コンテンツへスキップ

今年の2月、渋谷のアイリッシュバーで衝撃的なイベントがあったのをごぞんじでしょうか。
虫カフェです。
我々昆虫料理研究会の主催ではないので、食用昆虫はでないのですが、
全国の【比較的社交的】な虫屋さんが集まり、
ビールを飲みながら語り合う場です。
虫屋さんに混じって昆虫食の話をして参りました。
その中で、「昆虫王 長畑直和(TVチャンピオン選手権 昆虫王)」さんのツカミのネタ
「シラホシハナムグリとシロテンハナムグリの違いがわからない方はいないですよね 笑」
ツカミはOKの一同。
すみません。わかりません。 (恥)
大学では昆虫学を専攻していないもので、(言い訳)
昆虫食に必要な「分類同定」が怪しい私です。
このコンプレックスを払拭すべく、
シロテンハナムグリProtaetia orientalis submarumoreaの同定をいたしましょう。

背中にのシロ点が、おおきな紋にならない。

口先が明らかに凹む。

ということでシロテンハナムグリということが晴れてわかりました。
安心して味見をしてまいりましょう。
今回は二度揚げで。
味見
典型的なコガネムシ味。すこし外皮が薄く硬い感じ。土臭さはまったくなく、香ばしい。
マメコガネとよく似て、土臭さがなく香ばしい味ですが、若干固いですね。

ガムシ  Hydrophilus acuminatus Montschulsky

ガムシはゲンゴロウと同様に
東南アジアでよく食べられている昆虫です。
分類されているとやや高いのですが、一番安い売られ方に
「灯火昆虫ミックス」があります。
これはその名の通り
投光機と反射板を組み合わせ、下に水槽を置くことで
灯火に集まる昆虫を水に落として集める方法です。
そのまま死んで、選別しないまま市場に出回るため
生きたまま流通するタガメやカメムシに比べ、
鮮度にやや難があるものが多いようです。
その中でガムシは
「美味しかった」「まずかった」
賛否が分かれる感想が方方からあり、
これはしっかり調べねば、と思いました。
東南アジアで食べたヒトは「まずかった」
夏の北海道で食べた方は「うまかった」
とのことなので、鮮度が影響している可能性が大いにあります。
彼らは藻類を食べる植物食で、肉食のゲンゴロウとは大きく異る味と思われます。
味見
茹で
固い。ただ美味い。水草系の強い香りがあり、カニ味噌のような味わい。
揚げるとアオサノリのような香ばしさが出てくるかも。やってみよう。
揚げ
二度揚げでいただく。
二度揚げすると外皮がザクザク食べられる。未消化物の藻類の香りは揚げると
ウニやカニ味噌のように珍味の味。好みが分かれるかも。
うまみはつよく、臭い食べ物が好きで酒呑みな方はハマるとおもわれる。
甲虫では独特の風味のあるガムシ。外皮がツルッツルなので、
箸でつまむのが一苦労ですが、食べごたえもあり味もよいので是非おすすめします。
珍味として好みが分かれる味なので、初心者には向かないかもしれません。
「昆虫の味ってどれも一緒だな」と思い始めた昆虫食中級者、酒好き向けかと思います。

ミズカマキリ
と並んでよく見られる水生昆虫タイコウチ。 Laccotrephes japonensis
タガメの下位互換(笑)として
楽しんでいたかと思います。
英名:Water scorpionというんですね。
頭部がとても小さく、顔付近の脚や腕の構造が上半身に集約していく感じは
なるほどサソリによく似ていると思います。

味見
幼虫のためか。ミズカマキリより平たく、だいぶ柔らかい。
それでもクチクラがザラザラして口に残るので軽く揚げたほうがよいかと。
水生半翅目もなかなか味の多様性があり、開拓しがいがありますね。

水生昆虫といえばこれ。どこにでもいるのがミズカマキリかと思います。
カマキリにそっくりですがカメムシ目。Ranatra chinensis

ド田舎の小学校に通っていた頃、プールの水は井戸水で、
夏にはいつも ミズカマキリが泳いでいました。
泳ぎがヘタなためか、いつも隅っこのほうに固まって数匹いたので、
プールのコーナーからザパっと顔を出すと、
ミズカマキリが水泳帽にトラップされて
トコトコ頭の上を歩いていることもありました。
それでもタガメは住んでおらず、そこから更に30km 上流の
県境の村で、展示されていたタガメを見て、うらやましいと思ったものです。
さて、味見。
華奢なので柔らかいかと思ったら棒状で結構固い。
甘みが強く、マツモムシと同様の優しい味。
ミズカマキリは臆病でなかなか捕食者としては奥ゆかしいのですが、
けっこう固いので防御がしっかりしているタイプなのかもしれません。

半翅目(カメムシ目)は、大きなグループで、味が種によって大きく異なるので
食用昆虫の開拓が望まれる分野ですが
以前キバラヘリカメムシが青りんごの香りがする、との記事を書きました。
また、ホソヘリカメムシ
は、典型的なカメムシ臭でしたので、
てっきり「ヘリカメムシは種によって大きく異なるので、味見しないことには類似性はわからない」
と思っておりました。
ですが、勉強してみるもんですね。
キバラヘリカメムシはヘリカメムシ科、
ホソヘリカメムシはホソヘリカメムシ科

ということで、科が異なるようなのです。
そこで、「ヘリカメムシ科」を探した所、荒地に繁茂するクズに
ホシハラビロヘリカメムシ がいました。


もし美味しければキバラヘリカメムシより大型で、
クズのようなそこらにある植物にいるので
有望なカメムシといえるでしょう。
味見。
強烈な青りんご臭。刺激的な味。キバラヘリカメムシよりも
柑橘系の突き抜けるつよく清涼感のあるにおい
噛んでいると次第にゴマのような風味が感じられる。
これは有望です。ホシハラビロヘリカメムシウォッカの誕生も近いかと。
注意なのですが
傷口にこのニオイがつくと大変シミます。ケガのない手で捕まえましょう。

マメコガネを捕獲していた所、
「俺のメシの邪魔するでねぇ」と威風堂々とマメコガネを噛りだした
シオヤアブを捕まえました。
ゆっくりと雄飛する貫禄、しっかりした脚、モフモフの毛、捕食者として
抜群のかっこ良さですが、いかんせん美味しそうでない。

日本でのマメコガネ大発生を食い止めている優秀な天敵ですので、
食うのは気がひけるのですが、味見してみましょう。
味見
外皮が柔らかく、かなり美味い。苦味も全くなく、トゲや毛も気にならない。
見ためが悪いのだけが難点。味の絡みにも毛が役に立っている。
見ためは悪いアブですが、サナギも美味しかったことから、
かなり食用昆虫としては有望なのかもしれません。
ただ、噛まれるのが怖いですね。
味見される方は噛まれぬよう注意して下さい。
引き続きアブに注目したいと思います。

マメコガネ Popillia japonica ブドウの葉を食べている所を発見。
日本在来種でありながら、北アメリカに渡り重大な農作物被害をもたらしている。
ウィキペディアによると、
「1919年には、たとえば桃が56本植わっている果樹園で、二時間に採集した量が945リットル」
とのこと。

味が良ければ「食べて駆除」も可能かとおもいますので
味見してみましょう。
味見
茹でて味見。
香ばしさが強く、マメコガネの名にふさわしい本当に炒りダイズに近い味。
コガネムシの中で抜群に味が良い。少し固いので軽く揚げたほうが良いかと。
さて、
大発生した外来種を「食べて駆除」する理想はよく語られるのですが
実際にうまく行った話をあまり聞きません。なぜでしょうか。
害虫捕獲は安定的な雇用を生まない

というのが最も大きな理由かと思います。
問題となる外来種は既存の農作物の害虫であることがほとんどで、
速やかな殲滅が求められます。
採集場所は農場で、人の手がどうしても必要です。
そして「どのくらい=何人の雇用が必要か」は発生状況によって異なり、
安定的ではありません。
そのため、雇用やビジネスとして成立せず、
あくまで農業を守るためのリスク低減、公共事業的な側面が強くなります。
また、
量が少なくなった時こそ徹底的な捕獲が必要になるので、
防除がうまくいくほど害虫の単価は高くなってしいます。
このような価格の上下の激しい生産品は市場のリスクになるので、好まれません。
そのため、
天敵製剤のような、「害虫の発生によって増え、殲滅後はすみやかに死亡する」特異的な天敵が
最も害虫防除に適した人員であるといえるのでしょう。
もしマメコガネの量に応じて分身ができ、
雇用の不安定も気にしないようなヒトがおりましたら、
害虫防除の救世主ですので、ぜひ農場へ就職して下さい。
そう考えると多重影分身ができて、生活力があり、楽天的な
NARUTO なんかは
農業従事者に適した素質なのかもしれません。
「農業ニンジャ」は海外でも引っ張りだこのグローバル人材といえるでしょう。
ぜひ農業忍術を取得された方は懐にマメコガネを忍ばせて海外へと翅を広げてはいかがでしょうか。

コロギス  Prosopogryllacris japonica

この昆虫との出会いは強烈でした。
4階の研究室の机の上で、いきなり威嚇してきたのです。
触角をふりみだし、翅を広げ、前後に体を揺すりながら威嚇する様はとてもかっこよく、
「なぜこんなところに?」と しばし呆然としていました。
激おこ。ですね。

おそらく樹上性のコロギスが、灯火にくる昆虫に誘われやってきて、侵入したのでしょう。
コロギスの由来は
コオロギとキリギリスの中間 であることから命名されたと言われています。
味で確かめてみましょう。
キリギリス系の甘みがつよくコクのある強い味。美味しい。コオロギ系のフェロモン臭はない。
脚のトゲが気になるので取り除いた方がが良いかと。
つまり味的にはコロギスはコオロギでなくキリギリスに近い仲間
クビキリギスに似たキリギリス系の昆虫は
アフリカのマラウィにおいて、季節の変わり目に大発生し、
現地の作物の端境期=作物が不足する時期での
栄養補助食品になっているそうです。

肉食性がつよく、
ケンカも多いのであまり高密度での飼育養殖には適さない昆虫ですが、
このような採取食文化のために生息地を保全する、
という取り組みも将来必要になってくることでしょう。

キイロスズメバチ(ケブカスズメバチ)Vespa simillima
キイロスズメバチはケブカスズメバチの本州以南の亜種のことだそうです。
確かに毛深い

草をとる圃場の野外トイレに巣を作っていた所を
捕獲して頂きました。

小型ですが気性が荒く、すぐ刺すので注意が必要です。
かならず慣れた方と一緒に気をつけて捕獲して下さい。
今回は殺虫剤を使わず、煙幕でいぶして頂きましたが。
幼虫がいない!

早すぎたのです。卵だけでした
でも危険なのでトイレを使うためにもすみやかに除去する必要がありました。
残念。
味見
成虫
口に脚部の固いクチクラが残るものの、腹部・胸部は甘みとコクの有る味わい。

全くの無味。わずかに渋みににた収斂味があるが、甘みやコクが感じられるほどの強さがない。また、壊れやすいので巣から取り出してすぐに口に入れないと内容物が漏れてしまう。
ハチは喰いたし命は惜しい
防護服はフルセットで10万円ほどだそうです。
欲しいですね。
ですが
ハチが美味しいのは古くから知られているのであまり新規性がないこと。
まだまだ未発見のハチ以外の美味しい昆虫がいる可能性が高いことから
貧乏な私はとりあえず
そちらから攻めたいと思います。

栗の木のまわりにウロウロしていたトンボに似たこいつ。

アリジゴクで有名なウスバカゲロウの成虫です。
ホシウスバカゲロウ?かもしれません。
4枚の羽を独立させてふわふわと飛ぶ様は
このロボットによく似ています。

味見
華奢で食べる所がほとんどないが、食感がやわらかくたべやすい、
味はトンボにちかいが胸肉もほとんど発達しておらず、味気ない印象
同じアミメカゲロウ目だと
ヘビトンボあたりが食べごたえがありそうです。
あとはアリジゴクも食べてみたいですね。