コンテンツへスキップ

みなさま、週末の巨大台風の影響は落ち着いてきたでしょうか。Twitterを見ているだけで、ここラオスにも台風が来るのではないかとそわそわしてしまいました。私の次回の帰国は11月です。

研究会では毎年サイエンスアゴラに出展してきたのですが、今回はラオスで協力する保健NGOであるISAPHの「本邦研修」という保健人材育成事業とコラボする形で、研修に来ているラオス人公務員に少しばかり東京まで足を伸ばしてもらい、一緒にこれからの昆虫食について語ろうというトークイベントを開催します。11月16日午後14時半ぐらいを予定しています。サイエンスアゴラで語らいましょう。おさらいしておきますが、サイエンスアゴラのコンセプトはこちら。

サイエンスアゴラとは、あらゆる人に開かれた科学と社会をつなぐ広場の総称です。サイエンスアゴラは、異なる分野・セクター・年代・国籍を超えた関係者をつなぎ、さまざまな人たちが各地で主体的に推進する活動の広場です。この広場に集まる人たちが多様な価値観を認め合いながら、対話・協働を通じて、これからの「社会とともにある科学」と「科学とともにある社会」の実現を目指します。

https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/about/

そして2019のテーマはこちらです。

Human   in the New Age   -どんな未来を生きていく?-

あなたは、科学技術の開発がさらに進んでいるであろう未来に、どんな暮らしをしていたいですか?
望む未来に必要な技術とは?機械や新技術に委ねたくない人間性とは?
サイエンスアゴラ 2019 では、そもそも人間とは何なのか、自分は何を選びたいのか、目の前のものをどう使いたいのかを、さまざまな視点から考える機会を提供します。

https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/exhibition/

ぴったりだと思いません?

しかし、一緒に語らうにあたって日本側に大きなハンデキャップがあります。



多くの日本人は昆虫を食べる自分を
イメージできない。

以前に「食の未来を考える」トークイベントに客として参加した際、日本の文化を背景とする人だけがリサーチし、これまでの年表をまとめ、歴史学風に未来を想像するという流れでしたが、どうしても抜け漏れが発生してしまっていました。自然の昆虫を食べてきたという日本の歴史がすっぽり抜け落ち、未来のコオロギがふんわり乗っかるという、とても浮世離れした未来予測になってしまっていたのです。

それではいかんだろうと、一つ対策として考えられるのが、このときのゲストの一人であった西廣先生の分野です。西廣先生は生態学をベースに植物の救荒食としての可能性を見出し、今後(温室効果ガス低減をどれだけがんばっても)不可避である温暖化に備え、さまざまな適応策を考えておこうとする立場の研究者です。もちろんそこに温室効果ガスを出しにくく、そして既存の恒温動物よりも熱中症に強い昆虫も推したいところですが、こちらの話はまた今度すすめます。

このような生態学ベースの「未来の食提案」に昆虫が含まれるのは妥当です。生態系をみても昆虫を主な食料にする哺乳類は多様にありますし、もちろん人間も食べてきました。一部の危険な虫を除いて体力のない子供でも、高齢者でも扱えることから、栄養源としてまだまだ伸びしろがあります。

そして今回のアゴラでのチャレンジは「昆虫食文化が濃くある地域」からの提案をうけとめきることです。ラオスでは昆虫を食べる文化が普通にあり、私が提案してきた「昆虫養殖で地域貢献」というアイデアはほかの食材と同じように至って普通のものとして、ラオス側に受け入れられてきました。

というのもラオスは「飢えない最貧国」とも呼ばれ、NGOを始めとした外国からの開発援助を常に受け入れてきた国です。その中でも地元の農作物や畜産物に対して高度な技術支援をするというのは当たり前の、ごく普通のプロジェクトとして行われてきました。しかし、たしかに昆虫を使ったものは明らかに少ないのです。

その原因は「先進国に昆虫食文化を持つ国が少なかったこと」といえるでしょう。先進国は食の技術をレベルアップすることで安定に、そして安全に食生活が営める社会をめざしてきました。

そして残念ながら、その中から昆虫食はこぼれ落ちてしまい、昆虫は「殺虫剤で殺して除外するもの」という位置づけになってしまいました。そのため昆虫を食利用するという技術を、先進国すらも持っていないのです。その中で「支援」をしつつ「技術開発」をするというホットな研究活動現場を作ろうとしているのですが、この話もまた別でまとめます。

そこで今回のテーマです。

日本側参加者の課題は「昆虫を食べる自分をイメージできるようになること」です。当日は試食も用意しますが、本当に無理して食べる必要はないですし、「食べる必要があるから食べる」では食のイメージがあまりに貧困です。おいしいから、食べ物だから食べるイメージを、ロールプレイのつもりでラオス人ゲストとともに高めてください。

その上で、ラオスの抱える栄養問題を知り、その支援をしたいときに、日本から何が提案できそうなのか。また今後(というかもう来ているんですが)、ラオスの昆虫食文化をもつ若者が日本にやってきたときに、日本からどんな食材で、料理でオ・モ・テ・ナ・シができるのか。一緒に考えていきましょう。

さて、今回は日ラオの通訳の関係で、事前に質問事項を整えておきたいです。

ラオスの昆虫について、ラオスの栄養の問題について、その他いろいろ、聞いてみたいことがありましたら、お知らせください。多様な視点からの質問をお待ちしております!

さて、先月は「あえて昆虫をオススメしない」という活動をしていました。ナンバンカラスウリという栽培が容易なウリ科の多年草をオススメし、そこからビタミンAを摂ってもらおうというものです。しかし村にとって新しいものとはいってもそれを食べる虫はやってきてしまうものです。広食性昆虫おそるべし。こんな虫が来ていました。

うごきがひょうきんでかわいい。

以前に見たマンゴーミバエによくにています。

しかし、その後私の顔はこわばります。

たまごうんでる!

そうなのです。ウリといえばウリミバエ。詳しい方にセグロウリミバエではないか、と教えていただきました。ウリミバエは刺したり噛んだりせず、その地味な生態に比べて、育った幼虫が実を腐らせてしまうことから、経済的なダメージの大きい虫として知られています。

沖縄では不妊虫放飼法という、放射線処理をしたオスを大量に野外に放つことによって、近縁のウリミバエの根絶に成功したという事例があります。

セグロウリミバエも植物検疫で水際で見つかったりと、要注意な虫なのですが、ここはラオス、自然分布域です。遠慮なく観察しましょう。

カボチャミバエと同様に、ウリミバエの幼虫はジャンプできます。みてみましょう。まずは180fps

よくわかりませんね。次が480fps

ぐいぐいと、筋肉パワーが無明逆流れのように溜まっていくのがわかります。すごい。そしてこのスローでも詳細がつかめないほどのスピード。肉眼では本当に消えたように見えます。それでは食べてみましょう。

しっかりした筋肉の弾力があり、薄皮で食べやすく、パチンと弾ける皮の食感もよい。 味は淡白で特徴が薄いが、それだけ拡張性があると考えられる。蛹化に失敗した個体がいくつかあるので蛹化用の足場を考えよう。

跳ぶ寸前。

とても美味しかったです。マイクロポークビッツみたいな。

チチュウカイミバエを使ったイスラエルの昆虫養殖スタートアップもありますし、ミバエも管理次第では化けていくかもしれませんね。

さて、ビネガロンを捕まえてはしゃいでいたあと、村の村長さんから大きなセミをいただきました。虫の人として覚えてもらってるようです。ありがたい。

このときは、なんだか大きいなぁと思っていたのと、うっすら「テイオウゼミ」の模様が頭をよぎったのです。ん?クマゼミと同じくらいのボリュームだけどテイオウゼミっぽくないか。

翅の付け根の赤が差し色で美しい。

村から街に帰り、調べてみると世界最大のセミの属、Megapomponia (メガポンポニアって声に出して読みたくなりますね)であると教えていただきました。ラオスには小型のM.intermedia. 更にマレー半島の南には最大種、M.imperatoria テイオウゼミが住んでいるとのことです。

インドネシアからメガポンポニアの新種が記載された論文がありまして、そこから胸部の斑紋の写真を見比べ、Twitterのセミに詳しい方に教えていただきながら個体差なのか、種の特徴なのか、モヤモヤしながらこれではないかと。

さて、和名「ヒメテイオウゼミ」で気になってしまうのは「職位はなんなのか。」ですね。帝王なのか姫なのか。

「姫帝王」というツンデレのような新しいジャンルなのか。

小さいセミはチャクチャン、大きいこのセミはメンオーッというそうです。クマゼミが60mmから70mm これが体長59mmなので、さほど日本のセミより大きいわけでもないです。

ともかく茹でてたべてみましょう。

茹でると茶色い汁がでて木の香りがつよいが、味はとってもタンパク。ほとんど胸にしか肉がなく、腹部はスカスカで軽い。外皮も大きい割りに硬いわけでもない。 茹でると香ばしい木の香りがするが、茹で水に溶け出してしまって筋肉の味わいは普通だった。

チャクチャンのほうが身が小さい分詰まっていて、おいしいと思いました。もう一つやはり食べたいのがテイオウゼミの幼虫。どこかで食べられるでしょうか。マレー半島行きますか。

世界三大奇虫、と呼ばれる陸上節足動物がいます。サソリモドキ、ウデムシ、ヒヨケムシですが、まぁなにをもって「奇」か、と言われると、、うーん。楳図かずおが書きそう、といった感じでしょうか。クモ、サソリ、ゲジ、シャコとともに昆虫とエビカニの間に見えるので、さほど食べにくそうにも感じないです。

そしてこちらがビネガロンことサソリモドキ。サソリにシルエットが似ていますが、しっぽに針がなく、代わりに細い管から酢が出てくる。そしてハサミに見えるのは噛み込みのギアのようになっていて、コオロギを与えると左右からグリグリと巻き込んで口に運んでいく、一方通行の地獄のギアなのです。食べっぷりのかっこよさはすばらしい。SFっぽさではトップクラスではないでしょうか。

サソリモドキ ビネガロンの一種。

いきなり話は飛びますが、昆虫のレシピをラオス人スタッフと作っていたときに、「特に女性はラオス人でも昆虫がうねうねしているのを嫌がる人が多いので、すりつぶした料理はどうか」と提案され、「自分は昆虫が大好きなので、姿が美しいと思うし、かじったときの食感が失われてしまうのもあまりいい気がしない」と言ったところ「それはあなたの感覚でしょ?」と言われました。そうなのです。まさにそのとおりで、私のセンスは日本からも、そしてラオスからもまた遠く、好奇心というエンジンに駆動され、文化から乖離した明後日の方向にむかっているのです。おもしろいとは言われるけれども参考になるとは言われない。

話を戻しましょう。実はこのサソリモドキ、一度食べるチャンスがありました。

2015年4月、私は飼っていたのです。買ったのか頂いたのか、わすれてしまったので、もしいただいていたら大変申し訳無いんですが、しばらく飼い続けて結局死なせてしまったので、大変深い後悔の思い出があるのです。

さて今回は、絶対に死なす前に食べようと、写真撮影もそうそうに食べます。捕まえた時に酢の強い匂いがあり、わくわくです。

一緒に村に来ていたラオス人スタッフと匂いをかいで酸っぱ!とこれを見つけた集会所の裏ではしゃいでおりました。この容器はラオカオと言われるラオス焼酎の空き容器です。

かっこいい。
立体構造が複雑なのでなかなか写真にとりにくい。

立体的な複雑さと、ダンシが考える「かっこよさ」がなんだか相関しそうな気がするんですが、なかなか見ていて飽きない虫です。果たして酸っぱいのか。

実は以前に、「ビネガロンで酢飯をつくる」という企画案をいただいたのですが、量的に難しそうだ、と計算してお断りしたことがありました。実際にどれほど酸っぱいのか、茹でて食べてみましょう。

サソリよりだいぶうまい!ビネガロンの名前の通り茹でると酢の匂いがしたが、茹でたあとは少しの爽やかさをプラスする程度でバランスが良くまとまっている。捕まえる時に酢酸を放出させたのも効いたかも。酢飯に甘エビのようにうまみと甘みの強い体液が口に広がり、タランチュラのような毛もなく、食べやすい!

世界三大奇虫、食べ比べてみたいですね。

私はゾウムシの養殖指導、もう一つのチームは看護師が村へ訪問するアウトリーチ活動の途中でした。その行った先の村人から「バナナの葉に包まれたイモムシがいる」とのことで見せてもらいました。くるくるっとルマンドのように巻かれたバナナの葉の中には草大福のように粉まみれのやわらかそうな幼虫が。本当においしそう。調べてみるとバナナセセリErionota torusという虫で、日本では沖縄だけに住みおそらく外来種。日本最大のセセリチョウとのことです。確かに小さい印象のあるセセリチョウにしてはデカい。

ラオス人お墨付きの美味しい昆虫とのことで3頭もらい、活動を終えて街に帰るころには1頭が黄色みがかって前蛹になっていたので、幼虫状態と比較して食べてみました。

前蛹 粉は茹でると消えてしまった。 蒸した芋のようなそそる香り。口に入れて弾けるボディ。タケノコのような少しの渋みがあり爽やかで、コクとうまみのバランスも良く、ウマッと声が出るおいしさ。
幼虫 消化管内容物のため茹でても青い。 バナナの葉の香り!バナナの葉で包んで蒸した料理の香りがする。葉の粒感が気になってしまい自分は前蛹派だけれどどちらも美味い。

バナナの葉は色んな所に使われ、市場で昆虫を売るときの敷物や、蒸すときの包みなど、土に還る万能の梱包材です。そして蒸すとバナナの葉の独特のムレ臭がうつり、朴葉の包み焼きみたいな美味しい感じに仕上がります。それがバナナセセリの幼虫にはあった!これがなかなかおいしいです。

追記します!そして9月25日に蛹になり

クリーム色の美しい形。バナナの葉にくるまれている

そして10月4日、成虫へ。味見しましょう。これはオスですね。

香ばしい!鱗粉が口に残るものの、バナナの香りはなくなり茹でただけで焼き芋のような強い香ばしさ。 甘み、コク、旨味のバランスも良く、体重もしっかりあるので食べ応えもそこそこある。

以前に日本のツチハンミョウについて、毒が強すぎて食べるのに適さない虫として紹介しました。英語名Blister beetleと呼ばれるように、水疱ができるほど粘膜に刺激性があり、致死量もなかなか少ないようです。漢方では「斑猫」と呼ばれ、キオビゲンセイの一種はカンタリジンを虫体の25%も含み、水疱をあえて作って毒を吸い出すような手荒い治療目的で使われた、との記述があるそうです。

引用します。

本来の「斑猫の粉」の正体はその成虫の乾燥粉末です。中国産のそれはキオビゲンセイという種類で、 乾燥した成虫体に25%ものカンタリジンを含有しています。カンタリジンの用途は毒薬ばかりでなく、 おできのウミ出しの刺激発砲剤に多用されているほか、少量を内服(大変危険ですが)すれば催淫や利尿、 躁鬱病、性病、知覚麻痺などに効果があるとされています。

https://www.jataff.jp/konchu/hanasi/h14.htm

さて、「変な虫を見た」との通報(最近ラオスで虫ネットワークができつつあります。)で急行するとこちら。

ツチハンミョウの一種

キオビ、というよりもピンク帯ゲンセイなので、これが本当に漢方に使われてきた「斑猫」なのかはっきりしないですが、これは味見できないです。ラオス人も食べちゃダメ、触っちゃダメ昆虫と教えてくれました。薬用に使うという話は今のところ聞いていませんが、そのぐらい一般的で、そのぐらい毒であることが有名なようです。気をつけましょう。

その他にも、ツチハンミョウ科の昆虫がいたので合わせて紹介しておきます。いずれも味見ダメです。ラオス人も知っていました。

車の点検修理に行っていたんです。先週に村に行ったあと、川の近くのルートが増水が激しくてそのままでは渡れず、クソ重くて車高の高い木材運搬車に牽引してもらいました。またこの車がかっこいい。

木材運搬車。かっこいい。

電気系統、エンジン系統に負担が少ないようエンジンを切り、牽引。深さは腰の高さぐらいでしょうか。

翌週点検にいくとエアフィルターが濡れ、その他負担の大きいブレーキ系がすり減りまくっていることが判明。

ということで、ちょっと点検をするつもりが 足回りガッツリ交換になってしまい、ヒマをしていたわけです。ぶらぶらと修理工場の裏にまわったり

たぶん井戸を掘るための車。

車道を闊歩するヤギをみたり。

そして歩道の脇にある東屋の柱に、見慣れぬ昆虫を発見。これはなんだ。

なぞの4匹

まず目についたのはショウジョウバエのように黄色い頭に赤い目。しかしそこから伸びるクビは細長く、腰から下になるほど奇妙なプロポーション。特に後脚が太く、腹部も棍棒のように先が膨らみ途中が細い。ボリューム感でいうと脚と腹部が同じくらいで、どれがどれだか、下半身が分身しているようにも見える。そして彼らが横歩きをしながら、何かのコミュニケーションをとっているようだけれどよくわからない。

写真にとってみるとショウジョウバエに似た顔つきに見えたのがちゃんとハチの顔になってるのがわかりますね。

茹でて味見 小さいのでなかなか味がわからない。寄生蜂らしい固く細い部分を口に感じるが、ほのかに香ばしさを感じるかどうか、という程度。うーん小さく細い昆虫は難しい。たくさん手に入ればいいのに。

1

今日は昆虫をオススメしない蟲ソムリエの話です。

先週8月最終週、味の素ファンデーションの助成で行われてきた村落栄養ボランティア研修を開催しました。その中で私は「栄養教育の完了したボランティアに、次の段階として栄養を得る方法を教える役割」を果たしています。昨年はゾウムシを一期修了生におすすめし、無事彼らの期待に答えてすべての希望者が継続的に昆虫養殖ができるようになりました。

こちらが2017年スタート時の様子です。

さて、昨年と今年の2月に実施された栄養調査によって、活動地の村において、「ビタミンAと油脂を含む食材の頻度」が相対的に不足しているという結果が出て、日本国際保健医療学会で発表されました。これまで気にしていたタンパク質の豊富な貝、魚、昆虫、そしてタケノコなどの、昆虫を含む野生食材は相対的にわりとみなさん食べている、という結果でした。当初タンパク質リッチで脂質の少ないバッタの導入を計画していたので、この結果は予想外でしたが、我々の目標は栄養なので、地域の問題に沿った提案をしなくてはなりません。

なぜなら問題を抱えているのはあくまでこの村の人達で、昆虫をオススメすることが自己目的化してはダメだからです。

昆虫で栄養を、というプロジェクトや企業からいくつか相談を受けましたが、その導入先の地域がどんな栄養の問題を抱えているか、というリサーチ抜きにスタートしているグループがいくつかあります。現地に行ったあとで、その昆虫がミスマッチだったとしたら、彼らはどの程度、現地に合わせて方針を変えられるでしょうか。

昆虫の多様性を利用したり、現地の生態系を俯瞰して提案できる食材が昆虫以外であったときに、どう動けるか、そのフレキシビリティが試されるとおもいます。

これから始まるJICAのプロジェクトの目標には、昆虫が栄養に至る経路については2つ準備をしています。一つはわかりやすい、直接食べるルート、もう一つは積極的に昆虫を売って、そのお金で別の食材を買う。あるいは市場に売りに行ったアクセスを利用して、その家庭に足りない栄養豊富な食材を買って帰ることです。昆虫を売って設けたお金で清涼飲料水やスナック菓子を買っては本末転倒ですし、昆虫養殖にかまけて育児がおろそかになってもいけません。

「売るならば栄養豊富でなくてもいい」という言い方もできてしまいますが、村の栄養状況に合わせた食材の養殖を推奨する中で、たとえ満足に売れなかったとしても、売れ残りを食べて栄養に貢献できるだろう(逆に言うと売れ残りを食べて栄養状態が悪化しかねないのが炭水化物です)という消極的な栄養貢献の役割も、含めてあります。

なのであくまで「栄養の問題を意識させ、改善していくこと」を常に目標として掲げ、養殖希望者には必ず栄養教育を受けてもらうことことなどを徹底する仕組みにしていきます。もちろんISAPHが今後の栄養状態についても追跡しますので、「昆虫養殖を導入したら栄養状態が悪化した」なんてことが万が一あっても検出できる、ステキな緊張関係を保ちつつ進めていきます。

この、昆虫養殖ビジネスが保健NGOと連携する仕組みのパッケージを開発することで、「昆虫食が栄養に貢献する社会実装」を実現しようとしています。

話がそれました。ビタミンAの供給源を何にするか。そしてそれが昆虫ではないということ。

ざっと検索してみたところ、アフリカの聞いたことのないバッタがビタミンAを多めに持っているという文献を見つけましたが、植物質の食品に比べると安定的にビタミンAをもっている昆虫はみつかりませんでした。ビタミンAは有力な栄養不良の要因の一つなので、(だからといって夜盲症が頻発しているわけではないのであくまで候補の一つ)ニンジンやかぼちゃなどの栽培も検討してきました、が、ラオスの雨季と乾季の水供給の差は激しく、ニンジンは乾季にフカフカになるまで手をかけた土壌を使い、袋栽培をするとある程度育つことが確認できたものの、雨季は全く育たず、かぼちゃも雨季は受粉がうまく行かず、ウリハムシにやられて失敗してしまいました。食糧事情が不安定なときの補完的な食品としての活躍を期待したいので、これではいまひとつです。

2018年乾季には人参栽培に成功。しかし手間とコストが大きい。

そこで雨季と乾季の両方を耐えうる、つまり「多年草化・樹木化」する植物にフォーカスを移し、情報収集を進めていたところ、昨年7月にこちらにたどり着いたのです。

ガックフルーツ。聞き慣れない名前ですがビタミンA前駆体のβカロテンが豊富に含まれていて、なにしろ栽培に失敗しにくい。つる性で雨季の増水も、乾季の乾燥にも耐え、広く葉を広げ、ウリハムシにも強く、植え付けから8ヶ月で実がなり始め、安定的に成り続けるというすごい特徴があります。

食べたことのない食品だったので子供に与えていいか検索したところ、ベトナムの未就学児185人を対象にした30日投与の論文が見つかったので、ひとまず安全性については大丈夫かと判断しました。ちなみに日本の場合、「モクベツシ」という生薬としてタネが使われてきた経緯から薬事法で種子の経口摂取用途の販売には縛り(pdf)があります。ご注意を。

タネからはトリプシンインヒビター(pdf)が見つかっており、下手に食べると下痢をしてむしろ栄養にマイナスに働いてしまうので、「タネは食べない」としておきます。今回も希望者に苗木で渡しました。

肖像の関係で顔の掲載はISAPH公式だけになってます。

この植物については全く世話の必要がなく、土地さえマッチすればどんどん生育し、その土地に肥料が足りなくなれば身が小さくなるので、各家庭の菜園の状態を把握することも、この配布の目的の中にあります。

先にこの村の栄養の問題、そしてビタミンAの話をして、

調理実習。ガックフルーツの果肉をつかった魚のスープ、ガックフルーツのパルプをつかった赤いドーナッツ、そしてパルプを使った甘いジュースをつくりました。こちらは料理学校の先生から提案されたもの。ガックフルーツはあまり一般的な食品ではないので、そのレシピから「美味しい料理」として村への導入を提案していきます。

ビタミンAはガックフルーツに任せるとして、油についてはゾウムシの出番です。来月はゾウムシにフォーカスにして、オススメするレシピと栄養の講義をしようと思います。
本家のソムリエと同じように、「適切でない場合はオススメしない」というのもソムリエの大事な仕事です。蟲ソムリエが昆虫をオススメするときは対象者が問題やニーズをもつとき。そうでないときは、昆虫よりもふさわしい別の食品を提案します。

逆に言うと、問題もニーズもないのに「昆虫の押し売り」をするのはソムリエとして恥ずべき行為といえるでしょう。幸いここラオスでは昆虫食文化があり、昆虫も他の食材と同じように扱ってくれます。一方で昆虫学の専門家はほとんどいません。そのギャップを日本の昆虫学とラオスとをつないで埋めていくことで、昆虫食文化が地元のニーズに沿って発展していくことをサポートするのが蟲ソムリエのしばらくのメイン仕事になると思います。

その中で「蟲をオススメしない」という結論に至った今回の活動は、たとえ昆虫が最適でないとしても対応できる前例となったので、蟲ソムリエらしい仕事ができたと自負しています。

更にいうと、「昆虫じゃない」という結論に至れる冗長性をもたないプロジェクトは、必要のない昆虫を住民にゴリ押ししてしまうリスクがあります。

本当に現場に昆虫が必要なのか、ご都合主義で昆虫養殖を自己目的化していないか、昆虫食プロジェクトを行う人も、それに支援する人も、皆様適度な懐疑主義とともに、相互批判をしつつ健全な業界になっていくよう、進んでいきましょう。

8月9日、もう一ヶ月前になりますか。とある大学のつながりで、バンコクのトークイベントに参加すると旅費をいただけるというので行ってきました。なかなか厳しい台所事情ですが、それなりに楽しみつつ、研究費や経費を確保していこうと思います。

バンコクと日本のデザイナー、建築家の方々が集まる、だいぶアウェイなかんじがしましたが、とりあえず今回のテーマ「Exixtence=実在」 について、語りました。昆虫という「実在」によって、人がどう変化し、全体のプロジェクトのデザインがどう影響されていったのか、とか言う話をしたかと思います。観覧者にはバンコクの学生さんらもいて、昆虫食に対するバンコクの若者の印象も聞いてきました。

デザインという空論であり、実現していない以上「茶番」であることを、どこまで大事にし、深く、そして自由に発想できるかというのはとても重要な営みだと思います。そしてそこに「昆虫」が参加することはこれまでまずなかった。なので一種のスパイスとか「意図的なバグ」として、私が乱数発生器のように乱入して、かき回してみようかと思いました。デザインの世界のみなさんに投げ込んだ「実在の虫」のパワーはすごく、それでいて新しい概念を自分のデザインに反映させ、咀嚼していこうという適応力もすさまじく、スパークジョイな感じでした。

タイ東北部では昆虫食が普通なので、私の昆虫の話もさほど驚かれないかな、と心配したのですが、みなさん無事驚いてくれて、学生さんも女性の一人はロットドゥアン(タケムシ)だけ食べられるけどコオロギやバッタは脚があって無理、もうひとりの女性は全部無理、男性のひとりはサソリにチャレンジしたことはあるけれど。もうひとりはレシピ次第じゃないかなという消極的な感じ。いずれもバンコクの意識の高い、そして野心も高いデザインの学生なのでバイアスはあるかと思いますが、十分に「昆虫を食べる」というアイデアが敏感な若い世代にとって斬新に映るという手応えがあったので、ここバンコクも未来的昆虫食の展開のいい拠点になるだろうなと感じました。

またいっぽうで、ベテランのバンコク在住の先生方は伝統食として普通に食べていた時代を経験していて、ひと世代のあいだにジェネレーションギャップがギュッと詰まっていていい感じです。その年配の先生がこのようなスライドを用意してくださいました。

UNJUNK THE WORLD

Un-junkというのは検索してみると脱ジャンクフード的な書籍に使われたワードのようですが、この「ジャンク=役に立たない、安っぽい、価値が低い」といったものを価値観が同じママの社会で「役に立つもの」に変えていくリサイクルの発想ではなくて、その「役に立たないものという発想そのもの」をキャンセルしていこうという発想です。社会が変わることで、そのものが変わらなくてもコンセプトが変わる。これほど省エネなことはないでしょう。つまり昆虫にも同じことが言えます。ジャンクフードの代替として、安い、コスパのいい食べ物ではなくて、文化的な、先進的な、そして人の役に立つことのできる膨大なキャパシティをもつ尊敬すべきバイオマス。

そんな「UN-JUNKE THE INSECS」をこの世代で達成してしまわないと、バンコクの若者が昆虫食をジャンクな食べ物と誤認したまま次世代をつくってしまう。赤ん坊のころに植え付けられた食の価値観を変えるのは難しいですので、この世代のうちに、変えていきましょう。みなさま、ありがとうございました!

バンコク、今回は時間が少し余裕があったので色々見てきました。ミズオオトカゲが歩いていたり、スラムと高層ビルが対比されたり、他の都市と同じように、色んな面のある街なんだろうなと。

2018年に食べていたのですが、Twitterで報告したっきりブログに書いていませんでした。キョジンツユムシ Pseudophyllus titan です。

キョジンツユムシ Pseudophyllus titan

ちょうど一年ほど前ですね。ヨツモンヒラタツユムシ と同じように、昆虫採集目的でない日常生活でこのぐらいの驚きの昆虫に出会うと脳が気持ちのいいパニックになります。すごくメリハリがいい。以前にサソリを見つけて舞い上がって自転車をパクられたときもこんな感じなので身の回りには気をつけようと思います。

さて、養殖昆虫というと「大きな昆虫を食べたい」と思う人が多いようなのです。大きい方が効率的とか食べごたえとか。確かに大きなエビカニは高級品ですし、タカアシガニは大味、とかいう話もあるのである程度の味とのトレードオフはありそうです。

以前に5.4gの巨大トノサマバッタ系統の味見をしましたが、養殖がとても難しい系統でした。つまり大きいとしても養殖がしやすいとは限らないのです。また、昆虫は成虫になるともう2度と脱皮しないので、そこら辺のコントロールがむずかしいかと。しかし、徳島大学がそこら辺をハックする論文を出しました。

/

この論文の巨大幼虫、夢がありますね。

しかしその夢、キョジンツユムシを見るとあまりうまくいかなそうです。

なんだか、巨大な昆虫はパサつくのです。味気ないというかなんというか。密度が足りない感じ。まだ数頭しか味見していないのでなんとも言えないですが、こんな論文を思い出します。

ツユムシも同様かどうかは言えないですが、巨大なほど解放血管系にたよっている昆虫の循環系の効率の低さが負担になっていきます。大きくなるほど呼吸系、循環系の占める割合が大きくなると予想されます。つまりスカスカ、パサつくという感じでしょうか。また過去の酸素濃度が高い石炭紀の昆虫は巨大だったことも知られていますので、人工的に酸素濃度が高い、たとえば水素ステーション(水分解のシステムが採用されればですが)の副産物の酸素を与えて巨大昆虫を、ということまで妄想が膨らみます。

さらにいうと、大きさはともかく高酸素濃度により気管系の空間をさほど必要としない、「身の詰まった昆虫」なんかも作れるのではないかと思います。夢が膨らみますね。プリップリの身詰まりのいい昆虫。食べたいです。