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「カミキリムシが美味い」
というのは昆虫食を検索した方なら必ず目にすると思います。
しかし、生木に住むことから、採集に大変手間がかかり、
薪割りの風習も少なくなってしまったことから、たっぷり食べられるほど
取れなくなってしまいました。
「テッポウムシ」と言われ大変美味なのです。
さて、
今回はとある方から頂いた
シロスジカミキリの蛹  Batocera lineolata

美しいですね。
塩ゆでにして何も味付けせずに頂きました。
例えるなら焼きバターコーン。
香ばしさとクリーム感が最高です。
食べ慣れないニオイや臭みがないので
初めてでもすんなり食べられてしまいます。
この蛹、あえて「完品」をおねがいしたのですが
造形として大変美しいので写真を撮っておきたかったのです。
チャームポイントはクルッと巻かれた触角。
カミキリムシによって巻き方に個性があります。
比較してみましょう
参考 ゴマダラカミキリ  Anoplophora malasiaca

体に対して長いので巻き数が多くあります。中世ヨーロッパのような
上品な緻密さのある印象
ベニカミキリ Purpuricenus temminckii

こちらも長いのですが、渦巻状でなく、
肩を二周する 楕円の軌道をもった巻き方です。
ロープを巻きとってしまう様子が想像されます。
クワガタ採集をされる方はけっこう朽木を割って
カミキリムシを見つけるそうです。
ぜひおやつとして食べてみてほしいものです。
追記
この美味しさを何かで再現できないかと
twitterに書いた所、アイデアを頂きました。
「ライスペーパー」
弾力がなく、フィルムのような感じが蛹の表皮にそっくりだと思います。
ということで検索すると
米粉150g ,片栗粉50g、水300gをまぜ、
大さじ二杯をのばし
レンジで一分半加熱すると出来るとのこと。
米粉ある!
次に内部の餡。
インスタントのコーンスープがあったので
水で溶いて片栗粉で粘度を調整。
良さげなところでこちらもレンジで二分。
カピカピにならないうちに巻いて
香ばしさを出すために表面を焼く。
できた。

餡はもっと脂肪分の多いクリーム状態だったので
改良の余地あり。
表皮のフィルム感はかなり再現できていました。
アイデアありがとうございました。
「昆虫料理を既存の食材で再現する」
というのも新しい切り口である可能性があります。
普通の食材から想像される「共通の味のイメージ」が
新しい食材への嫌悪感を中和しうるかもしれません。
というか思い立った時に
材料が全て手元にあったことにびっくり。 笑

以前食べたツチイナゴ
の近縁種、タイワンツチイナゴを頂いた。
ボスの許可をいただき試食する。
タイワンツチイナゴ Patanga succincta

巨大。普通のトノサマバッタから更に二回りほどデカイ。
右は比較のためのツチイナゴ。
足のトゲも強力で、蹴られたら血がにじむほど。
♀は80mmを越える日本最大クラスのバッタ。

ハネに鮮やかな赤色が入り、飛ぶと美しい。
ううむ。大きい。
実食
脚;この大きさなので、内部の脚肉だけを食べることができた。甘さとタンパク質の穏やかな味と繊維質ではない芋のような粒感のある食感。このサイズでようやく脚肉を感じられる大きさに。味はコオロギに近い。
体;大きさの割に軽い。性成熟をしないまま越冬するので、今の時期は成虫で
ありながら内部は空っぽ。カラッと揚げてサクサク食べると美味しい。味はもちろん良い。
タイ食材店では揚げたものが冷凍で販売されているのですが、
今回国産のものが手に入り食べることが出来ました。
調理済みだとわからない微妙な味の違いがわかり大変美味しかったです。

1

前回養殖2種を味見しましたが、日本の秋の旬としては
はずせない、鳴く虫。
エンマコオロギの♀を頂きます。
エンマコオロギ Teleogryllus emma

丸々と太っていておいしそうです。
この中には卵が入っていると思われます。
試食
お腹いっぱいに卵が詰まっており、プチプチとした食感が楽しい。香ばしさは余り感じられず、卵のコクが特徴的。やや前2種よりも外皮が固い。産卵期でなければまた違った味わいを楽しめるだろう。
鳴く虫の飼育は歴史が古く、江戸時代にはもう
「虫屋」と呼ばれる養殖業者が存在していたそうです。
(加納康嗣 著 鳴く虫文化誌
音で聞き分けることで たくさんの種を楽しむ文化が日本にはあります。
今度は味で楽しんでみるのもいいかもしれません。

そろそろ寒くなって参りました。
鳴く虫の季節も終わり、昆虫食もシーズンオフに。
とおもいきや、
養殖昆虫を注目していきたいと思います。
昆虫食の生物はけっこう多く、その中でも生き餌でないと
嗜好性が低い、というペットとしては困った連中がいます。
例えば
以前飼っていたフトアゴヒゲトカゲ「June二郎」

昆虫食性が強く、あまり野菜を食べてくれませんでした。
そのようなペット用生き餌として
流通している2種
フタホシコオロギ Gryllus bimaculatus

ヨーロッパイエコオロギ Acheta domestica

彼らはコオロギの中でも
卵で休眠をしないので、温度さえあれば年間何度でも孵化してきます。
タイで食用に養殖されているのもこの種です。
一方で日本の普通種は一度低温を経験しないと休眠から覚めないので
年間二回ぐらいが限度です。
なので、年中暖かい環境を用意する必要がある爬虫類飼育に適した生き餌といえるでしょう。
それでは実食
ヨーロッパイエコオロギ
おいしい。うまみがあり外皮が柔らかく、揚げて食べることが普通だが茹でてもイケる。
フタホシコオロギ
香ばしい香りがあり、イエコオロギよりも特徴的な味。外皮はやや固いが食べやすいほう。「コオロギ臭さ」は殆ど感じない
コオロギをおいしそうに食べる爬虫類を見ると
その味が気になってきますが、彼らの好きな昆虫は
やはり味もなかなかのものでした。

以前
アカスジキンカメムシ成虫
を味見したところ、
「味、うま味は他のカメムシよりよいものの、カメムシ臭が気になる」との
感想でした。
8月に某NPO職員のHさんがラオスに行った際
現地の人に
「カメムシのニオイって気にならない?」
と聞いた所
「カメムシは若い時に食うに限る」
との返答とのこと。
ここからわかるのは
1,カメムシのニオイはラオス人でも強すぎるとキライ
2,成長段階によってニオイは異なる。
なるほど。
確かめてみよう。
残念ながら今回ラオスはカメムシの発生時期ではなかったので、
ラオス産は手に入らず。
ストックしてあった
アカスジキンカメムシの越冬幼虫をいただくことに。
アカスジキンカメムシ Poecilocoris lewisi

ほとんどニオイがなく、わずかなほろ苦さと肉質の旨みがあり、美味しい。ラオスの方が言っていたことは本当のようだ。
確かに
キバラヘリカメムシ
幼虫の方がニオイが薄く、食べやすかったので、
「カメムシは幼虫で食べるべし」
というラオス人の言葉には説得力があります。
また更に。
「昆虫は幼虫で食べるべし」
とまで拡大出来る可能性もあります。
幼虫は、小さい卵から繁殖できるまでの栄養を貯めこむ段階といえます
一方で、成虫は拡散、交尾と繁殖を目的としているため
栄養を翅やフェロモン、メスへのアピールへ振り向けます。
ハネやフェロモンを食べても栄養的にはあまり利用できないので、
美味しく、かつ栄養たっぷりに食べるためには幼虫か、
完全変態昆虫では
栄養をタンパク質に変えつつあるサナギを選んで
食べると良いかもしれません。
事実、幼虫とサナギは大変美味しく、
かつ独特なニオイが少ないものが多いです。
休眠するサナギであれば長期間新鮮なままの保存も可能です。
サナギや幼虫を保存食として携帯する日が来るかも知れません。