コンテンツへスキップ

さて、
私は今日まで419パターン272種の昆虫、
及び陸上節足動物を味見して、記録してきました。
これは
食べた数を競って他の昆虫食愛好家へマウンティングをするためではなく
(同定すらできないのに幼少期より生で数千種を食べたと豪語する、
発言する度にその期間や数がなぜか過去に遡って増えていく方もいて
昆虫食界隈はなんともアレです。)
私の味見は
昆虫を食べたことのない人が、食のバイアスにとらわれず
自分とマッチする昆虫を見つけるまでの適したモノサシを開発すること
が目的です。
また、
昆虫食をやって味見をしているというと
ランキングをよく聞きたい、と言われるので、
きちんと数値化したいという願望もありました。


官能評価については、私が専門でないので、こちらの記事を参考にしました。(pdf)
官能検査 4 官能評価に用いられる統計手法
(官能といいますが官能小説との関連性はたぶんありません。)


味見、つまり官能評価は2つの方向性を持ちます。
A,ヒトをモノサシとして昆虫の味がどうなっているのか調べる
B,昆虫をモノサシとしてヒトの味覚がどうなっているのか調べる
今やっていることはあくまでプレ調査なのでまだまだ統計解析というか「集計」レベルです。
ABどちらの方向から考察するにも十分とはいえませんので、
まだまだ「皮算用」レベルです。
しかし、
予備実験としてみても、いろいろな改良点や将来性が見えてきました。


まずはAの方向から
私の味覚が正しいと仮定して、昆虫の味がどうなっているか見てみましょう。
ランキングなので、100点満点にしたいものです。
スコアリングは
4段階の基礎ポイントを割り振りました
1 わるい 3点
2 どちらかといえばわるい 8点
3 どちらかといえばよい 13点
4 とてもよい 18点
続いて、
加点減点ポイントがあればプラスマイナス2を適宜追加して、
各項目20点満点で評価します。
項目の選択も苦労しました。
やはり「みため」の影響は大きそうなので、一項目入れています。
また、昆虫生態学が将来の昆虫の食利用のベースになるでしょうから
生態を踏まえた将来の利用可能性「のびしろ」も一項目入れました。
昆虫を食べた評価を表す指標としてかおり、のどごし、あじわいの3つを使いました。
先味、後味や、5基本味の詳しい比較については、
私のたった一人の解像度では心もとないので先に紹介した味覚センサーに任せることにします。
それらを重み付けをせずに、そのまま合算する、
というとても荒々しい方法ですが、419パターンについて全て、スコアを出してみました。
例えば、
ホオズキカメムシのスコアを見てみましょう
みため  3 -1 12点
かおり  4 +1 19点
のどごし 3 +2 15点
あじわい 3 +2 15点
のびしろ 4 +2 20点

見た目は普通のカメムシですが黒っぽく、ゴツゴツしているので減点1
香りはヘリカメムシ科特有の青りんごの香りで加点1
のどごしは口吻タイプの昆虫らしく華奢で口に残らずなめらか、しかし特長も少ない 3加点2
そして味わいは穏やかなカメムシらしい柔らかい味に、食草であるピーマンの刺激がピリッとあって加点2
将来性は既存のピーマンなどで養殖できる点、食草由来のピリ辛と、
昆虫特有のいい香りの組み合わせが楽しく、他の昆虫にない特長なので、満点の評価とします。


次にランキングの根拠となる
トータルスコアを概観してみましょう。

手に入りやすい昆虫は何度も、いくつものステージを食べているので
種ごとで平均値をとって集計しました。
平均値が66
区間が23から95
ハイスコアの方向にやや歪んだ山型の分布をしています。
まあまあ悪くないバラ付きかと。
昆虫を全くのランダムに、そして私が全く正確に
昆虫の味を記載すると正規分布のような左右対称の山型のスコアになりそうなものですが
この歪みはなぜでしょうか。
各項目(みため、かおり、のどごし、あじわい、のびしろ)の相関分析をしてみたところ
のびしろとみため、においてのみ、有意な相関が見られなかったものの
他の項目で相互に有意な正の相関がみられました。
スコアを出すにあたって合算する項目同士は本来、それぞれが独立であることが望ましいのですが、
影響しあっているようです。
改良して、より正しくなる
スコアリングの方法を考える必要が有ると思われます。
考えてみましょう。


先のAの方向から見ると、
つまり私の味覚は各項目を独立に評価していて正しいと仮定すると
「昆虫はあじわいのいいものほど香り、のどごし、将来性がある」
という相関がある、ということが出来そうです。
逆にBの方向からみてみましょう、
「昆虫の本来の味スコアはそれぞれ独立だが、私の評価が相互にプラスの影響を受けてしまっている」

ホオズキカメムシでも、将来性の見積もりに味や香を要因にしていますから、
この影響はあるでしょう。
そのため、
Bの可能性、予断による私の味バイアスを排除したいところです。
多くの人に、中身や見た目を隠した状態で食べてもらう
ブラインドテストがあるとよりよいのでしょう。
しかし
「何かわからない食べてもらう」というのは
なかなかハイレベルな協力者が必要です。
「あの、すみません。目隠しして茹でた昆虫の一種をたべてもらいたいのですが」
とはなかなかお願いできないものです。
ブラインドテストと同様の結果をシミュレートする、という意味で、
味わいについては以前に紹介した味覚センサーも
予断のない昆虫の味スクリーニングを強力にサポートしてくれる
ことでしょう。
のどごし、香りまで含めて質の良いブラインドテストをするためには
「中身がわからない昆虫を食べて評価してくれるヒト」が多く必要であることがわかります。


私が研究や理論をベースにはしていますが、
昆虫愛好家の広がりを大事にするのもこのためです。
質の良い官能評価をしてくれる市民昆虫食愛好家に
研究者は情報や美味しさの尺度を提供し、奉仕することで、
彼らの協力をいただきたいのです。
また、
「昆虫食は健康によい」と、声高にアピールすることもしたいのですが
今は健康に関する統計的調査のレベルが向上したことと
健康をうたう変な商品が蔓延して消費者被害を出し続けていることから
そこらへんのハードルは高くなっています。
今年の4月から
景品表示法違反による課徴金が追加されることから、事業者側のリスクを高くするほうが望ましい、という
社会の流れがあります
健康効果について
参考になるのがコーヒーです。

カフェインなどの毒成分を含みながら、大規模な疫学的調査により
「メカニズムはわからないが、コーヒーを適度に飲む人は総合的に健康な傾向がある」
(コーヒーがヒトを健康にする、とまでは言えないのですが、コーヒーを飲むことで死亡リスクなどの重篤な健康を害するメカニズムは今のところなさそう、あっても小さいだろう、とまではいえます。)
との報告がありました。
単一の嗜好品で、文化や経済状況にあまり関係なく広く飲用されており
悪影響もふくめてその効果がここまで明らかにされたのは
コーヒーが最先端ではないでしょうか。
昆虫食に関しても、健康に関する大規模な疫学的調査をするためにも
「昆虫食が健康にいいかどうか関係なく昆虫を食べるヒト」が
恐らく世界に、バラバラに10万人ほどいれば、総合的な昆虫食の評価ができるでしょう。
それまで
「自発的に昆虫を食べるヒト」をマイノリティといえるレベルまで増やすことが
第一のフェーズです。
そして、
第二に、「食べているヒトがいるから食べるヒト」という
自発性の低い集団に安全な昆虫食材を提供できれば、昆虫食ブームが起こった後、定着へと向かうでしょう。
その時に、
第一のフェーズで食べ始めた、ファーストペンギンな愛好家は、
愛好家同士の狭いマウンティング合戦ではなく、
ライト層の定着に向けての活動を始めてもらいたいと思っています。
そのフェーズの切り替えにあたって第一フェーズの愛好家同士で
「昆虫食は今どのフェーズにあるのか」という議論ができれば、完璧です。
自発的な集団が、周囲の集団に利益をもたらしていることを
社会集団全体から信頼されるようになると、
ゆくゆくは社会の壁を突破し
「昆虫を食べるヒトがいるのも当たり前の社会」になるでしょう。


さて
ランキングをよく聞かれる、と最初に言いながら、
話が蛇行してしまいました。
せっかくスコアリングしたのですから
皆様お待ちかねのランキング
…といいたいところですが
ブログとはまた別のメディアで、ランキングについては
読んでいただこうかと考えています。
もう少しで皆様にお知らせできるかと思いますが
お待ち下さい