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なんだそのyoutuberみたいな煽りは。

幾つかの噂が歩いていた「イナズマチョウは無毒か否か。」

ある種は有毒で、ひどく痛く、またある種は無毒らしい、とのこと。

網羅的に有毒と無毒を区別した文献も見当たらず

そもそもイモムシで同定できるかもわからない。

日本語文献で見つかった、実際の体験談では

Euthalia moninaの幼虫は有毒か? [in Japanese]

アカメガシワにつくモニナイナズマ Euthalia monina と
マテバシイにつくビャッコイナズマ Euthalia byakk を比較。この文献でもラオス産が使われた模様。

日本の充実した医療体制で、何か起これば最悪救急車も可能、という状態で皮膚に当てるのと、
ラオスのアレな医療情報を聞きつつ、これを試すのは大きく違います。すごい。この方はすごい。
考察の中で、黄色の背部の棘にある黄色の球状部に含まれているのでは、と仮説を述べています。

さっそく話はそれますが、皮膚科医が自分の皮膚で実験を繰り返した教科書「Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎」は素晴らしい、そして痛々しい図鑑なのでオススメです。
夏秋医師への憧れもあったのです。

「マンゴーイナズマは無毒らしいとの話」で見られるのはこの写真

マンゴーイナズマの幼虫 - メコンの残翅 Ⅱ - Yahoo!ブログ #ブログ #生物学 #Nymphalinae

さて、これはマンゴーイナズマだと思います。見つけた木はマンゴーという点ははっきりしています。

また話は逸れますが、
マンゴーは虫がつきにくく、ウルシ科ということもあり、これ以外に少しのミノムシが食っているぐらいで、食害の少ない植物です。

今の借家に入居するときに大家さんが「庭のマンゴー勝手に食っていいよ」
と言ってくれたのです。マンゴーを食べ放題なんて!なんて太っ腹な大家さんだと思ったんですが

この有様。時期さえ合えば、木を蹴ると5、6個落ちてくる。

美味しいけれどありがたみは薄い。

そして時期の異なる幾つかの品種もあるようで、とりあえずマンゴーが途切れることはないようです。

さて、

ここでマンゴーイナズマの写真を見てみましょう。

茹でるとオレンジ色にかわり、触っても大丈夫。シダのような毛はモシャッとした食感はあるものの問題なく食べられる。味は香木のような香りがあり、スッキリとした甘みがおいしい。ラオスでは食べないとのこと。

ありますよね黄色の球状の部分。

もし先の体験談が示唆する「黄色い球状の部分は毒」説が正しければ、これも毒ありということになります。

味見をした昨年12月は短期滞在でしたので、その勇気(というか好奇心の暴走)を止めるしかありませんでした。

しかし今回は長期滞在!試したとしても病院に行くことぐらいはできそうです。

ラオス人スタッフに聞くと
「絶対触ってはいけない。電流が流れたかのように痛み、3日は寝れない。一週間は手首がパンパンに腫れて、腫れが引かない。」

とのこと。聞くんじゃなかった。これで触って腫れたらすごいバカじゃないか。

でも触る。

オォ。。痛くなかった。

痛くないとわかればモフるしかないでしょう。

うむ。満足。

さて、ここで面白いのは

「ベイツ型擬態」がラオス人の間で成立していることです。文化的ベイツ型擬態と言いましょうか。

彼らは毒がある、あるいは毒があって痛かったとの口伝をもとに、イナズマチョウ全てに毒があると信じています。

そのため、毒を作るコストを負担していないマンゴーイナズマのような無毒種も、むやみに手を出されない、という恩恵を受けています。

彼らのデザインも独特で、一度刺されたら忘れられないようなトゲトゲしい姿をしておきながら、

葉っぱに潜むとこんなにも隠蔽してしまう。

茹でるとオレンジ色にかわり、触っても大丈夫。シダのような毛はモシャッとした食感はあるものの問題なく食べられる。味は香木のような香りがあり、スッキリとした甘みがおいしい。ラオスでは食べないとのこと。

背景によってこんなにも違う印象を与えるデザインとは。お見事です。

そして私はマンゴーイナズマを克服し、彼らを天ぷらにして食べたいと妄想を膨らませているのです。

すると、昨年の味見は「無毒化に成功した」というのではなく「もともと無毒だった」のでしょう。

毒針毛と違って、毒棘は茹でると無毒化することが多いんですが、有毒のイナズマチョウでもそうなるのか、試したいとは思いますが、

それを知るためには、その前に「有毒であること」の確認が必要です。

つらいなぁ。一度痛い目に合わないと「無毒化」と言えない。まだその勇気は出ません。

最初に書いておきますが、ここはラオスです。日本でフチトリゲンゴロウ(Cybister limbatus)の味見をすることはできません。

日本のフチトリゲンゴロウ(Cybister limbatus)は種の保存法で採集が禁止されており、マニアの人気も高かった背景もあって誰かが密猟すれば
減ってしまった個体群にトドメを刺してしまう状態のようです。

しかしここはラオス。近縁と言われるCybister gueriniが、我が家のブラックライトにやってきたので、味見をすることにしました。

私が住んでいるのは比較的タイ寄りの都会ですが、このような素敵な出会いがあるものです。

大型のゲンゴロウは初めて。ナミゲンゴロウかと最初思いましたが、ナミゲンゴロウは温帯に住むことからこちらにはいないのではないか、と
丸山先生に教わりました。

さて、

捕まえて、というかシャワーを浴びて、玄関を開けてそこに何か来ていないか確認すると、落ちている!ガムシは何度か見たのですが、この水滴のような下膨れのボディはゲンゴロウ!やっほい初めまして大型ゲンゴロウ!

ということで写真撮影。あれれ、頭の後ろから体液?が漏れてるなと。灯火に来た時にぶつけてしまったのではないかと心配になりました。

気づいたのが外皮の模様。前胸背板は乾いたジャガイモのように無秩序にシワになっていますが、後翅は後ろに流れるように溝が彫られています。
これは水中で滑らかに泳ぐための「サメ肌水着」のようなものに違いない、と考えたのですが、どうやらお詳しい方によると違うようなのです。

なるほど。最初に返信をくださったのは満田晴穂さん。自在置物作家さんです。

詳しいと思ったらやはり作られていたのですね!雌雄ゲンゴロウを!

そして次に論文を紹介してくださったのがオイカワマル博士。ええと。魚の博士なはずなんですが、昆虫大学に出没したり
水辺に近い昆虫にも(というか生き物全般に)大変お詳しい博士です。

水中で交尾すると溺死してしまう! なかなかアクロバティックなセックスです。
そしてパワーではなくテクニックが必要と。昆虫のセックスはすごい。

確かに掴んでみるとツルンツルンと、濡れた石鹸のように逃げ回ります。
ここまでナミゲンゴロウ?ではないかと考えていたのですが風向きが変わったのが、夏休み子供電話相談室で大活躍中の丸山先生。
正式に依頼すると大変なお方ですが、Twitterで虫話が盛り上がっていると気さくにお声掛けいただけるので私のラオス生活もすごく助かっています。

むむ。ヒメフチトリゲンゴロウ(Cybister rugosus)とは。

黄色い模様があるのが特徴なのですね。
と、写真を見返したら腹側の写真がない!幸いまだ食べる前でしたので、家に戻ってから写真を取り直したんですが、「味見」というのは食べてしまうと
後戻りができないので、侵襲性の低い写真や計測をしてから食べるようにしておきましょう。
同定する前に食べる、というのは安全上問題があるのはもちろんですが、同定のポイントを写真に収めないままに
食べてしまうとはっきりしない味見になってしまう、という欠点もあります。

しっかり観察、しっかり味見を心がけたいものですね。

さて、お返事。

なんと。そして
調べれば調べるほどよく分からないフチトリゲンゴロウの世界。

外見ではほとんど区別のつかないいくつかの近縁種がいて、

「タイ産フチトリゲンゴロウ」といわれるものが輸入されていたこともあるそうですが、
それがそもそも存在するのか(フチトリゲンゴロウ(Cybister limbatus)がタイに分布しているのか )、という部分までよく分からないと。

これは食べてしまうので日本に持ち帰る予定はないのですが、種の保存法で学名が指定されてしまった生物と

外見上見分けのつかない近縁種、というのはとても大変な運用になっていくと思います。なんとまぁ。

さて、茹でて味見をいたしましょう。

前胸がまずい!

ゲンゴロウもオサムシ上科ですのでなんかの防御物質を持っていてもおかしくないですよね。
あの首筋の乳液はケガをして漏れた体液ではなくて捕食者である私に向けた防御物質だったんですね!
メッセージが伝わらない人でごめんなさい。

ちょっと古い本ですが、電子書籍でこれを買いました。

以前にも昆虫食の本を一冊買ったのですが、Elsevierで電子書籍を買うと、全くのセキュリティのないDRMフリーというのが選べます。
これで出版社が潰れてもデータが残る、という安心感のある仕様なのですが、
全ページに私の名前が書かれている。

という幼稚園のお道具箱かと思うような仕様で、これでDRMフリーのPDFとして売ったとしても、おいそれと配布できませんね。
流出すると出版社から私が損害賠償請求を受けてしまうでしょう。これはいい仕様だと思うので、各社真似して欲しいところですが。

ハネカクシなども含めて、甲虫のケミカルな防御物質はなかなか攻略が難しいものです。これを読んで勉強してみます。遠きラオスの地において、日本の有識者の方々にコメントをいただき、大変ありがたい、贅沢な味見になりました。ネットが通じる世界になって、ささやかな幸せを感じております。
言葉は通じないが昆虫を食べるラオスと、言葉は通じるけど昆虫は食べない日本と、食を通じて物理的に繋がっていくことで何が起こるか。
できればいいことが起こってほしいですよね。こんなにも農薬が少ない。というか農薬を使った農業をできるほどの所得がないラオスの貧困ですから
彼らが資本主義の荒波に放り出される時には、少しぐらい先進国から手助けがあってもいいじゃないですか。

そして農薬を使わない農業、という後進性の利益を享受して、昆虫を生み出す新しい有機農業を実装できたら、ラオスの特産になって
タガメやゲンゴロウがいつまでも元気な社会になって欲しいなぁと妄想を燃料にしながら日々を過ごしております。

さて、頑張ろう。

あ、最後に
フチトリゲンゴロウについて勉強するときにすげー邪魔だったのが、リンクは貼らないですが検索上位に上がってくる内容がゼロのHP。

「ググれ」が通用しない世界がもう虫の分野にも来てしまっています。ググりの先の情報に到達するためにも、やはり論文が読める訓練はどの分野でも必要だったと改めて感じます。

体長34mm のメス。
前胸が臭い。苦い!消毒液のような鼻に抜ける不快臭。
ゲンゴロウには前胸に大きな防御物質の分泌線があるらしい。
胸部、腹部は肉食だけあって旨味が強く、臭いものの旨味やコクが感じられるが、もうちょっと水洗いなどして防御物質を流したほうがよかったかと。
体長34mm のメス。
前胸が臭い。苦い!消毒液のような鼻に抜ける不快臭。
ゲンゴロウには前胸に大きな防御物質の分泌線があるらしい。
胸部、腹部は肉食だけあって旨味が強く、臭いものの旨味やコクが感じられるが、もうちょっと水洗いなどして防御物質を流したほうがよかったかと。
体長34mm のメス。
前胸が臭い。苦い!消毒液のような鼻に抜ける不快臭。
ゲンゴロウには前胸に大きな防御物質の分泌線があるらしい。
胸部、腹部は肉食だけあって旨味が強く、臭いものの旨味やコクが感じられるが、もうちょっと水洗いなどして防御物質を流したほうがよかったかと。

お久しぶりです。ラオスに来て1ヶ月半が経ちました。

とうとう、出会うことができました。
断片的な情報はあったものの、出会うことができなかったこの昆虫。

ヤシオオオサゾウムシRhynchophorus ferrugineus

1998年ごろに宮崎に侵入したときに大騒ぎになり、宿主は基本的にサゴヤシ。広食性でヤシ科のカナリーヤシに被害が多くでたとのことです。
宮崎県におけるヤシオオオサゾウムシの発生について(PDF)

サゴヤシ学会という、現在トップページが更新されていないHPの中に、昆虫食のすばらしい著書のある三橋淳博士のまとめ(PDF)がありました。

当時、私の興味は味見にしかなく、ヤシオオオサゾウムシの駆除に携わった、という方まで到達することもできたのですが、見つけ次第すぐに駆除するとのことで
結局手に入れることはできませんでした。

タイに行けば食えるとの話でもありましたが、それが養殖できるという話もあれば
採集だけしか無理だから高いのだ、という話もあって、いまひとつ解像度の高い情報が得られない状況でした。

ゾウムシはサゴヤシの成長点を食べること、そして日本においてヤシの大部分は更新を想定していない鑑賞木であることから、
経済的損失が大きい、そして成長点をやられたヤシは死んでしまうことから、食べ残しの多さもあって、カミキリムシと同じように
たとえ美味しくても養殖利用の将来性は低い、と考えていました。

ところが、ところがです。
どうやら、とあるデンプン質に微量栄養素を添加したら飼える、との確かな情報を得ました。
というのも、こちらのラオス人スタッフの義理のお兄さんが、家庭用に飼っているとの情報をくれたので、
早速行ってみました。

養殖の詳細はいまのところナイショにしますが、うまくいったら公開します。

…うっま。うまいです。これはすごい味。そして唯一無二の食感と芳香。見事。これは高値だわ。すごい。

さて、これが単にビジネスにとどまらず、
なぜラオスの食生活を改善する可能性があるのか。

1,飼育がそもそもラク
今まで候補としていた葉を食べるタイプの昆虫は、どうしても生の葉を食べさせる必要があるので、手間がかかり、マメさが必要であることがネックになりそうでした。
こちらは、培地となるデンプン質+添加剤を用意したら、1週間に1回の追加の餌だけ、そして一ヶ月後の収穫までほぼメンテフリーです。
昆虫養殖ビギナーなラオス人にとって、これはなかなかいいスタートになるのではないか、と思いました。

2,アリの襲撃がほとんど起こらない
多くの昆虫養殖で、熱帯地域ではアリの襲撃が大きなリスクであることを確認しています。
複数のアリが、入れ代わり立ち代わりアタックしてくるので、脱皮時や孵化幼虫の大きなリスクになっています。
しかしこの養殖では地面に無造作に置かれただけでした。「アリは全然きにしなくていい」とのことです。
何が起こっているのか、いまのところ仮説レベルですが、おもしろいことになっています。キーワードは好気発酵です。

3,タンパク質価はそこそこで組み合わせ次第。
アミノ酸スコアは先の三橋博士の報告によるとシステイン、トリプトファンがおそらく少ないとのことで、
それらの多いバナナなどをエサとして与えたり、ヒトが食べる際に組み合わせたりすると、より栄養価を高くすることができそうです。
ラオス人の食生活も自給的米食のおかげでデンプンが十分で、それ以外の栄養が不安定という状態なので、デンプン質を主体とするエサを濃縮・転換して
タンパク質や脂質を得られる系は(葉を食べるタイプと同様に)将来性があります。

4,豊富な脂質とおそらく密度効果による蛹化抑制
脂質が多いことから、飽食の日本人にはあまり大量にはオススメできませんが
ラオスの村民では脂溶性のビタミンへの欠乏が調査により明らかになったので、これらの脂質を食べてもらうことで
より健康的な食生活へと近づくでしょう。
そして、蛹化にあたってはいくつかの条件が必要であることと、高密度で蛹化が抑制されそう、という話も聞きました。
これも飼育実験により確認しますが、密度効果によって蛹化を抑制できれば、ミールワームのように食べごろの最大体重の幼虫のまま
長期間、新鮮な昆虫を常温保存できる可能性があります。冷蔵庫が普及していない村落にとって、これもまた有望そうです。

5,どこまで吸収できるかわからないがミネラルが豊富
アフリカの一部の地域では、近縁のヤシオサゾウムシが生計向上に役立っているとの記事もありました。
亜鉛、鉄なども含まれているので、微量栄養素としての寄与も期待できるかもしれません。
重金属はアゴに蓄積して強度の向上に貢献しているとの論文もありましたので、アゴのある昆虫のほうが、ないウジタイプよりも
ミネラルが豊富、といえるかもしれません。こちらはまだまだ未確定な情報ですが、養殖が軌道にのれば、そのような部位ごとの成分解析もできると思います。

ともあれ、まだまだ養殖している人はラオスに少ない、とのことで
これからレシピの開発をして村落の反応をうかがおうとしているところです。

これまでの昆虫に加えて、ヤシオオオサゾウムシの養殖試験にも許可が出ましたので、チャレンジしてみようと思います。

一つ、未確認なため、日本のみなさんに情報を集めたいことがあります。

成虫の雌雄を外見で見極めることです。

口吻の細長いほうがメス、とのことですが、いまひとつ確証がありません。もしご存知の方いらっしゃいましたらコメントいただけませんでしょうか。

メスが左、オスが右、と教えてもらったけれど。。。
サゴヤシオオゾウムシ成虫メス?
サゴヤシオオゾウムシ成虫オス?
サゴヤシオオゾウムシ成虫
サゴヤシオオゾウムシ成虫

さて、ここでもう一度考えておきたいのは
「害虫」という概念です。

この虫の養殖を日本で行うことはまず無理です。植物防疫法にひっかかる他
大きいものでは数千万円する鑑賞木を枯死させてしまうのですから、もし逃したら損害賠償請求も膨大になるでしょう。

ではラオスにおいてはどうなのか。
一言でいいますと「蔓延しすぎて害虫とはみなされていない」のが現状です。

サゴヤシを含めヤシ科は成長点を食害されると枯死します。
この虫はヤシが傷ついたときに出る匂いに反応して卵を産むそうなので(このゾウムシ自体に成長点まで侵入できるほどの傷害を与えられるパワーはないようです)
熱帯地域特有の大きな風水害や雷、そして、ほかの昆虫によってあたりまえの傷害をうけ、ゾウムシが発生し、あたりまえに枯死していく、と考えられます。

これが「害」だという社会のコンセンサスがないために、ウンコにハエが発生して分解されていくように、「自然現象」としてとらえられています。

そうなのです。「害」とは通常起こらないことに対して名付けられる政治的な概念なのです。

例えば震度4の地震が他国では大災害になっても、日本ではTwitterが少し賑わうぐらいの効果しかありません。

更に言うと、殺虫剤が生まれる前は「害虫」という概念がありませんでした。

殺すことによる収量増加が「当たり前」になったからこそ、それを阻害する昆虫が「害」とみなされるようになったのでしょう。(家庭における「当たり前」が昆虫がいないこと、となっていくコンセンサスもそれはそれで再考する必要があると思います。)

当然ですが、土地を均一化し、単一の植物を栽培すれば、それを宿主とする昆虫を誘引し、半養殖しているのと変わりません。昆虫養殖は農業においての「当たり前」に疑問を呈し、本当にその土地から単一の植物を得るのが「当たり前」なのか、生態系レベルで見直すためのツールになる、とも考えています。

ゆくゆくは、将来的な話ですが
「地域における望ましい生態系モデル」というコンセンサスを、様々な行政区画に応じて組むことで、ある場所では害虫になり、一方である場所では特産品になる、といった、パッチ状の生態系利用ができてくると面白いな、と思います。生態学者は隣接する行政区画によって異なる政策が行われている場合、政策によって無意識的に行われている「実験」をとらえ、解析し、その効果を示していく、そんな研究者は非介入型の実験的生態学が展開できるのではないか、と妄想しています。

ひとまず出会いはこれまで。こっから具体的な養殖と、村落への提案のフェーズに入っていきます。

さて全国のハムシの味が知りたいファンのみなさん。
やってまいりました。

ハムシの味を食べ比べる選手権こと第一回ハムシ味比べ選手権 in ラオスであります。

初開催、ですね。だれがやるんですかね。

わたしだよ。

ラオス人スタッフに確認したところ、
食べないそうですので、これはラオスの昆虫食文化とは独立した
私の興味の範囲のアレということでご理解ください。

ハムシの写真はまぁとりにくい。
ひたすら動くいて静止しないし、飛ぶし、
構造色できらめくのに、フラッシュで撮影すると暗くなってしまう。

ハムシハンドブックの尾園さん、どうやってとられてるんですか。
きらめく甲虫の丸山先生、どうやってとられてるんですか。

見よう見まねでやってみましたが
いろいろと説明できる技術と、熟練の技術とがあるようです。

さて、選手入場と参りましょう。

フェモラータオオモモブトハムシ

Sagra femorata

三重に定着した外来種。クズをたべて拡大中。
ここラオスでは在来種。マメ科をかじって繁殖中。yeah
4月に食べたら苦かった。三重で食べたのより苦かった。

味見してみたら
うまくなってる!苦味が消え、香ばしさが増し、三重産のおいしさに近づいている。繭に入っているときはずっと苦かったので、動けない時期に苦味を保つのは意義があるかと。成虫になってから蓄養して美味しさを上げる、という楽しみ方がありそう。

ジンガサハムシ  Aspidomorpha indica

陣笠のように中央が突起になって、周囲にひらべったくスカートになる形状。
金色にきらめくのも特徴。透け感ときらめき、色味が絶妙で美しいハムシ。

4月に幼虫、蛹、成虫を味見したが、もう一回味見してみる。

Aspidomorpha indica
Aspidomorpha indica
Aspidomorpha indica

茹でて冷やして翌日見るとグリーンがかってた。構造色の色変わりの
メカニズムがあるらしいんだけどよくわからず。
すこし苦味があって、食草のあおくさい匂いもあってあまりおいしくはなし。彩りとして美しいので使える程度の味。

Oides andrewesi

Oides andrewesi

カンボジアで見つけたときは
丸山先生から毒草食べるので注意とのご指摘をいただきました。

栽培実験をしている大豆の葉を食べているところを現行犯で捕まえたので
少し味見。やはりゴボウ臭がある。苦味はないのでカンボジアで味見した同種とは食草で味を変えられる可能性がある。要検討

ミドリサルハムシ属のハムシ
昨年8月以前に食べたものと同じもの。前回は白バックで写真をとれていなかったので再度挑戦。

ザクッザクとした歯ごたえがよく、日本のミドリサルハムシも同様。
苦味があとから響いてくる。ゴボウ臭があり、これと毒草との関係を知りたい。

ミドリサルハムシ属のハムシ

さて、

ハムシの実用可能性について。ですが。
いかんせん鱗翅目の幼虫にくらべると食べ方が荒い。
イモムシは食べ残しなく、きれいに食べきるのですが

ハムシは食害に応じて放出される植物の防御物質と正面から向き合うこと無く
途中まで食べて放置し、また新しい部位にかじりつく、という飛び飛びの食痕をつくります。

歩留まりという意味では悪いですが、葉を切り取らず、生きた植物に発生させるのがいいかもしれません。

ハムシはほどほどにやわらかく食べやすく、彩りもゆたかですが、風味が食草に影響されるのと、意外と採集時期によって、味も変わるので、これからしっかり見ておきたいと思います。

1

ラオスに来ています。
3月には日本で、外来種であるフェモラータオオモモブトハムシを食べる会を開催していました。
そして4月、こちらのプログラムでラオスに来ているんですが、新拠点を借りたその敷地内で、出会いがありました。

このプログラムでは、ラオスの住民の栄養に寄与できる実践的な農業を現場で技術開発し、実装していくことを目標としています。
住民が季節性の昆虫を「採って食べる」ことは私が参加する以前から分かっていたことで、それを少ない労力、力の弱い住民でもできて、そして不足しがちなタンパク質を補給できる新家畜候補として昆虫に着目しています。

はじめから昆虫ありきではなく、「昆虫も含めた」農業の実装を目指しています。
外来種を食べる意義でも触れましたように、フェモラータオオモモブトハムシはクズを食べて成長するため養殖が容易と考えられます。

外来種を養殖するか、全滅させるか、というのは侵入した地域におけるシビアな問題になるので、あくまで思考実験として「養殖化」を提案しましたが
ここラオスでは在来種として、このハムシが生息している「らしい」との話を、文献で知っていました。

ラオスではタンパク質が不足しがちであるものの、大豆を食べる習慣は少なく、雨季は水が多すぎ、乾季は少なすぎてなかなか大豆の作付けが難しい地域です。大豆などのマメ科は窒素固定をして土を豊かにするので、自給的で肥料や農薬を買うお金のない住民にとっては、魅力的な機能です。一方で、木質化して明らかに一年以上、つまり雨季も乾季も乗り越えたマメ科の雑草がいたるところにいます。つまり、「大豆がなければ別のマメ科の植物体を虫に食べさせてそれを食べればいいじゃない」ということです。

12月のセミナーで、ハムシを食べる、という人が半分ぐらいいたのを確認しましたので、大豆よりも有望な食料資源だろうとは思っていました。ところが、クズが見当たらない。うーん。どこにあるんだろうと2日ほど時間を見つけて探したものの、繁茂している様子はありませんでした。

それとは別に、新拠点を借りようといくつかの物件を下見をしていて、敷地が広く、簡単な農業実験もできそうな庭もある物件に決めました。
そしてそこの生け垣を整備していたら、ついに。

Sagra femorata Laos
Sagra femorata Laos

 

 

キター! !!!!

Sagra femorata Laos
Sagra femorata Laos
Sagra femorata Laos
Sagra femorata Laos

 

いくつもいた!

Sagra femorata Laos
Sagra femorata Laos
Sagra femorata Laos
Sagra femorata Laos
Sagra femorata Laos

 

脱出済みのもいた。

Sagra femorata Laos

 

集めた虫こぶたち。

Sagra femorata Laos

 

 

45頭とれました。

Sagra femorata Laos

 

 

グリーンも。

Sagra femorata Laos
Sagra femorata Laos

 

 

さて、不思議なのはこの虫こぶの植物がクズではなく、すでに枯れていて、植物の種類が特定できなかったこと。そして今の時期でてくるということは、宿主である茎と、成虫が食べる葉が一致しない可能性があるということです。宿主となるには、ツル性であることが条件になりそうです。というのも、ツル性で虫こぶができるタイプで、かつそれほど木質化が進んでいない部位でないと、脱出が不可能になると考えられます。三重でみつけたこの大きな虫こぶも、

巨大むしこぶ。マンションのようだがほとんどおらず。

たくさんいそうですがむしろ少なく、古い脱出跡しか見られませんでした。そして、いずれの虫こぶも完全に埋まっているのではなく、繭を破れば脱出可能な「窓」がついています。なので、成虫が食べるものの、茎は利用しない「餌用のマメ科」と、茎を利用する「宿用のマメ科」があると思われます。

ちょうど45頭見つけましたので、いくつかのマメ科を与えて比較をしてみようと思います。

あ、忘れるところだった。味見。味見が大事です。茹でて味見します。

茹でるための便利グッズとして、これを使いました。これで電気さえあればどこでも茹でられる。
カセットコンロなど可燃物を使った加熱装置は飛行機での移動などでかなりめんどくさいことになります。少し重いですが、成田で買いました。

Sagra femorata


意外と、強めの苦味がある。三重のはなかったのに。

成虫になってから摂食はしていないので、おそらく宿主となった植物の防御物質だろう。意外だった。
カリカリと砕けていく外皮は口に残らずクリスピーな食感。クリーミーな味もあるので苦味だけどうにかできればよさそう。

Sagra femorata


体が小ぶりな分苦味も少ないが、やはり苦い。熱帯のマメ科はみんな苦いのか。クズを食べさせてリベンジしておきたい。
そして幼虫の味見もそのうち。

リンク

それでは採集に参りましょう。

 

 

Larva of Sagra Femorata

狙うのはこんな虫です。

「フェモラータオオモモブトハムシを茹でる会」の開催は3月3日

念には念を入れて、3月2日に前日入りして採れるかチェックしました。

虫こぶを見つけたら

コブになっている部分の上下を3cmほど残して切り、縦に切れ込みを入れます。そのとき、コブの中心ではなく、通常の茎よりもちょっと膨らんだぐらいの部分に偏っている幼虫がいることが多いので、切らないように注意しておきましょう。縦に切込みを入れたコブは、手で簡単に引き裂くことができるので、よけいめに茎を残しておくと、不幸な事故を防ぐことができます。

蛹化が近いのか、やや縦長に入っています。

 


休眠中なのでゆーっくり動きます。

開催予定の河川敷。少しの採集で十分の量が取れることを確認。
少し離れた別の河川。密度は低いけれどすこしいた。

ガの蛹が虫こぶ跡に間借りしていました。新たな環境も作り出している模様。

さて3月3日、ひな祭りの日。私達はフェモ祭りをしていたわけです。

モノ好き、もとい。好奇心旺盛な方々が集結。黙々と作業。
ギリコさん。うれしそう。
茹でます。ふっくらと膨らむけれど破裂はしない。
採集後の端材たち。意外と端っこのほうにいることがあるので見落としの危険がありそう。

 

茹でます。対流するフェモラータオオモモブトハムシたち。

茹でると枝豆のようないい香りがひろがり、茹でた水が黄色くなりました。

それでは次、試食料理編・茹でたフェモラータオオモモブトハムシの持ち帰り料理開発編となります。

2

2013年にゲジを味見してからもう3年にもなるんですね。
きっとオオゲジはおいしい、と思いながらのようやくの出会いです。

今回は他の昆虫を目当てで夜間採集に行ったのですが、
目的のものはとれず、でもオオゲジは二頭とれました。
ゲジは偽複眼、という単眼の集合体を一対もつことから
かわいらしいつぶらな目をしています。

長い多くの脚に隠れて見えませんが
竹林の隙間から見えるような可愛らしい顔。すばらしいですね。

味見のまとめでも気づいたのですが
「食べる前の見た目の印象」と

「食べておいしいとわかってからの見た目の印象」
は大きく変わってしまいます。
ゲジというとムカデの仲間で牙があって、動きが早くて足が多いし
すぐとれるから触るのが怖い。触って殺してしまうのも怖い、
という感じで、
どうにも猫の背みたいな「掴んでいい部分」が見当たらないんですね。
どう触っていいかわからない、というのはなんだかお近づきになりにくいです。
ところが、一度おいしいことが分かってしまうと、
そんなのは
大した問題ではなくなってしまいます。
食べて克服すること、というマウンティングによる自分の優位性が
確かめられたことで、
相手を過大評価しなくてすむようになるのかもしれません。
「苦手な虫を食べて克服」という昔の辞書の暗記のようなことが
将来起こるかもしれません。
そして、ゲジというネーミングも悪いと思います。
ゲジという濁音二音だけ、バカが考えたような短い名前。
食感も悪そうで、ジャリジャリしそうな名前ですよね。
オオゲジといういかにも大きすぎるような印象をあたえるのも良くありません。
私たちが食べる動物性食品のうち、オオゲジは小さい方です。
そこで、
コガタリクアノマロカリス
というかっこいい名前をつけました。
学名で奇妙なエビ、という意味を持つアノマロカリス、
彼らはただデカくて海にいるだけですから
イセエビと比べてもあんまり奇妙でもありません。
陸上で捕食者として走り回る彼らこそ、「奇妙なエビ」でしょう。
食欲をそそらない和名、というのもこれ以外にも改訂していいかもしれません。
ということで、味見をしてみましょう。
茹でるとあっという間に自切し、胴体だけになってしまいました。

足先はゼンマイのように丸まります。
色は不透明になり、青みがかりました。
味見
ゼンマイのように丸まった足先の食感はゲジよりだいぶ固い。
イモムシのようになった胴体はシコシコとした食感と芋のような甘い香りとやさしい甘み、
そしてエビに負けない強い旨味があって最高。あぁうまい
奇妙なエビ、コガタリクアノマロカリス、
特に苦手な方は、その克服にいかがでしょうか。

2

皆様
ご無沙汰しております。
休眠中の蟲喰ロトワです。

最初に悪いニュースから。もう半年、休眠を続けなくてはなりません。

ほとほと昆虫学者としての実力と、将来性のなさを痛感しておりますが、
自分が言い出したことですし、
とにかく形にするべく、在籍期間満了の最後の半期をやり遂げようと思います。

休眠中ですが一つだけ、
一年がかりのプロジェクトがありましたので、
軽く記事にしておきます。

始まりは昆虫食仲間のムシモアゼルギリコさんが
つぶやいた一言からでした。


そうです。バレンタインデーです。

残念ながら私はギリコさんが期待するような
チョコをもらえませんでした。

生命保険の方が研究室にチラシと一緒に置いていったチョコを頂いただけです。
もちろん自分に保険などかけるはずもないので、
私は顧客・勧誘対象ですらありません。

そこで思いついたのです
「一年後の自分にチョコを贈ろう」

ギリコさんが納得するような、昆虫食研究者らしいチョコを。
友チョコ、ならぬ俺チョコといった感じでしょうか。

そこでこんな話を思い出しました。

昆虫食関係のどっかの本にあったと思うのですが。
「コオロギに食味の良い餌を食べさせて、フレーバーコオロギなどを作っても良いかもしれない」という話。(うろおぼえにつき出典ご存知のかた、おしえていただければ。)

これはすばらしい。
ということで、バレンタインデーらしくチョコフレーバー昆虫を作りましょう。

とはいえ、今までに揚げセミ幼虫のチョココーティングや
セミ成虫♂の鼓室へのチョコ注入、
クリムシチョコなど、チョコ昆虫はありふれた調理法です。

なので、もう一歩攻めてみることにします。
昆虫は養殖に大きな期待がかかっていますので、
一年がかりで、チョコで育てた昆虫を作るのです。

残念ながらコオロギは
チョコが体に合わないらしく、食べてくれません。

やはり、広食性のゴキブリが最適ではないか、と考えました。

一年前の開始時には、
マダガスカルゴキブリ アルゼンチンモリゴキブリ
オレンジヘッドローチの三種しか飼育していなかったので、
この三種、体格の近いものを1頭ずつ用意しました。
そして、22gのチョコと水を入れ、開始です。

そして一年後、どうなったでしょうか。それは後編で。

当ブログでは、
マダガスカルゴキブリ以外の味見を紹介していませんでしたが
ゴキブリはペットの生き餌として、ペットそのものとして、多くの種が輸入され、
飼育愛好されています。

チョコ作りにはとりあえず3種を選んだのですが、
数カ月前に、とあるブリーダーの方から理由があり

多くの種をお譲りいただき、味見をしました。
複数種を食べ比べることで、「ゴキブリの味」というものを概観し、
今後の指針にしようとおもいます。

マダガスカルゴキブリは以前に食べましたのでこちら(前編 後編

続いてオレンジヘッドローチEublaberus prosticusの羽化直後個体。

飼育環境下では臭いが味はどうか。羽;クニュっとした食感とシコシコした歯ざわりが美味しい。昆虫の羽ではかなり美味しいレベル。頭部、芋系の香りと粒感のあるタンパクな味。全くエグみがない。胸部かなり美味しい。やはりサツマイモ系の香り。見た目できになるトゲも柔らかく、問題なく飲み込むことが出来た。腹部。やはりゴキブリ臭。集合フェロモンの強い匂い。味というかニオイがダメ。調理前に腸を切除するか、揚げて揮発させる必要があり。

アルゼンチンモリゴキブリ(デュビア)Blaptica dubia

外皮が比較的柔らかく食べやすい。茹でると少しゴキブリ臭。揚げればいけそう
ちなみに、このデュビアは、
昨年の蟲フェスでデュビアジャパン http://dubia.jpさんが
料理コンテストに使用し、脱皮直後の虫をつかったアヒージョ「ゴキージョ」を
出品し、大変おいしくいただきました。
野菜メインの飼育をすることが、美味しさの秘訣だそうです。

オガサワラゴキブリ


オオモリゴキブリ


こちらは採集品、オオゴキブリ


カプチーナ、と呼ばれる種


そういえば、やきそばにトッピングするとなんたら、
という騒ぎもありましたね。


当然ですが、原材料に記載されていない素材が入っていた場合、
食品の製造工程になんらかの問題があることが示唆されるため、
保健所に通報し、検査することが妥当でしょう。
エビ・カニアレルギーのある方の交差反応も心配です。

ただ、同時期にチェーンファミリーレストランでのo-157食中毒があり
その混入経路が不明のまま、当該店舗のみ3日間の営業停止処分だったことを考えると

同社の商品を全回収することは、
その危険性と照らしあわせてみると大きすぎる反応にも見えます。

余談ですが、
彼らが本格的に嫌われたのは、ビル化と関連していると考えられます。
「害虫の誕生」という本は

ハエや蚊などの、衛生害虫の成立と、
政府の国力増強政策が関連していることを示した良書ですが、

オビに
「なぜゴキブリは嫌われるのか」と
あるような、ゴキブリの害虫としての成立過程には
ここ数十年の現代の歴史がフォローされておらず、
もう少し説明が必要に感じます。

彼らは昔から木造家屋への侵入はありましたが、
「コガネムシは金持ちだ」という歌のように
有機物が豊富な、金持ちの家にしか来ない昆虫で
とりたてて嫌われるものではなかったようです。

数十年前でもハエや蚊、その他迷いこんでくる雑多な昆虫のうちの一つでしかなく
室内温度が氷点下になるような隙間風の多い日本家屋においては、
虫達は冬にはいなくなったものでした。(越冬するカメムシなどはいたようです)

平行して、
1970年代以降かねてからオフィスにしか使われてこなかったビルが
多目的化し、飲食店や住居として使われ始めました。

ビルは木造一軒家に比べて気密性が高く、空調によって
常に乾燥し、一年中温度が安定している、膨大な空間といえます。
そこからは、その土地に生息していたほとんどの生物が追い出されたのです。

ヒトを由来とする湿潤な有機物は、
公衆衛生の観点から、滞留させないことで、下水を整備し、
ハエや蚊の発生を抑制しました。

そんな中、ゴキブリは乾燥に耐え、温かいビルに適応しながら
わずかな有機物を齧ってゆっくりと成長し、
ビル内の環境への適応を果たしたのです。

彼らはそもそも衛生害虫でないので、
ビル内で殺虫剤を使うことは本来の用途でありません。
そのため、ハエや蚊の発生が抑制されたビル内の王者となったのです。

その根拠として、
ゴキブリ用途の業務用(害虫駆除業用)
殺虫剤が登録されたのが昭和53年。

http://www.pref.chiba.lg.jp/eiken/eiseikenkyuu/kennkyuuhoukoku/documents/15-p1.pdf

殺虫剤は農薬ですので、薬事法により用途(=目的昆虫の名前)が決まっています。
ビルに適応したゴキブリは、おそらく、当初殺虫剤を使用できなかったのです。

そこから見えてくるのは
「ビル管理者がゴキブリの苦情を害虫駆除業者に言い始めてから」
ゴキブリは嫌われ始めたといえるでしょう。

はたして、ゴキブリは
ビルというゴキブリに適した環境を提供しておきながら
そこに増えたゴキブリを害虫認定するというマッチポンプによって
日本一嫌われる昆虫の座をヒトによって与えられたといえるでしょう。

そのため、彼らはハエや蚊のような重篤な感染症の中間宿主となることはなく
感染症の運搬者となる可能性が指摘されているものの、それは潜在的なもので
カラスやタヌキ以下の低いリスクしかないものです。

徹底して駆除し、殺虫剤耐性ゴキブリを産むほどではないといえます。
今や感染症発生時のハエや蚊の駆除と同等の徹底ぶりです。

これでは、いざ彼らを媒介とする感染症が蔓延したときに、
殺虫剤が有効な封じ込め手段ではなくなってしまいます。

例えば病院では、抗生物質の使用を制限しており、
最も強力なバンコマイシンの利用は「奥の手」でありかなり慎重です。
それは耐性菌の発生を助長するものであり、院内感染の蔓延原因となるからです。

幸いなことに、というか不幸なことに、
そもそもハエや蚊ほど感染症リスクが高くないので
殺虫剤耐性ゴキブリが発生している現在も、
直接的な感染症のひろがりはありません。

また、
ニューヨークのゴキブリは、味覚が進化している可能性も指摘されています。


そもそも、根拠の曖昧なまま始まったゴキブリ駆除の要求は
「ほどほど」を失い、もはや
ゴキブリそのものよりも怪物となっているような気がします。

おそらくですが、殺虫剤の広告において
虫への嫌悪感を煽るマーケティングは、
薬事法の「優良誤認」を防ぐため、と思われます。

薬剤は消費者に効果を誤認させるような広告を使うと、
厚生労働省から是正勧告が入り、回収を指導されてしまいます。

そのため薬剤の効果を広告するよりは、対象となる昆虫の嫌悪感を煽るほうが
効果的であり、薬事法の面からみても安全だったのでしょう。
業務用殺虫剤から、家庭用殺虫剤への変遷は又の機会に紹介します。

もしその煽りによって、極度のゴキブリ嫌いになってしまった人がいたとしたら
ゴキブリに対する加害者というより、ゴキブリと共に、被害者といえるのかもしれません。

さて この話は

仮説や妄想を多く含んでおり、検証が必要な「言い過ぎな話」が多くあります。
なので、今の段階で、この話をさも教科書に載っている正しいことのように、
引用を明記しないまま拡散しないでください。

紹介、引用する場合はこのページごと紹介して頂くと、
私に反論がきちんと返ってきますので助かります。

少し暗い話になりました。
後半は明日、書き上げます。チョコで一年育ったゴキブリたちは
はたしてどんな味に仕上がったのでしょうか。

3

オオミノガ Eumeta japonica
Eumeta variegata 2011年より学名が統一されたそうです。


以前の記事で、地域によっては絶滅が危惧されているものの、
味見をして後悔
していたのですが、
その後オオミノガ自体が移入種らしいとのこともあり
専門家同士でも保護すべきか意見が別れるらしいとお聞きしました。
保全の意思決定は専門家に任せるのはもちろんですが
私のようなアマチュアは「必要以上に採集しない」
「採集した場合は学術的価値の高い状態で保存する=ラベル付きの標本にする」
ことをきちんと自覚しておくべきだと思います。
そのためオオミノガについては、
味見以降食べる予定はありませんでした。

ところが
その後、虫cafe2014にて鱗翅目の味見について発表したところ、
ミノガの専門家、新津修平博士がお声をかけてくださいました。
「オオミノガメス成虫の味見をしてもらえませんか」

なんと共同研究(?)の申し出。わくわくします。
オオミノガの興味深い生態を教えていただきました。
1,ミノガのメスは一生ミノから出ず、オスがフェロモンに引き寄せられて交尾に来る
2,メスの羽化は蛹の上部が外れるだけで、殻を脱がない。外れた上部からは頭部が顔を出す。
3,メスの交接孔は頭部付近にあり、オスはミノの下部から交接器を挿入し、ミノの上部で
折り返し、交接孔へとアクセス、交尾する。
4,交尾後のメスは数日後にミノの中に卵を放出して、ぺちゃんこになってしまう。
いやー理解するのに時間がかかった。(というか何度も間違えた。)

ミノを切り開いたところ。右が上部
 
中を取り出してみた。右が頭部。頭を上にしてミノに入っている。

羽化。オスが下からアクセスするので、下部だけ開くものと勘違いしていた。
予想外に上部が開いたので、ミノに戻す時間違えたかと。
正しくは左が頭。 ミノは右が上部なので羽化時は逆方向。
 
尾部だと思っていた頭部。大量の毛が出てくるが頭っぽくない。
交接器に見えていた。


蛹の殻の残りを切り開く。皮が薄く、傷つけてしまった。
左が頭部。

茹でた後。内部がぎっちり卵だということがわかる。
 
ホタテと比較。精巣と食感がよく似ている。
 
味見
蛹の殻を取り去った表皮はきわめて薄く繊細。歯をあてたときのプチッと感はほとんどなく、香る木の香りとわずかな収斂味。上質な栗のような素朴な甘み。卵のつぶはいずれもやわらかく、口の中でほぐれ、スクラブ感のある食感ととも広がっていく。抜群。栗スイーツとして商品化したいぐらい。これは美味い。オオミノガヤドリバエの気持ちがわかってしまう。
今回は新津修平博士に詳しいアドバイスを頂きました。
2011年に学名が更新されていたことも教えていただきました。
ありがとうございました。


さて、
今回は味見、という形で研究者とつながることができました。
やはりヒト一人の常識では、昆虫を理解することは困難です。
オオミノガ一種をとっても、その発想と実践は、
ヒトの想像力を易易と越えていきます。
しかも、
昆虫は100万種という膨大なアーカイブとして存在し、
それらにきちんとアクセスするには、一人の力ではどうにもなりません。
つまり、
「昆虫アーカイブにアクセスするには、目的に応じた人的ネットワークを構築するしか無い」
といえそうです。
つまり「ある地域で、ニーズに応じた昆虫食を提案できるネットワークを構築した者」
が、いわゆる昆虫食研究者、といえる存在になるのではないでしょうか。
これは今までの
「研究者不在」の養殖昆虫ベンチャーを見ていて気づいたことです。
彼らは「効率」をウリ文句に、多くの投資を集め、投資が多いほどその効率が
上がることを示すことで、会社を維持しています。
ところが、
その規模が十分に巨大になった時、
既存の昆虫食文化はどうなるでしょうか。
生態系はどうなるでしょうか。莫大な投資を蹴ってそれらを守る経営者は
いるのでしょうか。
昆虫食を進めるにあたって、
やはり、昆虫研究者を手放すべきでない、
と思います。
それは
タイでのコオロギ養殖を軌道に乗せている
応用昆虫学の教授を見ていても思います。
研究者を通じて、生態系に考慮した形で、
更に社会の昆虫への偏見を減らしていくような
「研究者ネットワーク型・課題解決型の昆虫研究体制」を作るべきではないか、
と考えています。
その時、
日本という教育の行き届いた、膨大な標本をもち、多くのアマチュア昆虫研究者を
抱え、しかも昆虫食文化のある、特異な国の真価が発揮されるのではないでしょうか。

7

今日は梅の木についていた見るからに食欲をそそるイモムシ。
カラスヨトウ。Amphipyra livida corvina

パッと見はスズメガのような尾部に見えますが
スズメガが角状のしっぽ(尾角)に対してこれは円錐状の突起。こちらのほうが肉感的です。
茹でていただきましょう。
味見。
少し苦味があるものの、スズメガ系のいい味。モモスズメが近い味。コスズメが近い触感。
姿も似ているが味も似ている。やや粒感のあるこしあんのような食感もあり、香ばしさもある。楽しめる味。


ここで「茹でただけなのに香ばしい」という
昆虫独特の現象について仮説を立てておきます。
1,アミノ酸・糖の存在を知らせるニオイ
アミノ酸と糖を加熱して起こる反応を「メイラード反応」といいます。
メラノイジンを主成分とする様々な物質と香り、特に香ばしい香りが特徴です。
プリンのカラメルのニオイ、というとピンとくるかと思います。
この昆虫には、アミノ酸と糖が含まれており、それらが常温で、何らかの酸化酵素と
反応して、このような香気が発生。エネルギーと体の構成要素である2つの主要成分に
我々ヒトは食欲をそそられる。
2,アルカロイドの分解を示すニオイ
アルカロイドは多くの植物体に含まれる毒物質で、
ヒトも肝臓に解毒作用はあるものの、多量の摂取はキケンです。
同様に植物食性の昆虫にも、解毒または耐毒の仕組みがあると考えられます。
解毒は消化酵素によって無毒化するもので、
耐毒はそのまま体内や血液中に毒成分をもっていても、
生命活動に支障をきたさない仕組みのことです。
特に毒を酸化分解した場合、
香気成分であるフェノール、ピリジン、ピラジンなどが
出てくる可能性考えられます。。
そのため、「植物由来アルカロイドを分解している昆虫」
は食べられ、
「血液中に滞留させている昆虫」は食べられない、という嗅覚弁別なのではないか、
と考えると、
ヒトが火を持つ前から、「香ばしい香り」を良い香りとしている理由にもなるかもしれません。
(香ばしい と 火 が先に関連していたならば、火の危険性や火に対する恐怖と全く別の「食欲」がそそられる理由が説明できません)
もうちょっと先の話ですが
「嗅ぐことで美味しい昆虫を見分ける」
ことができるようになるかもしれませんね。 感覚を磨いていきたいと思います。