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近頃味見以外の記事を書いていたので
けっこう味見したい昆虫が溜まってきました。
今回は蛹三種。いずれも土中で蛹化するタイプなので
繭を作りません。
モモスズメ Marumba gaschkewitschii echephron
緑色の幼虫状態で捕獲 ナイフヘッドのようなとんがった頭が可愛いです。

その後蛹化

ちょっと脱皮不全のようになっていますが
元気に尻を振っていました。
タカサゴツマキシャチホコ Phalera takasagoensis Matsumura

「おさげをした水玉ワンピの女の子」と表現したらちょっとは
この感じが薄れるでしょうか… 食べるのを躊躇しているうちに蛹になってしまいました。
女の子(?)はタイミングが大事ですね☆
幼虫も成虫も樹の枝に擬態しているようですね。一貫していて素敵です。
幼虫は生木の枝に寄り添うように擬態し、
成虫は短い枯れ木の枝をイメージしているようですね。
すごいです。
蛹はこんな感じ。固いです。

アヤモクメキリガ Xylena fumosa
5月に幼虫を食べて美味しかったので、
蛹も食べたいと保存していました。
なかなか前蛹?のような状態から変わらず、
なんと4ヶ月もたってから9月26日に蛹化。まったくわけがわかりません。

脱皮不全だとするとなぜいまになって成功したのか
休眠だとするとなぜ前蛹で休眠を開始したのか。
虫は想像を軽々と超えてくるので興奮を抑えきれませんね。
虫を見ていると謙虚になれます。
さて
味見
モモスズメ
おいしい。ほとんど特徴のない穏やかな味。あまく、そしてうまい。珍味でなく日常の食品になりそうな感じ。香りも殆ど無い。外皮は堅めなので中だけ出して食べたい所。ぷりぷりしておいしい。
タカサゴツマキシャチホコ
外皮がカリカリしており珍しい食感。内部は水っぽい。クヌギの香りがするがナナフシモドキのような苦味はなく、食べやすい。内部に弾力がないのが残念な所。
アヤモクメキリガ
爽やかな穀物の香りが豊かで幼虫同様とても美味しい。やはり今期ヒットだっただけがあり、幼虫も蛹も美味しいことが判明。待てば海路の日和あり。
同じような色・形の蛹になっても味は正直です。
三者三様の味わい。ごちそうさまでした。

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昆虫食を発信していると、
様々なレスポンスがあります。
日本人はその6割がむしぎらいと言われますし
虫好きな方でもほとんどは虫を食べませんので
大部分がネガティブなレスポンスです。
それにきちんと答えていくことが大事だと思うので
このようにオープンな場で発信しています。
このネガティブレスポンスをまとめて、
うまくユーモアに包めないかと思い
こう考えました。

やっぱり辛辣な言葉は
いつでも気持ちよく聞けるわけではないですね。
「妹→兄」という立場固定語を使うことで
「見る側は部外者だから」という安心感をもって見ることが出来ます。
そうして生まれたのが
「昆虫食の兄を持つ妹bot」です。

最近まで私のツイッターと同居していたのですが
この度分離独立させました。 かわいい子には旅をさせよ。ですね
顔についてはいろいろ悩みました
可愛くても愛嬌があってはイメージにあわないですし。
可愛くなくてもなんだか夢がありません。
パクリは論外です。
探した結果 一番好みの 最もイメージに近かった
著作権上問題のない幕末の美人、斎藤きちさん(写真当時19歳)を使わせていただきました。
中身についてはほどんど私の被害妄想ですが
一部ノンフィクションが含まれています。
昆虫食への嫌悪感をガマンしながら当ブログを御覧頂いている皆様、
日頃の溜飲を下げる目的でお楽しみいただければ幸いです。

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何回か申し上げましたが、
私の昆虫同定能力は素人レベルです。
図鑑を見ながら勉強しているところです。
ブログコメントにて指摘していただいたのですが
恥ずかしながらギンヤンマとおもって
カトリヤンマを食べておりました。おいしかったです。
ご指摘ありがとうございました。
そして写真をさかのぼっていると
なんと本家ギンヤンマも食べていたことが判明!

…たぶんギンヤンマだと思います(自信喪失)
腹部第一節が太いこと
翅がオレンジがかっていること
前額に黒色と水色の横斑
腹部先端の形
参考文献「日本のトンボ」

味覚が確かで
「ん? このギンヤンマ。 以前食べたギンヤンマと違うぞ?」
と気づくほど蟲ソムリエに近づいていたら
良かったのですが、
残念ながらこの程度でした。無念。
同定は全ての昆虫学の基本です。
今回間違えたことで、
ヤンマ科間での味の違いを
きちんと食べ分けることが出来ませんでした。
最近は分子生物学が隆盛ですが、
そもそもサンプルの段階で同定を間違ってしまうと
何を見たところで確かなものは得られません。
まず同定より始めよ
素人同定って指摘されると恥ずかしいですね。
しろうとどうていって指摘されると
恥ずかしいですね。
大事なことなのと
語感が気に入ったので二回いいました。

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「見た目が悪いから昆虫は喰いたくない」
という方に
そもそも見た目の評価自体が絶対的なものではなく、
文化的なものだと気づいていただくために
「姿のエビ」をよく例に挙げます。
エビが食えて虫が食えない理由を
合理的には説明出来ない、ということに気づいて欲しいのです。
ということで
以前に小エビのかき揚げとバッタのかき揚げを比較
しました。
今回は
生物がほとんど無加工のまま
出される寿司で比較したいと思います。
具材は茹でて味が良いことで知られる
オオスズメバチ前蛹・蛹とエリサンを使いました。
色味をつけるために食紅を使いました。

昆虫の表皮が水を弾くため、
あまり染色具合はよくなかったのですが、
うっすらピンク色になりました。
次に寿司の準備です。
幸い近くのスーパーで見切り品となった寿司を
確保し、崩れないよう自転車で持ち帰り、
予めヤフオクで購入しておいた
デッドストックの寿司桶に盛りつけます。
今回はエビが甘エビと茹エビの二種を使い
節足動物の割合を多めにしておきました。(シャコとかもあればよかったのですが。)

木を隠すなら森の中
蟲を隠すなら寿司の中
意外と甘エビの隣のオオスズメバチ前蛹に
気づいていない方も
いらっしゃったのではないでしょうか。(?)
やはりそんな大差ないですね。
味も穀物系で、生魚の味の強さに飽きたころに
調度良い味でした。「寿司ネタ・スイートコーン」の偉大さを感じます。
江戸時代に始まった寿司のネタは時代とともに変遷し、
トロ・生サーモン・ホッコクアカエビ(甘エビ)エンガワ(オヒョウ)などの新ネタから
海外産の養殖エビやネギトロ(マグロすき身+マーガリン)のような加工生産の変化まで
大きく変わりました。
そして、sushiが国際的にも人気になった結果、
マグロを始めとした漁業資源の枯渇が深刻です。
そんな中でも
「海は広いな大きいな」

未だに海産資源の有限さに気づいていない
脳みそお花畑の国が大部分です。
確かに
海は人智を超えた偉大さに見えるため、
「有限」と言われてもピンと来ないこともあるでしょう・
そのためにも
自分の食糧は自分の目に見える形で養殖する、
という
食糧の有限さを噛みしめる農業・養殖業が、
これからの慢性的な食糧不足を
理性的に節約し、耐えぬく道だと思います。

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我々食用昆虫科学研究会が今年もサイエンスアゴラに出展します。
ナナフシモドキの回でも少し触れたのですが
「ノボリ」のようなものを使って
お客さんを引き込みたいと思っていました。
しかし、そのデザインが決まらないのです
1,昆虫は前面に出したい
2,食欲はそそるものを
3,写真や絵は逆効果?(食品として見られない?)
4,光らせたい
いろいろ考えあぐねた結果
「のぼりではない媒体」
を見つけました。居酒屋で。
そうですね。赤ちょうちんです。
東京浅草 江戸手描提灯 提灯屋.com
赤提灯の特長
1,文字だけで食欲をそそる、という社会共通認識がある。
2,光る
3,手描きのため一品から均一価格(のぼりは版作成が必要なので少数ほど割高)
4,日本の伝統工芸
海外に紹介したい日本の文化です。
赤ちょうちんに白縁、太黒字という最もオーソドックスなデザイン。
注文から2週間ほどで到着。
こういう一品物だと
人力のほうが仕事も早いです。
中に自前のこのランタンを入れて

完成

なんとリバーシブル仕様なので、
「昆虫料理」としても使えます。
虫フェスなどでも使いたいですね。

皆様
美味しい昆虫を用意してお待ちしております。

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昆虫食についての勉強や実践を
当ブログで発信することで多くの反響をいただくようになりました。
昆虫の世界は膨大ですので、様々な立場の方からのコメントが
私のモチベーションを上げ、次のチャレンジへとつなげてくれます。
思えば
本格的に食べ始めたのが2008年。
5年ほど続けてきたわけですが、
日々進歩がなくてはいけませんね。
ということで
2009年、仙台にいたときに同級生に食べてもらった一品
「秋の蟲ピザ」

小型の直翅目をトッピングした食べやすいピザです。
秋になると性成熟し、加熱すると赤く色が変わる直翅目を使うことで
紅葉する広葉樹をイメージしました。
ちなみにこちらは調理前

これを今回はブラッシュアップしようとおもいます。
さて
昆虫料理を紹介するにあたって
「形を無くして欲しい」という声が多くあります。
似たような形を持つ
海老や蟹について「すり身でないと食べられない」という方の話は
殆ど聞きませんので
おそらく
調理された虫の「形」に対する嫌悪感というのは
「死体感」ではないでしょうか。
基本的にヒトは
調理加熱して他の生物を食べるので
当然「死体」食べているわけですが、
「死体」を「食品」とみなすには、文化的な刷り込みが必要です。
このブログをご覧になる方の多くは昆虫食を文化として持たないので、
形を見せてしまうと
どうしても「死体」の印象が拭いきれません。
ですが、
直翅目の美味しさはパリパリ感でもあるので
美味しく食べるためには形は残しておきたいものです。
そこで
「形を残したまま死体感を減らす工夫」
が必要だと考えました。
ヒントは昆虫標本にありました。
きっかけはとある虫屋の方から
「展翅したほうが見た目が良いのでは??」との
アドバイスを頂いたことです。
確かに
「標本は大丈夫だけど(道端の)死体はムリ」
「生き虫は大丈夫だけど死体はムリ」
という虫嫌いの方もいらっしゃるようです。
つまり
「展翅することで整然とした印象を与え、死体という無秩序な不快感を減らすことが出来る」
という仮説が考えられます。
やってみましょう。
まず、茹でた昆虫を
アルミ箔を張った網の上に置き、立たせて足を整えます。

このまま、マーガリンとチーズを塗り
200度のオーブンで10分間加熱します。
そして
市販のチーズピザの上にキレイにトッピングし、
250度のオーブンで10分焼きあげて完成。
秋の蟲ピザ 2013

味見
香ばしく、肉質のうまみ。とても良く合う。
残念な点としてピザに接している部分が
カリカリ感がなくなり、口に残ってしまうので
もうちょっとしっかりローストしてからトッピングすればよかったかと。
そうすると強度が低下してしまうので、
「強度」と「カリカリ感」の調整が難しくなってきそうです。
こうやって頑張ってみたものの、今度は
整然と多くのパーツが並んでいると嫌悪感を感じる「集合恐怖症」
というものをお持ちの方がいらっしゃいます。

その原理や適応的な意義は解明されていないようですが、
昆虫料理への嫌悪感を拭うというアプローチは
まだまだ先がありそうです。
できれば「形を無くする」という方法は最終手段に取っておきたいところですね。

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昆虫を味見する際に留意したい点として
「昆虫を差別しない」ことが挙げられます
当然分類するので区別はします。そして その生態や味から
利用法や調理法を考えていくことが必要です。
ここでいう「差別」とは、
「対象の特徴を無視して観察者のバイアスを優先すること」
と言えるかと思います。
直感的にわかりやすいのは「キモい」「生理的にムリー」
でしょうか。
このキモさ(嫌悪感=Disgust)には生来の遺伝的バイアスだけでなく
文化的なバイアスが多くかかっています
特に
昆虫に関してはごく最近までヒトの食品でしたから、
ヒトがこんなにも短期間に遺伝的な忌避行動を獲得するわけもないので
多くは文化的バイアスといえるでしょう。
逆に言うと百年以内に昆虫食に戻る可能性もあるわけですから
安易に遺伝子に刻んでは危険なのです。
むしろヒトは文化として、世代を超える情報を外部保存することで
遺伝情報よりも臨機応変なバイアスを持つことに成功したといえるでしょう。
ということで
我々は多くの文化的バイアスがかかっています。
そして、
その文化的バイアスから独立した視点をもつために使われるのが、
「科学」という客観性を重視した手法といえるでしょう。
昆虫の分類も
「好き嫌いは置いといて、皆が客観的に判断できる手法を用いて、、個体をグループに分け、
近い順に並べる科学的手法」と解釈できます。
さて
一つ前の記事で「直翅目にハズレ無し」と書いたばかりですが
実は未だ直翅目の分類群を網羅していません。
これから食べようと思っているケラ科(今年は見つからなかった)の他に
カマドウマ科という高いハードルがあるのです。
おそらく美味しいとは思うのです。
今回捕まえたのはクヌギの樹液を食べに来るマダラカマドウマ。
樹液食は美味しい要素の一つです。
しかも翅がなく、飛ばないので体重もあり
日光を必要とせず、高密度でもケンカしない。
翅のないキリギリスといえる体型。
どれも美味しそうな要素しかありません
サラブレッド。もとい直翅目界のブロイラー
と言っても過言ではないのですが。。。。。。。
ごめんなさい。主観的にキモいのです。
思い出すのは一人暮らしを始めて二年目の仙台。
秋も深まり、寒い夜にシャワーを浴びようと浴室へ。
私は極度の近眼なので、シャワーを浴びる際は
極端に防御力が低下します。全裸で目も悪い、地中性の生物のようです。
勝手知ったる我が家の浴室なので、何の警戒もしていませんでした。
シャワーを出したその瞬間
足元に何かが駆け上がったのです。
お察しのことと思いますが、カマドウマです。
ハエや蚊、ゴキブリならともかく、体重があり、
壊れた玩具のように跳ねまわるカマドウマの感触は
なかなか自分の記憶と一致しませんでした。
おぼろげながらカマドウマとわかり、
一旦撤退し、メガネをかけ直し、
全裸のままカマドウマを捕獲。ベランダから投げました。
そのためか、カマドウマにはまだまだ苦手意識があります。
でも差別してはいけません。
自分に文化的なバイアスがあると認識した以上、
意識的に
差別につながらないよう
行動せねばならんのです。
行動とは。当ブログでいうところの味見ですね。
前置きが長くなりました
なんせ茹でられたカマドウマが右手のそばにあるものですから
味見のタイミングを伸ばしたいという深層心理の現れかと思います。
マダラカマドウマ  Diestrammena japanica

味見
少し土っぽい枯れ葉系の香り。しかし抜群に美味い!なんだこれは。体液はほとんど感じられず粒感と弾力のあるタンパク質の塊がやってくる。焼きタラコのような食感。
翅がなく、胴がたっぷりしているので肉質なのかと。
キリギリス科の中でも抜群に美味しく、とても意外でちょっとだけ残念。
クラスの地味な子がアグレッシブな特技で突然人気になってしまい話しかけづらくなる感じ。
でしょうか。
文化的バイアスは
かかっていると自分が認識してから、
その逆バイアスをかけ直すには、多くの努力が必要です。
ですが、その先にはどの文化的素養のあるヒトの間でも形成できる
多様性を許す社会が出来るのでは、と思います。
また、そのバイアスが他文化に悪影響を与えない場合、
誇るべき文化として自らの強固なアイデンティティを形成することになるでしょう。
もう一度いいます
「直翅目にハズレなし」(ケラは未食)

味見よりも同定が難しい直翅目。
今回もがんばりましたが、同定大丈夫でしょうか。がんばります。
ヒメクサキリ Ruspolia jezoensis

産卵管が長いので♀です。
今の時期の直翅目はオスが鳴くものが多いので、
狙いを定めて捕獲にいけるのですが、
静かな♀はなかなか見つかりづらく、昼間に偶然出会うしか捕獲方法がありません。
一期一会を大事にしたいですね。
味見
味は他のキリギリス科に似た甘めの味。堅めで歯ごたえがあり、ムチッとしたキリギリスとは対照的でスマートな印象。しっかり噛むと全て食べられる。脚は口に残るので取り除くとよいかと。
「直翅目ははずれへんな〜」という印象ですね

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日本の食用昆虫は
1919年の三宅らの調査では50種類以上食べられていましたが
1985年の野中博士らの調査では十数種類まで減ってしまいました。
この減り方には傾向があり、
イナゴ(稲作)・カミキリ(薪炭材)・カイコ(養蚕)など
生業と深い関わりのあるものが強く残されました。
他の昆虫よりも手軽に確保しやすかったためと思われます・
一方で、一部の採集昆虫
ザザムシやハチノコは、効率が悪いものの、嗜好品として
食べ続けられました。それだけ格別な味だったのでしょう。
後述しますが、やはり絶品です。
危険を犯しても、いや危険だからこそ
食べたくなる味といえるでしょう。
ここで注意して頂きたいのは
オオスズメバチは特に危険だということです。
樹液などで見られる彼らも粗暴に見えますが、
巣の近くでは尋常でない攻撃性を示します。
昆虫料理研究会では、ハチ駆除の専門家から
殺虫剤を使わずに捕獲出来た時だけ
分けてもらうことがあります。
巣が入り組んでいたり、攻撃をモロに受けてしまう
位置だったりすると煙だけでは静まらず、
防護服を着ていても
殺虫剤を使わないと手に負えない場合もあるそうです。
また、
彼らが空中に噴霧した毒を吸うと、動悸が激しくなり
夜寝付けなくなることもあるそうなので
何らかの生理的作用がありそうです。
そのため、専門家でない方に
オオスズメバチの巣の捕獲はオススメしません。
彼らのような真社会性のハチの群れでは、
働き蜂は卵を産むことが出来ません。
そのため、自分が死ぬ危険を犯してでも、
巣や女王、子を残すために行動します。
それだけに他の昆虫よりも強烈な攻撃をしてくるのでしょう。
さて
今回は味見
幼虫から成虫まで一気に比較します。

左から終齢幼虫、前蛹、蛹、成虫です。
茹でる前は半透明ですが
茹でると不透明の白になります。

前蛹になる時に、幼虫は消化管の内容物を全て出してしまうので
前蛹の背中は白いのですが
幼虫はいわゆる「背わた」が入っているので背中に黒い筋が見えます。
これは肉食であるスズメバチ幼虫のために、働き蜂が捕獲してきた「虫肉団子」
ですので、細かくなったクチクラがジャリジャリして大変食感と味が悪いので
除去することをオススメします。
肛門の少し上の背側に切込みを入れ、ニュッと出します。

これをゆっくり引っ張ると取り除くことが出来ます。

鱗翅目の幼虫でも、消化管内容物の味が気になる場合は
同様に肛門の少し上、背側に切込みを入れ、絞りだすことによって
味の強い未消化物を除くことが出来ます
今回は茹でですので、刺さる危険のある成虫の針はとっておきましょう。

お吸い物で頂きます。

味見
幼虫
糖度が高いとわかるほど甘みが強い。白身魚に似たタンパクとコーンや木くずのような香ばしい香り、動物系の僅かな香りが食欲をそそる。やはり他の昆虫とくらべても抜群にうまい。
前蛹
消化管を抜かない分プチッとした食感が楽しめる。同様に、体液が逃げないのでより濃厚な味、カニ味噌やウニのような強いうまみがあり美味しい。お吸い物にも向いているが、濃厚なのでわさび醤油で食べたい。

更にあっさりして豆腐のような味わい。形成しかかったクチクラがサクサクと良い食感を与えてくれる。強い旨みは減り、穀物のような優しい香り。一番好み。お吸い物の具に最も適した段階
成虫
クチクラが硬くなってきてしまい、茹でただけでは口に残ってしまう。体液を主とした甘みがあり、味は良い。タンパク系の味はほとんどしなくなってしまう。揚げ料理で香ばしく頂きたい。
味の違いを詳しく見ることが出来ました。
巣を見てみるとこんな感じ。部屋にフタがされたところは前蛹か蛹が入っており、
段々色がついてきます。目が黒くなったあたりがもっとも好みです。

実は
今回の味付け「お吸い物」には思い出があります。
2011年、昆虫料理のよるべ(昆虫料理研究会主催)に参加していたところ
オオスズメバチ蛹のお吸い物がメニューにあり、
食べた所ガツンと衝撃を受けました。
それまで昆虫の料理法は揚げがほとんどで、
「昆虫は他の食材と同様の普通の味」と思っていたのですが
このオオスズメバチの蛹は
お吸い物の具に最適化された味・風味・香り・食感・色を
兼ね備えていたのです。

そこで気づきました。
「昆虫料理は種・段階・時期・調理を総合的に評価して開発しなければならない」
そして
「現在の昆虫料理開発に最も不足しているのは昆虫学の体系的知識である」と。
ということで、
昆虫料理の味見に向けて昆虫学を勉強する
当ブログのコンセプトが生まれたのでした。
この大変美味しい蛹

感動したので、
当時独学で練習していた鯨歯彫刻を使ってストラップを作りました。

今ではもうちょっと上達しましたが
我ながら美味しそうに作れたと思います。
思い出の品です。

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モンクロシャチホコを捕獲していたら
同じ木に歩いているのを見つけました。
モモスズメ Marumba Moore


スズメガ科の一部の昆虫は
美味しいことが知られており、
1919年の三宅らの調査で日本でも食す地域があったようです。
現在でもボツワナのサン族がエビガラスズメを「ギュノー」と呼んで食しています。
スズメガ科まとめ
エビガラスズメ セスジスズメ クロホウジャク コスズメ ブドウスズメ クロメンガタスズメ シモフリスズメ オオスカシバ )
スズメガのボリュームと味、モンクロシャチホコの桜の香りが
合わされば、無敵の美味しさなのではないでしょうか。
味見
思いの外桜の香りは強くない。葉の苦味も少しある。
典型的な豆腐系スズメガ幼虫の味。内部はゼリー状でとろみも感じられる。
顆粒状の外皮は食感がツブツブして面白く、
味の絡みが良いので、スズメガ科のバリエーションとして楽しい。
ふむ。意外とサクラケムシほど香りが強くありませんでした。
そもそも桜の葉ってどんな味だっけ?と思い食べてみました。
確かに葉を食べても桜の香りはあまりしません。苦味がありました。
噛んでしばらく放置すると
酵素反応が促進され、クマリンの香りがしてきます。
この時、赤茶色の色変化が起こります。紅茶に似た色です。
ウィキペディアによると、
液胞内外の酵素反応によって生成されるとのこと。膜構造を破壊することが必要なようです。
とすると
モモスズメやカレハガキバラモクメキリガはそれほどクマリンの香りが強くなかったので
サクラを食草とする昆虫の中でもモンクロシャチホコは酵素反応を促進したり、
積極的にニオイ成分を取り込むことで捕食者への防御
(高濃度のクマリンは肝臓毒性があります)として
利用している可能性があります。
香りがよく味も良く、見た目も良い昆虫は、
そう簡単には見つからないのかもしれません。
さて
昆虫はその代謝エネルギーを太陽に依存しているので、
サクラ+サクラケムシは太陽光を二度使って特定の成分を精製、濃縮する系といえるでしょう。
生産された天然成分を精製する過程で、
より太陽エネルギーをしつこく利用する方が石油資源に依存しない物質生産につながります。
とはいえ、
現代は有機化学が発展しているので、石油依存型の有機物質生産の効率は凄まじく、
クマリンも安価に化学合成ができてしまいます。また、天然物抽出に関しても
精製された有機溶媒を使うことで、より短期間に、安価に達成できます。
サクラケムシを養殖して「天然クマリン」と称したところで
なかなか合成クマリンに経済的に勝つのは難しいでしょう。
昆虫の利用は経済的に考えるとなかなか難しいですね。