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オオミノガ Eumeta japonica
Eumeta variegata 2011年より学名が統一されたそうです。


以前の記事で、地域によっては絶滅が危惧されているものの、
味見をして後悔
していたのですが、
その後オオミノガ自体が移入種らしいとのこともあり
専門家同士でも保護すべきか意見が別れるらしいとお聞きしました。
保全の意思決定は専門家に任せるのはもちろんですが
私のようなアマチュアは「必要以上に採集しない」
「採集した場合は学術的価値の高い状態で保存する=ラベル付きの標本にする」
ことをきちんと自覚しておくべきだと思います。
そのためオオミノガについては、
味見以降食べる予定はありませんでした。

ところが
その後、虫cafe2014にて鱗翅目の味見について発表したところ、
ミノガの専門家、新津修平博士がお声をかけてくださいました。
「オオミノガメス成虫の味見をしてもらえませんか」

なんと共同研究(?)の申し出。わくわくします。
オオミノガの興味深い生態を教えていただきました。
1,ミノガのメスは一生ミノから出ず、オスがフェロモンに引き寄せられて交尾に来る
2,メスの羽化は蛹の上部が外れるだけで、殻を脱がない。外れた上部からは頭部が顔を出す。
3,メスの交接孔は頭部付近にあり、オスはミノの下部から交接器を挿入し、ミノの上部で
折り返し、交接孔へとアクセス、交尾する。
4,交尾後のメスは数日後にミノの中に卵を放出して、ぺちゃんこになってしまう。
いやー理解するのに時間がかかった。(というか何度も間違えた。)

ミノを切り開いたところ。右が上部
 
中を取り出してみた。右が頭部。頭を上にしてミノに入っている。

羽化。オスが下からアクセスするので、下部だけ開くものと勘違いしていた。
予想外に上部が開いたので、ミノに戻す時間違えたかと。
正しくは左が頭。 ミノは右が上部なので羽化時は逆方向。
 
尾部だと思っていた頭部。大量の毛が出てくるが頭っぽくない。
交接器に見えていた。


蛹の殻の残りを切り開く。皮が薄く、傷つけてしまった。
左が頭部。

茹でた後。内部がぎっちり卵だということがわかる。
 
ホタテと比較。精巣と食感がよく似ている。
 
味見
蛹の殻を取り去った表皮はきわめて薄く繊細。歯をあてたときのプチッと感はほとんどなく、香る木の香りとわずかな収斂味。上質な栗のような素朴な甘み。卵のつぶはいずれもやわらかく、口の中でほぐれ、スクラブ感のある食感ととも広がっていく。抜群。栗スイーツとして商品化したいぐらい。これは美味い。オオミノガヤドリバエの気持ちがわかってしまう。
今回は新津修平博士に詳しいアドバイスを頂きました。
2011年に学名が更新されていたことも教えていただきました。
ありがとうございました。


さて、
今回は味見、という形で研究者とつながることができました。
やはりヒト一人の常識では、昆虫を理解することは困難です。
オオミノガ一種をとっても、その発想と実践は、
ヒトの想像力を易易と越えていきます。
しかも、
昆虫は100万種という膨大なアーカイブとして存在し、
それらにきちんとアクセスするには、一人の力ではどうにもなりません。
つまり、
「昆虫アーカイブにアクセスするには、目的に応じた人的ネットワークを構築するしか無い」
といえそうです。
つまり「ある地域で、ニーズに応じた昆虫食を提案できるネットワークを構築した者」
が、いわゆる昆虫食研究者、といえる存在になるのではないでしょうか。
これは今までの
「研究者不在」の養殖昆虫ベンチャーを見ていて気づいたことです。
彼らは「効率」をウリ文句に、多くの投資を集め、投資が多いほどその効率が
上がることを示すことで、会社を維持しています。
ところが、
その規模が十分に巨大になった時、
既存の昆虫食文化はどうなるでしょうか。
生態系はどうなるでしょうか。莫大な投資を蹴ってそれらを守る経営者は
いるのでしょうか。
昆虫食を進めるにあたって、
やはり、昆虫研究者を手放すべきでない、
と思います。
それは
タイでのコオロギ養殖を軌道に乗せている
応用昆虫学の教授を見ていても思います。
研究者を通じて、生態系に考慮した形で、
更に社会の昆虫への偏見を減らしていくような
「研究者ネットワーク型・課題解決型の昆虫研究体制」を作るべきではないか、
と考えています。
その時、
日本という教育の行き届いた、膨大な標本をもち、多くのアマチュア昆虫研究者を
抱え、しかも昆虫食文化のある、特異な国の真価が発揮されるのではないでしょうか。

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今日は梅の木についていた見るからに食欲をそそるイモムシ。
カラスヨトウ。Amphipyra livida corvina

パッと見はスズメガのような尾部に見えますが
スズメガが角状のしっぽ(尾角)に対してこれは円錐状の突起。こちらのほうが肉感的です。
茹でていただきましょう。
味見。
少し苦味があるものの、スズメガ系のいい味。モモスズメが近い味。コスズメが近い触感。
姿も似ているが味も似ている。やや粒感のあるこしあんのような食感もあり、香ばしさもある。楽しめる味。


ここで「茹でただけなのに香ばしい」という
昆虫独特の現象について仮説を立てておきます。
1,アミノ酸・糖の存在を知らせるニオイ
アミノ酸と糖を加熱して起こる反応を「メイラード反応」といいます。
メラノイジンを主成分とする様々な物質と香り、特に香ばしい香りが特徴です。
プリンのカラメルのニオイ、というとピンとくるかと思います。
この昆虫には、アミノ酸と糖が含まれており、それらが常温で、何らかの酸化酵素と
反応して、このような香気が発生。エネルギーと体の構成要素である2つの主要成分に
我々ヒトは食欲をそそられる。
2,アルカロイドの分解を示すニオイ
アルカロイドは多くの植物体に含まれる毒物質で、
ヒトも肝臓に解毒作用はあるものの、多量の摂取はキケンです。
同様に植物食性の昆虫にも、解毒または耐毒の仕組みがあると考えられます。
解毒は消化酵素によって無毒化するもので、
耐毒はそのまま体内や血液中に毒成分をもっていても、
生命活動に支障をきたさない仕組みのことです。
特に毒を酸化分解した場合、
香気成分であるフェノール、ピリジン、ピラジンなどが
出てくる可能性考えられます。。
そのため、「植物由来アルカロイドを分解している昆虫」
は食べられ、
「血液中に滞留させている昆虫」は食べられない、という嗅覚弁別なのではないか、
と考えると、
ヒトが火を持つ前から、「香ばしい香り」を良い香りとしている理由にもなるかもしれません。
(香ばしい と 火 が先に関連していたならば、火の危険性や火に対する恐怖と全く別の「食欲」がそそられる理由が説明できません)
もうちょっと先の話ですが
「嗅ぐことで美味しい昆虫を見分ける」
ことができるようになるかもしれませんね。 感覚を磨いていきたいと思います。

1

以前に、シロヒトリ幼虫を食べようとしたものの
ヤドリバエにやられて、泣く泣く味見したことを紹介しました。
これは後にイケダハヤト氏の目に止まり
プチ炎上(笑)した記念すべき記事です。
その後
シロヒトリ成虫を食べ
味が良かったことから私は
「シロヒトリは味が良い」と決めつけていました。
幼虫の味見をしないまま、です。
そして春が来て、彼らがまたやってきました。
シロヒトリ  Chionarctia nivea

不思議なものです。
「おあずけ」された経験と
「成虫が美味しい」という情報から
既に食欲が湧いています。おいしそうです。
ただ問題はその
カレハガの時はサナギになるまで待ち、
マイマイガの時はそのまま食べたらのどごしが悪く
今回はどうするか。
と、
そんな時に虫研究者は天啓を与えてくれます。
というか
「クロカタビロオサムシ」が。
「毛虫の美味しい食べ方」を教えてくれました。
昆虫食を昆虫食昆虫から教えてもらうのです。
論文
http://beheco.oxfordjournals.org/content/early/2014/05/08/beheco.aru080
動画
使われた毛虫はクワゴマダラヒトリという近縁のヒトリガです。

「毛を剃る」これは素晴らしいですね。
今回は論文の鼻毛カッターよりもきっちり毛を落としたかったので
一旦凍らせ、よく研いだ出刃包丁で周囲の毛を取り去りました。
こんな感じ。

ヌードシロヒトリ。脱いだら結構印象かわるものですね。
味見です。
クニュクニュとしたコシのある歯ごたえ。
苦味が強い。消化管内容物が多かったので食草によるかも。
食草を検討し、消化管内容物をとってから再チャレンジしたい。
残念ながら、私の食欲を裏切り、シロヒトリ幼虫は
余り美味しいものではありませんでした。
ただ、「おあずけされると美味そうに思う」というのは
限定品商法に見られる常套手段ですので、
これからも「美味しい昆虫おあずけブログ」
として、昆虫食の普及に努めて参りたいと思います。

何度か小型のコメツキムシは食べていたのですが
同定が面倒でここで紹介したことはありませんでした。
そんな中、シロアリの材にウバタマコメツキ Cryptalaus berus
がいるのを、シロアリ研究者が見つけて、譲っていただきました。
30mmに達する大きなコメツキ

「コメツキ」の衝撃も大きく、
手で掴むと「トンッ!」とクリック音が響く。
クチクラが硬いので、食べにくいか、もしくはオオゾウムシのようにパリパリして逆に食べやすいか、期待。いつものように塩ゆでしてポン酢で。
味見
硬いが、オオゾウムシと同様にパリパリ噛めるのでさほど気にならない。かなり濃厚で木の香りもする、クリーム状の内部。越冬用の脂肪が溜まっていたのか、強いコクが嬉しい。カミキリムシ幼虫系の素晴らしい甘みとコクがあり、美味しい。
これはいいですね。揚げても、ローストしてチョコスイーツのアーモンドの代わりにしても
美味しくいただけそうです。

2

ヤフートップにこんな記事が。


神戸の須磨海浜水族園で26日から開催される特別展「アマゾンの謎に挑む」を記念し、珍しいピラニア料理が食べられる。「ピラニアのムニエル」は見た目は怖いが味は淡泊でおいしいという。価格は税込み2000円。
(時事通信) 25日18時55分配信
【関連ニュース】



そういえば昨年6月に食べたものの、
味見ブログで紹介してなかったなと思い出しまして、
時流に乗って記事にしておこうかと。
「ピラニア・ナッテリー」は熱帯地域でポピュラーに食べられている
魚で、ペットとしても飼いやすく、日本でもよく知られた魚です。
今回も、前の「逆にニワトリを食べてみる」と同様に
昆虫と比較し、その将来性を考えてみましょう。

(お題は「生死のフチ子さん」)
コップのフチ子さん、いいですよね。


彼らとの出会いは2年前、バッタを食べさせてみようと
ペット(養殖魚モデル?)として3匹、飼育を始めました。
飼っていて驚くのはその治癒能力
互いに臆病なので、
背びれが根本からえぐれるようなアタックをしてケンカをするものの、
数日でキズがふさがり、一週間もすれば新しい鱗で
覆われ、キズが消えてしまいます。ポテンシャルの高さを感じます。
残念ながら
彼らはバッタを一口齧っただけで見向きもせず、
豚肉や魚肉、金魚など、脊椎動物の味が好みのようでした。
飼育するうちに徐々に大きくなり、
元来の臆病な性質も相まって
ケンカが絶えなくなってしまいました。
そこで、
一番喧嘩っ早い一匹を、
責任をとって食べることに。
ペットとして飼った動物を、食用に転用する心理的ハードルは
哺乳類ではとても高いのですが、魚類は低く感じました。
今、ナマズにバッタを食べさせて飼っているのですが、
おなかがすくとこちらによってきたりして、
次第に懐いてきたような行動をみせるので
おそらく
「懐く・なつかない」は食用にするときのハードルに
大きく影響しそうです。

中には大きなオレンジ色の卵が。雌だったようです。
 
鱗をとり、切れ目を入れ、片栗粉で衣をつけ、油で揚げ焼きに。

甘酢あんかけにしました。

味見
水槽由来のコケ臭さが多少あるものの、
スズキのようで大変においしい。身も厚く
食べごたえがある。
卵はタラコよりもつぶが大きく、味も普通。やや水槽臭い。
骨がとても丈夫で固く、その後骨せんべいを作ったのですが
かなり揚げても硬質。特に立派なアゴは最後まで口に残りました。
 
考察。
ピラニア・ナッテリーは自然治癒力が高く、
20度以下ではほとんど動けなくなり
群れる性質があり、しかも味が良い。
食用に導入できる可能性をもった魚類です。
具体的には
山間部の温泉地帯で、温泉による加温をして飼育し、
もし脱走しても生育できないようにする、
などが考えられます。
しかし、
肉食のためにコストが高く
日本で考えると市場に受け入れられる可能性が低いために
現状、
ピラニアの食用養殖業は成立しないものと考えられます。
ただ、
この自然治癒力の高さは目を見張るものがあります。
同じカラシン目の「コロソマ」なんかは
食用にいいかもしれません。

「生物としてのポテンシャル」を高く評価しましたが
この先、
「生物としてのポテンシャルがモノを言う世界」について
もうちょっとまじめに考えてみましょう。


現状のウシ生産はロスが大きいので
それを草食魚や昆虫・あるいは飼料穀物を食用穀物に転作し
「生物としてのポテンシャルが高いものに代替する」ことで
より多くの人に食糧が行き渡るようにする、という論理がみられます。
理論上はそうなのですが、よく考えてみましょう。
家畜や作物の生物としての効率の良さが、飢える人を減らす。
ということは
逆に言うと
効率の悪い生物を利用すると、飢えて死ぬ人が出る。
つまり、「食料生産が人口を決める」という状態です。
この状態こそが まさに
普通の人が想像する食糧危機といえるでしょう。
「食糧生産の効率を上げると、餓死する人が減る」状態です。
ところが、
現状の「食料不足」は、生産と分配
不全状態になることで起こっています。
世界的な作物の不作により、
人口を賄うのに必要な食糧生産を下回った年
は、史上一度もありません。分配が不全状態なのです。
天候不順
単一作物地域の増加
不作地域への食糧支援の遅れ
内戦・戦争・革命
貧富の格差の拡大
などなど、
「食糧の不均衡」が、現在の食糧不足の主役なのです。
つまり、現在の食糧問題「再分配の問題」が解決された先
「食料が平和的に再分配され、生産効率が人口を決定する食糧危機状態」
こそが、
我々が目指す理想の食糧状態、といえそうです。
ならば、
昆虫食は、
「未来の食糧危機」にフォーカスするだけでなく、
「現在の食糧危機」にどう対応すればいいのか

昆虫食を含む様々なマイナー食
の形が、
どのように参加すればよいのか、
今のうちから考えておくべきだと思っています。
ちょっとこの先は
まだまとまっていないので、
今日はここまでにしましょう。

1

ちょっと大事な論文を読み込んでいるので
先にオオシロアリ Hodotermopsis sjostedtiの味見レビューを。
今年の1月、
アフリカ産のシロアリを頂き、レビューした際
「屋久島のオオシロアリが食べたい」と
新年の抱負を述べていました。
本州にいる
小ぶりなヤマトシロアリは食べてみたことがあるのですが、

いかんせん小さく、
カーストによる味の違いが分からず、
おおぶりのものを手に入れたかったのです。
そんな中、今年の研究所の一般公開にて

お隣になったシロアリ研究者から、
なんと展示に使ったオオシロアリ(屋久島産)をいただけたのです。
新年度早々に
こんな幸運に恵まれるとは、嬉しい限り。
兵アリと、幼虫を頂きます。
こちらは幼虫。シロアリは不完全変態なので、幼虫からシロアリ型です。

兵アリとの比較。大型の兵アリは巣を守る存在。数はあまりいません。
頭部が柿の種のように光り輝いており、美味しそうですね。

指に乗せるとこのくらい。非常に大きく感じます。

仲はとてもよいです。殖やしたいなぁ。

味見
幼虫 
ヤマトシロアリより大型で味がある。ほんのりあまく、木の香りがしてすっとケミカルなニオイもかすかに。食感は外皮がはじけたあとくにゅっとしたしたざわり。ちょうどクワガタとカミキリムシの中間。近縁のゴキブリのような集合フェロモンの臭さはなく、可能性を感じる味。
兵アリ
頭部のプチッと感が素晴らしい。大きいぶんやや味が濃い。クワガタ幼虫のような菌系のやな香りはなく、木材のさわやかな香り。割合が少ないので、レア。大事に食べたい。
シロアリは多くの熱帯国で食べられている昆虫で、
養殖化には成功しておらず、また
飼料効率も悪いのであまり注目されていませんが
木材をおいしいバイオマスに転換する系として、
「非木材林産産物」の一つ
として今後注目されていくと考えられます。


非木材林産産物を説明しますと
(勉強したてですみませんが)
かつての熱帯の森林は、木材の供給源としてしか評価されず、
材木を取り尽くすと、開墾して畑とし、
次第に単一作物のみを生産する、
巨大なプランテーションと化していました。
プランテーションにはサトウキビやキャッサバなど、
「効率のよい」作物を植えることで
森林だった時よりも効率的な農業だ、と期待されました。
ところが、大きなデメリットがあったのです。
それは「国際価格の急落」
プランテーション地帯では、もちろん産物は単一ですので
自給しようにも、当然食べきれず、売って
他の食品を買わなければなりません。
近くには同様のプランテーションばかりですので、売り先は海外、特に先進国になります。
ところが、そこで
国際価格が急落すると、特に賃金のやすい発展途上国は大打撃をうけ
「農地で農家が飢える」というトンデモナイ状況に陥ったのです。
また、
食物の国際価格は投機マネーが価格決定に関わっており、
一度落ち始めると、急落する(逆に急騰する)特徴もあり、
例え加工原料として使う先進国がちょっと痛いぐらいの変動でも
賃金の低い輸出国にとっては致命的なダメージになります。
その反省をもとに、
森林を開墾せず、「持続的に得られるものを最大限に活用する」
ために注目されたのが、木材以外の森林資源
「非木材林産産物 Non Wood Forest Products」
なのです。
ここでいう産物とは、具体的な物質だけにとどまらず
生活に欠かせない「生きがいとしての仕事」も含まれます。
そこで、手作業での自給的食物であった昆虫や山野草においても
効率を高め、
「現金収入につながる仕事=フォーマルな仕事」
へと転換することで、「伐採・開墾による収入の誘惑」に
対抗して経済力をつける道が模索されているのです。
ここでも
やはり注目すべきは「社会性昆虫」でしょう。
人件費は
どうしても裕福になればなるほど高くなることから
ある手仕事で貧困を脱出すると
その手仕事では生計が成り立たなくなる、
というトレードオフになってしまいます。
特に
開墾しない森林は多様性が高いため、
目標とする一種類の資源へのアクセスが悪く、
手間がかかります。
日本では大型哺乳類や、一部の高価な山野草しか
狩猟採集に寄る収入は得られていません。
森林に住む昆虫はたくさんいますが、
美味しい昆虫由来バイオマスを大量に手に入れる手段として
「社会性昆虫の使役技術」
が今後重要になると考えられます。
世界中で使役されている社会性昆虫として「ミツバチ」が有名ですが
森林に散在する新鮮なタンパク質を
効率的に収集する手段としてのスズメバチ、アリであったり
分解が困難な植物バイオマスを微生物の力を使って
組織的に食糧へと変える ハキリアリやシロアリなど
更に利用価値は高まるでしょう。
そこで開発すべき技術は…
これまた次回に。今読んでいる論文がキーとなるはずです。

2

「ハチノコ」は、昆虫食の中でもメジャーな存在で
イナゴの次ぐらいに食べたことのある人が多いかと思います。

主に
クロスズメバチの子を称するのですが
地方によってスズメバチ類全般の幼虫を指すことも。
これらは
皆肉食なので、彼らが健全に大きな巣を作るためには
餌となる新鮮な小昆虫がたくさんいる環境が大切です。
ところが近年、クロスズメバチの減少が問題になっています。
他の肉食のハチよりも
クロスズメバチに顕著なので、乱獲が原因と考えられています。
そこで、昆虫食の盛んな長野では、
春のうちに小さい巣を屋内に入れ、「飼い巣」
と呼ばれる半養殖が行われています。
タンパク質を多く含む「魚のアラ」などを巣の前に置くことで
野外ではめったに見られない巨大な巣に仕上げることができるとのことです
飼い巣の大きさを競うヘボコンテストも行われているそうです。
そのため
昆虫食文化を背景としない我々ミーハー昆虫食者は、
できれば
「飼い巣」のクロスズメバチを、
文化の保護を目的として購入したいものです。
「乱獲されているから食べるべきでない」と、常食者に言いたくなるのは
我々ミーハー昆虫食者が自戒して慎むべきことといえるでしょう。
「減少している事実」が知られたのも
継続的に捕獲している彼らの存在があってこそです。
(逆ですが、ミドリガメはその個体数を計測する研究者がいなかったために、
その侵略的外来種としての定量的な調査がすすまなかった、という経緯があるそうです。)
そのため、
既存の昆虫食文化は「持続可能性な形」で存続・保全してもらう、
というのがひとつの方法です。
そして
新規参入に関しては「既存の食文化を圧迫しない形」で行われるのが理想でしょう。
そんな中
「ハチの子の資源を気にせずに食べたい!」という方におすすめしたいのが
「ミツバチの蜂の子」です。こちら

不敵な笑みをたたえるお兄さん。
それもそのはず、
「おらん家のハチの子」には
主に働かないミツバチのオスバチの蜂の子が使われているそうで
(雌雄の判断は働き蜂が作った巣の内径次第だそうです。
女王蜂は巣の内径を測定した後、未受精卵(オス)受精卵(メス)を貯精嚢を操作して産み分けます。)
働かないゴクツブシは
養蜂家の判断で、幼虫のうちに捨てられます。
この時、採集して煮て缶詰にしたのが、この「おらん家のハチの子」なのです。
養蜂の副産物ですし、オスバチだらけになった巣は勢力を失っていきますので
妥当な間引きでしょう。
コクや香りは肉食のハチの方がある気もしますが
ミツバチの幼虫、蛹も美味しくいただけます。
初めての昆虫食にはピッタリではないでしょうか。
そんなハチの子がいまならセール!
140gが1680円なのに、200gが1890円!
(追記;増税により値段UPしましたが)
たった210円で60gも余分についてくる。
ステキですね。
一人で食べるのはちょっと量が多いので
パーティーに持参すると
この不敵なお兄さん
(しかしモデル誰なんでしょうかね)

にやられること請け合いです。
さて、
「ミーハー者のためのハチノコ食」として
もう一つご紹介しましょう。
「ハチノマゴ」とも呼べる?存在
「ハチノスツヅリガ」です。

蜂の巣に侵入して、蜜と巣を食べてしまう厄介者ですが
逆に蜂の巣の廃材や、
コムギのフスマを使って簡単に養殖もできます。
こんなかんじで蜂の巣を「綴って」まゆを作ります。

ほぐすと中には蛹が。

成虫はこんな感じの地味な虫。

味見 いつものようにゆでポン酢で。
幼虫 フスマでの養殖したものを食べる。蜂の子よりシコシコしており、木の香りがしてとても美味しい。甘みもあるので蜂の巣の残渣で飼育したらもっと美味しそう。チャレンジしてみたい。

蛹 噛みごたえはピーナッツのうす皮程度でクリーミー。香りはうすく、油が強いナッツクリーム。いずれもおいしくたべられる。甘い香りはほとんどなし
成虫 モフモフとした鱗粉の食感が今ひとつだが、香ばしい成虫独特の香りが食欲をそそる。肉質な部分はほとんどないので満足度は低め。
このハチノスツヅリガは
「ハニーワーム」として爬虫類用の生き餌としても
売られています。
養蜂の迷惑になるので、もちろん屋内での飼育が推奨です。
成虫になっても
決して野外に放虫しないようにしましょう。
ゆくゆくは、養蜂の残渣をハチノスツヅリガで処理し、
「ハチノマゴ」を食べる文化になれば、と考えています。
もともと養蜂には殺虫剤が使えないので
養蜂のさらなる高度化に他の昆虫を利用することは比較的簡単にできるでしょう。
「ハチで受粉した果物」と「蜂蜜」と「ハチノコ」と「ハチノマゴ」
養蜂の高度化が成功すれば、よりハチとヒトのいい関係が築けるのではないでしょうか。
では、
養蜂の害虫である、ハチノマゴをハチノコから
どのように「隔離して飼育」するのか、
その未来の展望を、とある論文から覗き見てみましょう。
次の記事に続きます。

2

久しぶりの更新です。
いろいろ書きたい内容があるのですが、
今回は軽めの味見記事を。
春になってオオイヌノフグリが花を咲かせる中、
ナナホシテントウと似た配色のちいさな虫が。

「ナガメ」菜亀。Eurydema rugosa
その名の通り菜の花につくカメムシで、ビビッドな配色をしていますが
触ってもニオイを全く出さず、体型もずんぐり。

これは味見してみましょう。
味見
苦い!菜の花のきっちりとした苦味、しかし、あとをひかないすっとした後味。びっくりしたが、わりと好ましい苦味に感じた。辛子酢味噌といっしょに頂きたい。食感は肉質があってカメムシの中ではずっしり系。香りは殆ど無い。ヨモギハムシにちょっと似たあじ。
匂い系カメムシと味系カメムシが居る模様。 
菜亀といえば、田んぼにいるカメムシは田亀ですね。
白バック撮影のメリットは「レイアウトが自在なところ」ですので
この機会に並べてみましょう。
(ちょっとナガメを大きめに配置しています。)

タガメとナガメ、春と秋の食のアクセントとして、
いただきたいものです。

5

さて、
越冬女王蜂は瓶詰め佃煮ハチノコに切り替えました。
たいていの昆虫は冬に個体数が激減するので
越冬モノは注意して選びましょう。
冷凍庫をあさっていると
こんなものが

マイマイガです。
あまりに食欲がわかないので
今年の6月1日に捕獲し、写真撮影した後、
冷凍して放置していました。
モサモサした、のどごしの悪そうな毛
背中にはなぜかブルーの突起と赤の突起。
顔は目が2つニャッキ!のようでカワイイのですが。

茹でて味見しましょう。
味見:味は…味は悪くない。
硬い毛はむしろ食感のアクセント。
柔らかい毛はものすごくのどごしが悪い
さんまの腹側の肋骨を飲み込んだ時の感じに近い。
ケムシの毛はガの燐毛と同様に
食感とのどごしを悪くする機能がありそう。
「ガ」のモフモフと「ケムシ」のモサモサ、に共通の食感の悪さがあることは新しい発見かも。
トンボやカゲロウ、ゴキブリに比べ、
哺乳類や鳥類といった俊敏な捕食者の登場に前後のデザインだけに、
いろいろ捕食圧による独特の進化の結果なのかもしれません。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20120605001
哺乳類を殺すような毒は昆虫にとっても毒であることが多く、
その生産や防御機構まで含めると、かなり高コストなので
繁殖力が旺盛な昆虫は
「食べられなくはないけど食べづらい、美味しくない」
という状態がデザインと捕食圧の妥協点として取られたのかもしれませんね。
さて
なんでこんな見るからにまずそうなのを
食べようかと思ったかというと
このマイマイガを食べて、
こんなニュースに対抗したかったのです。
北海道で夏に大発生
http://www.hokkaido-np.co.jp/cont/video/?c=animal&v=576766646002
マイマイガは、
初齢幼虫に微弱な毒があるとのことですが、
基本的に「ただ増えるだけ」の害虫です。
繁殖力と食欲が旺盛で、
さほど強力な天敵もいないことから、
(おそらく寄生蜂が天敵となりそうです)
大発生するととんでもないことになります。
特にアメリカに侵入した例では被害が深刻で、
森林が丸裸になるほどのに深刻な被害が出ました。
ヨーロッパ由来のマイマイガを養蚕実験のため保持していた
研究者が、たった数頭逃してしまった結果、との説が有力です。
アメリカ農務省はその対策に乗り出し、研究の結果
たった一種のガについてこんな分厚い本が出ることに。

マイマイガの話をふとボスに振った所
「昔アメリカに居た時やってたよ」
と見せてくれました。
1981年出版。
「Gypsy Moth :Research Toward Integrated Pest Management」
豪華なハードカバーで 757ページ。
カラー写真もふんだんで、めっちゃオカネかかってます。
逆に言うと、それほど深刻な被害だったのでしょう。
最近ではこんな本も。

日本でも
農薬を使い過ぎない「Integrated Pest Management=総合的病害虫管理」
という概念が浸透してきましたが、農薬を使わない、エコで自然にやさしい、
というイメージがあります。
しかし
このマイマイガは
「殺虫剤が効きにくく、どれだけ撒いてもカネが足らん」
という圧倒的な猛威の結果、「総合的になんとかせんとどうにもならん」
という絶望的な状況の中で使われた言葉というのが分かります。
マイマイガの天敵となる
菌類や寄生蜂、寄生蝿などの利用に向けた詳細な調査が行われていました。
彼ら天敵のほうが効果的な状況では、殺虫剤によって
かえって被害が増大する「リサージェンス」という状態になります。
殺虫剤さえ撒けば良い、という害虫対策は、
国土の広いアメリカでは通用しなかったのです。
本では
林業被害として
「黒く死んだオーク(ナラノキ)が多く見られた」
「被害を受けた地域の木の根の乾燥重量が低くなった」
「根に含まれる糖分が減少した」
とのこと。
木は被害を受けてから、その結果が出るまでが長いので、具体的に
「◯本の木が枯らされ、〇〇ドルの被害が出た」
と言えないのが林業被害の難しいところです。
成長点を食い荒らす害虫は、食痕を調べることで原因とすることができるのですが
葉のみを食い荒らす(元気な木はその後すぐ回復する)場合の、被害額の推定は難しそうです。
その分、圧倒的な大発生になるまで放置されてしまう、という側面があるのでしょう。
林業は農業以上に昆虫との付き合い方が難しそうです。
残念ながら、この中でも
「食べて利用しよう」「飼料に利用しよう」という話はなかったようです。
やはり具体的な林業被害がでていることから
「駆除」を念頭に。そしてその利用方法が見つかったとしても
今後安定的な養殖が許可される予定もないでしょうから
妥当な判断でしょう。
では次に
「どの段階での駆除が効果的か」
を考えてみましょう。
長々と書きましたが、答えはコレです。
卵塊。

マイマイガは
日本では大発生といえど、
一定数以下に抑えられています。
菌類や寄生蜂・寄生蝿がいるためだとすると、
ここにむやみに殺虫剤をまくと
「リサージェンス」を起こしかねません。
そのため、マイマイガのみを、簡便に、多くの個体数を駆除するとなると
ブラックバスの対策でも効果を上げた「卵塊駆除」が答えとなりそうです。
これがもし「美味しければ」
マイマイガにお困りの地域で駆除することにより、翌年のマイマイガの数をコントロールできると考えられます。
見てみましょう。
メス成虫の鱗毛で覆われています。

しっかりと卵一つ一つが毛に覆われており、暖かそうです。
母の愛を感じます。
めくると裏側は、美味しそうな卵がたっぷり。
この毛=母の愛は強力すぎるために苦労します。
ぬるま湯に入れ、荒い網でこする、
という「筋子の要領」で取っていきます。
卵自体の強度は高いので、筋子ほど力加減を気にする必要はありません。
ごしごしやりましょう。
水に流れても気にせず、細かい網でキャッチ、そして最後は水を切って乾燥させると
残った燐毛が飛んでいきます。
これで「とんぶり」のような卵が出来ました。

これを軽く塩で茹で、
ハチノコ大和煮、
チョロギ風に酢漬けにしておいたエリサンサナギと一緒に
食感のアクセントとして使いましょう。
2月に食べる正しい昆虫ちらし寿司
目的はクロスズメバチの保護と、マイマイガの駆除です。

実食
マイマイガ卵
プッチプチで美味い!
香りはカイコガの卵の方がよい。初心者向けの普通のお味。
初令幼虫は微弱な毒があるとの報告があるが、卵に関しては今のところ影響なし。
クロスズメバチ
イモのような舌触りと肉質のコク、
味がとても穏やかでスズメバチ類では一番馴染みやすいかも。酢飯ともよく合う。
節分ですので、恵方巻きにでも、と思ったのですが、ネタが小さいのでちらし寿司にしてみました。
森を食い荒らし、
人家に出没することで「むしぎらいを増やす」
マイマイガは、オニになってからでは遅いのです。
オニは今のうちに…
気にならない程度に減らしておきましょう。
ごちそうさまでした。

大寒も過ぎ、
今は一年のうちで最も寒く、虫が少ない時期。
昆虫料理も基本的に保存したものか、
越冬昆虫を取りに行くぐらいです。
以前にコクワガタと ユミアシゴミムシダマシを味見しましたが
越冬昆虫を探しているうちにこいつらも。
オオスズメバチ女王

クロスズメバチ女王

カワイイですね。
越冬中なので、動きが鈍く
そっと触るぐらいでは大丈夫です。
女王は「巣の長」ですから、
自分の身を守ることが大事ですので
攻撃性は低いとのこと。
一方で、春から秋に見られる
に繁殖した巣の働き蜂は
攻撃性が高く、自身の死も厭わず威嚇し、
襲ってきます。
働き蜂は生殖能力が無いので、巣に残る
女王や幼虫を守らないと、次世代に自分の遺伝子が残りませんので
「攻撃」「労働」のみが子孫繁栄のための行動といえるでしょう。
そのため、
ヒトから働き蜂をみると常軌を逸した攻撃性に見えるのですが
女王と対峙すると、彼らの「ニュートラル」な自己防衛の状態を
垣間見ることができます。
さて、
クロスズメバチは
乱獲により絶滅の危機に貧しており
オオスズメバチも決して増えているとはいえません
(ニュースで取り上げられることは増えたが事故件数も
数も増えているとはいえない、と某ハチ駆除の方、談)
女王は巨大な巣のいわば「要石」になる存在ですので、
食べると生態系へのダメージは巣一個分と言ってもいいでしょう。
ハチ駆除としては
ヒトの生活圏と競合した場合は退いてもらって、
食べさせてもらっているのですが、
今の段階で食べるのは気が引けます。
成虫は概して硬いので
ハチノコよりも美味しい気もしませんし。
ということでそっと戻します。
でも食べたくなってしまったの事実。
こんな時は、
採集に半養殖されている市販品を食べましょう。
松浦誠 著「スズメバチを食べる」によると

「飼い巣」
と呼ばれる愛好家の団体が始めたとのことで、
春先から夏にかけての小さい巣を、
女王と働き蜂ごと弱らせないよう持ち帰り、
自家製の「巣箱」に入れて、マグロの頭やニワトリのキモなど、
動物質のエサを補助してやることで3〜4キロの巨大な巣を得る、とのことです。
また、「昆虫食文化事典」によると

温室内で交尾させ、交尾済みの新女王を得る技術も開発されました。(西尾1999)
今、達成されていない技術的課題は
「越冬後の女王のエサと管理」
だそうです。
越冬後、女王は樹液などの天然物を食べて、
初期の営巣のための
エネルギーを賄いますが
越冬の場所や条件、そして目覚めた後のエサの
供給が難しく、
完全養殖(養殖して得られた個体から次世代を養殖できること)には、
この段階の達成が必要だそうです。
越冬場所から移動させると、うまくいかないことから、
どうやら越冬時にも、
環境に合わせて女王が何らかの応答をしており
越冬といえども、「寝ている」わけではなく
環境に応じた変化をすることで
厳しく乱高下する冬を耐えているのだと思われます。
挑戦したいところです。
さて
このような知識を入れることで「食欲を抑え」
虫食い仲間のムシモアゼルギリコさんから写真提供のお礼に、と頂いた
市販品のクロスズメバチの佃煮を頂きましょう。

(虫食い仲間の間では報酬のやりとりは必ず虫の物々交換で行い、そのレートは株価のように変動しています)
ウソです。


ちなみにムシモアゼルギリコさんの手がけた
「一般向け」とは名ばかりの濃い内容の本
「むしくいノート」は

世界昆虫食大全、昆虫食文化事典という
三橋淳博士の 日本昆虫食界におけるバイブルを
ぎゅっと濃縮し、
「昆虫に詳しくないヒトでも手軽に食べられる」
実践的な内容をたっぷり詰め込んだ本です。
表紙もポップなので、書店の料理コーナーに平置きされることも。
私も校正や写真提供に参加させていただきました。


話を戻しましょう。
女王1頭を諦め、
市販の蜂の子に切り替える、
という我慢の方法を学びました。
せっかくですので昆虫料理を開発したいところです。
他の
「食べてもOK」な越冬昆虫食材は無いのでしょうか。
次回に続きます。