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「ミイラ展」を観てきました。

中は撮影禁止です。

日本科学博物館でやっている企画展「ミイラ展」に行ってきました。ここで扱われるミイラは自然と人工の2タイプがあり、遺体が偶然によって長期間保存された状態の自然ミイラとは異なり、人為的な介在のある人工ミイラには本人もしくは他人の手が加わっており、そしてそこには後世の人間に伝えたいメッセージ性のある『表現物』とみることもできます。

今回は「遺体」というよりもある意味、「究極の表現物」としてのミイラについて考えたいと思い、観にきました。

昆虫のさみしさについて考察したこともありましたが、やはり身近な人の死別、というのは大きなストレスとなる経験です。「配偶者の死」をストレス度100、結婚を50として、ストレス指数を測定する、という「ライフイベント法」という尺度もありました。

葬送を目的としたミイラはいずれも「念」がこもっているように見えます。遺体という「場合によっては無価値にもなるもの」に貴重品や高い技術を用いた保存技術などで「装飾」することで、その価値の高さを示しているようにも見えます。一見して価値のわかるものにはむしろ装飾の意味はないのかもしれません。

特に自分に負荷が大きかったのは、「即身仏」といった自らの意志で生前から遺体を加工し、その遺体に込められた「念」を後世に伝えるものです。即身仏はどうしても移動したり外気に晒すと痛みますから、門外不出のものが多いように思います。その中でその保存と補修を目的として、「科学的に」調査を進めたのが小方保(おがたたもつ)博士だった、とのことです。即身仏という非常にナイーブな存在にたいして、それを保管する寺の価値観に寄り添い、「保存と修繕」を目的として学術調査までできるように交渉する。科学の及ばない範囲にある存在にたいする科学者のアプローチとは、このように相手方の価値観に沿う提案であってほしいものです。

科学者ということでもう一つ、江戸時代の本草学者によるものと伝えられるミイラ。宗教目的でない、自らの意思によるミイラはほとんどないとのこと。全体が茶色く変色した異質さと、死の間際に大量の柿の種を摂取してタンニン源とする元気さ、力のこもった(ようにみえる)ポーズも含めて、これはすごい「表現物」だと感じました。

さて、科学者が自らの命を削って表現物(論文)をつくるのはそれほどまれなことではありません。そういう意味で科学もまた宗教じみた信念といえるのかもしれませんが、ピロリ菌による胃潰瘍の発症は論文著者自身の「人体実験」が1984年に行われたとのことですし、表現者が自らの肉体を傷つけて行われる表現行為は、なかなか甘美な魅力があります。私の昆虫の「味見」も表現者が自らの肉体を傷つける表現行為、である可能性は残ったままです。

しかし、現代の「法」はそれを許していません。自殺の自由はあっても教唆・幇助は許されませんし、論文では倫理規定により掲載されなくなるでしょう。

そして表現者自らの「死」によって生み出される圧倒的な「やり逃げ感」は死後に作品の値段があがる、といったアートの風習も相まって、事故死があとから神聖化されることはっても、表現者自らが作品の価値を高めるために行った自傷行為は、おそらく普通のアート市場では取り扱いができないように思います。(アート業界の倫理について、芸術教育の倫理ぐらいしか見当がつかないんですが明文化された、あるいは評論されたなにかがあるのでしょうか。ご存知でしたら教えて下さい。)

自分は柿の種を飲み込んでミイラになろうとする二番煎じ自称草本学者なのではないか、と頭をよぎることはありますが、ひとまず健康に、そして学問に忠実に参りましょう。

この、死んでいる人の割合が極めて高い会場で唯一かつ絶対のいやし要因となっていたのがネコのミイラ。みなさんがふと足を止めて、体力回復ポイントのようにじっと観ていました。そばにあったはやぶさのミイラはあまり注目されず、ネコだけに注目が集まっていたのが印象的でした。

他の「事故により自然に保存された」ミイラ、あるいは人工的に本人が承認したと思われる文化的背景のある人工ミイラと比較すると、「ネコのミイラ」は副葬品ですので、ヒトのミイラへの装飾のために「殺された」と見るのが妥当でしょう。つまり「合意のない殺害があった」ことから、無念の気持ちは数あるミイラのなかで、かなり上位に位置するとは思うのです。しかし。

見る側の人間とは勝手なもので、やさしく布の巻かれたネコのミイラ。グッズとしてもいいですし、手も出しやすい。私も買いました。なんとも身勝手なものです。

そして日本館で行われていた「風景の科学」へ。風景写真家による作品に「科学的な解説」が加わると、解説を読む前と読んだあとで、その作品の見え方がどう異なるか。やっぱカキに引きずられますね。なかなか実験的な試みで、驚きもあり、どんどんやってほしいと思います。無料なので募金しました。

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