が見えるものと、
みっしりと密生していてビロードのような感触の焦げ茶の毛です。
綺麗に剥かれた腹部は巨峰のよう。おいしさが詰まっています。
今回は「グラタン」にしようと思いました。
シーフードグラタン、ならぬフォレストフードグラタン、になります。
ところが、
今回はレシピの考案がなかなか大変です。
タランチュラの表皮をサクサクと仕上げたい所ですが、
グラタンのソースがかかったところは、しっとりしてしまいます。
うまく分離して焼き、かつ食べるときにサクサクジュワ~っと合流するような
そんな料理はないか、考えました。
次回に続きます。

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最後に
全てを盛りつけ
まとめてみましょう

お節足料理(おせつたしりょうり)
お品書き
エリサンの大陸海老
殿様飛蝗の紅白蒲鉾
ちょろぎ風エリサン蛹のなます
黒豆風毛深赤茶黄金の甘煮
鳶色雀の休眠雑煮
モパ煮付け
栗虫金団
小翅蝗と殿様飛蝗の田作り
殿様飛蝗と蟷螂の数の子


今回は昆虫が少ない冬に
ストックの冷凍昆虫を使って、限られた中、料理をしました。
本来のおせち料理もこんなものだったのだと思います。
寒く、
食料が不足しがちな冬に
新年を越すことが出来た喜びを
できるだけ美味しく
栄養が豊富で彩り良く
豊かな食事で迎えたい、
みんなが食卓に座って分かち合いたい。
そんな思いを感じました。
今回のおせちは
あくまで「ちょい足し」ですので
素材から作る手間はもっと大変だったと思います。
そのうち
全ての「おせつ料理」を
素材から作れたら、と思います。
このように、
郷土料理をなぞること
その料理に含まれている意義や知見
汲み取れたら
昆虫料理開発としては成功だと思います。
料理をすりつぶして機械にかけて、
栄養がああだこうだと解析できるのは、
文化のごくごく一部であることを
肝に銘じなければなりませんね。
今回の収穫は「保存」と「休眠」でしょうか。
ということで長いシリーズになりましたが
これにて「おせつ料理」シリーズは終わりです。
ごちそうさまでした。
喪中につきあけおめとは申しませんが
今年もよろしくお願い致します。
むしくろとわ

前回は
モパニワームの乾物を使い
傷みやすい昆虫の「保存」について考えました。
昆虫は死ぬと短期間で傷んでしまうので
食材としてきちんとした保存方法の確立が必要です。
塩漬け(タガメ)
水煮缶詰(アリの子)
佃煮(イナゴ)
乾燥(モパニワーム)
いずれも他の食材と同様に用いられてきた保存方法です。
更に
昆虫には未開拓の保存方法があります。
それは「休眠」です。
といってもヒトは休眠しないので
ピンとくるのは休眠の一種、「冬眠」でしょうか。
クマやヤマネは冬になると体温を下げ、代謝を抑制し
エネルギーを節約する「休眠状態」になります。
哺乳類の場合、寒さがきっかけとなりますが
他の生物はそうとも限りません。
トノサマバッタのメスは、
日の長さ・日長に応じて
休眠卵と非休眠卵を産み分けます。
本州のトノサマバッタは年2回発生します。
春先に孵化した幼虫は、6月後半に非休眠卵を産み
その後すぐに第二世代が孵化します。
一方で、
秋にさしかかり、日長が短くなってくると
それを察知して、冬眠用の「休眠卵」を作ります。
この休眠卵、室温に放置しても全く孵化しません。
ゆっくり温度を下げ、およそ一ヶ月4℃の低温にさらすと
休眠状態が解除されます。
その後室温に戻すときっかり10日後に孵化するのです。
また、4℃のまま保存すると、
半年から一年は80%以上の確率で孵化します。
卵だけでなく、
幼虫やサナギ、成体も休眠状態になるのが昆虫のスゴイところです。
以前紹介したエビガラスズメ
日長をきっかけにサナギで休眠するので、
15℃の部屋で半年以上保存できます。
幸いなことにサナギのエビガラスズメは大変おいしく、
「食べごろ」が保存できる点で、他の生物より
昆虫の休眠の食品保存への利用価値は高いと思われます。
鱗翅目は前蛹がおいしいので、
「前蛹で休眠」する都合の良い鱗翅目がいればいいな
と思っていた所、
以前に紹介した激ウマのトビイロスズメがなんと、
前蛹越冬するとのこと。
越冬させてみました。

写真上、家庭用冷蔵庫で 10月中旬から3ヶ月保存したもの。
冷凍焼けして茶色くなってしまったトビイロスズメです。
写真下、同じ期間を湿度を管理して常温保存した前蛹
だいぶシナシナですが、「生きています」
触るとピクピク動きます。
これを雑煮に仕上げました。

味見
冷凍トビイロスズメ
冷凍によって劣化しているかとおもったが、多少脂質のニオイがするが味は相変わらずよい。
上手に作った卯の花と同じぐらいの旨味とコク
休眠トビイロスズメ
外皮がかためになっているが相変わらずうまい!大豆の香りと濃厚な旨味。
歯切れがよく口に残らない外皮も美味しくいただける。
冷凍保存の電力エネルギーを考えるとこの美味しさは見事。
食品保存の新たな地平、「休眠」
昆虫を使って切り拓いてみたいと思います。
冷凍冷蔵技術が未発達な地域における
食品廃棄、及び
遠隔地への食料調達労働の頻度を
減らせるのでは、と考えています。
市場への食品の買い出しを行う
児童や女性の労働時間を減らし、教育へと向けることができれば
昆虫食がそれこそ「世界を救う」事になるかもしれません。

1

お節料理は基本的に
「保存食」をベースに作られます。
煮しめは根菜類と干ししいたけ、
こんにゃくを強めの味付けで煮て
お節料理としたものです。
この
干ししいたけ。
通常とても傷みやすいキノコを、常温で保存しやすくするために、干したものです。
干してからまた水で戻すことで旨味や風味が増し、独特のいい味を出します。
同様に、
傷みやすいナマコやアワビも
中国では干しナマコ、干しアワビとして流通し
それらの製造や調理には技術がいるので、生より高価なのだそうです。
さて、
昆虫食界の干ししいたけといえば。
モパニワームですね。
アフリカ原産のヤママユガ科の大型のイモムシで
「モパニ」という樹の葉を食べることで有名です。
市場流通しているのがよく見られ、
けっこう高値で取引されているとのこと。
アフリカに行った複数の方からおみやげで多く頂きました。
アフリカは冷蔵冷凍流通が整備されていないので、
モパニワームは内臓を絞り出した後、天日に干され、干しシイタケ状態で
流通します。こんな感じ。

乾眠するクマムシのようですね。
これを水に戻すと生き返る、と嬉しいのですが、残念ながら
乾眠する昆虫はネムリユスリカしか見つかっていません。
ですが、生き返らないにしろ
段々と元のイモムシの形に戻ってきます。
現地ではトマトなどと一緒に煮物にされているそうです。
何回か乾燥したまま食べたのですが、
魚介類の乾物のような旨味とボソボソとした食感
スナックというよりやはり
「乾物:食品原料」という印象がつよいですね。
今回は干ししいたけにならって、
水で戻し、あごだしをベースにした魚介ダシを使って
モパニワームを煮しめにしてみました
「モパ煮しめ」
御覧ください。

まんまイモムシですね。(笑)
おせつ料理を作っていて気づいたのですが
「和食は食材そのままの姿が残っていることが多い」ですね。
洋食に比べ、食材の姿を見る、食の楽しみがあるのかもしれません。
味見
かなり美味い。魚介系のダシとの相性もよく、
外皮のクチクラ部分がプチプチとアクセントになり面白い。
食感は干しプルーンのようなしっかりした噛みごたえ。木の香りがして味はやさしく、
高野豆腐のように噛むとジュワッとダシ汁が口に広がる。
もしかしたら干して戻す過程で旨味が増えているのではないか。
そのうち 生モパニワームとくらべて食べてみたい。
見た目はアレですが。
モパニワームに保存昆虫食の未来を見たような気がします。
また、モパニワームに関しては「産地」によるブランド化が
起きているとのことです。
ルワンダの貴重な輸出品なんだとか。
そもそもが
傷みやすいものですから
人力で採集し、ゴミを取り除き、内臓を抜いて乾燥させ、市場に卸した時に
「戻した時に美味しくなるよう」ノウハウがあるに違いありません。
日差しの強い乾燥帯ならではの加工だと思います。
(日本ではヘタすると腐ってしまうでしょう。)
かなり美味しく、そして保存も容易なので、アフリカに行かれた方、
おみやげにぜひ買ってきてください。
次はラスト、「トビイロスズメの休眠雑煮」
です。

「子沢山を願って」
ニシンの子に味付けをし、数の子とするそうですが
子の数だと昆虫も負けてはいません。
ニシンの性成熟は4年、産卵数は年齢とともに増加し
ざっと「年齢×万粒」ぐらいだそうです。
成熟4年、4万粒だとすると
養殖トノサマバッタは一ヶ月半で性成熟し、
その後およそ1卵塊100個の卵を5卵塊・二週間で生むと単純化すると
4年で1万2千粒。いい勝負です。


ここで生態学の基本的な教科書
「生態学キーノート」を見てみましょう

動物の生活史のおおまかな分類
「r-K選択説」によると
動物は
「個体群成長速度を重視するr選択者」と
「競争力を重視するK選択者」に
分けることが出来ます。
昆虫は典型的なr選択者で
早熟、小さな成体サイズ、繁殖への大きなエネルギー配分、短い世代時間をもつことで
適した環境になると一気に増えて、優占します。
逆に哺乳類やヒト(霊長類)は典型的なK選択者といえます。
競争力を最大化(個体の能力を強化)するために晩熟、
大きな成体サイズ、少数の大きな子供、繁殖への少ないエネルギー配分、
長い世代期間をもつことで
様々な環境に対応できる個体を長期間かけて養います。
このように比較すると、
ヒトが一定量の動物を食べる際に
K選択者を食べると、減った個体数が回復するまでに時間がかかり、その間に大きく生態系が変化してしまうことが想像できます。(例としてニホンオオカミの絶滅が挙げられます。)
逆に、
r選択者を食べて減った個体数は
その個体群の成長速度が速いので、すぐに元のサイズまで回復するでしょう。
なので、
「r選択者」が殺され、食べられることは彼らの戦略の想定の範囲内であり、
環境さえ破壊しなければすぐ回復するものだ、といえそうです。
(あくまでモデルなので、実際には生態系の変化に応じた多様な食を見出すことが必要でしょう。)
なので
「r戦略者の繁殖する生態系を守る」ためには
昆虫採集を奨励し、社会の意識を環境の保全に
向けることのほうが効果的だと思います。
「残酷だ」と少年の昆虫採集を非難し、昆虫や生物に無関心なまま
どこにでもあるような大型商業施設の開発に喜び勇んで
遊びに行き、シネコンでカワイイ動物愛護映画に涙するようでは、
先が思いやられます。
「非商業的な昆虫採集による個体数減少は大抵、昆虫の生活史の想定の範囲内です。
採って、死ぬまで飼うもよし、殺して標本にするもよし、食べるも良し。
自然の恵みとして十分に利用し、見識を深めてください。」
と子どもたちに伝えたいものですね。


話がそれました。
「子沢山」だったら昆虫も負けないので
数の子は昆虫の卵にしてしまおう」という話でした。
ニシンは19世紀には年間100万トン水揚げしていた巨大な水産資源だったものが
近年は年3000トンぐらい。枯渇が心配されます。
(http://www.fishexp.hro.or.jp/exp/central/report/hokoku/62/P41~78.pdf)
また、
漁業者は生活がかかっているため
「枯渇の心配」程度では操業を止めません。「残り何匹」という確実な計測で
初めて止めることができますし、ニシンのように回遊し、定住しない魚は
その資源量の予測が一層困難になります。
今回のブログに合わせて数の子も買って味を比較しようとしたのですが
あまりに高いので見合わせました。
「採れない」→「値段が上がる」→「高級だ」→「富裕層が買う」→「採れば儲かる!」→「減る」
という資源量が末期のウナギ稚魚のような
悪循環が発生していると思われます。
そこで、
農作物と同様の資源管理ができる養殖昆虫で、その代替としてしましょう。
トノサマバッタの卵とカマキリ卵の醤油漬け
カマキリは野外で捕獲し、
バッタを与えて育てたメスのオオカマキリの
卵を使いました。
「パフ状の卵鞘をむいて食べる」との噂を聞いたことがあるのですが
泡状の卵鞘は強度が高く、卵がプチプチと潰れてしまうので、
ある程度ほぐしたらそのまま昆布醤油に漬け込みました。
次にトノサマバッタは
泡状の物質につつまれた卵塊を地中に産みます。
卵塊の周りは土が付いているので
ほぐして取る必要があるのですが、コレが大変。
産卵直後は強固につながっており、ほぐれません
産卵後1週間程度で吸水し、卵が一回り大きくなります。
このとき、ようやっとひと粒ずつほぐすことができるようになります。
これもほぐして醤油につけました。
完成

…見栄えは…あまり気にしないでください。
「揃ってない」というのは卵の集団の見栄えを悪くするようです。
マダガスカルGの卵はおいしいので、それを筋子状態で醤油漬けにしても良かったですね。
味見
トノサマバッタ卵
けっこう草の臭みがあり、生臭みが強くあまりおいしくない。プチッとした食感の他に、芋っぽい粒感もあり。
カマキリ卵
卵鞘の部分はかたく、かみ切れない。すぐに卵が破裂してしまったが、
まったく臭みのない味。美味しいが取り出すのが困難。難しい
ニシンの数の子に代わる卵は
マダガスカルGのほかはなかなか見つかりませんね。
そういえば蚕の卵も美味しかったですね。
引き続きおいしい卵を探索することに致します。

黒豆とチョロギは
一緒に供されることの多い縁起物だそうです。

このチョロギ、
何かに似ていないでしょうか。
当ブログを御覧頂いている皆様なら
分かるかと思いますが
「鱗翅目の蛹」にそっくりですね。

(エリサンの3齢幼虫、終齢幼虫 前蛹、 蛹、繭の一連。前蛹とサナギが美味しい。)
本家チョロギは「長老木」と当て字をするそうですが、
調べた所、由来や効果があまりはっきり書いていませんでした。
鱗翅目の蛹の方が栄養的によさそうなので、
代替してしまいましょう。
エリサンサナギ、あらため 「栄養強化チョロギ!」
とでも名付けましょうか。
食紅の色を付けた寿司酢に、
エリサンの蛹を入れ煮立てた後冷やしました。
そして黒豆には、同様にタンパク質が豊富なコガネムシで
代替してしまいましょう。
以前食べた
クロコガネマメコガネを使えば語呂としてもバツグンだったのですが
今回は
データ測定済みの「ケブカアカチャコガネ」をいただきましたので
使います。

黒豆チョロギ あらため 黄金エリサン

なんということでしょう。
激似です。
味見:
黒豆コガネ 揚げていないので若干土臭さが残ってしまった。旨味は十分でクロマメの味付けとの相性も良い。
栄養強化チョロギ
ピリッとするほどの酸味。後からエリサンの木のような香りが来てとても美味しい。酢に漬け込むことで身が引き締まり、グッと噛みごたえのある印象に。
エリサンは
酸性条件で食紅に漬け込むと
色がよく入る気がします。
「茶色で色合いが悪い」と昆虫料理に関してはよく言われるので
今後美味しそうな赤や黄色を食用色素で添加することが普通になるかもしれません。
色素との相性については今後の課題です。

次は田作り。
五万米(ごまめ)とも呼ばれ、

名の由来は
イワシを肥料として使うと五万俵の米がとれたとの逸話から
だそうですが、
「豊作を願う」であれば、
「肥料食べちゃだめでしょ。」ですね。
やはり「豊作を願って食べるもの」といえばイナゴでしょう。
日本のイナゴ食文化は稲作を背景としています。
水を張った水田により周囲の環境が湿潤に保たれると
バッタ類の中でもイナゴが優占します。
(河川敷のように乾燥するとトノサマバッタやクルマバッタが増えます)
そして晩秋も元気に活動し、またジャンプはしても飛翔はしない特徴から、
稲刈り後の田んぼでは
「イナゴだけ」が沢山採集できるのです。
デンプン源として米は優秀な食品ですが、
どうしてもタンパク質の含有量も低く、アミノ酸の一種、リジンが不足しがちです。
それを補う目的でも
イナゴは優秀な補助食品です。
ということで
「田作りはバッタで作るのが筋でしょう!」
今回は山形産イナゴを使った既成品を使いました。
成田山で市販されていたものです。

ただ、
現在は稲に農薬を散布するので
イナゴはかつての無農薬栽培のように大量に発生しません。
養殖するにしても、年一回しか発生せず、成長も遅いので
不向きです。
また、大きさが小さいので、
写真の田作りのように「ワカサギぐらいの大きさ」の
甘露煮も欲しいところです。
では、どうすればいいか
今回も「トノサマバッタ」の登場です。

トノサマバッタの南方系統は
温度を操作することで
休眠・非休眠をコントロールできるので
好きな時期に育てることができます。
また、
イナゴに比べて大きさも大きく、
成長も早いので、食用にはより適しているといえるでしょう。
更に、立派な翅があるので
野外で採集するのは一苦労です。
2012年では、
河川敷で2時間網を振り回して
採集で来たのは38匹でした。
なので、
養殖のメリットは
採集の容易なコバネイナゴよりも大きいと思われます。
では参りましょう。
レシピは福島の某おばあちゃんからの受け売りです。
1,一晩フン抜きをして下茹でし、水洗いする
このとき黄色い汁がでるのでゆでこぼすことで味がまろやかになります。

トノサマバッタの体表の茶色部分に含まれるアスタキサンチンは
このとき遊離して鮮やかな赤になります。大変おいしそうです。
2,天日で干す

魚介類の一夜干しと同様に、一旦乾かすと食感がよくなり、
味もしっかりしてきます。
そして、空気に晒すと、鮮やかな赤はくすんだ茶色になってしまいます。

3,炒る
フライパンに入れ、半乾きのバッタを焦げないようにしっかり炒ります

4,煮る
カリッと仕上げるには加熱によってカラメル化する砂糖、
内部をしっとり仕上げるには果糖ぶどう糖液糖、つまりサイダーを入れます。
(これも受け売りです)
今回は昆虫の血糖であるトレハロースを多めに使い、甘さを控えめにしています
(トレハロースの甘みは砂糖の半分です)
醤油を入れて焦げないように煮詰めます。

完成!

今回は、トノサマバッタの翅を入れると食感が悪くなると思ったので
翅を取ったものを別で用意しました。
味見
翅つき のほうが美味しい! 甘露煮のようなタレが翅としっかり絡み
味のしみたサキイカのような食べごたえ。意外だった。
ということで
トノサマバッタの佃煮、もとい甘露煮
おせちにいかがでしょうか。

次は黒豆です。

続きまして
栗きんとん
金色の団子が金銀財宝を意味しており金運を願ったもの
だそうですね。
金運を呼びこむためにはきちんと節約することが大切です。
しかし、
収穫した栗の一部は虫に食われており、虫食い栗は味が悪くなるので
そのまま捨てられてしまいます。
ところが、それを屋外に放置しておくと、丸々と太った栗虫が得られるのです。
また、「栗虫」は栗に入った虫の幼虫の総称ですので
多くはクリシギゾウムシの幼虫か、クリミガの幼虫が入っています。
今回は冬でしたので、10月中旬に脱出するクリシギゾウムシは見当たらず
主にクリミガが入っていました。
クリミガ Cydia kurokoi

顆粒状の白いフンが特徴で、
侵入痕の小さい穴があり、かつ脱出痕の大きな穴がないものがあれば
「アタリ」です。
今回はトレハロースと砂糖で煮込み
市販の栗きんとんと合わせました。

味見;
栗の香りが素晴らしい。プチッとした舌触りとシコシコした噛みごたえもよい。
ほのかな渋みは栗の渋皮のようで小気味よい。
栗きんとんの甘ったるさにとてもよいアクセントになっている。
栗きんとんを家庭でつくるマメな方は
栗虫が入った栗も捨てずに
しばらく熟成させておくと、
一味違った栗きんとんが作れることでしょう。